キャピトンよ さようなら

風花雪月あと少しです。ここで挫けないようにがんばります。

☆Serendipity☆

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serendipity 最終話

 
「何処に・・・何処に居るの?シン君」
 
チェギョンは自宅を飛び出し明洞へ向った
皇太子がこんな街中に居るなど普段なら考えられない
だが何か見えない力にでも引き寄せられるかの様にその街を目指した
 
『シン君に私の気持ちを伝えなきゃ
 お願いシン君・・・何処にも行かないで!!』
 
 
 

「クソ! チェギョンの奴なんで携帯に出ないんだ!」
 
一方シンもチェギョンを求め宮を飛び出したものの
その脚は別の場所へ向っていた
 
「頼む!電話に出てくれ!!」
 
何度も繰り返される留守番電話サービスのアナウンス
その声にこれほどの恐怖を感じるとは
そして再びリダイヤルを押す
 
トゥルルルルルル…
 
「!!!もしもし!? チェギョン!!」
 
「もしもし?」
 
誰だ!?携帯から聞こえる声はチェギョンの声では無かった
一瞬にしてシンの思考が止まる
 
「もしもし? どなたですか?」
 
「あの シン・チェギョンさんの携帯ではないですか?」
 
「そうですよ でもあの子携帯忘れて飛び出して行ってしまったの」
 
「飛び出した…  申し遅れました イ・シンと申します
 あの…チェギョンさんがどちらへ行かれたかご存知ありませんか?」
 
「知ってますよ」
 
「どちらですか!?」
 
「殿下 チェギョンは大好きな人の元へ行くと言っておりました
 多分殿下の元へ 」
 
「え!?」
 
俺の元!?もしかして・・・

 
「殿下 チェギョンを宜しくお願いします」
 
「分かりました ありがとうございます」
 
チェギョン頼む!其処に居てくれ
直ぐに行くから!!
 
 
 
 

 
 
シンが目指した場所は明洞
チェギョンとの思い出の場所
 
此処での出会いが全ての始まりだった
そして必ず其処にチェギョンは居る
シンの心には何の迷いも無かった
 
 
「チェギョン!!!」
 
「シン君!」
 
 
細い路地裏の向こう側から走り寄るチェギョンの姿を見つけたシン
二人には互いの存在以外何も目に入らない
 
「やっと見付けた」
 
抱きしめる腕に力が入る
触れる腕も胸も指先さえも愛しい人を記憶する
 
「シン君!あのね 私シン君に話したい事が沢山あるの」
 
「あぁ 俺もだ!でももう少しこのままで
 チェギョンを感じさせて!」
 
「シン君 大好き」
 
「!! 俺の方がもっとチェギョンを好きだ!」
 
やっとチェギョンから聞くことの出来た魔法の言葉
抱きしめる腕に力がはいる
 

「痛いよ シン君」
 
「これくらい我慢しろよ
 俺は 全然チェギョンが足りない!」
 
「・・・私もシン君が足りない」
 
「そんな可愛い事言うなよ 離せなくなるだろ!」
 
 
その時二人の足下に何かが触れた
その違和感に驚き視線を移すと見覚えのある猫
 
「「あ!!!」」
 
「そっかチェギョンもこの猫知ってるんだよな」
 
「うん!珍しいブルーグレーの長毛種
 何で外に出てるんだろう?」
 
「俺達の事は覚えて無いと思うけど店に入って爺さんの顔でも見てくるか」
 
「うん!」

 
 
ここはアンティークショップの前
二人の全ての始まりが此処からだった
 
店内に入るとカウンターには真っ白な髭を生やしたお爺さんが
以前と変わらず静かに眠っていた
 
お爺さんの膝に猫が乗るとそっと目を開け優しく撫でる
 
「お帰りチャチャ 何処に行ってたんだ?」
 
優しく響くお爺さんの声が懐かしい
二人の存在に気付くと微笑み掛けてくれる

 
「やっと二人揃って来たな」
 
「「えっ!?」」
 
「僕達を覚えていてくれたんですか?」
 
「いつか二人で来る日が来るんじゃないかと楽しみにしてたんじゃ
 忘れる訳がなかろう」
 
 
その言葉に驚き見詰めあう二人に優しい眼差しを向けながら話を続ける
 
「ワシのばあさんが昔話してくれた事があるんじゃ
 いつかこの人!と思う人にこれを渡しなさい
 それは何時とはいえないがそれを持つに相応しい二人が現れるはず
 そう言って手渡された物が【セレンディピティー】と呼ばれる2つのキャンドルだった」
 
「「!!!?」」
 
「お前さんたちに渡した事に理由なんてなかった
 ただ誰にも懐かないチャチャが興味を持ったのが二人だったんじゃ」
 
「え!?シン君も持ってるの?そのキャンドル」
 
「あぁ 3年前に此処で貰った・・・本当に大切だと想える人に出会ったら渡すようにって」
 
「でも・・・そのキャンドルに何か意味があるんですか?」
 
「ワシにも分からない ばあさんに言われた事さえ忘れていた位だからな
 ただお前さんたちに出会った時に自然に思い出せたんだ
 ワシが分かっているのはただ一つ」
 
「ただ一つ?」
 
「そうじゃ そのキャンドル【セレンディピティー】が
 『幸せな偶然』と言う意味を持つという事だけじゃ
 だからいつかお前さんたちが揃って現れるんじゃないかと
 それを楽しみにしていたんじゃ」
 
「・・・『幸せな偶然』」
 
 
 
店を出た二人は手を繋ぎ夕暮れの街を歩いた
以前チェギョンを追って夕暮れを駆け抜けた時は
不安に押し潰されそうになっていた
 
同じ夕焼けに伸びる二人の影がこれまでの道のりを振り返らせるように感じ
遠回りをした分長く想いを乗せているように思える
 
「チェギョン」
 
「ん?」
 
「セレンディピティー 持ってるんだろ?」
 
「うん!」
 
「こんなに素敵な幸せな偶然を運んでくれるなんて思ってなかった」
 
「うん」
 
「早く一つにして上げなきゃな!」
 
「うん」
 
「もう離さないから!」
 
「うん」
 
「何でお前さっきから「うん」しか言わないの!?」
 
 
そういって覗き込んだチェギョンの瞳からは今にも涙が零れそうに潤んでいた
 
「何で泣くんだよ!」
 
そういって抱きしめるシンにしがみ付くチェギョン
 
「だって!嬉しいんだもん!幸せなんだもん!!」
 
そういって泣き出したチェギョンが愛しい
自分の胸に顔を埋め甘えるように擦り寄るチェギョンが可愛くて
シンの心が締め付けられていく
 
「もっと幸せになろうな」
 
長く伸びる影が重なり一つに溶け込んで行った
 
 
セレンディピティー・・・・・・  それは幸せな偶然
 
                 
                                END
 

serendipity 21

 
 
「シン!少しいい?」
 
「ヌナ・・・何だよ」
 
「何よ!貴女の大好きなお姉さまが来て上げたって言うのに
 その可愛くない態度はなんなのよ!」
 
「はぁ・・・ 何ですか?」
 
「ふふっ ちょっと話したい事があってね
 お茶を淹れて貰ってるの 後で私の部屋にきてね」
 
「ヌナ・・・今はちょっと」
 
「何よ!断ろうっての?
 そうはさせないわよ!出来るだけ早く来てね
 待ってるから」

突然の姉の訪宮
この人はいつも強引でこちらの都合なんてお構いなしだ
 
孤独な時間を過ごす僕にとって 姉は特別な存在だった
長い海外留学から戻った時は本当に嬉しくて
いい年の自分が姉から離れなかった事もある
 
でも・・・今は一人になりたかった
チェギョンに触れた余韻に浸っていたかったのに
仕方ない・・・余り待たせて文句を言われるくらいなら
早く済ませて戻ればいい
ヌナの部屋に向いながらも
僕の頭はチェギョンで埋めつくされていた
 
「やっと来たわね〜 待ってたのよ!」
 
「今日ね!ちょっとお散歩に行って美味しいエッグタルト見つけたから買ってきたの
 一緒に食べようと思ってね」
 
「エッグタルト・・・そんなもの買ってきたんですか?」
 
「うん!凄く美味しいんだって!
 貴女の許嫁ちゃんが教えてくれたの」
 
「!!!?」
 
「何でそんなにビックリした顔してるのよ!」
 
「ヌナ!何で僕の許嫁を知ってるんだ?」
 
「何でシンは知らないのよ!」
 
「知らないって・・・興味なんか無いから」
 
「もうー! 自分の事なんだからもう少し興味もちなさいよ
 すっごく素敵な子じゃない!
 私の妹にしたくて! ねぇシン 早く結婚しちゃいなさいよ」
 
「ヌナ・・・他人事だと思って遊んでるだろ
 それに いつの間にその女と仲良くなったんだよ」
 
「その女だなんて 失礼よ」
 
「どうせその女も権力にしか興味ないダイプだろ!」
 
「何よそれ!どんな子かも知らないくせに
 彼女はそんな子じゃないわよ
 シン!貴方どれだけ酷い事いってるか分かってる?」
 
「煩い!僕は今許嫁どころじゃないんだ!
 やっと…やっと会えたんだ
 本気で全てを掛けてもいいと想える相手に…」
 
「シン 誠実になりなさい
 その全てを掛けてもいいと想える相手に出会えたのなら
 前を向かなきゃ しっかり前を向いて自分のするべき事をしなきゃ」
 
「・・・」
 
「最近の貴方 本当にいい顔してるって思ったの
 実はね・・・シンが女の子と一緒に居るところ
 この前見ちゃったのよね」
 
「え!?」
 
「優しい顔で笑ってた 
 あぁ これが本当のシンなんだ!って思った
 凄く素敵な子よね 彼女なんでしょ?」
 
「・・・だと思う」
 
「何で だと思うなのよ」
 
「はっきりと返事を聞いたわけじゃないから」
 
「ねぇ シン
 彼女がはっきり返事をしないのは貴方にも原因があるんじゃない?」
 
「・・・」
 
「貴方のその不誠実さが招いたものじゃないのかしら?
 許嫁の存在をしっかり認めそして自分の意思によって行動しなければ
 彼女にも許嫁の方にもすっごく失礼よ!」
 
「そうだよな・・・」
 
ヌナのいう事は正しい
俺自身 許嫁の事は避けて通れないとは思っていたのに
チェギョンの事だけに必死になり
自分がしなければいけない事を忘れていた

お婆様に背中を押してもらったのに
自分の事しか考えてなかったなんて
 
「ごめん」
 
「誰に謝ってるの?」
 
「全てに・・・」
 
「遅くないんじゃない?
 まだ間に合うわよ!自分の気持ちは固まってるんでしょ」
 
「ああ」
 
「そっか!じゃ 摂り合えずゆっくりお茶でも飲みましょうね」
 
「それよりもお婆様のところに行って来る」
 
「あら! 残念ね〜せっかくだけどお婆様は今お出掛け中よ
 摂り合えず今は其処に座って落ち着きなさいよ!」
 
 
俺は逸る気持ちを抑えヌナに促がされるままにソファーに腰を据えた
自分がするべき事が分かった気がする
気ばかりが焦るが とにかく落ち着こう
焦ってもいい結果にはならないはずだ・・・

俺はゆっくりを紅茶を口に運びながら思考を落ち着かせていた
ふと見上げた視線に飛び込む一枚の写真
 
 
 クン!
俺の心臓が大きく脈打つ 
 
 
何故この写真が此処に!?
何故彼女が!?
 
「ふふっ どうしたの?シン」
 
ヌナに視線を移すと ニヤケ顔で俺を見ていた
 
「ヌナ! もしかして全て分かっててこんな・・・」
 
「何の事かしら〜??」
 
クソっ!やられた・・・
 
「コレ!貰ってくからな!」
 
「いいわよ あら!?出掛けるの?」
 
背中越しに聞こえるヌナの声
きっと思いっきりわらってるんだろうな・・・
 
「ヌナ!」
 
そうだ 此処でまた大事な言葉を忘れるところだった
駆け出した俺は脚を止め 再びヌナの前に戻った
 
「ありがとう 気付かせてくれて」
 
「ふふっ! 幸せになりなさいよ」
 
 
そういって微笑むヌナの顔は凄く優しかった
再び俺は走りだした
手に握りしめたのは 愛しい人の写真
それはヌナの部屋に飾られた少し不安そうに微笑む
チェギョンの写真だった
 
ヌナは全てを知っていたんだな

早く!一秒でも早くチェギョンに会いたい
その一心で彼女の元へ・・・
 
 

serendipity 20

 
 
「アッパ! オンマ!!」
 
家に飛び込むなり大きな声で両親を探した
 
「何処に居るの!? オンマ!」
 
何故?こんなに探しているのに何処にも居ない
自分の気持ちに正直に・・・
ヘミョンオンニは私にそう言ってくれた
 
『運命の恋』その言葉は私に勇気をくれる

「あ!プレゼント!」
 
今年のクリスマスに送られた許嫁からのプレゼント
あの封は未だ切る事が出来ないの・・・
 
許嫁という存在に縛られ続けてきたのに
このプレゼントをあける事すら出来ないほど
私はシン君に魅入られていたんだ
 
その気持ちに目を背け
許嫁からも逃げようとしていた
 
「これだ・・・」
 
クローゼットの奥にしまいこまれていたリボンの掛かったままの小さな箱
この箱の中に何が・・・
リボンに手をかけたその時
 
「チェギョン? 帰ってるの?
 玄関開けっ放しでどうしたの? チェギョン!居るの?」
 
オンマの声が聞こえた
私は小さな箱を手にそのままオンマの元に急いだ

 
「おかえりなさい オンマ」
 
「チェギョン 門も玄関も開いてたわよ〜
 !!? 何?どうしたの?」
 
「え?」
 
「何かあったの?」
 
心配そうに私の顔を覗き込むオンマ
知らず知らずのうちに私の頬を涙が伝っていた
 
「あのね! オンマに聞きたい事があったの!」
 
「どうしたの? とにかく落ち着いて座って
 今ホットミルク入れてあげるから」
 
 
優しいオンマの顔にホッとして体の力が抜けて行くのがわかる
この優しいオンマが そしてアッパが私の幸せを願わないわけがない
 
 
「どう? 落ち着いた?」
 
身体の中に暖かく優しい熱が広がっていく
 
「オンマ・・・ 教えてほしい事があるの」
 
「ん? どうしたの?」
 
「私には許嫁がいるよね」
 
「そうね」
 
「何故私は許嫁の名前も知らないの?」
 
「それは・・・」
 
「・・・」
 
 
ジッと真剣な眼差しでオンマを見詰める
こんな質問をしてオンマを困らせる事になるかもしれない
今の私はこの優しい両親を裏切ろうとしているんじゃないの?
そんな不安に包まれる

 
「チェギョンが聞かなかったから!」
 
「えっ?」
 
「だって!許嫁がいるんだよ!って言ったらアンタ「ふ〜ん そうなんだ」
 って それしか言わないんだもん!
 何か拍子抜けして言いそびれちゃっただけよ」
 
「はぁ〜!? 何それ!
 じゃ!じゃ〜!聞いたら教えてくれたって事なの?」
 
「うん!別に教えてあげない!何て言ってないじゃない」
 
この母親は・・・・・
今までの私の苦悩はなんだったの??
 
「でもね!チェギョン」
 
「何よ!」
 
「教えなかったのにはもう一つ理由もあるのよ!」
 
「へっ?」
 
「聞かれたら答えるつもりだった・・・
 でもね、許嫁っていう存在に囚われず本当の恋をして欲しいって思ったから
 それは先方も同じ気持ちのはずよ」
 
「ど・・・どういう事?」
 
「許嫁として出会って結婚しても本当に幸せになる事だってある
 でもね、そんな相手が居ても心を振るわせるような恋をしてほしい・・・
 本当に結ばれるべき相手なら きっと貴方達は恋に落ちるはずだから
 でも、その相手が許嫁じゃなかったとしても
 自分自身を信じて貫く恋が出来るのなら
 この話はなかった事にしよう
 そう決めてたの」
 
「じゃ〜 私恋していいの?」
 
オンマは私を優しく抱きしめてくれる
 
「当たり前じゃない!
 チェギョン 素敵な恋をして!心が震えるようなそんな恋をして欲しい」
 
「ありがとう オンマ」
 
私はオンマの胸にしがみ付いて泣いてしまった
自分の許嫁にちゃんと向き合ってそして私はシン君の元へ・・・
 
でも シン君は皇太子
運命の恋とか心を振るわせるような相手とか
そんなことよりも大きな壁が立ちはだかっているんだよね
私・・・この恋に全てを掛ける事なんて出来るの?

 
「チェギョン 好きな人が居るのね」
 
「うん」
 
「じゃ〜 自分に素直になればいいのよ」
 
「でも・・・好きになっちゃいけない人なの」
 
「え?結婚してる人なの!?」
 
「オンマ・・・なんでそうなるのよ」
 
「え?違うの!? だって好きになっちゃいけない人だなんていうから」
 
「うん・・・身分の違い・・・かな」
 
「ふ〜ん チェギョン 一か八か行動してみたらいいんじゃない?」
 
「そんな! ムリだよ」
 

「何で決め付けるの?
 やってみなければ分からない事でしょ!
 ねぇ・・・恋だけじゃない全ての事において
 出来なかった 届かなかった事が問題じゃないの
 その為の努力をしなかった事が問題なのよ!
 人を好きになるのに身分なんてものは関係ないの」
 
 
「オンマ・・・でも怖いよ」
 
「自分を信じて! 大丈夫 貴女は幸せになるために生まれてきたんだも 
 チェギョン 忘れないで 掴めなかった事は決して恥じる事じゃない
 当たって砕けちゃう!って経験も必要よ」
 
 
「・・・うん」
 
「ねぇ・・さっきから何を抱えてるの?」
 
「あ!コレ・・・許嫁の方から送られて来たクリスマスプレゼントなの」
 
「開けてなかったの?」
 
「うん」
 
「開けてみたら?」
 
「そうだね」
 
 
 

私はゆっくりをリボンを解いた
箱の中にはもう一つのフォトスタンドとカード
 
そのカードを手に取り現れた写真に私の思考は止まってしまった
 
そこには大好きなシン君の写真
そして・・・
 
 
『メリークリスマス イ・シン』

とだけ書かれたカード
何故シン君の写真が・・・
 
オンマは優しく微笑んだまま私を見詰めている
 
 
「・・・オンマ」
 
「ん?」
 
「この人…私の大好きな人なの」
 
「そうなんだ」
 
「うん」
 
 
オンマはもう一度優しく抱きしめてくれた
 
「素敵な偶然ね」
 
「オンマ・・・ 私行かなくちゃ」
 
「そうね・・・いってらっしゃい」
 
 
私はシン君の写真を抱きしめたまま家を飛び出した
 
大好きなシン君に 
早くこの気持ちを伝えたい!!
 
ただ・・・この想いだけを・・・
 
 
 

serendipity 19

 
 
 
「シン・チェギョンさん」
 
「え?」
 
「こんにちは 今少しお時間いいかしら?」
 
「あの・・・」
 
 
急に呼びかけられ振り向くと
笑顔のとても素敵な女性が立っていた
その顔に見覚えはなく
何故自分が声を掛けられて居るのか皆目検討つかない
 
「あ!ごめんなさい!急に呼び止めてビックリしたでしょ」
 
「いえ どこかでお会いしてたらごめんなさい
 どなたでしたっけ・・・」
 
「あはははははははっ!」
 
 
『え?私何かおかしなこと言った?
 なんでそんなに笑うのよ!』
 
 
不思議顔でその女性を見詰めるとやっとの思いで笑いを止めたその女性
 
「ホントに素直な方なのね
 大丈夫よ!私達は初対面よ」
 
「はぁ・・・それなら何故私の名前をご存知なんですか?」
 
「そんなに堅くならないで!
 取って喰ったりしないから」
 
端正な顔立ちとは不似合いなその気さくな物言いに驚き
呆気に取られるチェギョン そんなチェギョンをその女性は思わず抱きしめた
 
 
「もー!チェギョンったら可愛いんだから」
 
「ちょちょと!!離してください!一体誰なんですか?」
 
「あ!ゴメンね 私の名前はイ・ヘミョンよ
 貴方が余りにも可愛くてつい抱きしめちゃった」
 
 
『イ・ヘミョン・・・どこかで聞いた事のあるような名前だけど・・・思い出せない』
 
 
「貴女の許嫁の姉のイ・ヘミョンです」
 
「あ!」
 
『許嫁の方のお姉さん!? え?でもお姉さんって本人の名前も知らないのに
 お姉さんの名前を知るわけがないじゃない!
 でも・・・何故お姉さんが現れるの?』
 
 
自分でも知らず知らずの内にヘミョンの前で百面相を繰り広げるチェギョン
そのチェギョンの表情にヘミョンは益々顔を緩ませる
 
「大丈夫よ!そんなに警戒しないで
 突然押しかけてごめんなさいね ただ貴女とお話してみたくて
 来ちゃった!」
 
『来ちゃったって・・・』
 
「ふふふっ」
 
 
初対面のしかも年下の自分に来ちゃったと微笑みかけるヘミョンに
チェギョンも思わず笑ってしまう
 
 
「あ! 笑ったわね〜  やっぱり可愛い
 貴女笑顔がとっても素敵
 チェギョンさん 少しでいいからお時間もらえないかしら?」
 
 
許嫁の姉・・・今のチェギョンにとって許嫁に関わる存在に
会いたくないのは当然の事
 
 
『私と話すって・・・何を?
 でも私も許嫁問題は何とかしなくてはって思ってた
 今がその言い機会なのかもしれない』

 
「少しでいいのなら・・・それに私もお聞きしたい事もありますし」
 
二人は連れ立って近くの公園のベンチに腰を下ろした
 
「何故私の事をご存知なんですか?」
 
「う〜ん そうね・・・
 以前にも貴女の事見かけた事があったのよ
 でも 昨夜貴女の写真をお婆様に見せてもらって
 あ!って思ったの・・・弟の許嫁は貴女だったんだ!って」
 
「私の写真を・・・」
 
「そう!貴女がクリスマスに弟に贈った写真よ」
 
「そうですか・・・」
 
「ねぇ…貴方達毎年クリスマスプレゼントは贈りあっているんでしょ
 それなのに相手の事何も知らないのね」
 
「・・・それは」
 
「ん?」
 
「そうなんですよね・・・私自分の許嫁の事何も知らないんです」
 
「そっか!それは多分 弟も同じだと思うわよ」
 
「え?」
 
「多分 貴女の送ってくれた写真も見てないわ
 あなたは毎年プレゼント見てるの?」
 
「一昨年までは・・・でも去年のものはまだ見てないんです」
 
「何故?」
 
「・・・」
 
「どうしたの? 何か理由があるんでしょ
 もしかして 他に好きな人でも出来ちゃったとか?」
 
「!!!」
 
 
チェギョンは驚いたままヘミョンを見詰めた
言葉には出さなくてもその瞳はチェギョンの気持ちをそのまま映し出していた
 
「ふふっ 図星!って感じね
 大丈夫よ! 別に悪い事してるわけじゃないでしょ」
 
「・・・でも」
 
「もしかして その許嫁の存在で今までまともに恋してこなかったとか」
 
「あの・・・」
 
「あ!いいの!いいの!
 私もね〜 この時代に許嫁って時代錯誤もいいとこ!
 そんなのナンセンスだって思ってるんだから」
 
「でも・・・」
 
「昨夜もね〜 お婆様と話してたのよ
 運命の恋ってお話をね」
 
 
【運命の恋】その言葉はチェギョンの心を動かす
 
 
「あのヘミョンさん」
 
「いやん!オンニでいいのよ!
 弟の許嫁とか関係なく 私貴女みたいな妹欲しかったのよね
 弟しか居ないって寂しいのよね」
 
「はい?」
 
「ふふふっ  チェギョン
 自分の気持ちが一番大切なんじゃない?
 運命の出会いが出来るって本当に素敵な事なんだし
 貴女の素敵な笑顔が見れて嬉しかったわ
 その笑顔を絶やさないで欲しいの
 それから!前を向いて歩き出して」
 
「え!?」
 
「私は一度貴女と話をしてみたかっただけなの!
 別に早く弟と結婚しろっていいに来たわけじゃないのよ
 さっきも言ったでしょ!
 この時代に許嫁なんでナンセンスだって」
 
「一つお聞きしてもいいですか?」
 
「なあに?なんでも聞いて」
 
ヘミョンは自分の胸を大きく一つ叩いた
 
「ヘミョンさんの」
 
「オンニでしょ!」
 
「…オンニの弟さんはこの結婚に対してどう思っているんですか?
 あと…ご両親とかも…」
 
「う〜ん そうね〜 どうなんだろう?
 でもね 大切なのはチェギョン自身の気持ちだと思うの
 許嫁だって事で結婚してしも幸せになれるかも知れない
 でも・・・貴女の心には誰が住んでいるのかしら・・・
 運命を切り開くのは自分自身ってことよ!」

 
「運命を切り開くのは自分・・・」
 
 
「そうよ!自分に正直になりなさい」
 
「…いいのでしょうか」
 
「いいんじゃない! だって貴女のご両親も貴女の幸せを一番に祈ってるはずよ!」
 
『両親 アッパとオンマは何も言わない 何故なの?』
 
「あの! ごめんなさい 用事を思い出したので私帰ります」
 
「うんそうね。 ゆっくり考えてみてね」
 
 
走り去るチェギョンの後ろ姿を見つめ微笑むヘミョン
 
 
「さてと・・・ 次は!」
 
 
 
 

「チェギョン俺もずっと名前も知らない許嫁に囚われていたんだ
 俺は5歳の時に感情を捨てた
 皇太子として、未来の皇帝として生きる為に
 何かに、誰かに深く関わる事を拒み自分自身を殺したのに
 お前に出会ってしまった
 お前の笑顔に・・・心に触れてしまった・・・」

「シン君・・・」

「自分を守るためにお前を忘れようとした
 苦しい!助けてくれ!何度も叫んだ 
 でも・・・お前を忘れ去る苦しみから抜け出せる訳も無く
 お前への想いに押し潰されそうになっていた」

「・・・」

「俺は・・・感情を殺した操り人形になろうとした
 そんな時お婆様が俺に勇気をくれたんだ」

「皇太后様…が?」

「そう…皇太后様であるお婆様が俺にくれた言葉
 「シン 自分に正直になりなさい 全てを諦めた皇帝が作る国ほど恐ろしいものはない
  全てを掛けて手に入れたいモノがあるのなら 自分自身を信じるのです」
 俺が全てを掛けて手に入れたい存在
 それはチェギョンなんだ」
 
 
チェギョンは何も言わずにその大きな瞳から一筋の煌めく雫を落とした
 
「チェギョン お前の素直な気持ちが知りたい
 お前のその涙は俺と同じ気持ちだと思っていいのか?」
 
 
チェギョンは暫く俺の瞳を見詰めゆっくりと俯く

「シン君・・・少しだけ待って」
 
「チェギョン」
 
「シン君への気持ちは・・・今は言えない
 私はこのまま貴方への気持ちを素直に表現する事は出来ないの」

「・・・バカチェギョン」
 
 
ゆっくりとチェギョンと引き寄せるとそのままスッポリ俺の腕の中に納まる
 
自分の気持ちを素直に表現する事は出来ない
それだけで今は十分だ
 
チェギョンの肩から力が抜けて行くのがわかる
頬を寄せ合うようにゆっくりと顔を下ろすと
チェギョンの腕が頼りなげに俺の背中に回された
 
まだまだ何の解決もされていないが
二人の気持ちが重なった気がする
 
何も始まってはいない
それなのにこんなにも幸せを感じられるなんて
 
チェギョンを守るためなら何でも出来る
俺はこの腕を放すつもりはない
 
何があっても守り通す
その覚悟はある!

「チェギョン 俺はお前を離すつもりはない
 俺を信じろ!何があっても必ずお前を守るから」
 
「シン君・・・いいのかな・・・」
 
「いいに決まってるだろ」

俺達はやっと前に歩き出せる・・・
 
 
 
 

*******************************************************************************
 
 
 
 

その頃 宮 皇太后宮

「お婆様 何をご覧になってるの?」
 
「ん?シンの未来の妃の写真ですよ
 ヘミョン あなたも見ますか?」
 
「見たい!見せてください」
 
「シンには内緒ですよ」
 
「あらっ この子!!
 でも・・・何故この写真をお婆様がお持ちなの?」
 
「フフフ シンが許嫁のお嬢さんからクリスマスのプレゼントに頂いたようなんだけど
 そのプレゼントをシンは開けていなかったのよ!
 だから!この写真シンは見てないのよね」
 
「ん?何でシンは見なかったの?」
 
「運命は自分の手で切り開くつもりなんでしょ〜
 こちらは全てお見通しなのにね」
 
「お婆様・・・その微笑が怖すぎます」
 
「ヘミョン この写真はあなたに託します
 いいですか…これはあなたが好きなように使いなさい」
 
「好きなように…ですね」
 
「ええそうよ あなたの想いのままに」
 
 
皇太后宮に高らかな笑い声が響いた
 
 
 

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