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2012年、混沌から新しい時代へ...

自然・科学

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Y染色体の悲劇

 エラリー・クイーンの推理小説とは全く関係がないのだが、遺伝子の世界もなかなかスリルとサスペンスに満ちているようだ。ヒトの染色体にはXとYがあり、XXとなれば女性、XYならば男性であることは良く知られているところである。Xがダブルにあるのはそれなりに意味のあることで、片方のXが傷ついてももう一方が正常であれば子孫に欠陥を引き継ぐ恐れは格段に少なくなる。それに対し、Y染色体はワンセットだけ男性に与えられている。もし、Y染色体が傷ついたらどうなるのだろう。じわり、スリルとサスペンスの世界が垣間見えてくる。
 ひと頃、ミトコンドリア・イヴという言葉が話題を呼んだ。女性だけに継続して伝わるミトコンドリアDNAを遡っていくと約二十万年前のアフリカの一女性に行き着くという。面白いことに男性のみが持つY染色体に依っても人類の起源に迫ることができる。Y染色体アダムである。Y染色体上の欠陥の痕跡を遡っていくと六万年ほど前のアフリカへ辿り着く。聖書によればイヴはアダムの肋骨の骨から生まれたはずであるからアダムが若いのは解せないのだが・・・
 そう、Y染色体は欠陥を修復する手立てを持たないのだ。だから過去を遡れるわけであるが、逆に言えばその将来には間違いなく悲惨な状況が待っている。ボロボロになったY染色体を持つ男、いや男などとは呼べないシロモノ。やがて存在そのものも否定されてしまうオトコ。
 昨今の男の不甲斐なさは、Y染色体の損傷が随分進んできたようで、破滅の前兆を見るようである。例えば、直接的な関係は不明ながら、最近子孫を作る能力が劣ってきたと言われる。更には、お金にしか興味がなくなったり、スグキレ症候群にかかったり、ブログ放火魔が増えたり、無差別何とかに走ったり、漢字が読めなくなってきたり、昨日と今日で言うことが違ったり、昼から泥酔会見をしたり、とまずいことに理性を司る遺伝子が集中的に破壊されてきている。いよいよ女性とイケメン男のクローンだけという世界になってしまいそうだ。女性から見たら、平和で幸せな時代がやって来たと喜ばれるかもしれない。
 遺伝子の修復は可能なのか。もちろん発展目覚ましい遺伝子工学の技術に依る道はあるかもしれない。しかしダメになった男が介在していてはまともな男へ戻る道は危うい。そもそも遺伝子は進化論的に突然変異の集大成なのか、そこにサムスィンググレートの存在が介入しているのか。前者が数学的にあり得ない話であるとすれば、グレートへの道をもう一度模索することが結局は男を救う近道なのだろう。

 機内は既にあらかた整頓されており雑然とした様子はない。一抹の不安が過ぎる。先ほどスチュワーデスは何も言わず通してくれた。それは有難かったのだが逆に言えば何も届けられていないということにもつながる。誰かが持ち去ってしまったら今頃カラになった財布がどこかのゴミ箱に棄てられているかもしれない。ドキドキしながら近づく。確か、この座席のはずだ。
 座席の上にはもちろん見当たらなかった。座席の前のポケットを確認する。ない。なくて当然だと自分を納得させる。こんなところであれば降りるときにチェックするので直ぐに気がつくはずである。座席の下に違いない。きっと死角になってそのまま放置されているに違いない。通路に這いつくばって座席の前後左右を探した。
{あるはずだ。}
手荷物のない座席下は見通しが良かった。確信にも近い期待とは裏腹に目の前にはゴミひとつない。
{あー、ない!}
ガラガラと何かが崩れ落ちていく。緊張感が虚しく解けて、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。その時だった。
{お客様―、これですかー?}
前方のドアの辺りでスチュワーデスが叫んでいる。我に返った私はすっ飛んで行った。
{あっ、あーこれです。ありがとうございます!}
{乗客のかたが届けてくれたのですよ。}
お礼もそこそこに今度は乗り継ぎカウンターへ急ぎ向かわねばならなかった。もう時間がないのだ。やっとの思いで、こちらもぎりぎり搭乗に間に合った私は漸く我に返り、振り返った。あれは一体何だったのだろう。それにしてもドラマでもあるまいし、あまりに出来過ぎだ。ひょっとして・・・これが私の・・・。色々な思考がぐるぐる頭を巡るうちに、いつか深い眠りに落ちてしまったようだ。その前後のことはもう記憶にない。(完)

 自分の財布のことだろうか?財布はアタッシュケースに放り込んである。そのアタッシュケースは今しっかりと手に持っている。落とす?どこで?座席で?そんな馬鹿な、と必死に打ち消す。が、そんな思いを無視するかのように
{財布がない。}
と、また聞こえてきた。まさかと思いつつ本当だったらどうしようと不安が過ぎる。現金はたいしたことはない。が、カード類がたくさんある。不法に使われたら大変である。免許証もIDもない、では身動きが取れない。至急、カード会社に連絡を入れねばならないがこれから夜行便では明日の朝までどうにもならない。相変わらず断続的に後ろで声がする。
{財布がない。}
フラットエスカレータの切れ目が見えてきた。隣にトイレマークも見える。よし、降りて確認しよう。すばやくトイレに駆け込みアタッシュケースを開けた。なかを引っ掻きまわす。
{ない!}
ガーンと頭をぶん殴られたようだった。頭のなかが真っ白になりながらも、次の瞬間、アタッシュケースを閉じると先ほど降りてきたゲートへ向かって逆走していた。
 搭乗口に辿り着くとドアがまさに閉められるところだった。
{すみません、待ってくださーい。}
必死に呼びかける。
{財布を機内に落としたみたいなので探させてください。}
スチュワーデスがポカンとしている。が、直ぐに状況を察したらしく、
{どうぞ、お入りください。}
ハイ、と言うなり座席へ向かって飛び込んでいった。(続く)

不思議な話その5

 世の中には不思議な話がたくさんある。が、言ってみれば人間の智慧はたかが知れていることの裏返しでもあろう。素直に受け止めてみれば案外そこには新たな世界が広がっているかも知れない。そんな話のひとつ。
 その日、私はマニラ空港を飛び立ち香港へ向かう飛行機に乗っていた。3〜4時間ほどのフライトだろうか、出張中の移動時間は私にとっては貴重な読書タイムである。いつものようにアタッシュケースから本を取り出した。そのとき、何時もは絶対に落とさないように取られないようにパンパンに膨らませた財布を胸ポケットに入れておくのだが、何故かその財布をアタッシュケースのなかに放り込んでしまった。
 やがて搭乗機は香港についた。夜もだいぶ遅くなっていた。これから短い乗り継ぎ時間で夜行便に乗り換えさらに次の目的地へ行かねばならなかった。心なしかあせりの気持ちもあったのだろうか。そそくさと本をアタッシュケースに戻し、手荷物をまとめて機外へ出た。新空港は広い。長いフラットエスカレータ?(動く歩道)にいらいらしながら身を任せていたときだった。突然、後ろのほうで声がした。
{財布がない、財布がない。}
二度、聞こえたように思った。こんなところで日本語で話しかける人がいるのだろうか。訝しく思いつつ振り返った。が、そこには私と同様に疲れた表情の旅客が押し黙ったまま立っているだけだった。何だったのだろう。すると、また、
{財布がない。}
と聞こえる。どうやら私の後頭部のあたりでその話し手は囁きかけているようである。しかし、後ろには日本語を話しそうな人はいなかったはずだ。頭のなかが一気に混乱していく。(続く)

不思議な話その4

 世の中には不思議な話がたくさんある。が、言ってみれば人間の智慧はたかが知れていることの裏返しでもあろう。素直に受け止めてみれば案外そこには新たな夢が広がっているかも知れない。そんな話のひとつ。
 一般に生き物と言われるものは外部からエネルギーを取り入れて成長していくものである。それは誕生から始まり成体へと成長しやがて老化を経て死に至る。誰も疑わない生命のサイクルである。しかし、ここにひとつの例外がある。故千島博士による事例報告である。
 成体になったクラゲを海水中において、食物をなくして絶食状態にしておくと、クラゲは触手や体が次第に吸収され退化していく。最後には発生初期の胚子のような細胞の塊に逆戻りする、というのである。これは栄養不良によって組織が機能不全に陥り壊死に至ったということではないようである。その胚子のような細胞の塊に食物を与え始めるとまた普通の成長をして元の成体に戻る。即ち逆成長(若返り)である。エントロピー増大法則とは逆の方向である。この間、生体にとっては時間は逆行するかのようである。これを生物的な時間の逆行と、博士は言っている。
 クラゲは原始的な生物といえるのだろうから他の生物やより高等な動物にそのまま当てはまるとは言い難いかもしれない。しかし従来の常識を覆すショッキングな事実であることは間違いないし、さらにショッキングなことは何よりもそこに色々な示唆が含まれているのではないかという予感があるからである。たとえば、人は古来、不老不死の妙薬を求め続けてきた。そこまで行かなくても、もし食が時間をコントロールするとなればどんな世界が開けてくるのだろうか。

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