キャピトンよ さようなら

風花雪月あと少しです。ここで挫けないようにがんばります。

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風花雪月  63

 
 
済州島での3日間は俺にとって色々な意味で成長出来る時間だった。
チェギョンの覚悟、両親の優しさ、そしてシファヒョンの想い。
その全てに報いたい。これからの俺の生き方でこの感謝を表していかなければと心に誓った。
 
そして今シン家の門前で父上と共に肩を並べその時を待っていた。
 
「シン大丈夫か?」
「不思議ですね。今は落ち着いています。夕べは眠る事すら出来ない程緊張してたって言うのに可笑しいです」
 
 
昨夜チェギョンとの電話を終えた後、緊張のあまり寝付く事が出来ず心臓が高鳴っていた。
未だに押せないインターフォンの前で大きく深呼吸をしていると、誰かの足音が近づいてくる。一定のリズムを刻むその音は俺の心を静めるかのように知らぬ間に同調していく。
その音がすぐ近くに聞こえ視線を向けるとそのリズムは静に止まった。
 
「…ヒョン」
「シン、それに皇帝陛下まで、先日は大変お世話になりました。とても有意義な時間を過ごす事が出来ました」
 
「シファか。私達の方こそ楽しませてもらった。世界的なピアニストが奏でるメロディーを独り占めした気分だよ」
「未来の…ですけどね。一日も早くご期待に添えるようがんばります」
 
 
シファヒョンと父上の他愛のない会話を聞きながら、ヒョンにとってどう有意義だったのかを考えてしまう。
大きな決断を決めたのは俺達だけではない。ヒョンにとっても決断の時だったはずだ。
 
 
「陛下。こんな時に大変申し上げにくいのですが、どうやらシンが私に話があるようなので少しだけお借りしてもよろしいですか?」
「ははっ。さっきからシンは固まったままなんだ、この緊張を少しほぐしてやってくれ。私は車の中で待っている」
 
 
笑顔を残し父上は一度車に乗り込んだ。
正直、今ヒョンと話す事が俺にとっていい事なのか悪い事なのか判断が付かない。ただ、今ヒョンから逃げ出す事だけはしたくなかった。
 
「すぐに済むから」
 
ヒョンの言葉に頷きながら少し後ろを歩く。数歩先に進んだベンチに腰掛け俺達の周りはイギサが遠巻きに取り囲んだ。
 
 
「シン。チェギョンのご両親に挨拶に行くんだろ?」
「ええ。知っていたんですか?」
 
「ばーか、お前の表情を見れば誰だってわかるって」
「酷い顔してます?」
 
「酷い顔っていうんじゃなくて、戦いにでも行くみたいだ」
 
戦いに行く?でもある意味戦いより激しい感情かもしれないな。
 
「心配するな。大丈夫だから」
「これは心配なんでしょうか?」
 
「恐れだろうな」
「ですよね」
 
「骨は拾ってやる。だから安心しろ」
「拾って頂かなくて結構です」
 
 
ヒョンらしい励まし。骨を拾ってやるとはっきり言うくせに、後の事は自分に任せろとは絶対に言わない。
それだけ俺の事を認めてくれているという事がジワリと伝わってくる。
 
 
「なんか勇気出ました」
「骨を拾ってもらえるからか?」
 
「ええ。その腹黒そうな笑顔のおかげでね」
「俺のどこが腹黒なんだよ」
 
 
ほんの一瞬の事だった。何をいうわけでもなく人の心を解いていくこの人を俺はこれからも追いかけて行くんだと思う。少しだけ悔しいけどいつまでも憧れの存在でいて欲しいから。
 
「ヒョン」
「ん?」
 
「行ってきますよ」
「おお!俺もジョギング行ってくる」
 
 
またなと手を振るヒョンの後姿に頭を下げた。
いろいろな事を教わった。あの人がいたから俺は成長する事が出来るのだと思える人。
 
再び門扉の前に立ち、今度はすんなりとインターフォンを押した。
中から聞こえる騒がしい声に自然と笑みが浮かんでくる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
学校から戻ると家中がキレイに整えられていた。
いつもお手伝いしてくれるおねーさんたちがキレイに片づけてくれてはいたけど、今日はいつにもまして凄い。
玄関を開けたらびっくりするほど大きな花瓶に活けられた花?枝?…フラワーアレンジメントと日本の生け花の融合らしいけど凄すぎる。
廊下に敷かれた絨毯さえも変えられている。朝はいつもと変わらなかったはずなのに、そんな時間あったのか?と関心しちゃった。
 
 
「オンマ。ただいまぁ でっ!?」
「チェギョンおかえりーっ」
 
「何してるの?」
「え?お料理だけど?」
 
「それ誰が食べるの?ってかオンマが料理?アッパは?」
「アッパは寝込んでるからオンマが変わりに作ってるんだけど、これだけじゃ料理たりないよね」
 
 
キッチンの作業台に所せましと並べられた料理達。きっと宮廷料理を作ったんだろうけど、どんな料理か皆目見当もつかない。だけど、今日はそんな料理なんて必要ないでしょ!
 
「オンマ。シン君達が来るのは夜だよ」
「わかってるわよ!だから夕食を用意してるんでしょ」
 
「今日は結婚の許しを貰うだけで、食事は済ませてくると思うよ。それに陛下もシン君も宮以外で食事出来ないの知ってるでしょ」
「あ・・・」
 
うん。気付いてくれたんだね。うれしいよ。
だけど「あ」って言ったきり唇とじないし、手は止まってるし、完全に思考停止状態なのはわかるけどさ。
それ以上に気になるアッパの事。
 
「オンマ!オンマーーーーっ」
「え?あっ、そうよね。食べられないわよね。じゃこれご近所に」
 
「そうじゃなくて!アッパ寝込んでるって何?」
「あぁ、緊張から来る動悸、息切れ、心臓発作だって」
 
「心臓発作?」
「冗談にきまってるじゃない。ただ、落ち着かないんだと思うわ」
 
「アッパ、反対なのかな?」
「心配はしてるけど反対はしてないわよ。皇太子殿下あけだったら言いたい事もあったらしいけど陛下が一緒じゃ何も言えないでしょ。あの気の弱さがいいところでもあり悪い所でもあり…。」
 
「言いたい事って?本当はだめだって言いたいのかな?」
「だから、心配はしてるけど反対はしてないって言ってるでしょ。そろそろ起こして来て。陛下達が来る前に食事もしてお風呂入ってすっきりさせてあげたいから」
 
 
オンマに背中を押されアッパの眠る寝室へ向かった。
寝ていたはずのアッパは立ち上がり窓の外をジッと眺めていた。その表情がいつものアッパとは少し違っていてなんだかカッコイイなぁなんて思ってしまった。
 
 
 
 
 
 
家中にインターフォンが響きシン君の到着を伝える。
 
「はーーーいっ」
 
 
インターフォン越しではなく直接声を張る私にオンマの怒り声が届いたが今はそんな事は気にしていられない。
勢い良く門を開くと大好きなシン君。その横に先日まで一緒に過ごしたシン君のお父様である皇帝陛下。
そしてコン内官とキム内官。イギサのお兄さんたち。
自分の登場の仕方がそぐわない事に気付いても今更、だよね。
 
 
「皇帝陛下。ようこそお越し下さいました」
「ははっ。チェギョン堅苦しい挨拶はここではいらない。中に入れてくれるかな」
 
「はい。おじさまお入り下さい」
「シン、私は先に行ってシン氏と奥方にご挨拶をしてくる。まずはチェギョンと話しなさい」
 
 
陛下はシン君の肩をポンポンと叩くと先に玄関の中に入って行った。それに続くイギサのお兄さんたち。
コン内官たちもシン君に目礼すると私に笑顔を向けて中に入っていった。
 
 
 
「チェギョン大丈夫か?」
「うん。私は平気だけどシン君は?」
 
「さっきまで盛大に緊張してた。でももう大丈夫だ」
「ふふ、シン君を幸せにしてあげるからね」
「頼もしいな」
 
そっと抱き寄せられ一瞬だけ力が込められた。
すぐに離れてしまったシン君に淋しさを感じながらも見つめる瞳の力強さにホッとする。
 
「行こう」
 
強く握り締められた手が熱を感じる。大丈夫とは言いながら緊張はしてるはず。
だけど信じてるからね。ここから私達が始まるって事を。
 
 
部屋に入ると陛下と私の両親が和やかに会話をしていた。
私達がそばまで行くとアッパは急に真剣な表情になり、陛下も一歩後ろへ下がった。
 
「失礼いたします」
 
シン君の声と共に私達は両親の前まで歩き姿勢を正した。
その時、隣にいるはずのシン君の姿に消えたのではと錯覚を起こすほど彼は身を小さくしていた。
 
歳拝(せべ)?シン君が歳拝!?
韓国皇太子の歳拝など陛下以外に受けるモノがいるのだろうか?
だけどそれはとても自然でそれを受ける両親の顔にも驚きの表情は浮かんでいなかった。
歳拝を終えたシン君が両膝をつき私の両親に頭を下げる。それをどこか遠くで見詰めているかのような私。
 
そしてシン君はあの言葉を口にした。
 
 
 
「私イ・シンはシン・チェギョンさんと生涯を共に過ごしたいと思っております。私達の結婚をどうかお許し下さい」
 
シン君の口から丁寧に発せられる一つ一つの言葉に胸が苦しくなっていく。
こうやって自分の両親に結婚の許しを得る事がここまで緊張する事だとは思わなかった。それ以上に私の大好きな人が自分との結婚の許しを両親に問うているという事が胸が締め付けられる程嬉しい事だと思わなかった。
感動に浸る私の耳に飛び込んできたアッパの言葉を聞くまでは…。
 
 
「チェギョンとの結婚は考えなおしてくれないか」
 
 
アッパの言葉にシン君も私も瞬きすらできずに佇んでいた。
 
 
 
 
 

閉じる コメント(8)

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11:29の鍵コメさん こんばんはーーーーーっ

いつも来てくれてありがとうございますぅ♪
うふっ。多分大丈夫だと思うんだけど、きっと親ならば思う事があるのではないかと…。
直ぐに解決してくれればいいんですけどね。
ずっと待っててくれてありがとうございますぅ❤

2013/3/30(土) 午前 0:01 りんりん

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りんりんさん、こんばんは
更新有難うございます シン君陛下とシン家に結婚の
許しをと其処でチェギョンの父から考え直して欲しいと
チェギョンやシン君にとって考えてもない言葉ですね
続き待っていますね

2013/3/30(土) 午前 0:24 はなちゃん

アンニョン〜^^

アッパの牙城は簡単に崩せるかと思いきや
ま、これも乗り越えないといけない壁。
大事な娘を掻っ攫われるんだから
少しくらいへこませるのも
お父さんとしては ありかな ^m^

2013/3/30(土) 午前 0:43 miharuru

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りんりんさん、こんばんは♪

忙しい中更新ありがとうございますv(=^0^=)v
シファヒョンのおかげで、緊張もほぐれ上手くいくのかと思いきや、
チェギョンのパパの思いもよらない反対に私もびっくりΣ(゚д゚lll)
シン家最強のオンマはどうするんでしょ〜((((;゚Д゚))))

2013/3/31(日) 午前 0:38 [ roko ]

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はなちゃんさん こんばんはっ!

だよねぇ。きっと反対されるなんて思ってなかったよね。
だってね、書いてる私でさえビックリしたから(笑)
きっと乗り越えられると思うよ〜。
シンチェだもん!色々乗越えて来たからね❤
見守ってやってください(笑)

2013/4/6(土) 午後 11:58 りんりん

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こもーん あんにょん!

そうなんだよ。ここまで乗越えて来たんだもんもう一山二山あったって乗越えてくれるよね〜(笑)
アッパの気持ちもわかってやるんだぞっ
と応援しつつこの展開アタシも想像してなかったりして(笑)

2013/4/7(日) 午前 0:00 りんりん

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rokoさん こんばんはっ!

うははっはっ。でしょビックリだよね!
何を隠そう私が一番びっくりです(笑)
だってこれで終焉と思っていたのにアッパ何故に反対!?
って感じだった。
傍で私が書いてる姿を見てたらきっとrokoさん爆笑してたと思う(笑)
オンマどうするんだろうねぇ〜
この後停電しなければ更新します!

2013/4/7(日) 午前 0:03 りんりん

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31日10:35の鍵コメさん こんばんはっ!

うはっ31日の更新だったのか!と別の所でビックリしてた(笑)
お久ですぅ〜♪待ってましたよ〜❤
思い出してくれました?うふっそれ嬉しい!
アッパね。それアタシが一番びっくりしちゃった(笑)
自分の予定とは違って書いてるうちに指が勝手に・・・
うははははっ。そんな事ばっかりでこんなに長くなってるんだろうねぇ
これを書いてる時の私の表情が一番笑えるんじゃないかと思う!
この回を書き終わって直ぐ「はっ!?」って自分で言ってたから(笑)

2013/4/7(日) 午前 0:09 りんりん


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