気ままにエッセイ

2012年、混沌から新しい時代へ...

趣味・芸術

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アマデウス

 アマデウスとくればモーツァルト、とピンと来る方は相当な音楽愛好家であるはずだ。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、私のような素人には、なかなか分かりにくい作曲家である。だから、好きな作曲家を聞かれて彼を挙げる人はまず間違いなく自称{本当のクラシックファン}か、音楽が生活の一部になっているような人たちなのだろうと思う。そんな取っつきにくいモーツァルトのごく簡単な曲でも弾いてみるとなぜかほっとする。音楽は不思議なものである。
 前置きが長くなったが、題名のアマデウスは実はNHKの名曲探偵という番組名である。数少ない私の好きなTV番組のひとつであるのだが、これは名曲の名曲たる所以を楽譜を紐解きながら実際の演奏を聴きながら作曲家の工夫や苦悩を詳らかにしながら理解してもらおうというものだ。感性というよりどちらかと言えば理性の面から名曲に迫ろうとする。眼や耳を鍛えるにはひたすら名画を鑑賞し、名演奏を聴くことが王道であるとすれば、これは新しい聴曲力トレーニングであり大衆化でもあるのだろう。
 私のようなありふれた愛好家が曲の理解を深める手立ては、努力もしていないが、これまでほとんどなかったのではないか。音符ひとつひとつには意味がある。それをどう演奏家が表現してくれるのか。そんな関心をもちながらコンサートに出かける。きっと楽しみ方の幅も随分広がるに違いない。演奏が始まると直ぐ気持ち良い睡魔に誘われていつも夢の世界を彷徨し、拍手に起こされ、女房の{また、寝ていたわね。}の冷やかな声で現実に戻る、これまでのスタイルと訣別できるかもしれない。
 先日、久しぶりにコンサートを聴きに行った。プログラムはベートーベンのバイオリン協奏曲ニ長調。ソロのパートが始まった瞬間、バイオリンの響きがスッーと心のなかに入ってくる。開くとか閉じるとか意識させることもなく心のドアを叩くでもなく、その音は心のなかへ何の障害物もないかのように自然に入り込み何かと共鳴している。その日、睡魔はやって来なかった。が、時間は忘れていた。最後まで一気に聴いた。身体で聴いた。会場全体がひとつになっていた。終演後の拍手の大きさがブラボー(ブラバー)の掛け声がそれを証明していた。理性など必要ないのだと証明していた。バイオリニストは竹澤恭子。音楽はやはり不思議で魅力的なものだと教えてくれた。

弦楽四重奏

 音楽はずぶの素人である。が、聴いたり弾いたりは好きである。先日、縁あってクラシックの演奏愛好家が集う催しにお邪魔させていただいた。もちろん、聴かせていただくだけの参加である。
 そこは3〜40人も入れば酸欠を起こしそうなほど小さな洋風居酒屋である。クラシックを聞くには場違いのようなイメージだが、お酒を飲みながら軽食を食べながらお喋りをしながら身近にクラシックを聴くことはコンサート会場へ足を運んで聴くスタイルとは趣きも全く違いそれはそれでたいへん楽しいものである。演奏者はセミプロ級からアマチュアまで幅広い。お金を稼ぐ演奏ではないから飲みながら聴いても良い、ということでは全くない。こういう楽しみ方があっても良いと思うのである。百パーセントBGMとして聞いても良いし、ときどき耳を欹てながらメロディーラインを追いかけたり、バイオリンとチェロのかけ合いに気を引かれたりのつまみ食いもまた良し、である。
 その日はバッハ、モーツァルト、シューベルト、ブラームスなど古典派を中心に管楽器を入れたり、ピアノを入れたりで様々な重奏曲を演じていた。少人数構成なので身近で聴くと、それぞれの楽器の音が良く聞こえる。ひとつのパートを二人で演奏すると楽器の鳴りの違いが聞こえてくる。技術なのか楽器なのか分からない。管楽器が入ると音量のバランスが若干崩れてまとまりがなくなったりする。それでも生の演奏は迫力がある。CDなどでは味わえない何かが伝わってくる。
 そんななかで弦楽四重奏は大変である。ひとりでも音程が取れないとすべてを台無しにしてしまう。一瞬、しらっ、とした雰囲気が会場を流れる。それでも演奏者は必死だ。彼は自分のピッチが合っていないことを認識しているはずだが緊張からか指の位置が決まらないのだろう。演奏が終わり観客からの暖かい拍手を受けて、その顔に安堵とやり終えた後の充実感のようなものが浮かぶ。ヘタだなあ、みんなに迷惑をかけたかな、それでもこんな舞台で演奏できて最高だ、よし、またやろう。心の声が聞こえてくる。やっぱり好きなのである。そんな何かを音楽は持っている。

アンコールの静寂

 人気マンガの影響か、それともゆとりのある人生を過ごしたいのかコンサートに足を運ぶひとも多くなってきたようだ。妻はせっかくお金を払ったんだからと気合いを入れて聴いているようである。が、所詮、プロでもないし聴く耳もない私などは、それこそゆとり第一で、いびきをかかない程度に寝ているのが最高の幸せと思っているから、聴く側のレベルとしては最低にランク付けされてもおかしくない。
「また、寝ていたわね。」
と毎度いわれるのがお決まりのコースなのである。そんな私でもいつも可笑しく思うことがある。
 演奏前というのは周囲のあちらこちらで雑談に花が咲いたりプログラムやら宣伝チラシやらに目を通す人達の紙をめくる音などで結構雑音レベルが高い。そうこうしているうちに演奏が始まるのだが、何故か雑音がなくならない。咳き込む声が響いたりバッグのなかをガサゴソとかき回しているような音がしたり、またまたプグラムをあけてみようとするひとのカサカサという音が聞こえてきたり、なかには開始早々から本当に鼾をかいて寝ている人がいたりして、気になりだしたら切りがない。
 そんな演奏会でもソリストの登場するプログラムではときどきアンコールが入る。盛大な拍手のなか、ソリストが演奏体勢に入ると、拍手がピタッと止み、聴衆すべてが息を止めたかのような完璧な静寂が最高の舞台環境を作る。この時いつも思うのである。ここに来ているひとたちにとっては本番はオマケでアンコールが本当に聴きたいプログラムに違いないと。そして、この静寂の差をどう受け止めているのか、一度、ソリストやオケの演奏家の人達に聞いてみたいと久しく思っている。

音楽の山

 昨年はモーツァルトの生誕250年ということで色々な催しが行われたことであろう。あろう、というのはチラチラとそのような記念コンサートの宣伝の類いをみていただけで調べたり聴きに行ったりしたわけではないからだ。それはともかくとして、世の中にはモーツァルト・ファンはたくさんいるようで、やはり彼は天才なのかと思ったりもする。確かに35年の短い生涯のなかで遺したK・626のレクイエムまでの膨大な作品を見れば、私のように音楽はわからずとも納得させられてしまう。
 彼はいわゆる古典派の作曲家である。古典派の前にはバロックがあり、後にはロマン派が続く。クラシック愛好家にはバロックが好きな人もいればロマン派しか聴かない人もいるだろう。とすると、モーツァルトは確かに天才なのかも知れないが彼の作品だけが孤高の存在というわけではなさそうだ。それは、やがて古典派のスタイルが廃れロマン派へと移行していくことでもわかる。もし彼の作品が至高のものであれば他は二流、三流となり注目などされないだろう。
 例えて言えば、クラシックという山には登山口が幾つかあり、そのひとつがバロックであり、古典派であり、ということのように思える。そしてその道は頂上には達していなくて、みな七合目とか八合目あたりで途絶えているような気がする。ひとは八合目あたりでその先の余りの急峻さに絶望して山を降りる。そしてまた新たな登山口を見つける。見つからなければその分野は終焉を迎える。
 あるいはひとつひとつの様式がひとつの山であり、それぞれに頂上を極めたという見方もできようが、私には、絶望は人間の宿命であり天才といえども神の領域には辿り着けない、すなわち頂上は人間には許されていないように思える。

短歌事始

 歳を取ると、心配になることのひとつにボケがある。いわゆる認知症になったら、本人は気付かないから他人事だが、周りの人たちには多大な負担をかけることになる。ボケに気がついてからでは遅いから、いまから手を打っておくことにしようと思いあれこれ考えた。
 若い頃、といっても二、三十年ほど前だろうか、何を思ったか急に短歌を十首ほど作り郷里の父に送った。しばらくして父から手紙が届いた。そこには父が一首残らず赤ペンで丹念に添削した私の短歌があった。若い時の情熱と技量の間には当然ながら大きなギャップがある。それを知らずして送ったわけではないが、完膚なきまで叩きのめされた感じで、それを機に短歌のことはぷっつりと忘れていた。
 数年前、父危篤の知らせを受けて駆けつけたとき、まだ父の意識ははっきりしていた。二人きりになったときに、
「短歌はもう止めたのか?」
と、ぼそっと声が聞こえた。思いがけない問いに一瞬、吃驚しつつも昔の記憶が鮮明に甦ってきた。あー、父は期待していたんだ、という思いに後ろめたさを感じながら
「いや、止めたわけでは・・・」
と、尻切れトンボの応えしかできなかった。が、それを機にまた短歌を始めることになってしまった。しかし、仕事上での気苦労やら、本当は能力のなさに、何時しか、また遠ざかってしまっていた。
 今、改めて考えると、短歌(や俳句)ほど熟年世代のボケ防止に良いものはないのではないか。お金はかからぬし、どこにいてもできるし、観察力が高まる。それに、脳の活性化には最適、という大学の先生のお墨付きもある。ヘタでもいいのだ、また始めよう。

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