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「殿下、チェギョンとの結婚は考えなおしてくれませんか」
アッパの発した言葉に頭と心が凍りつく。
カンガエナオシテクレマセンカ…。
何で?アッパは私達の結婚に反対なの!?
「正直に言えばこれが私達の気持ちだ」
「あの…」
アッパの言葉にシン君ですらまともに言葉にならずにいる。
「酷いよアッパ!アッパは私に幸せになって欲しくないの?私が大好きな人と結婚するのに反対なの?」
「チェギョン落ち着きなさい」
「落ち着けるわけないじゃない」
「私達が心配してるのはそれだよ」
「はっ?何言ってるの?」
「チェギョン落ち着け」
シン君までもが私に落ち着けって言うの?何で、何でそんなに冷静なのよ!
「アッパなんて・・・」
「チェギョン!!」
大嫌い。そう言おうとした言葉はシン君によって遮られた。
「これがチェギョンの本来の姿です。まだまだ子供で自分自身で理解する事も人の話を冷静に聞き入れることもできない。このままの状態で結婚など二人の為にも良くないのではないかと思うんだよ」
はっ!?何?どういう事?
隣に座るシン君に視線を向けると真剣な眼差しで見詰めてくれていた。
「大丈夫です。チェギョンになら理解できるはずです」
「皇太子殿下と結婚をするという事は将来国母になるという事だ。私は君たち二人の結婚に反対するつもりはない。だが、今のチェギョンには荷が重すぎる。今のままでは早すぎる」
「あ…」
アッパの紡がれた言葉に自分自身の行動を思い知らされる。
シン君との結婚はいずれは皇后になるという事。分かっているようで理解していなかったのだと今更ながらに気付く。
俯く私の手を包み込む温もりに視線を上げると優しく微笑みかけるシン君。
その微笑みはまるで安心しろと語りかけているようだった。その視線をアッパに向けるとシン君は落ち着いた声色で話し始めた。
「ご心配はもっともだと思っております。
僕達はまだ高校生でまだまだ親の脛をかじり甘えたり我儘を言ったり、やりどころのない感情を親の気持ちも考えずぶつけてしまう事もあります。僕は完璧な皇太子妃を迎えようとは思っていません。実際私自身もまだまだ完璧な皇太子には程遠いのですから」
「殿下。殿下は陛下がご療養されている間に随分と成長されました。そのお姿を拝見するたびに立派になられたと心より感じておりましたよ」
「私はこの数か月色々な経験をさせて戴く事で自分自身少なからず変われたのではないか、前に進めたのではないかと感じています。でもそれはチェギョンが傍に居てくれたからこそなんです」
「チェギョンが…」
「チェギョンが傍に居てくれたからこそ強くなりたいと思えました。人の気持ちを思いやれる人間になりたいと思えました。何よりも彼女を守れる人間になりたいと。
その想いが私を動かしていたのです。そして多くの方々の心に触れ随分と助けられてきました。それもチェギョンが居たからこそなんです。
チェギョンだけでなく私自身もこれから学び成長していかなければならない事が山のようにあります。チェギョンとなら乗り越えられる、共に成長出来ると思えるのはチェギョンだけなんです。僕達の結婚をお許しいただけませんでしょうか」
シン君の言葉に涙を浮かべながら隣で深く頭を下げるシン君と共に私も床に頭を付けた。
シン君の気持ちが嬉しくてそれ以上に感情的になってしまった自分を恥ずかしく思う。
「チェギョン」
アッパの呼びかけに顔を上げると先程の厳しい表情ではなく、優しさの中にも少しだけ悲しそうな表情で見詰めるアッパが居た。
「はい」
「殿下はこう仰ってくれているがお前はどうなんだ?皇太子妃になるという事を甘く見ていたのではないか?」
「アッパ…。お父様、先程は取り乱してしまい申し訳ありません。殿下とは比べ物にならない程未熟で何かあればすぐに甘えてしまう私です、お父様達の不安も良く分かりました。それでも私は殿下と共に生きて行きたいと思っています。殿下を支えられる人間になれるよう努力していきます。殿下の元に嫁ぎます」
「そうか」
最期は涙混じりで上手く言葉にすることが出来なかった私の声にアッパは静かに呟くと殿下の前に膝を付頭を下げた。
「殿下。ご覧の通りチェギョンはまだまだ子供です。でも人を愛する真っ白な心と優しさに溢れた子です。未熟な娘ですが大切に育てて来た自慢の娘です。チェギョンの事どうか宜しくお願いします」
「ありがとうございます!」
その言葉に弾かれたように顔を上げたシン君と私は声を揃えた。両親の瞳にも涙が溢れ私の為を思って厳しい言葉を継げてくれたのだと気付く。アッパ達が心配しない訳がない、それなのに自分の事しか考えていなかった事が凄く恥ずかしくて、でもそれ以上に私を大きな愛情で包んでくれていたアッパの気持ちが嬉しかった。
「シン氏。チェギョンの事は私たちも見守って行きます。この二人に至らない事があれば国民が黙っていないでしょう。まだ若い二人ですが一緒に見守って行きましょうぞ」
「陛下よろしくお願いいたします」
「シン。チェギョン。お父上とこれからの話を取り決めなければならない、二人はゆっくりしていなさい」
おじ様の言葉にシン君は自分も同席すると言ったけど、ここからは親同士話をすると言い切られ仕方なく私の部屋で待つことにした。
私の部屋に入るなり大きく息を吐きだしその場に崩れるように座り込むシン君に驚きながら駆け寄ると腕を掴まれそのままシン君の胸の中に閉じ込められた。
その胸は凄く暖かくてシン君の温もりが私を落ち着かせてくれている。
「緊張したぁ」
「ふふっ。シン君お疲れ様でした。でも最高にかっこよかったよ!ありがとう」
「この結婚は考え直してくれないかと言われた時、心臓が止まるかと思った」
「ごめんね。私あんなに取り乱して」
「いや、そのお蔭でお義父さんの本当に気持ちが聴けたからな」
「うん。私皇太子妃になるって事を甘く考えていたのかもしれないって気付いた。もっともっと頑張って素敵な女性になれるように努力するからね」
「チェギョンはそのままでも十分素敵な女性だよ。お義父さんも言ってただろ、自慢の娘だって」
「だって、私直ぐに甘えちゃうし我儘言っちゃうし」
「いいんだ!お前の甘えたな部分も可愛いし、俺にだから我儘だっていうんだろ?」
「もう!シン君がそれじゃ私成長しないじゃん」
「ははっ。お前はきっと素敵な皇太子妃になるよ。多分すぐにお妃教育も始まるだろうしな。俺が甘やかしたって担当になる尚宮が甘やかさないだろうから俺には甘えていいんだよ」
「そんな事言われると…」
「そんな事言われると?」
優しく笑顔を向けるシン君の首に腕を回し今まで以上に密着するようにシン君の首に顔を埋めるとそのまま耳元で囁いた。
「ずっと甘えていたくなっちゃうよ」
シン君は急に私を引きはがすとスタスタと歩きだしソファーにドカッと腰を下ろした。
「えっ?何?シン君??」
そんなシン君の行動に何が起きたのかわからない私はアタフタとシン君の傍に駆け寄りその顔を覗き込もうとしたのに、顔を背けたままこれ以上私が近寄らない様に私の肩を押し返す。
「なんで?シン君怒ったの」
私の不安な声にも「違う」とぶっきら棒な声を返すだけでその表情は全く見えないけど微かにシン君の耳が赤くなってる?
「シン君耳が赤い、どうしたの?」
尚も不安で呼びかけると大きく息を吐き出したシン君がもう一度私を胸の中に閉じ込めたけどその行動が早すぎてシン君の顔を見る事すらできなかった。
「チェギョン」
「ん?」
「あんまり可愛い事言うなよ」
「はっ?」
言葉の意味が分からない私は顔を上げようとするけれど抱きしめる腕の力が強すぎて顔を動かす事すら出来ずもがく事しか出来ない。
「やっと結婚を許して貰えたって事だけでも舞い上がってるのにチェギョンにあんな顔されてもっと甘えたくなるじゃんなんて可愛い事言われたら我慢できなくなる」
「えっと…何を我慢するの?」
「だからぁ。俺の自制心総動員してお前に触れたいのを我慢してるのに、そんな事されたら俺の理性が何処まで続くかわかんないって事!分かったか?」
「あ…ごめ…」
私の言葉は最後まで発することなくシン君の唇で塞がれた。それは凄く優しいキスでシン君の言葉に焦り出した心を落ち着かせていくような優しい優しいキスだった。
ドアをノックする音と共に離れた唇が少し色づいていてそれを目にして真っ赤になった私の目の前にオンマが用意してくれた紅茶が並んだ。
「チェギョン。良かったわね」
「オンマありがとう。それと心配かけてごめんね」
「親が子供の事を心配するのは当たり前の事でしょ。でも、あの優しいだけで気の弱いお父様が陛下の前で頑張ったわねぇ。オンマもちょっと惚れ直しちゃったわよ。後でお父様にもちゃんとお礼をいいなさいね」
「うん。分かった」
「殿下。チェギョンの事よろしくお願いします」
「はい。大切にします」
「でも、お父様の前ではあんまりイチャイチャしないであげてね。娘の結婚が決まった父親は傷心中だから」
手をひらひらと振りながら出ていくオンマの言葉に固まる私たち。
「まさか見られてないよな」
「どうだろう…」
オンマの言葉に顔を真っ赤にさせるシン君が可愛くて「甘えさせてあげる」と言って両腕を広げる私に「ばーか」と顔を背ける。そんな些細な事も幸せでこれから二人で歩き出す未来が近づく事にドキドキしながら他愛のない会話をしながら陛下達の話が終わるのを待っていた。
これからの未来に少しの不安と大きな幸せに包まれ私たちは歩き出す。
シン君に守られるだけじゃない。大切な貴方を守れる強くて優しい女性になれるように。
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