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Dichorragia nesimachus
<分布> 本州・四国・九州・南西諸島に分布する。各地とも山地・低地に産するが産地は食草の関係から局限される。関東地方以北ではまれで、南西諸島でも未記録の島が多い。
国外では、ヒマラヤ周辺・ビルマ・インドシナ・中国大陸・台湾・朝鮮半島(南部)・マレー半島・スマトラ・ジャワ・フィリピン・ボルネオ・セレベスに分布し、西北ヒマラヤ・アッサム付近のものが原名亜種である。
<生態> 年2〜3回発生。本州では5〜6月に第1化が、7〜8月に第2化が現れる。八重山諸島では2月下旬にはやくも姿をみせるが、きわめてまれなために調査が不充分で、詳細は不明である。
成虫は食草の混じった渓流ぞいの雑木林や周辺に多く棲息し、飛翔は敏速であるがすぐに葉上に翅をひらいてとまる。カシ類・コナラ・クヌギ・クリ・タブノキ・ヤナギ・ニレ類などの樹液に飛来するほか、汚物・糞尿・腐果にくることもある。夕方、♂は強い占有性を示し、占有領域にはいった他の個体を激しく追飛する。
越冬態は九州以北では蛹、九州南部以南では蛹のほかに休眠しない幼虫でも冬を越す。
<食草> アワブキ科のアワブキ・ヤマビワ・ミヤマハハソ・ナンバンアワブキ。
<雌雄の区別> ♀は♂よりも大型で、翅形はまる味を帯びる。♂♀の斑紋には差が少なく、正確な同定には前脚・腹端などの精査が必要となる。
<変異> 春型(2a)は夏型(2c)に比べて小型で、白斑が発達し、前翅亜外線の横V字状斑は一般に一重(夏型では二重)である。
本州から屋久島までのものは、ssp. nesiotes Fruhstorfer とされ、朝鮮半島産もこの亜種にふくめられる。八重山産(2b)は、本州〜屋久島亜種に比べて大型で、翅形が幅広く、まる味を帯び、翅の色彩も緑色が少なく、暗い藍色となって別亜種(ssp. ishigakianus Shirozu)とされるが、台湾産の亜種(ssp. formosanus Fruhstorfer)と明確な差が認めにくく、将来この亜種は再検討を要する。沖縄・奄美諸島産は翅形・大きさは本州〜屋久島亜種と、色彩は八重山亜種に似るといった、この両者の移行型・中間型が多く、こうした変化は連続的といえる。
保育社「原色日本蝶類図鑑」(全改定新版4刷) 第56図版2. 257〜258頁。
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