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「死んじゃえばいいと思ってた親父が死ぬよ」 めずらしくジョーカーに呼び出された。 いつものバーガーショップだ。 テーブルにはコーヒー&シガレッツ 席に着いてタバコを吸いながら、 テーブルの角をじっと睨んだり、 爪の格好を目的もなくただ眺めたりしながら 10分くらいお互い口を開かなかった。 それは、いつもの事。 そして、沈黙を破るのはいつもボクの役割だった。 でも、この日はジョーカーが沈黙を破った。 ジョーカーは子供の頃から父親と反りが合わなかった。 一つ同じ屋根の下に暮らしていてもおはようの挨拶も交わさない。 なんでそうなったのか。 反りが合わないからそうなったのだ。 「親父よくないのか?」 「ああ」 「昨日病室で初めて親父がありがとうって言ってきたよ」 「そうか」 「死ぬって段になってやっとな」 「それでジョーカー、オマエはまたシカトしたのか?」 「オレもなんか分かんないけどありがとうって言ったよ」 「よかったな」 「遅すぎだけどな」 「でもよかったな」 「ああ」 そのまままた、お互い黙ったままタバコを吸いコーヒーを啜った。 別れ際、バイクにまたがって手を挙げたジョーカーのヘルメット越しの目が いつもより穏やかに見えた。 ボクの気のせいかもしれないけれど。 |
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