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波が静かに打ち寄せる音。
そしてあのテーマ曲が静かに流れ始めると、目の前の世界は一転します。
2部作のうちの最初の映画、
『父親たちの星条旗』を観てからの時間の空白は一瞬にして戻り、
私たちは気づくとまたあの硫黄島の姿を観ています。
1945年2月19日、アメリカ軍の上陸と共に始まった硫黄島の激戦。
アメリカ軍は先に徹底的に空から爆撃を仕掛け、
殆ど焼け野原になったはずの硫黄島へ、次々と上陸して参ります。
しかし、彼らが5日で終えられると考えていた戦いを、
実に36日の間守り抜いた男たちがこの島にいました。
その中心人物は、太平洋戦争においてアメリカをもっとも苦しめたとされ、
今も畏敬の念を持って語られる栗林陸軍中将。
8ヶ月前に、この島へ総指揮者として赴任し、彼はこの日のため秘策を練っていたのです。。
栗林はアメリカ留学経験があり、かの地で友人も多くもっておりました。
アメリカの国力もよく知っており、この戦いの厳しさを予測しておりました。
着任早々水際作戦のための塹壕掘りをやめさせ、意味のない体罰も戒めます。
国のために死ね、という時代にあって、
日本にいる家族を守るために生きて戦うことを説き、
古参の将校たちからは、かなりの反発もあったようですけれど、
率先して現場に立ち、指揮をする栗林の心は、
次第に生きることを諦めていた兵士達にも届くようになります。
硫黄島は山手線一周するよりも小さな島ではありましたが、グァムと東京のほぼ中間にあり、
アメリカは日本の本土への攻撃の拠点として、
喉から手が出るほど欲しい島だったのです。
日本側としてもそれは同じで、この島を取られてしまうと、もうあとがありません。
栗林は自分の足で島中を歩き、アメリカ軍を迎え撃つ計画を練ります。
耐え難い暑さ、硫黄の強い匂い、食べ物も水も事欠く過酷な状況にあって、
栗林の指揮の下、島中に縦横無尽に掘られていく地下要塞。
彼らは勝ち目のない戦いと知りつつも、
1日でも日本への攻撃を遅らせるために、徹底抗戦をするのでした。。
これらが全て現実の物語で、忠実に描かれているかどうかはわかりません。
同じ状況を観た数人が、それぞれ違う場所でその事柄を語る場合でも、
語る人によって、またそれを受け取る人によって、
事実はどんどん姿を変えてしまうことがある例を、私たちは知っています。
もちろん真実は重要ではありますが、
クリント・イーストウッド監督がもっとも表現したかったことは、
この作品を観てどう感じて貰えるか、と、言うことではないでしょうか。。
当初『父親たちの星条旗』だけを製作するつもりだった彼が、硫黄島のことを調べていくうちに、
この作品だけではある一面しか描けないのではないのか、と、思い始め、
全く逆の視点から観た、この『硫黄島からの手紙』を作ったというのは、有名な話ですよね。
彼は殆ど亡くなってしまった人たちのことを、
硫黄島から掘り起こされた、その当時、届けられることのなかった数百通の手紙の中から
丹念に探し出し、この作品を作り上げました。
61年の時を経て私たちに届けられたこれらの言葉や思いを、
日本人俳優の起用、ほぼ全編日本語という、かつてなかったやり方で
クリント・イーストウッド監督は、世界に解き放ちました。
身重の妻を置いたまま徴兵される、パン屋をしていた西郷。
(二宮さん採用のため、脚本が本来40代の設定だったのを30代へ書き直されたとのことです)
1932年のロスのオリンピック、馬術競技の金メダリストである穏やかな西竹一中佐。
元憲兵隊のエリートのはずだったのに、ある理由でこの島へ来ることになった清水。
栗林の考え方に反発を感じる、軍国主義に心酔する厳格な海軍中尉、伊藤。
負傷した若いアメリカ兵、捕虜の扱いについての話をするアメリカの兵士達、
日本での憲兵の行動、戦争の苦さを象徴する犬のエピソード、
そして子供たちの歌声・・
・・・書ききれないくらいの物語が詰っています。
途中、正直私も混乱してしまい、
なぜこのシーンなのか、なぜここなのか、と思うこともありましたが
それは多分、監督の意図するところでしょう。
なぜなら、彼はそれが戦争だ、と、いうことを表現したかったからに違いありません・・
多少気になる点もなくはなかったです。
あの時代の日本の女性たちの姿が、なぜかちょっと違和感があったので、
どうしてだろう、と思ったら、あの細い眉ですね。。
あの当時は今のような細い眉に整えている女性は、多分居なかったと思われますが・・・
こうしたらこうなる、という法則のようなものは一切ありません。
家族に手紙を書き続けた温厚な栗林中将が、
なぜ前任者が断ったこの島の指揮を執るために来たのか、その理由もわかりません。
あるのは、ただ、そこで戦う大勢の人間の姿だけ。
どちらが正義でもなく、どちらが悪だということもなく、戦う人間の姿があるだけです。。
この戦いで、それぞれの祖国のために命を捧げた全ての方々に、
心から敬意を払いたいと思いました。
太平洋戦争において、アメリカ軍の死傷者が日本軍を上回った唯一の戦場、硫黄島。
音楽は不協和音を奏でつつも、流れ続け、
次第に元に戻り、そして慰霊のトランペットのメロディとなって行きます。
淡々と描かれたこの映画、重いですが是非ご覧になってみて下さいね。。
渡辺謙 栗林中将
二宮和也 西郷
伊原剛志 西竹一中佐
加瀬亮 清水
中村獅童 伊藤中尉
裕木奈江 花子
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そのとおりですよね。。祖父祖母たちがいっていた「ばちがあたる」という言葉をふと思い出してしまいました。ぐれいぷさん。。
2007/1/2(火) 午後 4:58
私もトラバさせてもらいました。確かに昔の時代が描かれる映画が増えているので女性の眉が気になるときがあります。付け眉毛みたいのは無理なんですかね。
2007/1/3(水) 午後 10:09
一般に女性の眉は今や自由自在に描けるのです。。私の友人は顔を洗うと眉がまったくなくなります、いっちーさん。。
2007/1/3(水) 午後 11:10
私は村人の一人の着物の合わせが逆なのがとっても気になってしまいました。監督さんはあの手紙から丹念に物語を追われたわけですね。タイトルの持つ意味が分かったときには心底泣けてきました。この日本人の心を形にしたイーストウッドって偉大ですね。TBさせてください。
2007/3/6(火) 午後 2:59
これも心に残った映画の1本となりました。中でも印象的なのが、「アメリカ人監督によって作られた」と言う事。恥ずかしながら硫黄島について詳しく知らなかったのですが、(今も詳しく知っているわけではないけど)、この映画を観て、本当に戦争について考えさせられました。TBお返しします♪
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2007/3/11(日) 午後 7:21
あ。レス遅くなりまして申し訳ありません^^; あ。そうか、着物に疎いものですからそれには気付きませんでした。。(涙)日本でこういう映画が作られなかったことは、ちょっと残念でしたね〜 pu-koさん。トラバありがとうございます。
2007/3/12(月) 午前 0:02
仰る通りだと思います。今読売新聞で、硫黄島で戦死されたかたの特集記事を載せております。。やっぱり胸が痛みます。。トラバありがとうございます、SHIMAさん。
2007/3/12(月) 午前 0:04
いろいろな意味で戦争の残酷さなどを知り、またこんなことは、やってはいけないんだと感じました。戦争を体験していない世代だから感じることも多くありました。悲しかったです。
2007/4/26(木) 午前 6:42
そうですねえ。。知らない世代からこそというのもあると思います、それって案外大事なことかも。。シンさん。。
2007/4/26(木) 午前 7:46
ラストの手紙のシーンに思いが凝縮されていたように思います。トラバさせていただきますね♪
2007/4/26(木) 午後 11:05
人の思いは実は同じなのかもしれないですけれど、戦争ってずっとどの時代にも途切れることなくありますねえ。。色々考えさせられる映画でした。トラバありがとうございます、じゅりさん♪
2007/4/26(木) 午後 11:43
この作品ともう1つの作品を両方、続けて観たくてレンタルされるのを待って観ました。気づいてたら朝でびっくり。この作品はホントに命の重さを感じました。生きたくても生きられなかった時代。。。。届くことがない手紙を書く兵士の想いが苦しかったです。トラバさせてくださいね。
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2007/5/27(日) 午後 10:27
朝までご覧になりましたか。。確かに続けて観ると、より深みが増すかもしれないですねえ。。深夜静かな時間に想いをはせるのも、大事かもしれません。。トラバありがとうございます、なおちゃん。。
2007/5/28(月) 午前 9:12
わたしも去年映画館で観ました。子供らに是非見せたいと思ってるので近々DVDゲット予定です ^^v 栗林中将は国のために戦ったんじゃなくって、自分の妻子、郷土の人々のために、そして何よりプロのソルジャーとして使命を全うしたんだと思います。v だから軍国主義とかにかぶれず、、、(映画の上では)、、、ごく全うなヒューマンな一人の人間としての振る舞いですよね。それが、周りの洗脳された者たちによって、浮き上がるようなコントラストが付けられてる。。。また、わたしは、「300」のスパルタ王にも似たものを感じました。TBさせて頂きます。Orz〜v
[ スモークマン ]
2007/9/10(月) 午後 7:45
↑あっ、、、すいません。。。TBのやり方が分からない。。。Orz ^^; わたしも映画欄に「硫黄島からの手紙」アップしてます。よろしかったら覗いてみて下さいね。^^
[ スモークマン ]
2007/9/10(月) 午後 7:50
『300』でも描き方はかなり斬新でしたけれど、そういう共通点もあるかもですね。。
はい^^また覗かせて頂きますね^^ crazy tomboさん。
2007/9/10(月) 午後 10:20
戦勝国と敗戦国、確かに両方から観てわかることってありますね。今までしらなかった史実を教えられました。
2008/1/13(日) 午後 2:36
そういう意味ではこの2部作を作った、という意味は大きいかもしれませんね。。トラバありがとうございます^^ぴろしきさん。
2008/1/13(日) 午後 11:41
日本を描くために、きちんと丁寧に日本人を起用し、日本語の脚本を用意してくれた監督に、とても誠実な人柄を感じます。
怪しげな日本語を操る中国人が演じるなんちゃって日本人、最近ではだいぶ見なくなりましたが、それでもまだ多いですよね。そんな中、日本に対する深い敬意を感じられる素晴らしい作品でしたね。
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2010/10/30(土) 午後 1:33
そうなんですよね〜
日本人監督がハリウッドで撮っても、怪しいのがあったりするのですよ。。その点、この作品は凄いですよね〜
日本映画も頑張っているみたいですし、嬉しいですね ^^ T.Snakeさん。
2010/10/30(土) 午後 9:49