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ボクたちは今のバンドを続けるかどうかを話していた。 音楽の方向性の違いとかそんな質の高い問題が根幹にあるわけじゃない。 地元の仲間で組んだバンドで、結成して1年になる。 なんとなくみんな飽きてきていて、 突然チョットしたことでメンドー臭い気分がみんなを支配しただけのことだった。 でも… 遊園地で楽しく遊んだ後、夕食で注文したハンバーグを彼がクチャクチャと咀嚼する音が急に気になって、人が近づくと岩石の陰に一目散に逃げ込むフナムシみたいにとらえる隙もないくらい素早く、好きという気持ちがどこかへいなくなってしまうみたいなもので、高校生くらいのカップルにありがちなそういう不条理な感情に似たものが表に出ただけのことなのだけれど、そういう相手の人間性に問題があるわけじゃないのに気持ちが離れてしまうような種類の感情というのは理屈で消化できるようなものではなく、自分も相手も修復することができない決定的な溝を作ってしまうものなのだ。 いつものように深夜のファーストフード店でメンバー3人ダベっていた。 特別話題らしい話題もなく、それぞれにストローでジュースを啜っていた。 不図、ジェイが 「おい、これから先どうしたいと思ってるんだよ。オレ最近けっこう忙しくなっててさ。 こうやってムダに集まるのもシンドくなってきてるんだよね」 「お前は最近できたオンナとヤッてたいだけだろ」 ジョーカーはいつも的を射た端的なツッコミを入れる。 「俺はプロになりたい。ハッキリ言って俺と同じ想いがない奴とはこれ以上いっしょにやってても意味がないと思ってるんだ」 ボクはトゲを含んだ調子で二人にそう言った。 話の成り行きだったが、遅かれ早かれいつかこういう話になっていたはずだ。
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