NPO法人レッドリボンさっぽろ

NPO法人レッドリボンさっぽろの活動記録です。

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7月15日(日)午後2時30分から2時間、北海道立道民活動センター(「かでる2.7  310会議室」)において、「第2回 Futures Japan 調査結果報告会(札幌)」が行われました。講師は、井上洋士氏(HIV Futures Japanプロジェクト/放送大学)と、高久陽介氏(JaNP+)で、参加者は18名でした。
なお、参加費は無料で、今回の報告会運営については私たちレッドリボンさっぽろが協力しています。

今回の報告会は、特に2013年7月〜2014年2月に実施された「第1回調査結果」と、2016年12月〜2017年7月に実施された「第2回調査結果」を比較し、この3年間にHIV陽性者の生活の何が変わったのか?(あるいは、変わらなかったのか?)に焦点をあてることが目的となっています。
それでは、当日の内容をいくつかの項目にまとめて以下にご紹介します。

1)まず「Futures Japan」とは?
井上、高久両氏によると、元々は、オーストラリアで行われている「HIV Futuresというサーベイ(調査)」を参考に立ち上げた組織とのことで、現在は、「総合サイト運営」と「アンケート調査」が2本の柱になっている、とのことです。

2)アンケート調査について
第1回調査は、2013年7月20日〜2014年2月25日の期間で実施され、回答者数は913名(そのうち、北海道からは41名)でした。
今回の第2回調査は、2016年12月25日〜2017年7月25日の期間で実施され、回答者数は1038名(そのうち、北海道からは43名)と、第1回調査時よりも増えていました。
また、有効回答率は91.4%で、うち男性が97.3%を占めていました。
なお、今回の第2回調査参加者の特徴として、以下の内容をあげています。
① 「初めてこの調査に参加する人の割合」が48.5%であった。
② 第1回と比較して、若干、参加者の年齢が高くなっている(北海道:40代40%、50代21%)。
③ CD4数(自分の免疫状態を示す指標)651以上の人の割合が30.2%であり、ウイルス量が検出限界未満の人が70.7%であった(ウイルス量が500コピー未満の人を併せると84%)。
④ 参加者の内訳は、ゲイ(86%)、バイセクシュアル(9.2%)で、ヘテロセクシュアルが減少し、ゲイが増加していた。また、2014年〜2017年にHIV陽性を知った人が約3割であった。
⑤ 健康状態については、「良い/まあ良い」(第1回調査時47.8%→第2回調査時50.5%)が増加し、「あまり良くない/良くない」(第1回調査時19.9%→第2回調査時16.0%)は、逆に減少しています。
⑥ 受診率は第1回調査時とほぼ変わらなかったが、「3か月に1回の受診」がほぼ倍増していた。(第1回調査30.4%→第2回調査54.6%)

このように、上に示した③、⑤、⑥からも、「最近の抗HIV薬の進歩」を実感できますが、逆に「治療薬が良くなったために起こっている現実や課題」もあるようです。
次の項目で触れたいと思います。

3)治療、抗HIV薬、STDなどについて
まず、「治療」、「抗HIV薬」についてですが、「1日1回服薬が増加(第1回調査時59.7%→第2回調査時82.2%)」していることがあげられます。また、「薬剤選択の基準」も、①回数、②錠数、③食事と無関係であること、となっており、実際に現在は、「1日1回1錠」の薬剤処方(STR:Single Tablet Regimen)の割合が高くなってきています。
しかし、ここで高久氏から「陽性者ミーティング時の感想」として1つの課題の提起がありました。
それは、陽性者ミーティング時の話題として「治療の話題」自体が減少している!!という事実でした。その背景としては、前にも記載しましたが、「最近の抗HIV薬の進歩」というものがあげられるとのことです。すなわち、「薬剤が良くなり、効果が良く、しかも安全性が高いことが当たり前になってきている。その結果、昔に比較すると副作用トラブルが減少し、医療機関に相談することもなくなる。それらのことが結果的に医療機関との「つながりの減少」に結び付いている(あるいは、結び付いていく)のではないかと感じる。このことには何らかの対策が必要と考える」とのことでした。
HIV感染症の治療には、医療関係者との間の情報の共有やコミュニケーションの維持が最も重要なことだと思います。個人的にも「つながりを保つ」ための何らかの対策が必要であると感じました。

さらに、ここでは以下の内容についても示されました。
① 「おおよそ、5年に1回薬剤の変更をしている」ことや、「院外処方が約6割(60.2%)」であり、「院内処方は約4割(38%)」であること。
② 将来希望する薬剤としては、①完治できる薬、②服薬回数の少ない薬(週1回、月1回、年1回など)などであるが、「今のままでいい」という回答も多かったこと。
③ 災害時のための予備薬については、約半数が持っていて、その人たちの3割は「1か月分を持っていた」こと。
④ お薬手帳については、「持っている人」は64%。そのうちの約4割が抗HIV薬とそのほかの薬剤を別にしている、あるいは抗HIV薬のシールを貼らないようにしているとのこと。
⑤ TasP(Treatment as Prevention:予防としての治療。治療することは予防につながる)、U=U(Undetectable=Untransmittable:ウイルス量が検出限界未満であれば、他者への感染がほぼゼロである)について知っている人は85.4%(北海道88.4%)であったこと。
⑥ 性感染症(STD:Sexal Transmitted Diseases)の罹患率は高く[梅毒19.3%、HBV(B型肝炎)11.2%、HCV(C型肝炎)1.4%]、STDへの知識を持つことが必要であること。


4)他疾患の検査の実施率、がん検診率について
「HIV以外の健康問題に目が向けられていない」状況で、今後の課題であるとの話がありました。その背景には、「HIV感染症を治療されているということで、他の病気も見てくれている」との思い込みがあるのではないか?とのことでした。
実際の状況については、以下のように示されました。
① HCV(C型肝炎)検査については、「 3分の1の人しか実施していない状況」となっており、「 15名が感染」していて、現在、「 治療を受けていないし予定もない6名」となっている。
② がん検診を受けていない率も高くなっている。
この課題の解決のためには、個人的には、その前に挙げた最初の根本的な課題でもある、「医療関係者とのつながりを保つ」ための対策を、医療関係者、陽性者の双方で考えなければならないと感じました。

5)陽性者への偏見、メンタルヘルスについて
周囲からの「偏見」を感じている人の割合は、全体的に増加しており、「HIV陽性であることを他の人に話すときにはとても用心する人」は9割以上にのぼっています。
その中でも、医療者側の「偏見」については、おおむね10%で、2002年から変化はなく、歯科医も7%くらいで変化はありません。(以下、*参照)
*「かかりつけ歯科医のいない人」は54%。受診拒否された経験のある人は約7%。
また、「かかりつけ医のいない人」は約60%。受診拒否された経験のある人は約10%。
いずれも、HIV陽性を知った時期別に違いは無し。
また、不安・うつのスクリーニングの結果、約4〜5割の人はメンタルヘルスが悪いことが解りました。中でも北海道は、不安69.8%、うつ65.1%と、全国と比較すると若干、高い割合となっています。

6)第3回調査への期待(テーマ)
今後の第3回調査のテーマとしては、「老後への備え」(仕事、貯蓄、陽性者でも加入できる保険について、など)、「服薬の長期的な影響について」、などの意見が寄せられており、井上氏からは「ウェブ調査自体が陽性者の振り返りの機会になるなど、支援ツールという特性をともなってきている」というコメントがありました。
最後に、井上氏から本調査の内容は、7月22日からアムステルダムで開催されている第22回IAS(International AIDS Conference)にて発表予定との話がありました。
参考:IAS学会本発表アブストラクトリンク

今回の報告会に参加して、「HIV治療の進歩による恩恵の大きさ」を実感すると同時に、「医療関係者とのつながりの維持」という新たな課題を知ることができたことは、非常に大きな収穫であったと感じました。(秋谷)

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