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前回、「赤い指」について書いた時に、東野氏があまりにも売れっ子になったゆえに、一冊に込める熱量が不足しているのではないか、と指摘した。その指摘が当たっているかを確認するためにも、私は東野氏の初期の作品を読もうと思った。それがこの「放課後」で、江戸川乱歩賞を受賞した。
結論から言うと、「放課後」にはきわめてみずみずしい作者の感性がほとばしっている。ストーリーは女子高における殺人事件なのだが、教師と生徒のやりとりもきわめて自然に描かれている。
私は東野氏はとても俗的な価値観を持っている人だと思う。酒も飲むだろうし、おそらく女性もかなり好きなタイプではないかと推察する。教師と女子生徒のやり取りにも、少し淫らな匂いを感じさせたりもするのだが、東野氏の良さはその俗的な価値観を散らばめながらも、決して俗的一色には染まらせない品の良さを保っている。このあたりの抑制が女性からも評価を受けているのだろう。
女子高での殺人事件と容疑者と思わせる教師や生徒の存在、学校の行事や生徒の心の動きなど、ストーリーテラーとしての才能はさすがだと思う。人の心の動きを描かせると、本質をつかむのがとても上手い。ただし、密室トリックに関しては、やや不自然さも感じるし、説得力が強いわけではない。「赤い指」の時にも感じたのだが、トリックよりはストーリー展開に重きを置く人なのだろう。
主人公の男性教師のプライベートな部分もストーリーの伏線になっているのだが、この結末に向けての展開には唸らされた。特にラストシーンなどは映画のワンシーンのように迫ってきて圧巻だ。
さまざまな東野評によると、この作品はまだ序の口で、今後円熟味を増してくるとのこと。私も「卒業」をすでに手にしていて、やはり東野マジックにはまろうとしている。
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