半可通でも気にしない

書物は骨のある隣人の主張です。他人の頭を借りて一緒に考えても判断は自分で。時には、もう黙ってはいられない本音を耳うちします。

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書評「チーズ図鑑」 文芸春秋編 本間るみ子、増井和子、山田友子著 写真:丸山洋平 pp230 文春新書182 初版平成13年7月

[1] はじめに
前報で「チーズの来た道」の書評を載せた際に、本棚の片隅からこの「チーズ図鑑」,鮟个靴董⊆命燭鯤笋辰拭ほんの思い付きではあったが、必要に迫られて再び開いてみれば、新書版にしてはなかなか良くできている本であることがわかった。うん10年も前にリヨンで思いもよらぬ美味しいチーズの数々をワインとともに味わった時以来、そのカルチャーショックは癒えなかった。当時日本はチーズ文化など程遠い国で、チーズといえばプロセスチーズだけ、輸入品といっても明治屋で手に入るものはアメリカタイプのものばかりだった。

最近ではヨーロッパ産(ナチュラル)チーズがデパートでも手軽に買えるようになった。それでも20〜30種位がやっと。それがどういう素性のものかもわからないまま、自分の好みでブルーチーズやカマンベールを買っている。何を選ぶかの最低の知識もないのはチーズに申し訳ないほど処置なしである。セールストークも月並みではほとんど役立たず、多少いらだっていた。

平成13年初版の本書を再度開いてみた。すると当時わが国で購入可能な欧米諸国のチーズ321種を写真つきで取り上げ、初心者でも興味を持てるような話題を挿入した好企画本であることがわかった。その後10年近く経っている今、最新情報を掲載した本もあるはずだが、今日には間に合わない。東京でも専門店は少なく、乳食文化の普及に未だしの感がある。それだけに、本書を見直すだけでも、当面半可通を気取れるかもしれない。

構成は、概ね生産国をグループ化し、フランス/スイス、ギリシャ/イタリア、ポルトガル/スペイン、ベルギー/デンマーク/フィンランド/ドイツ/オランダ/ノルウェー/スウェーデンに分けて、アルファベット順に解説してある。興味あるコラムを入れれば、読み物としても楽しめた。数から言えば圧倒的にフランス産が多いのは当然で、アルプスやピレネーの山麓には牛、羊、山羊などの放牧地が展開しており、同時にワインのブドウ畑も周辺に多いことがわかった。まさに2大発酵食品は農牧文化の象徴のようだ。

★ イラスト(図表など)は番号 銑韻納┐靴拭
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[2] 内容から
● 世界のチーズの種類(前報でも表示した) 
同じ醗酵食品の漬物と同様に多様であるが、産地別以外の主な分類法には、
a 原料乳の種類(牛乳、羊乳、山羊乳、水牛乳;生乳、殺菌乳、脱脂乳、乳清など)、
b 凝乳法の違い(酵素による、酸による、加熱による、その他)
c 熟成法の違い(細菌による、カビによる、など) 
d 製造したチーズの硬さ(ハードタイプ、セミハードタイプ、ソフトタイプ)
e その他(熟成度、加工度など)がある。

例) 表1 加熱・熟成、表面処理、表皮/中身によるチーズの違い 
  モッツアレッラ カマンベール、ブルーチーズ、ゴーダの違いがわかる 

● 優れたチーズの栄養価   表2 
チーズがもともと哺乳類の子供が生まれた当初に摂取する貴重な乳を原料としているだけに、ほぼ完全食品である。その上、醗酵によって有用なアミノ酸が増し、水分を排除し濃縮されたことによって、質量当りの栄養価は当然高まっている。

理屈からすれば、10ℓのミルクからできるチーズは概ね1kgに過ぎない。逆にlℓのミルクを飲む代わりにチーズ100gを食べれば、それ以上の栄養価があることになる。卵との比較でもその栄養価の高いことがわかる。携帯にも便利、そのまま手を加えずに食べられ、消化も良いとなれば明らかに優れた食品である。問題は輸入のナチュラルチーズの値段が高すぎることだ。

● 低脂肪チーズ (Fromage Allege)  ぁ\睫寸
普通のチーズの脂肪分(MG)が40〜50%であるのに対して、低脂肪タイプは20〜30%と低減(Allege)したものをいう。さらに20%以下はメーグレ(Maigre)である。因みに通常の、2倍、3倍の高脂肪分のものもある。プロセスチーズにも細かい脂肪分の規定があるらしい。

● 加工したチーズ(Fromage Fort:強いチーズ) ァ\睫寸
同じ加工でも、プロセスチーズとは違って、元来は家庭で残ったチーズか硬くなったものに液状の乳清、ミルクやワインなどを加えて数ヶ月醗酵させたもの。従来は自家用で販売対象ではなかったという。これも商品化される以前の乳文化の本当の側面であろう。

● フレッシュチーズ(Fromage Froais) Α”州
農業国フランスはチーズ文化の中心だけあってかなりしっかりした規定がある。フレッシュチーズは乳酸醗酵したもので、販売時点で乳酸菌が「生きていること、熟成をしないもの。さらに乾燥成分量や賞味期限も決められている。

● チーズの王様を生んだロックフォール村の風景 А
青かびのチーズといえばロックフォールだ。このチーズは絶妙な自然環境下にある洞窟の青カビと人間の醗酵技術との協同作業の結果生まれた。パリから南へ650km離れたところに標高630mのコンバール山がある。その麓のロックフォール村は人口はわずか900人の小村で、ブドウも麦も育たない荒涼たる風景画続く。動くものは羊の群れ。まるで草刈機のように草を黙々と食む。(現在の人口は?)

● 自動搾乳機につながれた羊達 ─
この村でも輸出用のチーズを生産するとなれば、機械化も当然必要となる。羊達は小屋へ連れられて来れば、ここで濃厚な餌も与えられる。そして円形の自動搾乳機につながれ、約2分半で1回転している間に餌を食べるつつ搾乳されるという。まことにドライな風景。人間様の都合とはいえ、モーツアルトを聞かせる乳牛とどちらが幸せ?などというのは人間様の愚問だろう。

● 青カビの採取 この村の洞窟の中にだけ自然に住んでいる青カビ(Penicillium roqueforti)が醗酵させて作られるチーズは、固有の香りと風味がありチーズの王様となる。カビの採取には、パンを使い、洞窟内の風の道においておくと1〜2ヶ月でのパンはカビだらけになる。この青カビ”ペニシリョム ロックフォルティ”は、抗生物質のペニシリンを生むカビとは別者という。

● ロックフォールチーズの熟成  
熟成10日、同1ヶ月; 熟成3ヶ月、6ヶ月 
通常製造8日目の白チーズを洞窟内の熟成庫に持ち込み、1.5mm径の細い針で多数の孔を開けてチーズに生じた炭酸ガスを排出し、同時に酸素を送り込む。4週間後に今度は熟成を抑制するために錫箔で包み込む。全て手作業で熟練工でも1日750個程度がやっとだとか。

最低3ヶ月の熟成が規定されているが、10日では未だ白チーズである。やがて青かびが生じ、4〜9ヶ月の間に、淡い緑から、緑、ブルー、灰色とカビの色が変わる。青灰色の孔が無数に出来、身は濡れて、崩れ、独特の風味と香りがする。(本当の食べ頃はいつごろ?)

● ロックフォールの洞窟の秘密  
石灰岩山の形が、馬の鞍(コンバロ)に似ているので名づけられた山は、北面が切り立った崖になっており、しかも過去3回にわたって崩落した。この石灰岩の堆積物が偶然にいくつかの洞窟をつくり、その亀裂(フルリーヌ)の隙間が絶妙な自然の空気の流通孔になっているという。

その結果、例えば、冬には、外気温が下がるとカーヴ内の暖かい空気がフルリーヌを通って外に出手、冷やされる。一方、夏には、暖められた空気は北面の壁に当たって冷やされ、重くなって下降し湿気を吸ってさらに冷える。その結果、年間の温度と湿度が自然に一定に保たれるという仕組み。ここにはこの多湿で年間温度の変動が少ない洞窟には、ここにしか生存しない特殊な青カビが生息しているという。熟成庫はこの構造を生かして取り込んである。

● 青かびチーズの競争激化 
世界の三大青かびチーズには、この他、イタリアのゴルゴンゾーラとイギリスのスチルトンが入るのだそうだが、王様はやはりロックフォールといわれている。しかしその名声は高まれば高まるほど、類似の洞窟型青かびチーズが氾濫してきた。そこで、村では自衛のために1979年にAOCを取得し、厳しい規制をしてロックフォールのブランドを守っている。

話題になるチーズを探した
● その1 英国最古のチーズ ホワイトチシャー   
海からの風で育った草が、微妙に影響した牛乳でつくる白チーズ。エールタイプのビールに合うという。

● その2 シャンパーニュ地方の名物 “灰まぶし”
低脂肪の牛の脱脂乳で作ったセミハードタイプのフロマージュ・サンドレ。自然の表皮には蝿がたかるのを防ぐため灰にまぶしてある。(駄洒落ではありません、ハイ!)。ブドウの収穫期に濡れたブラシで灰を掻き落し、シャンパンをいただけば最高という。

● その3 赤ちゃんでも食べられる甘く、酸っぱいお菓子のようチーズ
その名はPetitt-Suisseとかわいい名前。殺菌乳にクリームを加え醗酵させるやわらかい白チーズ。フランス全土で作られるほどポピュラーか。元祖はノルマンジー在住のスイス人の1850年の作。

● その4 チーズ本場の“リヨンの平手打ち”
リヨネ地方の昔からのフレッシュチーズ。良く脱水した白チーズに香草,にんにく、パセリなど薬味を加え食べる。レストラン「レオン・ド・リヨン」のものは、ジブレット、生クリーム、オリーブ油、ワインビネガーで調味してあり、焼けたパンに合う。平手打ち(Claqueret)とは、チーズを打ちつけるように良く混ぜることからきた。別名はもっと恐ろしく“リヨンの絹織物工の脳ミソ"ともいう。

● その5 チーズというよりクリーム菓子“フォンテーヌブロー”
これもフレッシュチーズの美味しい一品。殺菌した牛乳のフレッシュチーズに生クリームをあわ立てて混ぜる。ガーゼで飾った容器に入って、フォンテンブローの森をイメージしたとか。砂糖煮の果物と一緒で好適。
など

このほかにも、特色あるチーズがスイス、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、オランダ、デンマークと限りなくあるが、今回は省略する。


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