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Que sais-je?
曹洞宗の3つの寺院で参禅し、今のところ自宅でも短時間なら毎日坐っています。12/9-13と4泊で栃尾又温泉にプチ湯治。

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ネルケ無方、新潮新書、2011、6/11-6/17、印象度B+

ドイツ人禅僧が自身の修行遍歴を綴った本で、最終章には欧米人と日本人の修行のあり方についての比較など、外国人故に見えてくる興味深い所見がまとめられています。日本仏教、特に雲水の実態を赤裸々に「暴露」しているのが特徴的。

著者が、日本で実践されている仏教の姿に接して、「仏教は本来そんなものではない! 道元禅師はそんなことを言ってはいない!」と幻滅の繰り返しの中で、いかに本来の仏教実践のあり方を求め続けてきたがわかります。しかし、それが現実。仏教を追求する人は、それを承知の上で、著者のように、それを乗り越えて求道していけばよいのでしょう。

しかし、読者が仏教自体に嫌悪感を抱いてしまったら元も子もない。著者も巻末で述べているように、本書は日本仏教批判として書かれたのではなく、読者自身の仏教との関わりのヒントになることを期して書かれたのでしょうから。幻滅すべきは仏教者の現実であって、仏教そのものではない。

そして、本書で随所にポロッと語られる本質的な話、「自分を忘れる」だとか、「思いを手放す」といった話、これらに注目してほしいです。本書には、仏教の神髄がしっかりとこめられています。

一つ、面白かった点。著者が坐禅指導をする際、欧米人に対しては「自分を忘れる」ことに眼目を置くのに対して、日本人には「自分の修行である」と主体性を意識するように説く、というところ。生まれた時から「仏教国」(と言っていいのかどうかは分かりませんが)にいる人と、いわば外部から特別の興味を持ってやって来る人との気質の違い、仏教の捉え方の違いが端的に現れています。

以下、抜き書き。

(前略)……坐禅して初めて分かったのは、姿勢が変われば、私の見ている世界も変わり、私自身も変わってくるということです。(p.26)
身体のあり方が精神に作用する、というわけですが、すぐ後に、彼は、
「私=頭の中の主観」が身体という「道具」を持っているというのは誤りで、「この身体がそのまま私だ」という気づきです。(p.26)
とまで言っています。精神が肉体を支配するというような近代西洋的な考え方の対極を行っています。

仕事場をも、家庭をも、各々が創造し、そのためにはまず各々が自分を忘れなければなりません。(p.83)
例えば仕事。「私がその仕事をする」というのではだめで、私が「仕事そのもの」にならなければならない。

ある限界を超えてしまうと、「私が坐禅している」という感覚が、「坐禅が坐禅している」という感覚に変わってしまいました。私が歯を食い縛ってがんばらなくても、坐禅が私を運んでくれているということが分かったのです。(p.136)
だから、仕事にしても、「仕事が仕事している」「私は仕事に運ばれている」という感覚を持つようになればいいのです。できますか?

無限の海を泳ぐ魚、無限の空を飛ぶ鳥。まさに悠々自適。その「水」と「空」は何かといえば、各々の人生であり、自分が生きている「今」と「ここ」です。私自身は長い間、人生の解決をその「外側」に求めていましたが、そうではなく、「今・ここ」を生きること自体が解決でした。「今・ここ」を離れてしまえば、命も何もないという歴然たる事実を、私は長い間忘れていました。(p.184)
まさに名越康文の「今、ここ」というのは仏教思想を取り入れたものなのでしょう。

私の禅修行は、「迷いの解決」を求めるためのものではありませんでした。坐禅に問われ、作務に問われ、家庭生活に問われ、この日々こそ私の修行であったのです。(p.252)
結語の部分です。逃げ出すのではなく、今、この場で面していることに向かう。そして自分がそれに対して答える。それが生きる意味である。

抜粋の順番が前後しますが、ほかの著者(姜尚中や税所篤快)にも引用されていた、ヴィクトール・フランクルの『それでも人生にイエスと言う』(春秋社、1993)からの言葉を、本書の締めのために援用しています。
私たちが「生きる意味があるか」と問うのは、はじめから誤っているのです。つまり、私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。人生こそが問いを出し私たちに問いを提起しているからです。(p.251)

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