立花裕人のFREEWAY

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「卒業」 東野圭吾

 気がつけば、東野作品もこれで3作目となった。「赤い指」に登場したのが加賀恭一郎という警察官なのだが、この加賀シリーズを読み解くことにより、東野マジックの真髄に迫れればと思っている。余談だが、先日書店にて東野作品の解説本のようなものを見つけた。出版不況の折、ここまで売れる東野作品にヒットの秘密を探ろうとしている輩は多いようだ。
 さて、この作品は大学時代の加賀が周囲でナゾの死を遂げた友人達の秘密と死の真相に迫っていくという内容だ。私が今まで読んだ3作品の中では、ストーリー展開やトリックにも無理があると言わざるをえない。前作の「放課後」で江戸川乱歩賞を受賞、その後の作品としてはインパクトに欠ける。
 「放課後」では女子高生と教師のやり取りなどから、いきいきとした学園生活を描き出したが、この作品での大学生活には迫ってくるリアリティも感じられない。人物描写には定評のある東野氏だが、登場人物の個性も今一つだ。実は加賀恭一郎という人物からも、一体どのようなキャラクターを設定しようとしているのかという作者の意図が伝わってこない。クールなのかホットなのか、何を人生の指針にしているのか、ユーモアはあるのか、今一つ加賀氏の魅力が分からないのだ。
 今回は推理のトリックは二つある。第一の密室トリックと、第二の茶道をめぐるトリックだ。密室好きの東野氏だが、今回の鍵をめぐるトリックはいただけない。これは読んだ人の多くが思ったのではないか。さらに、二つ目の茶道をめぐるトリックにいたっては、何回も図を表示しなければならないほどに難解で、加賀氏の謎解きを聞いているだけでも飽き飽きしてしまう。これは小説向きのトリックではないのではないか。
 私は決して東野氏の作品を批判したくて、このレビューを書いているわけではない。ただ、これだけ多額の印税を手にしている以上、作品に関しての真摯な批判や批評にも耳は傾けてほしいと思っている。そして、多くの人の期待に応えて「さすが!」と唸らせるミステリーを書いてほしいのだ。
 昔からのミステリーファンの一人として、東野作品には物足りなさも感じてしまう。

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坂元健児ライブ

 12月4日、私は渋谷のヤマハエレクトーンシティ渋谷を訪れた。良き友人であるミュージカル俳優の坂元健児さんのライブを聴くためだ。100人規模の小さなホールだが、歌唱力で定評のある坂元さんの歌声を間近で聴きたいというファンにとってはとても快適な場所だ。
 結論から言うと、最近観たライブの中でも何本かの指に入る素晴らしいステージだった。
 第一に坂元さんの歌声がきわめて良く響いていた。レミゼが終わり、体調も万全ということもあるかもしれないが、声の強弱やデリケート表現力など、歌手としての才能も進化中なのだと感じさせる。さらに、会場の音響も坂元さんの歌声のニュアンスを上手くとらえていた。小さなホールならではの心遣いだろうか。
 第二にゲストを迎えたことが成功に導いた。今回は坂元さんが舞台で共演した小林遼介さんと本田育代さんという二人のボーカリストを迎えたのだが、二人とも上手く、さらに坂元さんとの声の相性が良いのだ。小林さんは長身で甘いマスクの持ち主。英語も堪能で、別所哲也ジュニアという雰囲気を私は感じた。ミュージカル「レント」からの「WHAT YOU OWN」では、迫力あるロックデュオを聴かせた。坂元さんも本当に気持ち良さそうに歌っていた。本田さんは知性を感じさせる美人で、歌声にもとても品がある。ミュージカル「アイーダ」からの「星のさだめ」など、本家よりも上手いのではないかと思わせるデュエットには感動した。そして、忘れてはならないのが、エレクトーンの伴奏を担当している宮崎誠さんだ。その才能が買われ、来年にはミュージカルの音楽監督もつとめるとのことだが、エレクトーンかピアノ一台での伴奏でも、とても迫力を感じさせる素晴らしい演奏だった。
 選曲もクリスマスを控え、ロマンティックなものも多かった。槇原敬之の「北風」や母への感謝を表した「あなたへ」など、心がほっこりするナンバーに感動した。
 このライブの内容ならもっと大きなステージでと欲も出てくるところだが、コンパクトなホールならではのアットホームさが成功の大きな要素なのかもしれない。
 来年の坂元さんにも大いに期待したい。
  

「放課後」 東野圭吾

 前回、「赤い指」について書いた時に、東野氏があまりにも売れっ子になったゆえに、一冊に込める熱量が不足しているのではないか、と指摘した。その指摘が当たっているかを確認するためにも、私は東野氏の初期の作品を読もうと思った。それがこの「放課後」で、江戸川乱歩賞を受賞した。
 結論から言うと、「放課後」にはきわめてみずみずしい作者の感性がほとばしっている。ストーリーは女子高における殺人事件なのだが、教師と生徒のやりとりもきわめて自然に描かれている。
 私は東野氏はとても俗的な価値観を持っている人だと思う。酒も飲むだろうし、おそらく女性もかなり好きなタイプではないかと推察する。教師と女子生徒のやり取りにも、少し淫らな匂いを感じさせたりもするのだが、東野氏の良さはその俗的な価値観を散らばめながらも、決して俗的一色には染まらせない品の良さを保っている。このあたりの抑制が女性からも評価を受けているのだろう。
 女子高での殺人事件と容疑者と思わせる教師や生徒の存在、学校の行事や生徒の心の動きなど、ストーリーテラーとしての才能はさすがだと思う。人の心の動きを描かせると、本質をつかむのがとても上手い。ただし、密室トリックに関しては、やや不自然さも感じるし、説得力が強いわけではない。「赤い指」の時にも感じたのだが、トリックよりはストーリー展開に重きを置く人なのだろう。
 主人公の男性教師のプライベートな部分もストーリーの伏線になっているのだが、この結末に向けての展開には唸らされた。特にラストシーンなどは映画のワンシーンのように迫ってきて圧巻だ。
 さまざまな東野評によると、この作品はまだ序の口で、今後円熟味を増してくるとのこと。私も「卒業」をすでに手にしていて、やはり東野マジックにはまろうとしている。

音楽座ミュージカル

 私はミュージカルが大好きだ。今、日本で好きな劇団は3つある。劇団四季、TSミュージカルファンデーション、そして音楽座ミュージカルだ。以前、音楽座として活動していた時代には土居裕子さんをはじめとして、今のミュージカル界で活躍する才能を輩出し、数年前に再始動した音楽座ミュージカルの理念に私は共鳴している。
 学習塾の早稲田塾をここまで大きくし、音楽座ミュージカルを牽引しているのは昭和一ケタ生まれで、今もパワフルな相川レイ子さんで、相川さんの生き様と哲学が作品にも色濃く反映されている。相川さんの理念をいくつかのキーワードで記すならば、「夢は叶う」「前向きに生きる」「演技には日常が反映される」といったことになるだろうか。アメリカでいうところの「ポジティブ・シンキング」にかなり近いが、相川さんによると、何かの書物などからの教えではなく、自らの人生観で編み出した理念とのことだ。最近、私も相川さんとお話をする機会を持っているが、「私は未来からダウンロードして今を生きているの」と語っていらしたのが印象に残っている。見た目もきわめてお若いが、後ろを振り向かない姿勢が精神的にもとても若く感じさせろ魅力的な女性だ。
 音楽座ミュージカルの12月公演が「泣かないで」の再演だ。故遠藤周作氏の「わたしが・棄てた・女」をミュージカルにしたもので、遠藤先生もとても気に入られていたという。出世欲も強く、男の煩悩も多い吉岡と、地味ながらも自らを犠牲にする女性ミツとの出会いから、その後の様子が描かれている。遠藤氏はクリスチャンで、作品にもキリストを彷彿とさせる好人物が登場する。この作品ではミツを聖女として描いている。今回、吉岡をメインで演じるのはミュージカル界の注目株の一人、藤岡正明さんで、その圧倒的な歌唱力とともに俗世の価値観いっぱいの吉岡をどう演じるのかが注目だ。
 不況の世の中、金勘定ばかりに気を取られ、人間として生きる本質に目をつぶるケースも多いが、音楽座ミュージカルは私達に必要なものをいつも認識させてくれる。だから私も好きで、必死で応援しようと思うのだ。
 ぜひアナタも音楽座ミュージカルに触れてほしい。

「赤い指」 東野圭吾

 大ベストセラー作家の東野圭吾氏の作品を私はあまり読んでいない。なぜか?あまりにもたくさんの人が読んでいるからだ。私にはかなりあまのじゃくなところがあり、同じ理由で宮部みゆき氏の作品もほとんど読んでいない。
 「赤い指」を読んでみようと思ったのは、家族の秘密にメスを入れる作品と銘打たれていたからだ。一見平和そうに見えるどの家庭にも、外からは見えない嵐が吹き荒れていることは多い。殺人事件と、ある家庭の秘密に加賀恭一郎が迫る、そのキャッチに惹かれたのだ。
 読み進めるうちに、東野氏の作品が多くの人に読まれる一つの理由は分かった。一文の長さがきわめて短く、とても読みやすいのだ。赤川次郎氏や西村京太郎氏を例に取るまでもなく、大ベストセラー作家の文章は平易なケースが多い。かと言って、直木賞受賞作家の文章が稚拙であるはずはなく、平易ながらも心理描写や情景描写には奥深さも感じ、さすがと唸らせる。
 しかし、だ。この作品における推理部分での展開などには、あまり驚くところは無い。ネタバレになってしまうので詳細は省くが、先が見える展開ではある。思い入れがいっぱいで読んだ割には、正直なところ、やや残念な読後感だった。
 そこで、私は東野氏のあまりにも多い著作の数との関係に思いをはせる。不況の中、出版社は売れる作家にオファーを集中させる。東野氏にもおそらく、何年か先までの予定がぎっしりだろう。スタッフの協力もあって著作活動は進められるのだろうが、どうしても作品の密度が薄くなってしまうのは致し方ないことなのだろう。
 ベストセラー作家ならではのジレンマなのかもしれない。そこで、私は東野氏の著作の原点を知るべく、江戸川乱歩賞を取った「放課後」を読み始めた。まだ2、30ページしか読んでいないが、初々しさが感じられる。良い出だしだ。いずれ「放課後」のレビューもここで、と言っているうちに、私もおそらく東野マジックに引きずり込まれていくのだろうか。

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