半可通でも気にしない

書物は骨のある隣人の主張です。他人の頭を借りて一緒に考えても判断は自分で。時には、もう黙ってはいられない本音を耳うちします。

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「水」戦争の世紀
Maude Barlow & Tony Clarke著 鈴木主税訳 集英社新書 #0218A 
初版 2003年11月

● なぜ、本書を取り上げたか? 
この本に出会ったのは1年ほど前。その時は悲観的な警鐘を鳴らす研究者や杞憂を唱えるのが啓蒙とする市民運動家の著作? との偏見から読み飛ばしていた。 “新炭素サイクル”とい流行語が目につくので、それなら元祖は“水サイクル”だと読みなおした。今日、投機から原油高騰、食料危機が現実となっているが、水は直接的に命に関わる(Vital)だけに無視できない。本書が指摘するような世銀や国連を巻き込む水戦争の姿に唖然となり、やがて慄然となる。

地下の“化石水”に依存する欧米諸国では、資源・エネルギーと同様に、熾烈な水の争奪戦が不可避なのか。その背後には慈悲のかけらもない欧米流の資本主義、自由主義経済の冷徹なメカニズムが働いている。

● 善良無垢な羊である市民は、何も知らずに明日の命の糧を奪われているだけで良いのか。日本は山紫水明、新鮮な表層水に恵まれているのは幸せだが、これまで脳天気でいられた唯一の国ではないか。

このブログにどうしても登場させたくなった理由はおわかりでしょう。
水の大切さは認識していても、次の素朴な質問に答えられるかと問われています。
Q1:水は本来誰のもので、誰が所有するべきなのか?
Q2:企業に水を買う権利を与えたのは誰? Q3:水の買占から誰が水を守るのか? 
Q4:水の管理に関する政府の役割は? 
Q5:極地、山岳、地下の帯水層等にある大自然の水を誰が管理するのか?

著者はいずれもカナダの市民運動家で、NGO「グローバリゼーション国際フォーラム」のメンバー。水は地球上の生物の共有財産であり、営利目的とした国際企業にゆだねるべきではないという考えを基本に、世界水フォーラムの民間企業主導に対抗して立ち上げた市民運動 Alternative Forum (水を守る国際フォーラム)の立場から記述。訳者は東京生まれの翻訳家。

【図表】”住罅´∨椶離ャッチコピー ミネラル水のために水位の下がったミシガン湖 ご馨紊ったテラピア(カルフォルニア州) ィ廓間も水の流れない川(モンゴル) 〜イ錬裡廝娃呼本版から

【概 要】
構成:合計3部10章 252頁 第1部:淡水資源の危機 第2部:政治の策略
第3部:進むべき道
第1部では、水不足の現状と見通しを、アメリカ、メキシコ、中近東、中国を例に解説し、エネルギー資源以上に、深刻な問題であることを指摘している。第2部では、政府の対応が異なるのを幸いに、その間を縫って多国籍企業が暗躍。膨大な利益を狙って水資源の利権を求め、商品化している実例を記述。第3部で著者らの活動趣旨と現状を示し、明日へ方策を模索している。

【内容を巡って】
その1 水はだれのものか? 飲み水は営利を目的とする私企業が同様に商品として売ってよいのか?
今世界を動かしている経済原理は“ワシントンコンセンサス”という経済モデルだという。共産主義、自由主義の対立が崩れた今、ロシアや中国も含めて、共通の認識は「自由主義市場しか選択肢がない。あらゆるものが商品化可能である」というコンセンサスだという。
●(戦前戦後派を問わず、昭和生まれの我々には素直に受け入れ難い) 

水は種子、天然資源や社会事業などと同様、人類の共有資産であり、子孫への世界遺産(コモンズ)である。しかしワシントンコンセンサスでは、その全てが販売の対象=商品にできることになる。第2回世界水フォーラム2000(ハーグ)に“水”を商品として定義してしまった。国連や世界銀行の公式発言でさえ「水は人類の必需品であっても、権利ではない」とする始末。各国の閣僚級会議は異議も唱えず、結果的に多国籍民間水企業を支援した。

しかるに、これらの企業は水資源の枯渇を唱って水道料を値上げ、供給停止すら辞さない狼であることがやがて露見する。それでも世銀の誘導で、自国の上水道の事業権を多国籍企業に譲渡する政府が続出した。その結果水はパイプラインやスーパ―タンカーで水は自国無視の大規模輸出プログラムが進む。

その2 水資源って何だ? 
1.地球上の全水量は淡水と海水合計で、14億km3という。一稜がほぼ日本列島の長さ(1120km)の立法体マスに相当する。
2.重要な淡水の量はそのわずか2.66%の約3千7百万km3。
3.循環水(天水)はさらに少なく、0.77%で約1,100km3。これが表層水として地上15km〜地下5kmの間を短期間に循環している。氷河や凍土、地下の化石水は超長期の循環水。
4.用途は農業(灌漑)用水65〜70%、工業用水20〜25%、家庭用水は〜10%。

その3 世界の水資源枯渇を懸念する根拠。水の総量が足りない? 安全な水が飲めない人は10億人以上、30億人が衛生設備を利用できない。さらに帯水層からの過剰揚水、産業化された農業、急激な都市化、森林破壊、道路舗装、インフラ整備などで地下に吸収されず直接海へ流れる淡水が急増した。河川湖沼は干上がり(〜ァ法海洋水の浸透、塩水化が起こり、農業が衰退。なお先端工業も問題。米国では車両1台製造に40万ℓの水が必要。コンピュター産業は1兆5千万ℓ/年も消費する。

その4 15億人が貯まった地下水や何千年も前の化石水を飲んでいる。新鮮な水とは? 飲料水の多くは地表の淡水でなく表層地下水や深層地下水依存である。アジア(中国、インドを含む)では50〜100%が地下水という。西デンマーク、オランダは100%。アメリカの50% 仏、加、英の30%以上が帯水層からの水。日本は100%表層水で新鮮な水が飲める恵まれた国。

その5 世界の危機的渇水状況
カナダ: タールサンド、オイルシェール開発に膨大量の淡水を消費。アルバータ州で毎年2040億ℓの淡水を注入した。10年間のメタンガスの生産で水位が10mも低下した。
◆(董Дガララ帯水層はテキサスの一部からサウスダコタまで伸びる北米最大の単一帯水層。日本より広い50万k孱悖ft(深さ)に相当する4兆トンの水があったが、すでに50%以上の水が減ったとされる。農地の放棄も起こっている。カルフォルニアの帯水層も枯渇寸前、コロラド川からの取水は限界に達した。過去50年で水位が50mも下がった谷がある。2020年まで新水源を見つけなければカルフォルニアの農業は絶滅の危機。
 メキシコシチィーは60年間に2200万人へと人口10倍増。帯水層依存は70%。40%も漏水し、あと10年もたない?
ぁ|羔疆譴凌經躓,録執錙サウジは75%を帯水層依存。<50年?。 穀物1トン生産に3000トンの水を使う。イスラエルのガラリア湖は海水と肥料が混入、死海の水位は30年間で25mも下がった。リビアはエジプト〜スーダンにまたがるヌビア帯水層からパイピングし400億m3/年の水を輸送。工事は韓国企業。
ァ_河の流れは1997年は226日も完全断流。北京の地下水位は過去40年で37mも下がり、首都の移転も考慮中。盧溝橋に水があるのはオリンピックの時期のみ。400の都市で水不足。近隣の農業用水が危ない。中国の農業が破綻すれば世界的恐慌になる? 世界の25%の人口だが、水は6%。

その6 水で膨大な利益を漁る多国籍水企業。つぎの恐るべき戦略は?
フォーチュン2000年グロ―バル水事業特集号で「21世紀の水は20世紀の石油と同等の価値がある。国の富を左右する貴重な商品」と明言した。水道事業の収益は石油事業の40%に達し、製薬部門の30%を上回った。世銀の予測で水貿易額は1兆ドルという。

代表的な水事業の民営化モデルは二つ。\府が上下水道の処理システム全て企業に売却する。例はイギリス。官民パートナーシップ(PPP)と称し、政府が水事業権を企業に売却またはリースする。例はフランス。企業はシステムの整備・運営経費を負担する代りに水道料金を徴収する。水道事業を官から民へ移行すると商業上の必要性を産む。利潤を求める原理から、経費の全額回収+利鞘をとる。 企業経営者、株主は利益を求め他事業への投資もする。水への公平なアクセス、持続可能性は主目的ではなく、次世代のため資源保存は考慮外。
●K内閣の郵政事業の官→民移行を思い出すが、海外の策謀を知っていたのか、乗せられたのか?

フランスでは民営化により水道料金が150%急騰した。イギリスでは、民営化後6年間で水道料金が106%、利益も692%増加、しかし、供給停止件数が1.5倍とアップした。払えるものしか供給しない冷酷な英国。

その7 水事業(コングロマリット)の戦略 トップ2社で世界の国際水市場の70%を把握
スエズ: 本社フランス(旧スエズ・リオネーズ)。社名は19世紀最大のプロジェクト、レセップスの開発したスエズ運河から。創立以来、「征服への哲学」を社是とする。 130カ国で事業展開。年間収益346億ユーロ(2001)、水道(26.4%)、エネルギー(57.4%)、通信、廃棄物管理(14.5%)。
ビベンディ− 本社フランス。 90カ国に展開。2000年にシーグラムを買収。世界最大のマルチ・ユーテリティープロバイダー。水道、メディア、通信、輸送など.水道事業権利を広範に買収: 天津(中国)、ベイルート(レバノン)、セゲド(ハンガリー)、プラハ(チェコ)、ベルリン(ドイツ)、ナイロビ(ケニア)などに展開。ドイツでは憲法違反で訴えられるなど、トラブルも多い。
エンロン (アメリカ): 「世界中の水道が民営化するまで休まない」として、子会社アズリックを通して参入したが、ブエノスアイレス市での水質問題などトラブル多発し、最終的に撤退した。本来はエネルギー会社。ブッシュ父子に10万ドル単位で献金、他の候補者にも総額240万ドルも。 
RWE−テムズウオーター :ドイツ系。米のテムズを買収、米、英、独、豪、加などに展開。上海に水処理施設で進出後、2001年水道システムを浦東と共同事業で開始。

その8 パイプライン&スーパータンカー輸送
アルプスの湧水をウイ‐ンにパイプラインで輸送。さらに国外へ拡大した欧州ネットワーク計画が浮上。トルコはパイプラインとタンカーで、キプロス、リビア、イスラエルから、エジプト、ギリシャまで考えている。イスラエルと490億ℓ購入契約済み。イギリスでも、エジンバラからパイププラインと船でイングランドへ。カナダでもグローバルH2O社が690億リットルの氷河水を30年間輸出する契約を発表。

その9 大運河計画
ローヌ河の水をバルセロナまで運河で257km輸送する計画。北米水力電力同盟は、アラスカとブリティッシュコロンビアの水をアメリカ35州に送る壮大な運河計画がある。ロッキーマウンテン峡谷にアラスカからワシントン州までが入るという長径800kmの貯水池をつくる計画。中国の三峡ダム計画は長江の水を北京へ。全長420kmのトンネル網はすでに完成。さらに1230kmの新運河で北京まで送る計画。

その10 ボトル水の話
1970にはわずか10億ℓだったが30年で840億ℓになった。ペリエやエビアンのボトルを飲むとヨーロッパの香りがする。いつのまにか日本でも定着した。ネスレはペリエ、ヴィッテル、サンペレグリノほか68種。「地下水をワイン、牛乳や石油より高く売る作戦」。安全な水が飲めない国ではボトル詰の水を売る。

水資源に関連する類書の書名だけ記す。
1 水戦争−水資源争奪の最終戦争がはじまった 柴田明夫 角川SSC新書
2 ウォータービジネス 中村靖彦 岩波新書
3 ウオーター世界水戦争 ベリエール

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