18日はプレミアシップ屈指の好カード、リバプール対マンチェスターがアンフィールド・スタジアムで行われるため…マンチェスターへ出かけた。要はチケットが取れなかったのだ。ダフ屋から購入することも考えたが、確実性がないことに加え金銭面の問題もあり、心残りはあるものの断念することにした。イギリスに着てまで財布と相談しなければならないとは…。 代わりと言っては失礼かもしれないがマンチェスターにあるもう一つのチーム、マンチェスター・Cの試合を観に行くことにした。幸か不幸か、相手は11日に失望させられたボルトン。決して良くないイメージを私に与えてしまったボルトンだけに、是非とも汚名返上、名誉挽回をしてほしいと勝手に少なからず思っていた。シティー・オブ・マンチェスターでのキックオフは4時。しかし、マンチェスターには11時には着いてしまったため、トラム(日本でいう路上電車のようなもの)を使ってオールドトラフォードまで足を運んでみることにした。 オールドトラフォード駅に降りると、まず目に飛び込んできたのはクリケットのスタジアムだった。向かって左手に見えるスタジアムではこれから試合が行われるのか、観客が徐々に集まっている様子。そういえば、クリケットのワールドカップでイングランドが見事に優勝を果たしたニュースを思い出し、それと何か関係があるのか?などと憶測の域を出ない思考をめぐらせながら、道をまっすぐと進んだ。 オールドトラフォードまで続く道の途中にはパブやユナイテッド関連のお店が多く並び立ち、歴代選手たちの顔を描いたユニークな看板(?)まであった。ただ、今日試合が行われるのはアンフィールドなためほとんどの店がシャッターを下ろしていたが…。 徐々に見えてくるオールドトラフォード。紅く灯された「MANCHESTER UNITED」の文字が目に映る。正面には銅像がそびえ立ち、巨大なスタジアムであることが伺える外装だ。数枚写真を撮り、中央のドアをくぐりスタジアム内部へ。 中に入ると、そこは大きなオフィシャルショップだった。ゆったりとしたスペースに沢山のグッズが並べられていて、品数の豊富さではプレミアシップでも有数だろう。さすがは「世界」のマンチェスター・ユナイテッドを感じさせる。吊るされているいくつかのモニターでは歴代の試合が放送されていて、ジョージ・ベスト、ボビー・チャールトンなど多くの名プレイヤーの勇姿も少しではあるが見ることができた。 試合はないし、スタジアムツアーも申し込んでいなかったため、シアター・オブ・ドリームスの芝生を拝むことはできなかったが、次回訪れる際の下見にしては十分なものだった。後はユナイテッドのグッズを鞄の奥底にしまい、ライバルクラブのスタジアムへ向かうだけだった。 再びトラムで街の中心部に戻り、スタジアムまでの直通バスに乗り込んだ。車内では話し声が絶えない。どこの誰かなんてことはさほど関係なく、シティーのユニフォームを着ていれば無条件で仲間なのだ。30代ぐらいの男性と60代ぐらいの女性が話していることなどざらにあり、まさに「ファミリー」を感じさる。私はちょうど近くにいた日本人男性(以後Kさん)とシティーファンの英国人親子に混ざり、スタジアムまでの道のりを楽しんだ。 思いのほか時間は早く流れていったが、少なくとも旅行ガイドに記されていた「スタジアムまで徒歩20分」の文字には疑いの念を抱かざるを得ない長い道のりであった。道も込んでいたわけではないのにバスで10分かかった道のりを徒歩20分で来ることが本当にできるのだろうか。次回来るときにチャレンジしてみたいが、初見の印象ではバスを使うほうが好ましそうだ。 スタジアムに着くと英国人親子は自分たちの席に向かい、私とKさんは当日券を買いにチケットオフィスへ。そこでゴール裏の席を購入。オフィシャルショップを経由し、スタジアム内へと足を運んだ。 驚いたことに私たちの座席はボルトンファンとシティーファンのちょうど境目の席だった。両サポーターは少なからずいがみ合っていたため、若干危機感も感じたが、ホームチームを応援し、中田英寿のいるボルトンを陰ながら温かく観戦するためには最善の席だったかもしれない。 シティー・オブ・マンチェスター・スタジアムは近年できた新しいスタジアムで、メインロード(旧シティーのホームスタジアム)ほど歴史を感じさせる造りではなった。 しかしながら、全く感じないというわけではない。Kさんも私も埼玉スタジアム2002と同じようなイメージを抱いていたのだが、このスタジアムはさいスタより遥かに雰囲気がある。スタジアムそのものから感じ取れるのか、ファンが雰囲気をかもし出しているのかは定かではないが、心地よい雰囲気に変わりはなかった。 試合が始まり、まず印象に残ったのはファンの間で交わされるチャントの歌いあい。さしがね応援合戦といったところだろうか。チャンスが訪れるたびに「どうだ!」とばかりに相手サポーターに対して向けて歌われるチャントや各個人での叫びあいはまさに戦いを思わせる。 ただ、内容はさして面白いものではなく、前半が終わっての感想は「イマイチ」ということで私もKさんも一致していた。 余談だがハーフタイム中、今日ロンドンに帰るKさんが明日ハイバリーで行われるアーセナルVSエバートン戦を観戦しに行くというので、厚かましいお願いながら私の分のチケットも取ってくれるようお願いすると、突然の申し出ながら快く引き受けてくれた。ほとんど考える間もなく即答で承諾してくれたことがなんだか無性に嬉しくて、冷めていたテンションも心なしか温まった気がした。こんなところでもフットボールを通した繋がりができたことに少なからず喜びを感じていたのかもしれない。 前半とは一転して後半、ゲームは白熱する。ホームのシティーはサポーターに後押しされ攻めに攻めるが、ことごとくバーやポストに跳ね返される。久々の出場だったソン・チーハイのシュートがバーに阻まれたとき、スタジアムに詰め掛けている中国人ファンはどれほど悔しがったことだろう。同様に試合を通じて6回ほど、シティーファンは頭を抱えた。これほど運のない日も珍しい。結局試合を通じてシティーはゴールをあげることができなかった。 一方のボルトンはシティーの攻撃に終始耐え、チャンスを窺う。流れを変えようと後半途中には中田英寿がプレミアシップデビューを飾るが、シティーサポーターの中に入っている人間として、拍手ではなくブーイングを送った。(デビュー戦に中田にブーイングを送った唯一の日本人かもしれない。)とはいっても私は日本人だった。コーナーキックを蹴りに目の前に訪れた中田英寿の姿を写真に収めずに入られなかった。周りのシティーファンの冷たい視線を浴びながら。写真を撮り終えると再びブーイングを彼に送るという矛盾を繰り返しながらゲームを楽しんだ。 終始エキサイティングな展開が続くが、スコアは動かず、スコアレスドローが脳裏をよぎったまさにその時、シティーのディフェンダーが私の目の前でつまらないハンドを侵した。ボルトンサポーターは一斉に反応し、シティーサポーターの顔は一瞬にして青ざめた。ハンドを冒した選手は瞬時に顔を覆い、自分の犯した罪の大きさを一瞬にして理解した。まさにフットボールの恐ろしさを痛感した瞬間だった。 スピードが落ち着いてボールをネットに流し込み、ボルトンが先制した。先制点は限りなく決勝点に近く、数分後、ボルトンサポーターから歓喜の歓声が上がった。案の定、先制点は同時に決勝点になったのだ。 90分間、何もなかったボルトンはワンチャンスをものにした。シティーは二桁にも上る決定機を作りながら一度もものにできなかった。ゴールネットは一度しか揺れなかったものの、スタンドはこれ以上なく白熱していた。フットボールの醍醐味が十分に味わえた素晴らしい試合だったように思う。Kさんの感想も、「ロンドンからわざわざマンチェスターまで来て良かった」というポジティブなものだった。 スタジアムを出て試合を振り返る。前半終了時には考えられなかった満ち足りた笑顔で。足取りは軽く、時間が経つのも忘れてゆっくり歩いていたので、帰りの電車に乗り遅れてしまった。だが、そのことを悔いるほど我々の頭の中に余白は残っていなかった。すでにスタジアムで、思考のページは埋め尽くされてしまったのだ。もしくは思考回路が焼ききれるほどの試合に出会えて何も考えることが出来なかった、と言っていいかもしれない。 ハイバリーでのチケットを期待しつつ、Kさんと別れ、ウォーリントンへと続くレールの敷かれたホームで時が経つのを待った。30分ほど発車を待たなければならなかったが試合の余韻を楽しみ、一日を振り返るのにはちょうど良い時間だ。右手にはバーガーキングで買ったコーラを、左手にはシティー(とユナイテッド)のグッズが入ったバッグを持って暗闇の訪れたマンチェスターの街を思いながら回想にふけった。
|
プレミアリーグ観戦記!
[ リスト | 詳細 ]
タイトルそのままに、プレミアシップ観戦記です。
HP上にもアップしてあるのですが、より多くの方に読んで、感想をいただきたいと思い、こちらにも載せる事を決意しました。
感想、書き方に対する意見等のコメントお待ちしております♪
|
10日に地下鉄が止まり、試合にも遅れそうになったことから、交通機関を利用する際には最大限気をつけていた。この日も同様に。キックオフが17時15分だったため、1時間15分前の16時00分にはビラパークの門をくぐる予定だった。 しかし、まだ甘かった。 何があったのかは知らないが、まず到着予定時刻を30分オーバーし、さらに時間調整なる理不尽な理由によって列車は停車を繰り返した。それによりまた40分ほど遅れてしまい、結局ビラパークに着いたのは開始予定時刻3分前だった。 不幸中の幸いで、キックオフも開始時間から5分ほど遅れていたので観戦に支障はなかったが、またバタバタした形となってしまった。 改めて思う。鉄道や地下鉄など、交通機関を利用する際には、日本では考えられないほどに注意が必要なようだ。また一つ勉強になったが、何も毎回試合の直前に遅れなくても…と正直なところ思ってしまう。これも含めてイングランド・ライフなのだろうか。 スタジアムに着くと、時間がなかったためスタジアムショップにも行かず早速スタンドへ。今回はゴール裏ではなく、メインスタンドやや左に席をとった。しかも4列目と、ほとんどピッチと離れていない。ピッチサイドに顔を出した、ディビッド・オレアリーはもちろん、メルベリやアンヘルなど、監督、スタッフ、選手たちの入場をマジかで見ることが出来た。 さてさて、肝心なのは試合。対戦カードはビラ、そして今期好調で4強に割って入るのではないかと予想されたトッテナム・ホットスパー。なかなか調子の上がらないビラだけに、油断ならない相手である。 開始早々、ミルナーのゴールでビラが先制。するとスタンドのテンションは一気に上昇し、その後も心地よい熱気を放っていた。 間もなくビラはPKを取られたものの、キッカー・デフォーの左隅へのシュートをセーレンセンが防ぎ、熱気には拍車がかかった。前節、ウエストハムに0−4と良いところなく敗れた鬱憤を晴らす機会は整っていた。 しかし、それ以降ストライカーが結果を出すことはできなかった。リバプールから移籍してきたユーロの得点王も決定的なチャンスを外すという、らしさを新天地でも披露してしまい、とどめをさせなかった。 スタンドのテンションは落ちなかった。いつか決めてくれることを信じ、歌い続けているようだった。しかしながら、信じる者が必ずしも報われないのがサッカーというスポーツだった。そして一方で、逆の結果を信じていた者を救うのもサッカーだった。 途中出場のロビー・キーンにテクニカルなステップからシュート(確かその週のゴール・オブ・ザ・ウィーク)を叩き込まれるとスタンドからは妙に冷めた空気が漂ってきた。スパーズファンがいる一角を除いては。 1−1のドローに終わったこの試合。観戦し終わり浮かんだ考えは2つ。 ビラパークの雰囲気は決して悪くなかった。むしろ、テレビを見て抱いていたイメージよりもはるかに良かった。あまり満員になっているイメージのなかったスタンドは、やはり少し空席はあったが、味の素スタジアムや日産スタジアムでJリーグを観たことのある者としては、失望するほどのものではなかった。むしろ贅沢なほどだった。程よい熱気と緊張感は逆に心地よさを与えてくれた。 そして、チャントの「質」は観客の「量」と必ずしも比例しないことも教えてくれた。超満員のスタンフォード・ブリッジより空席のあったビラパークの方が、心に残るチャントが聞けた。そんな気がするほど、ビラパークでの観戦は心に残るものとなった。 「イングランドのチャントはどんなにテレビの音響効果が発達しようと絶対に伝えられない」 誰もが口にするこの言葉を思い浮かべずにはいられなかった。 頭の中で思い浮かべていたイメージと現実のギャップが、良い具合に働いた典型的な例かもしれない。人それぞれが抱く理想と現実は、必ずしも一致しないかもしれないが、必ずしも裏切られるわけではなかったのだ。
|
|
14日、一時ロンドンから離れ、知人のいるウォーリントンへ足を運んだ。週末までにマンチェスターやリバプールへスタジアムを見に行くため。そして、週末は2試合、マンチェスターとバーミンガムで観戦予定であるため、その中間地点のウォーリントンで過ごすのがベストだと考えたからだ。何より、ホテル代が浮くし、今まで試合以外では望めなかった日常会話も出来ることだろう、と期待しつつ。 小ぢんまりとした駅を出て町の中心部を抜け、寝床へと向かう。北部に着ただけあってロンドンとは比べものにならないくらい寒さを感じる。肌に触れる乾いた空気は寒いというより痛い。手持ちの中で最も厚手だと考えられる服を着てきたものの、彼らは寒さを掻き消すほどの厚みを持っていなかった。しかも雨が降ったり止んだりしていたため、痛みは倍増だ。イングランドの寒さをなめていたことに少し後悔した。全く嫌になる…。 しかしその中にあって街中で見るマクドナルドやスターバックスに懐かしさを感じるのだから不思議なものだ。もともと日本の企業ではないし、社名からして日本を感じさせるものなど何も無い。日本に居ても特に意識してこれらの店に入るわけではないし、当たり前になりすぎていて返って見過ごす場面が多い。 それほど生活の中にこれらが染み付いているのだろうか。それとも日本を連想させるスイッチだったというのだろうか。どちらにしてもここ数日やっとイギリスでの生活にも慣れ、日本を忘れかけていたのに悪い意味で思い出してしまった。母国日本の温かみを考えるとこちらの国は…などと比較せずにはいられないからだ。軽くホームシックにかかってしまったのかもしれない。 だが、そんな想いはすぐに吹き飛んでしまった。 若干迷いながらも街を抜け、川を跨ぐ三方に分かれる橋に差し掛かったところ、突然警官に呼び止められたのだ。これ以上ない不意打ちである。警官に呼び止められる理由など何もないはずだった。迷ってはいたものの、それを周りにもらさないような素振りを心掛けていたし、特別可笑しな格好をしているというわけではない。強いて思い浮かぶことといえば、私が異国の地から来た外国人ということぐらいだった。しかし、それにしたって疑問は消えない。こちらには多くのアジア人が住んでいて、日本人の存在は特別珍しいことではないし、今から行く家の主は何を隠そう中国人である。 無意識のうちに、あるいは気づかないうちに不審な行動でもとっていたというのか、などと不安に駆られながらパトカーまで誘導されると、警官はにっこり笑い出した。そして、意外な言葉を私に向けて発した。 「お前もウエストハムのファンなのか?」 30歳前後の男は満面の笑みで私を見ている。彼の視線の先には手持ちの中で最も厚手だったウエストハムのパーカーが。その左胸に刻まれているエンブレムがあった。 その刹那、不安はどこかへ消え去り、全てを理解した。呼び止められた理由は実に単純明快だったのだ。 私は、「もちろん」と答えるだけでよかった。彼はきっとこう返してくるだろう。「俺もウエストハムのファンなんだ」と…。 答えは期待通りだった。そして、自分の愛するクラブのことを自慢げに語り始めた。 テレビドラマに出てくる愛想の良い警官がそのまま目の前に現れたようだった。わざわざ、私を呼び止めてまで自分の愛するクラブの話をしてくれる。外国人に、同じクラブのサポーターというだけで、こんなにもフレンドリーに接してくれる。話しかけてきてくれるのだ。 正直なところ、興奮して早口になっているネイティブな英語を聞き取れるほどの能力を私は持ち合わせていなかった。ゆえに彼の話していることの半分以上は理解できなかった。(このときほど自分の英語力のなさを呪ったことはない!!) 話したことも、 「日本でもウエストハムは有名なのか?」 と聞かれて、 「ユナイテッドやアーセナルほどではないけど、十分有名だよ」 と言ったことや、 「なぜ、ウエストハムが好きなんだ?」 と聞かれて、 「アプトンパークの雰囲気が素晴らしいし、アカデミーは世界一だから」 「だよな!ランパード、J・コール、リオ・ファーディナンド…。全部うちの選手だ!!」 というようなごくごく有り触れたありきたりな会話だけだった。 しかし、語学力のなさを悔いる反面、その時の私には会話の内容なんて関係なかった。正直言ってどうでもよかった。言葉が通じなくてもフットボールを通してこんなにも簡単に人は通じることができる。フットボールという接点だけで我々は初対面にして、二十年来の親友のように話ができる。 そんな文化に触れられたことが、私は無性にうれしかった。そんな英国の暖かさを実感できたことが、この上なく喜ばしかったのだ。 十数分の談笑を終えた後、彼はパトカーに乗り走り去っていった。私も目的地へ向けて、再び歩き出した。本来、ロンドン以外では決して着ることの許されない禁断の服を、寒さに負けて着てきたことが逆に良い方向に働いた結果だったのだろう。ロンドンで着たところで珍しいことではないし、今回着てこなければ呼び止められることもなかったのだから。そういう意味ではこの身を切る寒さも悪くない。 足取りは軽くなり、心なしか寒さが薄れていく感じがした。これなら当分歩いていても、寒さで凍えることはなさそうだった。
|



