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※写真はグランプリファイナルのもの −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 12月25日…キリストが産まれた聖なる夜に、子どもたちの夢があふれる希望の夜に、トリノオリンピック代表が決まる。全日本女子フィギュアスケート選手権はショートプログラムを終えてなお大混戦で、戦いは混沌としていた。フリーの結果によっては大逆転もありうる。史上最も注目を集め、最も過酷で非情な代表争いに、決着がつこうとしている。 しかし、荒川、村主、恩田、中野、そして安藤が火花を散らせるこの熱きリンクの上にあって、一人の少女だけが違う空気を放っていた。異なる目標を掲げていた。 「トリプルアクセルを2回入れたいです。」 そう話した可愛らしい15歳の、世間から「妖精」と呼ばれる少女は、張り詰める空気に優しさと微笑を与えていた。そんな少女が、サンタクロースになったのは…それからすぐのことである。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「がんばれ!」「真央ちゃん頑張って!!」 会場から声援が飛ぶ。 樋口コーチから笑顔の激励を、山田コーチから最後のアドバイスをもらい、笑顔でリンクに飛び出していった。一週間前、世界を驚かせたグランプリファイナルだったが、挑戦には挑まなかった。 「アクセル2回やるのは不安だったので…」 今、挑戦へのスタート地点へ向かう彼女の顔に「不安」の2文字は浮かんでいなかった。リンクの中央で動きを止めた無邪気な挑戦者はまさに「勝負」の眼差しを放っていた。 チャイコフスキーの調に乗せて動き出したピンクのくるみ割り人形に全ての視線が集中する。エッジを滑らせ、ステップを刻み、最初の滑走に入る。同時に最初の関門へ。 右足がリンクを蹴り上げ、左足も氷から解き放たれる。1回、2回、3回…。右足が再びリンクを捉えた瞬間、少女が演じる可愛らしくも凄まじい物語のプロローグは完成した。 舞台は整った。勝負の時は来た。後は思い描いている最高のクライマックスを、書き加えるだけでよかった。 正確には開始から32秒後、はじめのトリプルアクセルを降りてから15秒後、クライマックスは何の狂いもなく思い通りに描かれた。世界初の試みに挑み、勝負に勝った瞬間だった。そして、最高のクリスマスプレゼントを、我々に届けてくれた瞬間でもあった………。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 演技全体を見れば、完璧ではなかった。中盤の見せ場である3回連続のジャンプも跳ばなかった。テクニカルエレメンツもグランプリファイナルで出した得点に及ばなかった。だが、目的は間違いなく達成されたのだ。 「トリプルアクセルを2回跳ぶ」 皆が注目し、誰もが見守った。そんな期待を、彼女は裏切らなかった。する必要もないのに、自らに課した「みんなとの約束」は何の偽りもなく守られた。こんなにも簡単そうに。そしてあっさりと。これがまだ「天才少女伝説」の序章だといわんばかりに…。 彼女はトリノに出られない。4年後の保証もない。怪我やスランプに悩むかもしれない。しかし、今日のような心躍る勝負を見せられたなら、きっと信じずにはいられないだろう。私も見守り続けたいと思う。 四年後のクリスマスも今日と同じ笑顔を見たいから。 バンクーバーでの舞いを実現してほしいから。 彼女の夢の続きを一緒に見てみたいから…。 |
私的殿堂入り記事!
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妖精は舞った。 伝説の夜だった。 そして、神話への序章だった。 あどけない笑顔と大人の表情を持ち合わせた若干15歳の少女はまたしても我々に夢を与えてくれた。夢を見させてくれた。そして、自らの夢の続きを歩み始めた………。スケート靴を履いて。氷の上を軽やかに滑りながら。誰もを虜にしてしまう、最高の笑顔で。 アイスダンス、男子シングルフリー、ペアと続いてきたグランプリファイナル2日目だったが、このときほどの緊張感と期待感が会場を覆ったことはなかった。空気が痛い。胸に何かを突きつけられている感じ。高橋大輔が3位に輝いた時ですら、こんな張り詰めた空気は漂わなかった。女子フリーにかかる期待は我々一人ひとりが想像していたものより遥かに大きいらしい。 ペア競技が終わり、20分の休憩の後、彼女はリンクに上がった。ピンクの衣装に身を包んだ可愛らしい真央と、勝負の顔をした凛々しい真央が混同していた。悪くない。いつもどおり。そんな印象だった。 練習を行う彼女に注がれる視線は2つに絞られていた。順位。そして、トリプルアクセルを跳ぶのか。 彼女は跳んだ。何度も何度も。世界で始めてトリプルアクセルからのコンビネーションジャンプも決め、会場の期待感は一層膨らんだ。1度だけ転倒した。倒れたのは同じ箇所だった。一抹の不安がともる。当然であるが彼女でもミスはするのだ。 引き上げる彼女は何を思ってリンクを後にしたのだろうか…。 再び彼女がリンクに上がった時、会場では期待よりも不安が増していた。最高の雰囲気であり、最悪の展開だった。安藤が作った悪い流れをスルツカヤが断ちきった。良い流れを作ってくれた。ここまでは良い。だが同時に浅田の優勝に黄色信号が灯ったのだ。 ソルツカヤの総合得点は181点。浅田に必要な得点は117点。彼女のパーソナルベストは119点。容易に出せる点数ではなく、中には「厳しいかも」といった声も聞こえてきた。私自身、スルツカヤの演技には苦笑いを浮かべるしかなかった。 壁は高く、厚くなった。 だが、越えられないほど絶望的な高さではなかった。女王の得点は許容範囲、想定の範囲内の出来事に過ぎなかったのかもしれない。 くるみ割り人形のしらべが会場の緊迫感と調和する。浅田の手が動き、足が動き、観衆の心も動く。「絶対に大丈夫。いける。」そんな空気が漂った。会場が彼女の世界に取り込まれた瞬間でもあった。 滑走に入る。いつもと同じコース、いつもと同じ間合い、いつもと同じ氷の軌跡を残し、彼女は跳び立った。期待と不安が入り混じった一瞬の沈黙が着氷の音と共にかき消され、リンクに舞い降りた浅田は妖精となった。 何とも表現しようのない心の高まり、達成感が身体を支配し、体内にまかれたアドレナリンは収集不可能なものとなっていた。もはや、意識すら遠のいていく。周囲も同様に我を忘れて両手を叩き、目の前に降り立った妖精を歓声と共に向かいいれる。白雪姫を囲む、7人の小人みたいに。 後は彼女のショーを見守るだけだった。安定したジャンプは転倒の予感すら漂わせず、しなやかな指先が描く緻密な動作は催眠術を思わせた。会場全員が彼女の術中にはまっているのは、もはや火を見るより明らかだった。 「ラスト…」 どこからともなく、そんな声が漏れてきた。妖精は最後の滑走に入る。1回、2回、3回転。そして、最後の2回転…。 着地の瞬間、小さなガッツポーズを作り笑顔がはじける。この時、妖精は少女に戻り、あどけない笑顔で我々の前に降り立った。後はスピンを残すのみ。音楽にのり、手拍子にのり、最後のポーズを決めた。 拍手は途切れなかった。歓声は鳴り止まなかった。これだけの演技をして、これだけ観客を魅了して、悪い結果が待っているはずもなかった。程なくして、電光掲示板にはこう刻まれていた。フリー得点「125」。総合得点「189」。「1位浅田真央」。 新女王誕生の瞬間だった。15歳が世界の頂点に立った歴史的な夜だった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「びっくりしているのとうれしいのとでいっぱいです。」 「(トリプル)アクセルを2回飛ぼうとしていたんですけど、直前で不安になって、(GPの)フランス(大会)と同じ構成にしました。自信はあったんですけど、近づくにつれて不安になって。」アクセルのコンビネーションは跳ばなかった。しかし彼女は十分に攻めた。パワフルに、ダイナミックに、そしてシャープに。少なくとも会場に不満を口にする人間はいなかった。そんな声など聞こえてこなかった。聞こえてくるはずもなかった。諸刃の剣を使わなかっただけ。彼女は果敢に勝負し、強敵に打ち勝った。 一つの期待は次にお預けとなった。だが、それ以上のものを彼女は与えてくれた。世界の頂点に立ったのだ。これ以上を15歳の少女に望むことは少々酷である。彼女はこれまでも我々の期待に十分すぎるほど答えてくれた。彼女にしか出来ない世界初の試みを試合で観られるのもそう遠い先の話ではないだろう。マイペース。それが彼女の持ち味なのだから。そして彼女のペースは常人では考えられないほど速いスピードで進んでいるのだから。 「トリノへは少し出たいですけど、(2010年の)バンクーバーに出られたら。」地元イタリア、トリノのホープ、カロリーナ・コストナーの表彰台を脅かす存在であることは間違いない。チンクワンタ会長もイタリア人であり、頑なな姿勢を崩さないのも理解できる。その他、様々な政治的社会的問題が折り重なり、浅田のオリンピック出場を阻んでいるのだろう。 以前も記したとおり、私は危惧している。誰もがそうであるように彼女の4年後は不透明だ。怪我をするかもしれない。スランプに陥るかもしれない。若手の台頭があるかもしれない。バンクーバーに出場できる保障などどこにもない。絶対になんとしても今、出してあげるべきであると今でも思っている。その考えは変わらない。 だが、こんなにも魅力的な夜を彼女は与えてくれたのだ。私に。日本に。世界に。 だから、私も彼女の言葉を信じ、期待したいと思う。 これがまだ序章に過ぎないことを。 世界を魅了し続けてくれることを。 バンクーバーでも輝きを放っていることを。 そう信じ、祈りたいと思う。 彼女の瞳に。 彼女の笑顔に。 妖精の舞いに。 |
注目の女子ショートプログラム(SP)で、15歳の浅田真央(グランプリ東海ク)が首位発進した。3回転ジャンプを完ぺきに決めるなど、ほぼノーミスの演技で自己最高記録の64・38点をマーク。本来は年齢制限で五輪出場資格はないが、規定を覆す“奇跡の代表切符”へ実力をアピールした。安藤美姫(17)=中京大中京高=はスピンのミスが響き3位、中野友加里(20)=早大=は4位。世界女王のイリーナ・スルツカヤ(ロシア)が2位につけた。もはや小さな希望の灯火は、大海原を照らす灯台に変わり、世界を照らす金色の光へと変わろうとしている。 オリンピック出場は世界が望む必然の事態となり、理不尽なルールを変えざるを得ない状況に変わってきている。しかも世論が動かしたのではなく、浅田真央本人が自らの実力で、自らの存在で意義を訴えたのだ。 カルメンの情熱的な曲調は彼女が演じることにより可愛らしい柔らかな調べに変わった。しなやかな指先、軽やかなステップ、キュートな視線と眼差しは観ているもの全てを彼女の世界に引き込ませた。ジャンプをすれば拍手喝さい、ステップを踏めば手拍子が自然と沸き起こり、ラストのポーズを決めると割れんばかりの歓声が代々木第一体育館を包んでいた。 まぎれもなくその瞬間、彼女は世界の中心にいた。世界で最も注目される15歳になった。 「ダブルアクセル(2回転半)がちょっとだけだめだったので、99点の出来です」 無邪気に笑うその顔からは希望しか見出せなかった。 92年アルベールビル五輪銀メダリストで、浅田と同じ山田満知子コーチの門下生、伊藤みどりさんは貴賓席に座るISU・チンクワンタ会長に「真央を五輪に出してあげてください」と“直訴”した。「答えはもらえなかったけど、こんなに素晴らしい選手が五輪に出られないなんて…」と嘆いた。「ファイナルで優勝したら、『特例』をISUに働きかけたい」と日本スケート連盟も視野に入れている。 まずはフリーで結果を残すこと。それが第一だ。 「トリプルアクセルを2回入れたいです」 世界でいまだ成し遂げられていない、前人未到の挑戦である。しかし、この勝負の姿勢と無邪気に笑う彼女の笑顔、何とも美しいではないか。 時は12月17日。東京代々木第一体育館にて。 浅田真央がフィギュアスケート界を、世界を動かす。自らの実力で。自らの魅力で。自らの想いで。 そう信じている。
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「真央はジャンプが好き。ジャンプは跳べたときすごく気持ちがいい。でも跳べなかったときは、気持ちが悪い(笑)。やっぱりジャンプを跳べたときが一番楽しいし、スケートが好きだなって思う。」 「ジャンプのほかに頑張りたいのは、スケーティング!コーエンとか、クワンとか、佐藤由香さんとか、荒川さんみたいに。見ている人が感動しちゃうようなスケーティングをしたいんです。」(共にlittle wingsより)13歳の浅田真央はこのように語っている。 ジャンプが好き。とにかくジャンプを跳びたい…。彼女の中心にあるのは、今も昔も変わっていないようだ。13歳のあどけない真央も、15歳のちょっと大人になった真央も、彼女の魅力を最も引き出すジャンプに想いをはせている。 彼女の生きがいなのかもしれない。高く跳ぶことが。可憐に舞うことが。大きくはばたくことが。 その想いが彼女の表情と共に伝わってくる。 そして、14歳の真央はこう言っていた。 「オリンピックはトリノだけじゃないから、だいじょうぶ。真央は一年一年を大切にして、バンクーバーに出られるように頑張ります。それに、今シーズンはシニアのすごい選手の演技を生で見られるから楽しみなんですよ。スルツカヤでしょ、クワンでしょ、コーエンでしょ……」 「コーエンはスパイラル、スピン、ジャンプ、全部が上手。いちばん見たい選手です」(共にNumberより)半年後、15歳になった真央はフランスでコーエンを見ることになった。一人の観客としてではなく、一人のライバルとして。 「いちばん見たい」と言っていたコーエンを、同じリンクの上に立つ選手として見た真央はどのように思ったのだろうか。まじかで見たコーエンの演技は彼女の瞳にどう映ったのだろうか。上手に見えたのか。美しく見えたのか。 TV番組出演時の応対では「すごい、あの、やっぱり、迫力がありました」と答えている。また、そんなコーエンを押さえ優勝したことについて問われると「すごいびっくりしているんですが、すごいうれしいです」とやや謙遜気味に答えた。 しかし、少なくとも私たちの目には、真央の方が上手に美しく見えていた。その証拠に真央はコーエンを押さえ、表彰台の頂上に上がり、パリに君が代を響かせた。 憧れの選手に追いつき、追い越した瞬間でもあった。2大会連続で、荒川静香より上の順位に立っていたのだ。 山田コーチは言っていた。 「真央の性格ですか?それはもう見た通り、天真爛漫そのもの。こんな表現は気恥ずかしいけれど天使みたいな子なんですよ。演技にもそれが良く出ていると思います。真央のスケートは、見てくださっている人の顔をやさしくします。失敗したって、微笑んでもらえます。私は真央の持つ『らしさ』を大事にしてやりたい。もちろん、競技ですから勝つことは重要でしょう。でも、私はそれより何より、心が綺麗で、誰からも愛される選手になってもらいたいんです。そういう意味では、あの子に教えることは何もありません」(Numberより)「天使みたいな子」。そうかもしれない。今や彼女の一挙手一投足に、世間は騒ぐようになった。悪い意味ではなく、良い意味で。彼女を愛するものが増えた何よりの証拠である。 そして、これが彼女のオリンピック出場への後押しになるかもしれない。 日本にとどまらず、世界中から「真央をオリンピックに」と声があがっている。 「私は心配性なんですが、真央は正反対。何事においても『なんとかなるさ』なんです。」(Numberより)「なんとかなるさ」。実力では申し分ない。グランプリファイナルで好成績を残せば、なんとかなるかもしれない。 山田コーチが「天使」といい、世間から「妖精」と呼ばれている真央が、トリノのスケートリンクに降り立つことは決して不可能ではないと私は思いたい。美しいものはあまりにも儚く、散ってしまうことがある。真央がそうならないとも限らない。 だから、今のうちに世界中の人々を魅了する天使になってほしいと、私は心から願う。もちろん、バンクーバーでも、真央が世界を魅了し続けることを信じて。 まずはグランプリファイナルでの勇姿を、優勝を、心より期待し、祈りたいと思う。 |
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アンゴラ戦が近づくにつれて、日本代表に対する関心も高まり、訪問者の方も増えてくれるのではないかと期待しつつ(笑)、今一度、日本代表について考えてみたいと思う。そして、皆さんに呼びかけたいと思う。辛辣な表現が多々あるとは思うが、現実から目を背けず、是非とも読んでいただきたい。日本代表を愛しているなら。そして、意見していただきたい。賛否両論、どちらでも構わない。自分の意見を持ち、考えることが重要なのである。 |



