ある老人のレミニッセンス 外国事情・美味礼賛

長い人生いろいろありました。 一老人の回顧と折にふれての感想です。

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ムベなるかな

結婚して以来今の所に住むまでに、大雑把に分けて四箇所に住みました。 結婚当初の二年ほどは、生まれ育った東京の本郷駒込林町、その後東京の西の方、国分寺市に二十二年ほど住み、それから鎌倉に十六年、そして今の横浜市の郊外に居を構えてからもう十年になりました。

本郷にいた頃は親の所に居候ですから植木いじりなんてことには全く関心がありませんでしたが、国分寺に家を建てた時は、さすがに初めての自分の家ですから植木屋さんに依頼して多少は植木らしいものを植えましたが、そのなかに金属のアーチに絡ませたムベの木がありました。 なにせ五十年ちかく前の話ですから、もう記憶は完全にボンヤリしていますが、たった一度だけ実がなった記憶がありました。

鎌倉に住んだときには植木いじりをするような庭もありませんし、当人も人生忙しい盛りで、日本にいるより外国にいるほうが多いような按配で、植木とは全く無縁でした。

十年前に、今のところに移りましたが、そろそろ時間の余裕も出来ましたし、住宅地でご近所もそれぞれ植木・生垣など手入れが行届いているような環境、土地柄ですから、私のところだけどうも無愛想なまま放っておくわけにもいきません。 土地の植木屋さんを探してきてそこそこ植木の類を植えてもらいました。

その時植木屋さんが玄関から庭の方に逸れる所に木製のアーチをしつらえ、そこに何を植えたいか聞いてきました。 フッと国分寺の家のムベを思い出して、ムベを植えられるか聞いてみたところ、ムベの苗木を二本探してきて、そのアーチの左右の根もとに植えてくれました。

国分寺のときのムベで覚えているのは茶色っぽいようなアケビのような実が一つ生ったのを覚えているだけで、どんな形の葉っぱだったか、実が生ったんですから花も咲いたんでしょうが、どんな花が咲いたのかまるっきり覚えていませんでした。

イメージ 1爾来今年で十年になりますが、このムベの木の生長はかなり勢いがありますね。 最初の一二年は花も実もさっぱりでしたが、無闇やたらに蔓を出して隣の植木に絡みつきます。 年がら年中蔓を切っていたような気がしますが、その内に今度は毎年滅多やたらに白い花が沢山咲くようになりました。

そして今年初めて実が生りました。 ここに掲載した写真がそれですが、何度も数え直して確認しましたが、全部で25個あります。 二本の木で、25個が多いのか、少ないのか知りませんが、とにかくそれらしきものが生ったのは今年が始めて、十年掛かって生った実です。

イメージ 2
 

イメージ 3そんなこんなで、このところ家の出入りの度にムベの実を観察していますが、一つちょっと気になるというか、なんでだろう,と思うことがあります。 このムベの蔓を切ったり、花が咲いているのを見ると、毎度のことですが百人一首のあの歌、「吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐と言ふらむ」を思い出すんです。

イメージ 4 思い出すというより、ちょっと頭の隅をよぎるとでも言った方がいいんでしょうが、全く脈絡もなく、どうしてそんな現象が起きるのかさっぱり分かりませんが、とにかく「ムベ」と口に出して言うわけでもないのに、ムベの木をいじったり、花を見たりすると、この歌が顔を出します。

イメージ 5私の若い頃、高校生から大学生の頃は、まだ若い連中の娯楽も限られていましたし、若い男女が同席して遊ぶなんて機会も今に比べれば遥かに少ない時代です。 その頃百人一首は青年男女が一緒に遊べる滅多にない機会ですから、正月にはそこら中でこの百人一首のカルタをやりました、隣近所でよんだりよばれたり、町内会の会所で大会なんかもありました。

イメージ 6そんなことで、今でも百人一首は多分殆ど全部覚えていると思います。 その頃は唯覚えて、早く札を取ることに専心する一種のスポーツみたいなもので、歌の意味なんか二の次三の次でした。 今考えればもう少しお勉強をしておけば又別の意味の楽しみもあったろうと思います。 そんな訳で、我が家のムベとこの百人一首の和歌と私の中ではどうもなにかご縁があるらしく、なんとなく気になっていました。 まさかこの歌が、実のなるムベと関係なんかある訳がないと思いながら、念のためにこの和歌とムベの事を暇つぶしも兼ねて少々調べてみました。 

いやいやいろいろあるもんです。 先ずこの「むべ山風を嵐というらむ」の「むべ」ですが、これは「むべなるかな」つまり肯定する気持ちを表す、「なるほど」、「いかにも」の意味でムベの木とはとりあえず無関係。 唯この歌の事を調べていて、ひとつお勉強をしました。

歌そのものは「それが吹けばたちまち秋の草木が萎れるので、なるほど山風を嵐と言うのか」という風に解釈されていますが、この山風は山と風の二字で出来ている単語、その山の字を上に置き、下に風を置いた字が嵐、つまり山風即ち嵐。

「むべ山風を嵐というらむ・なるほど山風を嵐と言うのか」には草木がしおれる嵐という意味と、山の字+風の字で嵐になるという裏の意味と二つあるんだそうです。 何処まで本当だか知りませんが、こんなこと今まで全く知りませんでした。 皆さんの中には、そんなこと先刻ご承知の方居られるかも知れませんが、私の方は何せあんまり歌の意味なんか考えた事もなかったもんですから始めてこの話を聞きました。

さてこの「むべなるかな・成る程な」の「むべ」とムベの木が関係あるなんて全く考えませんでしたが、ムベの木の事を調べて見ましたらこのムベという名前の由来は、「むべなるかな」という言葉だというんです。

すこし長いんですがその記事を引用します。

日本経済新聞(2003/12/03)文化面より
「むべなるかな(いかにももっともなことであるなあ)」
晩秋、ほのかに甘い赤紫の実のなるアケビ科の低木「ムベ」。この植物の語源が、天智天皇が発せられた一言だったということをご存じだろうか。 琵琶湖のほとりに位置する滋賀県近江八幡市の北津田町には古い伝説が残っている。蒲生野に狩りに出かけた天智天皇がこの地で、8人の男子を持つ健康な老夫婦に出会った。
「汝ら如何(いか)に斯(か)く長寿ぞ」と尋ねたところ、夫婦はこの地で取れる珍しい果物が無病長寿の霊果であり、毎年秋にこれを食するためと答えた。賞味した天皇は「むべなるかな」と得心して、「斯くの如き霊果は例年貢進せよ」と命じた。 10世紀の法典集に記録。 その時からこの果実をムベと呼ぶようになった。

つまり、ムベの木の名前は、「むべなるかな」の「むべ」、したがって意味的には、「むべ山風」の「むべ」と全く同じ。 ここに来て、とうとう私の中のムベの木と「むべ山風」の和歌がつながりました。

お陰で永年もやもやしていたことが、かなり強引なこじつけですが、多少はお互いにご縁がないでもないことが分かったという次第です。

ところで、アケビは一度食べたことがありますが、ムベの実なるものを食べたことがありません。 

私が時々行く医院に、「美味しんぼ」という漫画が置いてあります。 テレビでアニメにもなっていますし、かなり有名な漫画だと思いますが、その中でいつぞや「アケビの天ぷら」というのが出てきました。 この「美味しんぼ」というのはそれなりにいろいろ調べて書いてあって、大人が読んでも結構楽しめます。 時々眉唾な話も出てきますが、成る程と思うこともよくあります。 お医者さんに行くたびに何冊か読みました。

アケビの天ぷらがあるなら、ムベの天ぷらもあるじゃなかろうかなんて思っていましたら、今朝のテレビで、「リンゴの天ぷら」というのを見ました。 外にもインドネシヤ料理にバナナの天ぷらがありますね。 これは食べたことがあります。 まあ珍しいというだけのものでした。

ムベがどんな味がするのか、食べ頃はどうか、どんな食べ方があるのか、全く不案内です。 どなたかお知恵を貸していただけると幸いです。

因みに、ムベを漢字で書くと「郁子・ムベ」だそうです。 但し、どうしてこの「郁子さん」が「ムベ」になるのか、どうしてこの漢字をムベと読むようになったのか、ちょっと調べた程度では分かりませんでした。 ご存知の方は教えてください。

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suikaさん

百人一首の『むべ山風』は知っていても、ムベの実のことは知らない方が多いようですね。

昔、と言うより戦前は人口も今のように多くありませんでしたし、都会でも未だ庭の広いお宅が多かったせいでしょうか、実のなる木を植えている家庭が随分ありました。 柿、無花果(イチジク)、梅なんか随分あちこちで見かけたもんです。

今はあんまり見かけなくなりました。 実のなる木は、案外手入れも大変なようです。

ムベは葡萄の様な蔓が伸びる木ですから、それほど場所もとりません。 我が家の狭い庭でもとりあえずOKというわけです。

2007/10/29(月) 午後 8:01 rei*ay*m*zaki19** 返信する

そろそろムベを召し上がった頃かと思い、お邪魔しました。
また、お邪魔します。

ちまき

2007/10/30(火) 午後 1:38 [ zof*x ] 返信する

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ちまきさん:

未だ収穫しておりません。 大分色も濃くなってきていますし、二・三日中には収穫するつもりです。 どうやら、ヒヨドリなどの小鳥も大好きな実だそうですから、鳥に食べられないうちに収穫するつもりです。

食べてみたら、又どんな味だったかご報告します。

2007/10/30(火) 午後 6:30 rei*ay*m*zaki19** 返信する

Yamazakiさんは 百人一種との関わりを知らないのに、
無意識で この二つを結び付けていたと言うことですね。。。
不思議です。
この実の試食は まだなのですね^^

2007/10/30(火) 午後 8:05 雪...ゆき 返信する

ふふふ…わたしもどんな味だったかなぁと思って…(^m^)まだでしたか〜。
初めてのものって、食べごろがわかりませんしね〜。一個だけ勇気を出して…

今日、古本屋で入手した、ケストナーの「いっぱいの珈琲から」を読みました。
とってもよかったです!

2007/10/30(火) 午後 9:32 nya*ony**ougaa* 返信する

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ゆきさん:

歌の意味なんか全く確かめもしないで、唯、ムベの木を見るとなんとなく思い出す、なんともおかしな話だったんです、今回いろいろ調べるまでは。

(↑)にも書きましたが、未だ収穫していません。 なるべく濃い色になるまで待とうと思っていましたが、どうやらヒヨドリその他小鳥の大好物だという事が本日判明しました。 我が家の近所には、このヒヨドリが多いんです。 そんなわけで、近日中に全部収穫して、試食してみます。 結果は又ご報告いたします。

2007/10/30(火) 午後 11:38 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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にゃごさん:

なかなか可愛い格好をした実です。 色も薄紫になってきて、なんだか美味そうな感じがしています。 近日中に、それこそ勇気を出して、もいで試食して見ます。

ブログで拝見するといつも大忙しのにゃごさん、忙中閑あり、読書の秋ですか、たまにはゆっくり本を読むのも良いものです。 ついでに「食欲の秋」の方も楽しんで、美味しいケーキに、上手に入れたコーヒーなんかお供にされてはどうでしょう。 それとも本を読みながら、少々アルコールを嗜むなんてのも結構ですね。

2007/10/30(火) 午後 11:40 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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すずさん:

未だ紫色になりきっていないということは、そちらは我が家より大分北の方なんでしょうか。 もうすぐ綺麗な紫になりますよ、アケビと違って割れないから見ている分にはアケビより上ですね。

女性の方が男より食べ方についての想像力が上ですね、天ぷら、果実酒、干したタネ、ハンバーグのようなものを詰める、そしてお漬物の提案、いろいろそちら方面の話が広がりました。 私のほうはどこかの記事で読んだ、「炒めて食べる」を実行するのが精一杯。 想像力も実行力も欠如しています。

2007/11/8(木) 午前 9:49 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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僕は、山育ちですが、むべの木というのは、知りませんでした。
親に、いろいろな木の名前を、教えてもらいましたが、「むべ」は、
記憶にありません。
四国の方言では、違う名前か、関東以北にしか生えないのでしょうか。

2007/11/11(日) 午前 3:14 [ bosho_no_nushi ] 返信する

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森本さん:

アケビはご存知の方が多いのに、ムベは知らないとおっしゃる方が多いようです。

記事にも書きました、天智天皇がムベを賞味されたという伝説の地は、滋賀県近江八幡市の北津田町ということですから、関西・四国・九州にもあると思います。

グベ、トキワアケビ、イノチナガなどの別名があるそうです。

2007/11/11(日) 午前 8:51 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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そうですか。
ただ、僕が忘れているだけ、かも知れません。

2007/11/11(日) 午前 9:49 [ bosho_no_nushi ] 返信する

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近所の草月流の先生のお宅の垣根にたくさんなっております。なんだろうと思って今朝尋ねましたら、『むべ』とのことでした。むべやまかぜ...の歌が脳裏をよぎりました。分けていただていたところに通りすがりの男性から、田舎ではうべといい、子どもの時分によく食べ、甘かったと教えていただきました。子どもの幼稚園に持っていこうと調べているところ、こちらにたどり着きました。感じの良いブログだったので記念にご挨拶まで。

2008/10/29(水) 午前 11:08 [ riezou ] 返信する

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ier*n_*unaさん:

以前の記事を読んでいただきコメントまで残してくださって有難うございます。

ここに書いたムベもどうしたわけか今年は一つもなりませんでした、全くのゼロです。
春先には花がびっしり咲いたんですが本当に不思議です。

年寄りの昔話みたいな記事が多いブログですが、これからも是非時々お寄りください。

2008/10/29(水) 午後 2:44 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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ムベなるかなは、ウベなるかなとも言うそうで、果物もウベとも呼ばれているようです。
そう言えば昔、フィリピンでウベアイスクリームというのを食したことがあり、調べてみたら正しくムベで作ったアイスクリームでした。沖縄でも作っているようです。
ブリア サヴァラン信奉者のブログ主へ同嗜好の者より 削除

2008/11/13(木) 午後 10:47 [ 即沸薬缶 ] 返信する

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即沸薬缶さん:

ムベをウベとも呼ぶ事は知りませんでした。それとムベの実からアイスクリームといのも一寸想像できません。 食べられるところはごく僅か、どうもタネばっかりの印象がありますから、ジャムはともあれアイスクリームとは思いもよりませんでしたね。

即沸薬缶さんも美味礼賛者のご様子、今後ともよろしく。

2008/11/16(日) 午後 4:39 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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Yamazaki様

早とちりをして、とんでもない間違いをお知らせしてしまいました。
アイスクリームのウベは、フィリピンのものは紫イモ、沖縄のものは紅ヤマイモから作るようです。
空中に生るウベの実からというのは、とんだ絵空事でした。
ウベなるかなは間違いなく言うようです。

知ったかぶりは大怪我の元、以後戒めます。 削除

2008/11/17(月) 午前 10:38 [ 即沸薬缶 ] 返信する

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即沸薬缶さん:

成るほどそれなら分かります。 確か鎌倉に住んでいたころ紫芋のアイスクリームというのを売っていた事を覚えています。多分今でもあるんでしょう。

こんな早とちりは私も良くやります、人畜無害で話の種ですよ。 ところで「即沸薬缶」とは「すぐわくやかん」と読むんでしょうか。

2008/11/17(月) 午後 8:57 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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Yamazakiさん

そくふつやかん(直ぐ沸騰するヤカン親父)のイメージで、川柳の柳名にしています。
YAHOOのweb、「中年・熟年の川柳・狂歌」に出ています。ご興味があれば御覧ください。なお、狂名は 荒 家持 (あばらのやかもち)です。 削除

2008/11/17(月) 午後 10:55 [ 即沸薬缶 ] 返信する

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興味深い記事でした。
私も知りたいです〜〜! ムベの漢字のこと。

2009/10/14(水) 午後 4:37 さとやま 返信する

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さとやまさん:

そちらのブログで拝見しましたが、お名前がムベと同じだそうですね。 記事にも書きましたが、「郁子」と書いてムベ、するとお名前はイクコさんでしょうか。

古い記事を読んでいただき、コメントまで、有難うございました。 これからもよろしく。

2009/10/15(木) 午前 11:13 rei*ay*m*zaki19** 返信する

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