キャピトンよ さようなら

風花雪月あと少しです。ここで挫けないようにがんばります。

星 観 恋 愛 主 義

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歓声を上げて庭で遊ぶチェギョンとチェジュンの姿をテラスから見ていた。
こんな風に兄弟で遊んだ記憶なんて俺にはない。幼い頃でさえ無邪気に遊ぶことなど考えられなかった俺の脚は自然と庭へと導かれていく。
太陽の光りを受けてキラキラと輝く水飛沫に包まれ笑顔を湛えるチェギョンに視線を奪われる。


「キャーー! チェジュン冷たい」
「バーカ当たり前だろ豚!水なんだから」

その時チェギョンの顔に水鉄砲から放たれた水が命中した。



≪ねぇ・・私がどんな姿に生まれ変わっても、絶対に見つけてね。約束よ≫



「何?今の・・・」
チェギョンの心に届いた声。
視線を感じゆっくりと振り返るとそこにはシンの姿。


「チェギョン?」
──何だ?あいつの様子が可笑しい。

「…シン君」
不意に動きだし濡れた芝生に足を取られ体制を崩した彼女に駆け寄るが間に合わない。

「危ない!」
その声と同時に水たまりに倒れこんだ二人。



≪やっと見つけた≫



「「えっ!?」」


何が起きたのかも理解出来ず互いの瞳を見詰めたまま逸らす事が出来ない。

「もしかしてシン君も聞こえたの?」
「えっ!お前もか!?」

「うん。その前に絶対に見つけてね。約束よって…」
何故だ?その言葉は俺がずっと聞いていた声。まさかっ!

「何やってんだよ二人とも!ずぶ濡れじゃないか。早く着替えて来いよ」
チェジュンの言葉で我に返った二人はゆっくりと体を動かしたが、≪やっと見つけた≫その言葉は消えない。


その夜。またも眠れない時間を過ごすことになったシン。
「お前……よく眠れるな」
チェギョンの寝顔を見つめながら呟くシンの表情は柔らかな笑顔から徐々に強張ったものに変わっていく。

「ごめんな。今まで辛い思いをさせて本当にごめん。」
眠るチェギョンの頬をゆっくりとシンの指が撫でる。どれほど傷付けて来たのだろう。この小さな体に家族の未来と幸せを背負って宮に嫁いできたというのに、それを分かろうとしなかった自分を責める事しかできない。

そしてもう一つ芽生え始めた心。
触れてはならないと解かっていたはずだった。
惹きつけられこれ以上離れる事なんて出来なくなる…だが、もう限界だ!──


「そんな無防備な姿で眠るなよ。」

無意識にゆらりと躰が動く。

「…チェギョン」

いつの間にか覆いかぶさる様にチェギョンの寝顔に引き寄せられる。

「…チェギョン」

いけないと解かっているのに止められない衝動。唇が触れそうになるギリギリのところで押し留め、抑え切れない感情は頬へと移動する。彼女の頬に添えられた右手からは温もりが、触れた唇からは頬の柔らかさが、そして鼻腔を擽るチェギョンの香りに囚われていく。


──こんな浅瀬で溺れるなんて…もっと深みで溺れたいのに。もう一度お前の…


それはまるで壊れ物に触れるようで、愛しさが溢れ出るのを抑えきれずこのまま抱きしめてしまいたい感情に支配され、次第に体の中の衝撃に耐えられなくなっていく。

「クソッ!」

必死の思いで体を離し部屋を後にするシン、その掌は力の限りに握られていたのだろう、爪が食い込み血の滲む程のものだった。




──シン君なんで!?私だって…眠れるワケないじゃない!


その時チェギョンは眠れずにシンの行動を全て感じ取っていた。

『チェギョン』私の名前を囁くシン君の声が吐息となり唇をなぞる。もう一度呼ばれたその声が一瞬にして全身を巡り私は締め付けられ痛い程の胸の高鳴りと、彼の唇が触れた頬の熱に囚われていた。


「苦しいよ…シン君」








瞼越しに感じる眩しい光。
うっすらと目を開けると懐かしい景色。
そのままゆっくりと視線を巡らせると私を包み込む様に眠るシン君の微笑むような寝顔。
――シン君ってこんなに優しい顔で眠るんだ。


その寝顔を見詰めるうちに済洲での出来事、そして昨夜のシン君が脳裏をよぎる。
ゆっくりと伸ばした指先がシン君の頬を滑ると微かに瞼が揺れた。

もっと・・・もっと近づきたいのに近づけない。二人の距離を表わす様なもどかしさが募る。

「シン君」

そっと囁いたはずなのに聞こえたの?
ゆっくりと開いた瞳は私を捉えたまま動かない。シン君の瞳…信じていいの?
私は探し求めていた答えがストンと胸に落ちたような感覚を覚えた。









「殿下。妃宮様お帰りなさいませ」

2泊3日のシネンを終え、東宮に戻ってきた。
疲れているからと早めに人払いをしたもののチェギョンの様子が気になって眠れるはずもなく、開かれた本はそのページを捲られる事無く膝の上に置かれていた。

「シン君も眠れないの?」
「別に、ただ外の空気を吸いたくなっただけだ」

俺たちはテラスのベンチに腰掛け他愛のない会話をしていた。この時間がこんなに安らぐなんて…。

「急にどうしたんだ?」
「え?」

「昨日だよ」
「昨日って?」
「とぼけるな。俺の背中に抱き着いただろ」
「抱き着いたって…」

「いいさ。俺も眠れなかった」
「シン君も?」
「俺だってハンチャンテなんだ」
「ハン…チャンテ?」

「だ…だから隣に誰かが寝ていたらどういうわけか体中がポカポカしてきて」
「ポカポカ?」

「お!お前が隣に寝てたら眠れないんだ!」
「なんで?普通に眠ればいいのに」
「うるさい!またお前に触れたくなるんだ!」
「へ?」
「いいぞ!触れよ!思いっきり抱き着いていいから」


俺は一体何を言ってるんだ?だが、もう一度触れて欲しくて彼女に背中を向ける。徐々に彼女が近づく気配はあるものの一向に抱き着いてこない。くそ!早く触れて来いよ!

「殿下、妃宮様まだお休みになられなかったのですか?」
コン内官!!何故ここで邪魔するんだよ!!

必死の想いで言葉にしたのに、コン内官に邪魔されるなんて。
俺は今夜も眠れない夜を過ごすのだろうか…。









翌日、書筵堂で小難しくて退屈なお妃教育を受けていると、何やら騒がしい外の様子に気づいた。
集中出来ずに外の様子を気にしていると、どうやらシン君の姿が見えなくなってしまったらしい。
何とかチェ尚宮おねえさんをごまかし、私もシン君を探しに行くことにした。

「あれ?こんな所に梯子?」

ゆっくりと梯子を上り天井の板をそっと押してみる。
板の軋む音とともに視界にシン君の姿をとらえた。

「ここに居たんだ」

シン君は驚き、私を見詰めたまま動かない。もしかしてここに来ちゃいけなかったのかな?

「何でわかった?」
「実家にも屋根裏部屋があるからね」


シン君は私を見詰めたまま動かない。またあの瞳──


「ねぇシン君。秘密が多すぎない?あのクマのぬいぐるみは?」
「アルフレッドか?」

その時シン君を探す声が聞こえて来た。
飾り窓のはめ込まれたその部屋に気づく者は誰も居ない。
イタズラ心がムズムズして来て『殿下はココでーす!』と大声を上げようとした瞬間。
突然シン君の携帯が着信を知らせた。

──この音……ヒョリン?


「…出ないの?」
「あぁ」
「いいの?」
「関係ない。ヒョリンは関係ないんだ」


『関係ない』またその言葉で私を遠ざける。
ズキンと胸が痛んで、視線を反らそうとしたら、射るような澄んだ双眸が私を捕らえてしまった。
着信音が鳴り続けているのに、シン君は真っ直ぐに私を見詰めたまま電話に出ようとはしなかった。
私に向けるその眼差しはとても優しくて暖かい…。ね、勘違いじゃないよね?

──え?

シン君の腕が私に向かってゆっくりと動く。それはまるでスローモーションを見てるよう。
トクトク早鐘を打つ私の鼓動は正直だ。
彼の手が頬に触れそうになった瞬間、今度は私の携帯が着信を知らせる。


──この音……ユル君?


不協和音を奏でるように鳴り響く2つの着信音。
室内に微妙な空気が流れるのを痛い程感じて、掌に嫌な汗が滲む。どうするの?
どうしよう!
床に置かれた携帯のディスプレイを睨み付けるシン君の横顔に私の心臓はドキリと大きな脈を打つ。

──見ないで!

咄嗟に携帯に手を伸ばした私の腕を、シン君が力強く掴みそのまま携帯を弾き飛ばした。

ガシャーーーンッ ガラガラガラ…ゴトッ


「ひゃっ!」
「出るな!」

その言葉と同時に荒々しく腕を引かれ私の体はシン君の胸に収まった。
強い力で強引に引き寄せた筈なのに、その腕は優しく私を包み込む。
切なげなシン君の声と共に唇をふさがれる。でもそれはとても優しくて暖かくて。
徐々に激しくなるキスに私は身を任せ溺れていった。


「お前は誰にも渡さない!!」






pupupupupu… pupupupupu…



ザザァーッと冷たい木枯らしが吹き荒ぶ書筵堂の庭に、無機質な携帯のコール音が無情に鳴り響き続けている。静寂の広がる庭の一角に聳える1本の大きな銀杏の樹に隠れるように佇む影が微かに揺れた。

だらりと降ろした手中の携帯を、繊細そうな長い指先がプラスティックボディの軋む音がする程強く握り締め、ギリリと唇を噛み締める。
手入れの行き届いた焦げ茶色のジョッパーブーツの足元にあった枯れ枝が、彼の脚に掛けた重力によりパキンッと乾いた音を立てて折れた。
力無く持ち上げた携帯のディスプレイに反射する自分の姿をじっと見つめる。



──鏡の中の僕は 本当の僕とは正反対
    だが そっくりだ
      鏡の中の僕に何もしてやれない悲しいことだ


「ッ…チェギョン!」


ひっそりとした宮中の庭、込み上げる怒りに震えながら。
飾り窓からぼんやりと覗く絡み合う二人の姿を睨み上げる、ユルの姿に気づく者は誰も居なかった

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昨夜の花火の残像が脳裏で瞬き、それと共に眩いばかりの妻の姿や、クルクル変わる幾つも表情が夜空に弾ける火花のようにフラッシュバックし脳裏を支配する。

可笑しい…どうなっているんだ?
昨夜からずっとこんな調子で、そんな自分を認めたくない。
でも…消えない…、消せない。
あの笑顔、華奢な白い項、掌に残るやわらかな温もり、彼女の甘い香り・・・

プルプルと頭を左右に振り、読みかけの小説を手に取り、深呼吸する。
しかし、視線をページに落としても今日は一向にその世界に入り込めない。
気が付けば、妻の存在ばかりが気になって意識が削がれる…

「チッ」

傍に居るだけで苛立つ皇太子妃の存在、そうだった筈。だのに完全にペースが乱されている。
この俺が…!
消そうとしても消えないどころか、益々アイツの存在が頭から離れない。なぜだ…。
膝に乗せられた小説はページをめくられる事無く時だけが過ぎていく。





「スゥ──ハァ───ッ」

ドアノブを握り締めて深呼吸を繰り返し必死にその胸の高鳴りを鎮める。
手元のパンプスに頬を緩ませながらその反面、心にはいくつもの感情が交差する。

──あの瞳の色…あれは幻だったのかな?
    その瞳の奥の彼、本当のイ・シンという男の子を…知りたい。

「シン・チェギョン!アジャ!」

小さくファイティンポーズを取り、必死に平静を装い透き通る程美しくも重いドアを開ける。


「トントーン シン君。これ何だかわかる?」
「何って靴だろ。靴。 それが何だ?」

掌に載せたパンプスを大切そうにゆっくりと撫でるチェギョンの横顔に心臓が高鳴るのを感じながら、そのまま視線を棚に巡らすとチェギョンから送られた青竜柄が施されたスニーカーがまたも視線に絡み付く。
昨夜の眩いばかりに輝いた妻の姿。そして済洲島で見た妖艶な妻の姿。
そのどれもが俺の感情を乱し続ける。

「昨夜は感動したのよ。童話のお姫様になった気分!あんなに大勢の人が見ている前でバカみたいに靴が脱げちゃって、恥ずかしかったわ。 その時・・・」

「おい浮かれ女!パーティーは終わりだ目を覚ませ」
「何よ。ノリが悪いわね しょぼーん」

言葉は交わすのに自分と目を合わそうとしないシン、昨夜の熱を含んだ優しい瞳が再び脳裏に浮かぶ。

──やっぱりドキドキするのは私だけなの?


「ねぇ、実家に行かせてくれるって約束覚えてる?」
「孝経はどうした」
「えっと……まだ」
「じゃムリだな。勉強を差し置いて実家に帰らせると思うか? 遊んでないで勉強しろ」

相変わらず視線を合わせようとしないシンの冷たい言葉にチェギョンは肩を落としたまま自室へ戻る。そんな彼女の姿はシンの心を締め付けていた。

「何であんな言い方しかできないんだ俺は!」





シネン(新行)当日。

「シン君ありがとう。陛下に頼んでくれてスッゴクうれしい!」
「別にお前の為じゃない」
「もう!素直じゃないわね。  あ!そのクリーニング屋さんの角を曲がってくださーい」

窓の外に視線を向けはしゃぐチェギョンの姿を優しげな笑顔で見詰めて居ることに、シン自身は気付いていない。

チェギョンの実家の前の狭い路地を埋め尽くすように多数の報道人が詰めかける中、皇太子夫妻を乗せた公用車が静かに停まった。
二人を出迎える両親に抱き着くチェギョンの様子に自然と頬を緩ませるシンの和らかな表情を多数のカメラがとらえていた事を本人達は知る由もない。


チェギョンの実家に足を踏み入れると何故だかとても暖かい匂いがした。

だが落ち着かない。とにかく落ち着かない。ここは俺の居場所じゃない。
そんな思いに押しつぶされそうになる。

チェギョンも宮家に嫁いでからずっとこんな思いをしてきたのだろうか。
歓迎してくれるチェギョンの家族。だがその歓迎はイ・シンにではなく皇太子殿下に送られるものではないのかと疑心に囚われていく。


「殿下ご飯だけじゃなくおかずもどうぞ」
「はい」

夕食もこの狭い部屋に皆が集まり膝を寄せ合いながら食べるのか。テーブルに並べられた多くの品を目の前に躊躇いながら口に運ぶ。
しかしこれら全ても俺にではなくチェギョンの為のもの。初めて食べる庶民の味は優しくて心地よくてやはり自分が住む世界とは別のモノに感じてしまう。

「ほらシン君、これも食べて。宮中ではサンチュも食べられないのよ。品性に欠けるからって。」
「そんなバカな!」

家族の叫び声と仕草のユニゾンに驚きながらもその直後の言葉に息を詰まらせる。

「品性に欠けるだなんて!殿下ここではそんな事気にせず食べてください!家の婿が、否!息子があんなに美味しいものを食べられないなんて!」

──息子?俺の事か?俺の為に怒っているのか?
驚きは更に目の前に差し出されたモノに移った。

「はい。食べてみて」
サンチュに包んだサムギョプサルをシンの口に運ぶチェギョンに戸惑う。

「大丈夫。秘密にしてあげるから」
恐る恐る口を開けるシンにチェギョンの手からそれが運ばれる。唇に触れる優しい指先そして鼻腔をくすぐるチェギョンの香り。四方から注がれる期待の眼差し。

「おいブタ。シン君はないだろ。殿下とかヨボとか呼べよ」
「お!弟いい事言った」

チェギョンの存在が俺の頬を染めようとした瞬間、チェジュンの言葉に助けられた。

「だろ?俺はヒョン(兄貴)の味方だもん」
ヒョン?俺をヒョンと呼んでくれるのか?
先程までの疑心が薄れていく。皆が本当の笑顔を送ってくれるのが少しずつ理解できる。

テーブルを埋め尽くすように並べられた料理。狭い部屋の中心に置かれたテーブルを囲むように集う家族。口いっぱいに頬張りながらも笑顔で会話する姿。その全てがシンにとって新鮮で衝撃的なものだった。戸惑いがちなシンの様子を気遣うチェギョンの姿にシン自身も素直に甘えていく。


──チェギョンが守りたかったもの。それがこの家族。
  暖かいな…気持ちが安らぐのは何故だ?


チェギョンが必死に守ろうとしていたものを、自分の不甲斐無さからでた罵詈雑言で幾度となく傷つけて来た事を今更ながら悔やまれる。どれほどの行き過ぎた戯れ口で彼女を泣かせて来た。
そして…大切なモノの為に自分を犠牲にしようとした彼女の心だけでなく体までも…。俺は何て事をしたんだ。

「殿下。滞在の間は奥の部屋を使ってください」
「気を使わないでください。特別待遇は嫌なんです、僕たちは同じ部屋を使います。」

そう告げるとシンはチェギョンの手を取って立ち上がり、チェギョンの部屋へ入っていった。



「ふ〜ん。ここがお前の部屋か?驚いたな。ここで寝起きして勉強もしてたのか?」
「もう。だから両親の部屋に行ってよ」

悪口を言いながらも部屋に飾られた家族の写真やぬいぐるみに目を向けると、そこにはチェギョンの優しさが至る所にあった。それに触れ鼓動が高鳴るのを感じるシン。
少し困ったような拗ねたようなアヒル口のチェギョンが可愛くて、そんな自分の
気持ちをごまかそうと少し意地悪をしたくなる。

「困ったな。」
「何よ」


俺はチェギョンの肩を抱いて引き寄せた。その瞬間彼女の体が強張るのが伝わる。

「寝るのは二人なのにベッドが一つしかない」
「だからオンマ達の部屋へ・・・」

「別にいいだろ。一緒に眠れば。」
「なんでよ!だったらシン君が床で眠って!ここは私の部屋なんだから」
「お前一緒に眠るのが恐いのか?だったらオンマたちと眠ればいいだろう」

「な!怖い訳ないじゃない」
「だよな!俺たち本当の夫婦なんだからな」
自分で投げかけた言葉に心臓が高鳴る。それを気取られないようにさらに悪口を投げてしまうシン。

そんなに近づいたらドキドキが伝わっちゃう。
チェギョン自身もその心臓の高鳴りを抑える事が出来ずにいた。
「もう知らない。床で寝るなりご勝手に!」
そう言いながらベッドに潜り込むチェギョン、俺はその横に入りこんだ。





いつの間に眠っていたのだろう?
体に感じる重みに気づき目を覚まし、そっと視線を体に送ると俺に覆いかぶさるように眠るチェギョンの姿が見える。

「冷たい?」

嘘だろ!?こいつのヨダレが俺に!!
潔癖な俺が他人のヨダレ何て考えられない!
ぷっ…!それなのにチェギョンのそんな姿に思わず笑みが浮かんでしまうのは何故だ!?

体を起こした俺に寝苦しさを感じたのかチェギョンが寝返りを打つ。しかもヨダレを拭きながら何やらムニャムニャと口を動かしている。そんな姿を見詰めながらも笑みが零れる自分が理解出来ない。

「チェギョン」

そっと名前を呼んでみるが当然の如く反応はない。再び体を横たえると自然に彼女を引き寄せる自分の行動に再び驚きながらも、自分の胸に甘える様に頬を寄せるチェギョンの仕草に胸の高鳴りと相反する安らぎ。
気を付けていたはずなのに、これ以上触れてはいけないと解かっていたはずなのに…。

Perhaps・・・?


答えの出ない自分の気持ちに戸惑いながらも心地よい眠気に包まれていった。









翌日高校から戻ると、家には誰も居ない。

「なぁ、何か食べるものあるか?」
「えっ、お腹空いたの?」
「辛ラーメンが食べたい」

渋々とキッチンに立つ彼女のそんな姿を見詰めていると、何故だか穏やかな気持ちになっていく。
なんだか妙にくすぐったい… こんな時間も悪くないな。

テーブルに出された卵入り辛ラーメンは想像以上に食欲を誘う。こんな庶民的な食べ物宮では当然食べられるはずもなく、初めて食べたその美味しさに一気に麺を食べつくす。

「ごちそうさま。旨かった!」
「シン君、もう食べたの?」
「あぁ、中々いい腕だ。食器は俺が洗うから心配するな。お前はテレビでもみてろよ」

とは言ったものの、チェギョンは俺の行動が心配だったらしくソワソワとその場を動かない。

「───!?」

俺の背中にダイレクトに伝わる彼女の存在。  何だ?何で抱き着いてくるんだよ!
その衝撃に俺の鼓動は痛いくらいに脈打つ。

「ッ、おい!」
「じっとして、後ろ向いてて!」


シン君の背中。広くて…あったかいなぁ…。
トクトクってシン君の心臓の音も聞こえてくる。

──あれ?あれれ!?  キャ────!!

私どうしちゃったの!?必死で隠そうとしてるけど昨夜から、ううん、あの時からシン君の後ろ姿を見ただけで妙な気分になってドキドキが止まらない!
それなのにやっぱり私ったら変態なのかしら。いくらスキンシップが大切だってガンヒョン達に言われたからって、抱き着いちゃうなんて!!一体私どうしちゃったのよーー!

パッと背中から離れると真っ赤な顔をして狼狽えるチェギョン。

「でへへぐへへへ    イヤーーーーー!!」

両頬を抑えながらそのまま駆け出したかと思うとスリッパのまま庭へ飛び出していく。

「なんだ?アイツ…」

その小動物のような行動に笑みを浮かべ、温もりの離れてしまった背中に寂しさを感じながらゆっくりとチェギョンの後を追った。

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