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私はミュージカルが好きだ。好きという気持ちが高まってくると、思わぬところから縁が生まれたりする。私の大学時代の演劇仲間の新木啓介君が音楽座ミュージカルに所属していることから、私は今年になって音楽座ミュージカルのアドバイザー的なポジションで、ミュージカル作りに参加させていただいている。
音楽座ミュージカルの12月公演は「泣かないで」だ。遠藤周作氏の「わたしが・棄てた・女」をミュージカルにした作品で、亡くなった遠藤先生も絶賛されていたそうだ。12月の公演には、ミュージカルで活躍する藤岡正明さんが吉岡役で、外部から参加する。
藤岡さんはASAYANのオーディションで最終選考まで残り、その後ソロデビューするとともにミュージカルでも歌唱力を活かして活躍している。「レ・ミゼラブル」のマリウス、「ミス・サイゴン」のクリス、そして「ブラッドブラザーズ」では初の主演。演技力とキュートな笑顔にファンも多い。
私が藤岡さんに初めてお会いしたのが9月9日、「ブラッドブラザーズ」の楽屋だった。この作品では幼い子供の頃も演じているのだが、舞台での笑顔と同じく、人の心を和ませる笑顔でしばらく談笑した。
そして9月14日。都内にある稽古場で「泣かないで」の顔合わせと台本の読み合わせがあり、藤岡さんも参加した。少し照れくさそうに中央の席に座り、隣では井田安寿さんや高野菜々さんが慣れない彼を優しくフォローしている。微笑ましい光景だ。
いざ読み合わせがスタートすると表情も一変し、真剣さが声にも現われてきた。セリブ回しも良く、演技力の片鱗を見せつけた。藤岡さんの演技力はヴォーカリストとしての才能と源が一緒だと私には感じられた。一流のヴォーカリストは音域や表現力に幅があり、その中で自由自在にメッセージを訴える。強く訴えたいところで声を張るのではなく、あえて抑えながら低音を響かせるといったテクニックを駆使することが出来る。藤岡さんにも同種のものを感じた。休憩時間に少し話をすると、ダニー・ハザウェイやカーティス・メイフィールドといったR&Bの神様のようなヴォーカリストをリスペクトしているという。やはり、であった。
今後も時折稽古場に行き、藤岡さんと音楽座ミュージカルとのコラボの発展を見守っていきたい。
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