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TS392817広大な造成地
TS392818「立ち入り禁止」の工事現場!
TS392819工場団地の建築途中
TS392820遠くに車道が見えてきた
坂を上りきると、そこは広大な造成地が広がっていた。
2〜3箇所でブルドーザなどを使って整地作業が行われていた。
重機のエンジン音やハンマーを叩く音が聞こえる。
前方に立ち入り禁止の工事現場が迫ってくる。
あの心配性のお兄さんが今夜は泊まれといってくれたプレハブの小屋が多数ある。
工事現場の真横まで迫ってきた。
向かい側からは大きなダンプカーがこちらへやってくる。
確かに素人がうろうろすれば危険な雰囲気がする現場である。
人間はみなヘルメットをかぶって作業をしている。
登山帽とリュックで歩いている人間は私一人である。
確かに異様な闖入者である。
作業中の手を休めて私のほうを振り返るおじさんがいる。
ちょっと見ては、無関心な顔をして作業に戻っている。
気にはなったが、しかし気にしない様子である。
リーダーのおじさんは呼び止められても知らん顔をして通り過ぎろとアドバイスしてくれた。
だから、私は目が合ったおじさんたちに会釈することもなく、ただ黙然と歩いていった。
前方遠くに白い自家用車が左右に走り去っていった。
あれがリーダーが言っていた車道であろう。
とうとう別の道へと抜け出たようだ。
立ち入り禁止区域を抜けて、という言い方は変だが、実際にそうである。
抜けて西側の出口へとたどり着いた。
出口では中年のガードマンが通過する作業者の通交証明書をチェックしては出口から出している。
このガードマンの方が手ごわいなあと感じた。
やがてガードマンと私の距離が30mくらいまで近づいてきた。
目が合う。
私はちょっと会釈した。
するとガードマンが血相を変えてこちらへ走ってきた。
万事休すか!?
これで追い返されては苦労が無になるし、戻ったところでどこへ行けばいいか私はわからない。
日は暮れるし、やり直しなどきかないのである。
おじさんガードマンが傍まで駆けてきてこう言った。
「ここまで来るまでに、何も言われなかったんですか?」と心配顔で聞いてきた。
「とても安全管理が厳しい現場なんですが・・・・」
不思議そうな顔をしている。
「いえ、何も言われませんでした。入り口で作業員のおじさんがまっすぐ突き抜けろと教えてくれましたので。」
そういうと、ガードマンは納得したようだ。
雇用主である大手ゼネコンの作業員が通行を許可したことを理解したようだ。
「どうぞ、お気をつけて」と言って、門を開けてくれた。
彼は私を注意しようとして驚いたのではなかった。
素人が無断で工事現場に迷い込んだら、こっぴどく叱られたに違いないと思って、私を気遣ってくれていたのだった。
やれやれ、何とか街道消滅のトラブルから開放されたようだ。
しかし、出てきたこの真新しい車道は、旧奥州街道であるはずがない。
ここから先はどうにかして旧道を探しながら歩いていくしかない。
トラブルへの対処も街道歩きでは必要になってくる。
買ったガイドブックが書かれた年度は古いから、道路も付け替えられたりしている場合があるのである。
そこで泣いて帰っては街道歩きは完遂できない。
知恵を働かせて、前へ進むしかない。
たまには悪知恵も必要になる。
思い返せば、立ち入り禁止区域に入るために若いガードマンに嘘を言ったことから突破口を見つけ出すことができた。
「ちょっとあの自動販売機まで行ってジュースを買ってきていいですか?」
これが私の何気ない悪知恵アイデアだった。
結果的に、立ち入り禁止区域をおよそ1km歩いて突破できた。
一般には危険だからこういう行為はあまりお勧めはできない。
しかし、私の場合はその程度で引き返すことなどできない。
鉄を作る現場で働いたことがあるが、1600℃を越える解けた溶鋼の火花が飛び散る現場で試運転や実験をした経験があるから、土建屋の危険地域の危険度もある程度予想できたようだ。
あの作業員のリーダーのおじさんはそういうことを知らないで、私を行かせてくれた。
心配性の若者と私のやりとりをじーっと聞いていて、私のことを観察していたのだろう。
通しても大丈夫だと判断してくれたことが、私にはとても嬉しいことだった。
リーダーの発言はわずかだったが、ポイントをはずしていなかった。
「それくらいの年になりゃあ、人間誰でも歩きたくなるのさ。」
「街道があるかどうかは知らんが、この先にまた道が続いている。工事現場をこのまま突っ切ればいい。」
「工事現場で何か言われても、知らん顔して歩いていけばいい。」
この3つだけであるが、まさにその通りにやって私は通り抜けることができたのである。
あのリーダーなら、危険な現場でも作業員たちを安全に指導し、災害を防止できるだろう。
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