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架空小説 「罪なき詐欺」

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やりとり 3


叔母が切り出す



保険の楠野さんから電話があって

こまっているといわれたのよ

あなた何話したの?



s氏は

一瞬叔母が何を言っているのかわからない



楠野さんは

あなたの言っていることが全くわからないと

私は保険屋で

保険のことで話そうと思って

本日伺ったのに

いろいろなお話を一方的にされ

返答に困っていると

ご主人と一緒に私に相談に来たのよ



保険屋の罠にはまった



それも

最も女が使うずるい手口に


さっき自宅を訪ねた保険屋の楠野よし子

彼女は

叔母かs氏か

どちらにつけば自分がメリットがあるのか

探りに来ただけなのである



母が亡くなり

家の主になったs氏よりも

伯父が亡くなり10年母と同居している

叔母についた方がメリットがあると考え

叔母に泣きついたのであろう



楠野よし子も

叔母にしても

ここいら辺の計算は

全くの本能である



さらにといえば

会津の10の教えの一つ

「年長を敬いなさいという」

儒教の縛りが

ある意味ここの地域のモラルとなっているので

近所の目もあり

とった行動であろう



叔母は常に

s氏に対しては思っていた

「私はあなたの叔母なのよ」


だからなんだという

s氏の考え


叔母というのは

母が他の兄弟

父親と母親の

DNAを受け継いでいる自分は

叔母は直系の母に比べて

他人という存在になっている



この二人の真逆な考え方の中に

保険屋の楠野よし子は

割って入り

叔母とs氏の間を

混乱させた



叔母は感情的になると異常である

保険屋の楠野よし子が

叔母に何を話したかわからないが

s氏に対して

全身を震わせて罵った



言ってもわからない相手

s氏は

静かに叔母の話を聞いていた


しかし

s氏はかなり潔癖なタイプ



損得勘定だけで生きている

ずるい女に対しては

我慢ができない




叔母にしろ

楠野よし子にしろ



自分が泥をかけられたような

とても、醜い、汚いものを見ているような

たまらない気持ちになってきた



次の瞬間

s氏自身が自分自身を疑う行動をとった



s氏は

台所から包丁を取り出し

叔母をめがけて

突き刺したのである



イメージ 1








やりとり その2


叔母がなかなか帰ってこない



時間を見ると夕方の5時

お寺の住職との話し合いもあり

昼食もとっていないs氏は

軽い空腹感を感じる



車で神明通りまで行って

食事をとることにした



ちょうど日曜日

田舎とはいえ

テレビドラマなどで取り上げられている会津若松

さすがに

平日は帰宅ラッシュで混むのだが

今日は空いていた


福島テレビ局の近くに

おしゃれなカフェがあり

s氏は

そこのビーフシチューが好きだった



会津は北国のため

味が濃い



濃いというより

その濃い部分に甘味があり

その味が好きか嫌いかで

かなり食事の好みが変わる


会津のそば

喜多方ラーメン

とても有名で

好きな人には、たまらないらしいが

s氏は、好みが合わなかった


醤油ベースに

甘味があるのがたまらなく鼻に付く


なので

会津のそばと

ラーメンや煮付けものは

口に合わない


こちらにきて

3キロは痩せてしまった


しかしその甘味が

ここのカフェのビーフシチュー

デミグラスソースの

どこにもだせない

濃厚な旨味が

ここのビーフシチューにはあった


食事が終わる頃

s氏のiフォンがなる



叔母からだった


叔母は声を荒げて

早く帰ってくるように

s宇治に促した

イメージ 1



やりとり


玄関のチャイムが鳴った




叔母は散歩に出かけていて

不在のようだ



チャイムで起こされたs氏

モニターでチャイムの主を確認する




先週、叔母と話していた

保険の女性



s氏は玄関を開ける



「叔母は不在ですが。。」



本日はsさんとお話がしたくて。。。



なんでしょう。。



会津の夏は暑い

外での立ち話では、問題があるので

家の中に通す



応接室に通して

s氏はコーヒーと軽いお菓子を用意して

保険の女性と話した



相手から切り出す

先日は、失礼しました

改めまして名刺をと思いまして。。。



保険の女性は

名刺を差し出した

某有名保険会社の名前

営業 楠野よし子



実は先日伺ったのは

お母様の保険がちょうど満期を迎えまして

それで更新手続きに来たのです



s氏は、会津があまり好きではなかった

なので

会津に住みたいと望む母の考えについていけず

家のことには全く興味を示さなかった



当然、母がどのような保険に入り

どのようにしているのか。。

まったくわからなかったし

第一、保険にたいして

あまり気にとめるタイプではない



ただ

母が突然この世を去ったことで

喪主という立場になり

最低これから

三回忌までは法要の中心となる


地方では

ともライが出るとその地域のやり方があるらしい

保険の楠野よし子と名乗る女性が

自分にとって

プラスな人物か

それともマイナスな人物か

判断する前に

いきなり会津に来て

家の主として

喪主として振舞っているs氏にたいして

面白く思っていない人々も

確かにいるようで



お寺の住職にしても

その一部の檀家にしても

こだわりというか

面子というか

とにかく

都会と違って田舎はやりにくい


この女性を味方につければ

多少は違うかもしれない

s氏は思った


しかしそれは

あとから

大きな災難となって、s氏にのしかかってくるのだが。。




とりあえず

彼女を信頼して

現在の状況

49日の問題など

何気なく話す




人の良いs氏



彼女は笑顔で答えて

s氏に同情を与えるような返答

そして

力になってあげたいと話した




そしてコーヒーを飲み干し

「美味しかった。ちょうど喉が渇いていたところなのです

では、そろそろ。。」



席を立った


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結論


S氏は、叔母が負担であった

そして

何よりも今目の前にいる住職が負担であった



話しているとバカバカしくなる



先祖代々の墓に入れるのは

長兄の妻のみと

檀家が決めたから



祖父が住職だった時

S宇治の叔母の先夫

その子供

祖父の兄弟で、両親が亡くなったため幼女になるも

幼くして亡くなった子供など

入っているわけで



個人の家庭の問題なのでと

しっかりと檀家に言い切れず

身内にのみ

無理を偲んで我慢してもらい

物事を丸く収めようとする

甘えた考え

手口が見え見えなのだ。。。



「用事があるので。。また」

s氏は切り出した



もういい

なるようになれ。。と思った



こんな男(住職)と話しても

こちらの方がおかしくなってくる



S氏は住職を心から軽蔑し

たとえ血が繋がっていても

もう、このような考えの人間と接していたら

次から次へ

どんな無理を押し付けられるかわからない



S氏の母がそうだった


しかし

母はなぜ、あそこまで家に尽くしたのだろう


逆に突き放した方が

本人が考える

本人がなんとかするだろう



いつも身内がやってくれる

こういった生活習慣を持った人間に

付き合っていたら

自分の人生も同じ道のりをたどる



結論は決まった



s氏は、一旦会津の実家に戻り

かなりイライラするので

気持ちを抑えるために

医者から処方された安定剤と

入眠導入剤を飲み

眠ることにした



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話し合い


s氏と住職は

会津のお寺の応接間で

話し合っていた




先祖代々の墓に入れることを反対するのは

自分の寺の檀家たちで

自分ではないという



それに対して

s氏はいう

「お寺を支えてくださる檀家さんたちは

住職にご先祖さまの魂の安息を

お願いしておりますから

その代わりとして

檀家さんたちは

お寺に、お布施という形で

施しをさせていただいている。。

お寺の運営とは

このようなことではないですか?」



さらに

s氏はつづける



「住職というのは

宗教家という職業で

その方も家族がいる

その家族の問題においては

檀家さんたちは

とやかく言う権利はないと思います」



s氏は、話しながら考えた




家を支えた母を入れたくないのは

住職の母方の

個人的な感情であろうと



負けず嫌いの

住職の母は

s氏の母の成功を妬み

追いやろうとしていることは

薄々気が付いていた



子供の頃

今の住職や政治家になったその弟

住職の父

S氏は、いじめられた



s氏の両親が不在であったこともそうだが

s氏の祖母

会津特有の儒教の教えを

子供の頃のs氏はすり込まれていた



なので年長者

また年長者の子供に対しては

理不尽であると思っても

抗うことができなかった



子供の頃のトラウマは

今でも引きずっている



自分自身の厄介なところ




s氏は

鬱陶しいと思っても

その人を断ち切ることができない


s氏の性格もある

優しいのだ



しかしそれだけではなく

幼い頃叩き込まれた

儒教の教えがある


相手の立場を考えて

逆らうことはできなかった



人はそういったところは

直感でわかるらしい

抗えないとわかると

何を言っても、言い返されないので

言いたいことを言ってくる



結局、その人が絶対に出してはいけない

醜い面を

s氏は引き出してしまう性がある



s氏は

そんな自分が嫌いであった


また

あれだけやられている

叔母に同情していた




どうして、このような人物ができたのか

わかるような気がした


儒教の教えは

ある意味、現在の競争社会においては

理不尽で古臭い



しかしながら

たまたま生まれ育った環境で

儒教の教えを盾に取り

特別努力しなくても

周りに尊敬され

守られ

楽に生きていける人々がいる



間違えても

こういう人が

多くの価値観が異なる都会で暮らしたら

潰れるだろう



叔母はこの環境に生まれ

育ち

二度目だが、裕福な伯父と結婚して

悠々自適に暮らしていた



当然付き合っている人々は

社会的に成功した人物の妻たちで

その妻たちのキャリアも高く

その子供たちも

それなりの有名教育機関に入学して

これが人生のステータスと感じている人たちだったのだから



会津という

徳川家に対する忠義のために

不利な戦いをして

官軍に負けてしまい

会津の土地を追いやられ

北海道や斗南藩のほうに

行かされた

人々




食べるだけでやっとで

国内にいての仕方がないと

海外に留学し

会津の再建を望むも

帰国後

これだけの知識と教養を得ることができても

それを生かす用意が会津ではなく

結局

会津から離れて活躍した人々

津田梅子

大川捨松



当時の津田梅子の手紙には

豊かな人と結婚した女性は

まるでお人形のよう

貧しい農家に嫁いだ女性は

まるで女中のようであった。。。と



叔母の性格では

お人形を選んだのだと思う



お人形になるためには

本当の自分を殺さなければいけない

いや

本来自分がどういった人間なのかも

自分で理解しようとする

ゆとりもなかったのかもしれない



昔から不器用と言われ

本当に不器用かどうか、自分を見つめることなく

自分を不器用と思い込む



そして

面倒見の良い、器用なs氏の母を

よびよせて

寄生する


本能的なものもあるけれども

住職と話していると

こういった本能がなければ

恐らく

この環境を生き抜くことができなかったのだと思う



実際のs氏の叔母は

美しい女性だった

色白で

目は細く、まるで筆で書いたようであるが

愛嬌があり

可愛らしい



しかし、個性を尊重しない

保守的なこの地では

美人といわれる顔立ちは

一定方向に決まっていて

それにはまらない人間は

醜い女性となる


叔母は子供の頃から

醜い女性というレッテルを貼られていた

女性としては

本当に屈辱的なことだと思う


その反面

s氏の母は

綺麗な二重で

目鼻立ちがはっきりしていた

肌の色は浅黒いが

筋肉がしっかりと締まり

健康的な肉体の持ち主



この地の人たちは

s氏の母を美しいと評価し

s氏の叔母と比べ

ある意味、叔母はそれが劣等感だったらしい



叔母の最初の夫は

背が高く

美し顔をしていた



叔母が最初の結婚をした時は

s氏はまだ生まれていない



白黒写真に

美しい男性と仲良く寄り添う叔母の写真を見つけて

その男性が誰であるか

母に尋ねたことがある



「おばさんの最初の旦那さま」

母は答えた

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