理系白書ブログ

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和歌山の大人

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元村です。しばらくごぶさたでした。

この週末、和歌山へ出かけてきた。
45年の生涯の中で、和歌山へ足を踏み入れるのは初めてだった。
ちなみに、和歌山は私が訪問した46番目の県。あと1つ、未踏の県がある(どこかは秘密)

和歌山で毎日新聞主催のイベントがあり、そこでの講演と対談を引き受けたのだ。
対談相手は、島精機製作所の島正博社長(74歳)。
不勉強な私は、依頼があるまで、島精機という会社も名物社長も存じ上げなかったのだが、調べてみたらおもしろい人だった。

島精機は、ニットの横編み機で世界トップシェアを誇る。世界中の横編み機の7割以上が、この会社のものだ。とりわけイタリアの高級ブランドの多くは同社の機械がなければ夜も日も明けないという具合。「日本の中の世界一」である。

創業者である島正博さんは、いわば立志伝中の人。父親を戦争で亡くし、12歳で一家の大黒柱となり、工業高校の夜間に通いつつ、18歳で効率のよいゴム入り安全手袋(軍手)編み機を発明。経済成長が一段落した1967年、軍手の編み機からファッションに手を広げ、コンピューターをいち早く導入することで複雑な目の増減や模様の編み込みが可能な精密な機械を実現し、会社は急成長した。

土井隆雄さんや山崎直子さんが、国際宇宙ステーションで着た普段着は、この会社が発明した、縫い代も縫い目も切りくずも出さない「ホールガーメント」という技術で編まれたもの。この技術、ファッション業界でも、より柔らかく多様な表現ができると評判を呼び、島さんは毎日ファッション大賞の功労賞も受けている。いやはや。

講演では「独創性を育てる」と題して、独創的な成果を出す科学者・技術者の共通点について話し、休憩を挟んで島さんとの対談に移ったのだが、彼の人生を振り返ると、講演で指摘したポイントがことごとく当てはまる。びっくりした。

・人がやらないことをやる
・とことんやる
・常に考え続け、偶然を見逃さない
・失敗をこわがらない
・才能を見抜いて育ててくれるメンターを持つ

1964年暮れ、全自動手袋編み機の開発が資金枯渇でどうにもたちゆかなくなり、会社経営も危なくなったのだが、見かねた知り合いが紹介してくれた大阪の企業家が、見ず知らずの島さんに100万円の現金を提供してくれたという。島さんはこれで開発を全うし、今の島精機がある。後年、島さんは株式上場で得た利益のうち5億円を経営難の学校法人に寄付したそうである。

すごい人なのだが、会ってみると実直で温かな人だ。
自他共に認める食いしん坊でもある。
貧しい頃、お金持ちの家から漂ってくるすき焼きの匂いに「いつか俺も、肉を好きなだけ食べられるようになってやる」と思ったそうだ。ハングリーさと、目標を見失わない強い意志、そして他人のために動けば、いつか自分に返ってくるという「give and given」の心が大切だと強調しておられた。

和歌山に大人(たいじん)あり。
写真は、創業当時を再現したミュージアムでの島さん。

和歌山の旅の続きは次回エントリで。


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