キャピトンよ さようなら

風花雪月あと少しです。ここで挫けないようにがんばります。

『プリンセスアワーの日』

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変わらぬ想い

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ピンと張りつめた空気を体中に感じ執務室に籠ったまま大きく深呼吸を繰り返した。
これから自分に降りかかる責任の大きさに体の震えを止める事すら出来ない。
 
【皇統を継ぐ】
 
それは幼い頃より覚悟していた事だ。
だが、チェギョンと触れ合う前の俺はたまたま皇族として生まれたから引き継ぐモノ。としか考えていなかった。守るものが出来て初めてその責任の大きさを知ることができた。
 
 
『国民をバカにしないで!』
 
そう言ったチェギョンの表情は今でも忘れる事は出来ない。国民、そして皇族とは何なのか・・・それを考えるきっかけを作ってくれたチェギョン。
 
だが、俺に国民を守る事なんて出来るのだろうか。そう思うと体が震える。
国も民も全てが幸せに包まれて笑顔で過ごす事が出来るのか・・・。
 
 
 
ソファーに深く腰掛け組んだ足の上に置かれた拳に力が入る。目を閉じたまま天を仰ぎ心を落ち着かせようと深吸い込む呼吸が体中を駆け巡るのが分かる程だ。
 
 
そのままどれ程の時間が経ったのだろう。
俺の手を包む暖かな優しい存在にゆっくりを瞳を開いた。
 
「シン君」
「チェギョン。ごめん気付かなかった」
 
「そうみたいね」
 
柔らかく微笑むチェギョンに強張っていた俺の顔も自然とほころぶ。心を落ち着かせるために繰り返した深呼吸も全身に力が入ったままでは何の意味もなさない。
 
「シン君の指先冷たいね。」
 
チェギョンは知っている。俺が極度の緊張状態にあるときは指先が冷たくなる事を。きっと聴きたい事は多いはず。だが多くを語らず微笑みを向けるチェギョンに先ほどまでの緊張がゆっくりと解かれていくのが分かる。
 
チェギョンの持つ強さに出会ったころは気付かなかった。否、気づいていたのかもしれない。世界の巨匠の作品を招いた皇室主催の展覧会会場で身を挺して俺を守ろうとしたチェギョンの姿は、決して男に守られて傍で微笑むだけの女ではないことを俺に見せつけた。
チェギョンは俺の隣に肩を並べ立てる女だ、そしてその強さと優しさで俺だけでなく周りの者を魅了する力があるのだと。
 
 
「チェギョン」
「ん?」
 
「さっき姉上に呼ばれた」
「うん」
 
「2か月後俺達は即位し戴冠式が行われる」
「そっか」
 
「俺に国が守れるのか不安なんだ」
「シン君」
 
俺は今きっと情けない顔をしているだろうな。俯いたまま顔を上げる事が出来ない俺をチェギョンが優しく抱きしめた。
 
「シン君。シン君はどんな国を作りたいの?」
「わからない。ただチェギョンにはずっと笑顔でいて欲しい。それと同じように国民が笑顔で過ごせたらどんなに幸せだろうって思う。大切にしたい人達を守れる強さを持った国。国民が自由に過ごせれば・・・」
 
そのまま言葉を詰まらせた俺の両頬に手を添え優しく包み込むチェギョン。
 
「大丈夫。シン君にならできるよ、私はシン君程優しい人を知らないから。心の痛みや寂しさを分かってあげられる優しくて強い人だから」
 
「優しくて強い・・・俺が?」
 
「うん。だってシン君はいつも私を包み込んでくれるでしょ。そして何があっても私や家族を守ってくれる強さを持ってる。それに・・・」
 
「それに?」
「シン君は心の痛みを知っている人だから」
 
「チェギョン」
「私が傍に居る。だから一緒に国民の皆さんを見守ってシン君の理想の国を作って行こう」
 
「俺はお前の自由をまた奪ってしまうかもしれない、また窮屈な思いをさせてしまうかもしれない」
 
「シン君、人の自由ってどのくらいの広さか知ってる?」
 
「え?」
 
自由に広さがあるのかと不思議に思う俺の前にチェギョンは立ち上がり両手を広げそのままクルリと回転すると微笑んだ。
 
「これだけなんだって」
「・・・」
 
「人の自由は両手を広げた範囲なんだって、どんなに頑張ってもこれだけなんだって。だからここに収める事の出来ないモノは捨てるしかないの。何を守って何を捨てるか、それを決めるのは他の誰でもなく自分自身」
 
「あぁ」
 
「人は生きていれば大切にしたいモノや守りたいものがどんどん増えていくのよね。その全てを手に入れる事は不可能に近いのかもしれない。だからこそ人の自由を侵さずに幸せに過ごす努力をしていくんだって」
 
「チェギョン。お前は広い世界に出たいんだろ」
 
「どんなに広い世界に出ても常に自分の両手を広げた範囲の自由が広がるの、それをはみ出せば人の自由を奪う事になってしまう。限られた世界で自由に幸せに過ごす事。それは全ての人に与えられた幸せなのよ。シン君もそう。シン君が自由を奪われたと感じたのは常に近くに人がいたからでしょ。手の届く範囲にも人が常にいたから。満員電車みたいなものよね」
 
満員電車と皇族の不自由さを同列で考えるのか。チェギョンらしい発想に微笑みながらもその先を聞きたいと思ってしまう。
 
「あっ、シン君満員電車なんて乗った事ないか。だから侵されない自由を互いに尊重しながら幸せを詰め込んでいくの、それに私の自由はシン君と共にあるのよ。私の自由と幸せを願うなら私の傍から離れないでね」
 
そう言いながらチェギョンは再び俺を抱きしめ背中に回した腕に力を込める。
 
「人の幸せを願うなら自分が幸せで微笑んでいる事なんだと思う。どんなに不安があってもシン君の笑顔で人は幸せになれるはずだから。国民の一人一人を尊重して想いやる事で幸せのオーラは伝わるんじゃないのかな?」
 
「チェギョン」
 
「ありがとな」
 
チェギョンの精一杯で俺を元気づけようとしてくれる。人の自由を他人が図れるものではない。自由を尊重しながらも幸せでいようとし続ける人々を見守る強さ。それを俺に伝えようとしてくれているんだな。
 
 
俺の両手に入る大切なものと自由。
そして大切なモノを抱きしめるこの心があれば俺達は幸せでいられる
腕の中で幸せそうに微笑む大切な存在を永遠に失わないために俺は強くなろう。
 
昔の俺は怖いものなんて何一つなかった。
大切なモノなんて持ち合わせていなかった。
 
チェギョンに出会うまでの俺は失うものなんて何もなかった。
チェギョンに出会って初めて気づいた。俺がどれ程弱い人間かを。
 
 
俺がチェギョンを必要としているように、チェギョンも俺を必要としてくれる。それがどれ程俺に力を与えているか、お前は知っているか
 
お前の事を知れば知るほど。
愛すれば愛するほど。
 
 
そして今自分が置かれた境遇に恐怖を覚えた。それは守るべきものの大切さをしったから。
 
だけどチェギョンが傍に居る限り俺は強く優しくなれるだろう。それをお前が教えてくれたから。
 
「チェギョン、ずっと俺の傍に居てくれるよな」
「当たり前でしょ。だってシン君が居ないと退屈だもん」
 
この先何があってもこの想いだけは変わらない。
永遠に愛するということ・・・。
 
 
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あるべき姿へ

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どれだけの時間こうして居るのだろう。
東宮殿のテラスで寄り添いながら言葉も交わさないまま互いの温もりだけを感じている。

二人に残された時間は後少しなのに・・・。
 
やっと素直に自分の気持ちを伝いあえるようになった今なら、この愛に嘘も偽りも必要ない。
ただ自分自身に素直になればいい。それだけだ。
 
 
 相逢花滿天 相別花在水 春光如夢中 流水香千里.
”出会いは花で空を満たし別れは花を水面に散らす春の日射しは夢の中のようで流れる水は遥か千里を行く”
 
 
「責任を取るって国民と約束したから守りたいの。私は皇太子妃だから」
 
涙で揺らめく瞳の奥に強い決意を秘め、そう告げるチェギョンを美しいと思った。
全てを閉ざし、このまま二人で居続ける事は容易いことかもしれない。だが俺たちは互いの道を行くために別の道を選んだ。
 
それぞれの道の先でもう一度二人の未来が交わる事を祈ってる。
チェギョンお前の手が愛おしくて離せない。
 

「シン君」
「ん?」
「なんでもない」
「そっか…」
 
 
自分の気持ちを偽るつもりは全くない。
ただ言葉が見つからない。
 
こんな時どういえばいいのか、誰も教えてくれない。だが今は言葉より伝えたい気持ちがある。
それはチェギョンも同じなのだろう、腰に回された俺の手にそっと自分のそれを重ねゆっくりと撫でる。
それだけでチェギョンの気持ちが手に取るように伝わって来る。
 
俺が求めていた温もりを手に入れた瞬間に泡のように消え去ろうとしている。
 
だが消させはしない。
何があろうと、どれほどの大きな壁が立ちはだかろうと、もう一度お前を手に入れる。
俺は信じている。何があろうと俺達二人のあるべき姿は共に歩み続けることだと。
 
 
「チェギョン」
「ん?」
「必ず迎えにいく。」
「うん。信じて待ってる」
 
 
今はまだ幼くて、大切な人を守り抜く力がない自分にやり切れない焦燥感しか残らない。
いつかきっと、少しだけ大人になった俺達が手に入れるのは互いを信頼し愛しむ姿。
愛する事を教えてくれたチェギョン。この想いは永遠にかわらない。
 
 
 
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真実

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チェギョンお前は今、心から幸せと言えるか。
 
 
 
 
 
 
「殿下〜。皇太弟殿下〜」
「何だ。妃宮媽媽」
 
「ちょっとお願いがあって」
「そういえばずっと以前にもそうやって可愛くお願いしてきた事があったな」
 
「うはっ。かわいくって、可愛いのはいつもじゃない」
「あの時は素直じゃなかったから、その日のチェギョンが特別可愛く見えたんだ。今と全く同じように俺を呼んでお願いがあるって言ってた」
 
「うーん。いつだろう覚えてないや」
「あの日だよ。コン内官がお前の自転車で怪我をした日
 
あの時確かにチェギョンに近づけた気がしたんだ。素直に表現することが出来なくてもお前の笑顔を傍で見てるだけで辛い事も忘れられる。そう思えた。
 
あの時は彼女が何を考えているのかわからなかった。“カミラの秘訣” “家族ぐるみの友達”そしてタイ訪問でのキス・・・。
 
チェギョンは何も言わなかった。そして今も俺を責める事はしない。
棘が刺さったような蟠りを残しているはずだ。いや、それは俺の方なのかもしれない。
 
 
「それで、お願いってなんなんだ?」
「あのね。今度のイギリス訪問なんだけどね」
 
「あぁ。もちろんお前も同行するんだぞ」
「へっ?」
 
「何素っ頓狂な声だしてんだよ」
「だって・・・。私てっきり置いて行かれると思ってたから、大学の学園祭の時だしシン君が居ないのなら私だけでも参加したいなーって」
 
「それは無理だ、諦めろ。それにもう海外公務に一人で出席するつもりはない。必ずお前が同行するということが条件だ」
「シン君。そーだね、私が居ないと皇太弟殿下は何をしでかすか分からないから、それにどうしても学園祭に参加したいって事じゃないから一緒に行ってあげてもいいわよ」
 
 
そういうチェギョンは明らかにうれしそうに頬を緩ませる。
だがやっぱり心に刺さる棘は確実に存在するのだと気付いてしまった。
 
 
「チェギョン。言いたい事があるならはっきり言えよ」
「え?何よ急に」
 
「何をしでかすか分からないって、お前は何を指して言ってるんだ?」
 
何を指すか。そんな事はわかっている。だがこのまま通り過ぎてはいけない。チェギョンの心に棘を指したままにすることなんて出来ない。
 
「何って・・・」
「タイでの事なんだろ?」
 
「・・・・」
 
眼を見開き少し驚いたような表情を浮かべながらその瞳を俺から逸らす事の出来ないチェギョン。その瞳が静かに揺れ戸惑いを映す。
 
「あの時の事、しっかり伝えなければと思っていたんだ」
「いいよ。もう過ぎた事じゃない」
 
「ダメだ。お前誤解したままだろ。それにお前には真実を知っていてほしいんだ」
「嫌よ!真実なんて・・・。そんなのあの写真だけで十分よ」
 
 
「あの写真に真実なんて写っていない」
「キスしてたじゃない。それにもう過ぎた事よ。気に何てしてない」
 
「俺にとってあれはキスじゃない」
「何よ!どう見たってキスじゃない。それとも何?皇太子殿下のご挨拶は唇を合わせる事なのかしらね」
 
 
 
「ふっ」
「なっ!今笑った!?信じられない」
 
きっとチェギョンがあの写真に写る俺とヒョリンの姿を問い詰める事はないと思っていた。あの頃の俺達は自分自身に素直になれず、心の傷を覆い隠す事で気持ちにも蓋をしていたんだ。確かにこの状況で笑ってしまったのは不謹慎かもしれない。でも・・・。
 
「ごめん。なんかうれしくて」
「はぁーーっ!うれしい??意味わかんない」
 
怒り心頭のチェギョンはそのまま俺に背中を向け歩き出そうとした。その後ろ姿が愛しくて腕の中に閉じ込める。
 
「シン君」
「ん?」
 
「この状況でなんで私は抱きしめられてるのよ」
「抱きしめたかったから」
 
「伝わってないみたいだけど、私怒ってるんですけど」
「知ってる、それがうれしくてさ。だってお前嫉妬してるんだろ?」
 
「なんなのよ。その自信は一体どこからくるのよ」
「自信何てないよ。ただ不安なだけだ」
 
俺のその言葉に驚いたような表情で見返すチェギョン。それは徐々に不安なお面持へと変わっていく。
 
「お前がそんな顔するなよ」
「だって不安って・・・。何かあったの?」
 
 
発生場所のわからない鋭い痛みが体と心の間隔を狂わせる。それがどこから来るものかなんてわからない。
 
あの時も、そして今も変わらない想い。俺の不安をどうやったらお前に伝える事が出来るんだろうか。
 
「お前の事が大切だから不安になるんだ」
 
その出所が分かってしまったらチェギョンへの感情が溢れてしまいそうで・・・。否、それはもう手遅れだろうな。
あの頃気づきたくなかったこの想い。もしもこの気持ちが溢れだしたら俺は一体どうなるのだろうかと幸せになる事への恐怖からつけてしまった足枷。
きっと、ただの情けない男に変わってしまうだろうことが恐かった。結果大切なチェギョンを傷つけていたなんて・・・。
 
「シン君」
 
「あの写真。キスをしてるように見えるよな。それにそれは事実だ」
 
何も言わずに俺の胸に頬を寄せるチェギョン。震えながらも俺の言葉を聞き入れようと必死にしがみ付く姿に胸が震える。
 
「誰が見ても同じ事実。だが俺の心の中の真実は目で見えるモノとは違うんだ。」
「心の中の真実?」
 
「そう。たった一つの事実。だがそこに存在する人の数だけ真実は存在するんだ」
「何よ。事実と真実は違うって事?」
 
「そう。同じ様で全く違う」
 
 
俺は自分の中の真実をチェギョンに伝える事に何の戸惑いもなかった。全て打ち明けよう。そしてまた新たな明日を迎えるために。
ヒョリンがタイに来たのは気持ちの整理がついたからだと思い込んでいた。
タイでのヒョリンは彼女らしくないと思った。空港まで送れと言われ無理を言うなと本気で思った。
本当に恋人同士だったのかと聞かれ、答える事が出来ない自分が何より正直にみえて、『もう終わりでしょ。これからは他人だ』と言ったヒョリンの泣き顔に応えるつもりで空港まで送った。俺にとって彼女は同志、それ以上でもそれ以下でもない。
タイに滞在中、いつもチェギョンの事だけを考えていた。自分の想いを見詰めるために、自分の気持ちに嘘を付かないためにヒョリンと居ても常に想うのはチェギョンの事だけだった。
 
ヒョリンの真実は違っているだろう。だから様々な事件に巻き込まれていったんだ。
だが、俺に必要なのはヒョリンの真実ではない。チェギョンお前と俺の真実だけなんだ。
 
「私はシン君が好きだった。肩が触れ合う相手に片思いするのは辛いのよ」
「知ってる。俺もお前に片思いしてたから」
 
 
お前の涙は玉流川より住んでいる。そう思う気持ちは今でも変わらない。心の綺麗なチェギョンの涙は他の何よりも美しい。
 
好きだと感じたら、どんなに不様でも惨めでも自分の心に従うんだ。そうじゃないと、諦めばかりうまくなっていく。
 
「あれはキスじゃない。俺にとってのキスはお前と交わすモノだから」
 
何千回、何万回のキスをお前に送る。
言葉でそして身体で真実を語ろう。
俺の愛は全てお前に繋がるのだと。
 
 
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Rainy Blue

 
「ふぁ〜!今日は疲れたー」
「妃宮様。お茶をお持ちいたしましょうか?」
 
「それなら私が淹れる。オンニ達は座ってて」
「妃宮様」
 
「そうだオンニ。お姉さまから頂いたエッグタルトがあったわよね。こんな時間だけど食べちゃおうか」
「妃宮様」
 
「でもこんな時間に食べたら太っちゃうかぁ。バターたっぷりのエッグタルトは危険だから…」
「妃宮様。お座りください」
 
「大丈夫だから!」
「…媽媽」

 
「チェ尚宮オンニありがとう。そうよね!こんな時間に食べたら大変よね。
 お風呂に入って寝ちゃおうかな。オンニも今日はもう下がって」
「妃宮様」
 
「おば様達のお相手に少し疲れただけよ!でも大丈夫!これくらいでへこたれるシン・チェギョンじゃないんだから!負けないぞー!アジャ!!」
「妃宮様」
 
「そんなに心配しないで。シン君も遅くなるから先に休めって言ってたしオンニ達も休んで…ね」
「わかりました。では殿下がおかえりになるまでは外に控えております。何か御座いましたらお呼び下さい」
 
「ありがとうオンニ。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ。妃宮様」
 
 
チェ尚宮がドアを閉めると同時にチェギョンの瞳に涙が浮かび、音も立てずに雫が頬をつたう。
「シン・チェギョン アジャ…」

窓を叩く雨がはしゃぎ過ぎた時間を慰めるかのように心に語りかけ、見せかけばかりで本当の気持ちを隠しきれない自分に不甲斐無さを感じる。

「オンニにまで心配掛けて、何やってるのよシン・チェギョン。
 大丈夫だって、こんな事なんでも無いって思わせたいのにコレじゃ逆効果だよ」
 

  
 
 
 

「チェ尚宮様。あれでは妃宮様がおかわいそうです」
「分かっています。だが私たちに口出し出来る事ではない」
「そんな…。それでは殿下にご進言を」
「おだまりまさい。ここには私が残ります、あなた達は下がっていなさい」
 
 
 
 
 
「お帰りなさいませ殿下」
「チェ尚宮。こんな所で何をしている」

東宮殿の入り口でチェ尚宮は殿下の帰りを待っていた。
尚宮の自分が出過ぎた事をしているとわかっているがどうにも心がいう事を聞かない。

「殿下のお帰りをお待ち申し上げておりました」
その言葉にシンの顔が歪む。
 
「チェギョンに何かあったのか?」
「差し出がましい事とは存じておりますが」

「そんな事はいい。何があった」
「本日、太皇太后様主催のお茶会がございました。その席で妃宮様を良く思われていない内命婦の方々から謂れのない中傷をされ酷く傷ついておられます」

「中傷とは?」
「庶民出身の妃宮様はマナーも知らないのかと…ご実家の事などを持ち出され、そんな事では国母は務まらない、自分たちは認めないと仰せになられてお出ででした」
 
「太皇太后様は何と」
「何かあったのではとお察しになられているようでしたが、その言葉まではお耳に届いておりません」
 
「そうか。分かった」
「殿下」
 
「チェギョンを思うそなたの気持ちは嬉しい。だがこれはチェギョンが通らなければならない道だ」
「ですが殿下」

「チェ尚宮。チェギョンが傷付き苦しむ事を私が喜ぶと思うか?」
「そのような事は…」

「だが、私が守るだけではチェギョンの成長はない。
 チェギョン自身が乗越えなければ国民が国母として認めないだろう。私の妻になるという事はそういう事だ」
「殿下。差し出た事を申しました。申し訳ございません」
「今夜はもう下がれ。明日からまたチェギョンを支えてやってくれ」
「はい殿下。失礼いたします」

深く頭を下げるチェ尚宮にシンの「ありがとう」という言葉が微かに聞こえ心が震える。
この若き未来の皇帝と皇后を天と仰ぎ、自身の生涯を掛けて仕えて行ける喜びを心底感じる事の出来る瞬間。だからこそ全身全霊でお仕えし守りたいと思える存在なのだ。
 

「チェギョン」
「あっ。シン君おかえりなさーい」
 
 
普段となんら変わりなく迎えてくれるチェギョンだがムリして作る笑顔に心が痛む。
僕が帰ってくるまでに、一体どれ程の涙を流したんだ。
知らぬ間に目立たぬ泣き方を覚えさせてしまった自分に憎しみを覚える。
 
守れるものならどんな苦しみからも守り抜く自信はある。誰を排除してでも守り抜きたいと思える存在。
お前を苦しめる全てのものから遠ざけ悲しみの無い世界で暮らすことも出来るだろう。
だがそれでは本当にチェギョンを守る事にはならない。
 
自らの力で強くなれチェギョン。お前が感じる全ての苦しみを背負う覚悟が僕にはある。
だが、お前を手放す覚悟だけは出来ないんだ。
共に未来のあるべき姿を手に入れるために乗り越えろ。
自らの手で切り開くんだ。

降り続く雨が湯鬱の日々を映し出し幾つものわだかまりの雫を落としながら怒りの感情をも生み出す。
心の中で鳴り響く雷のような感情も決して落とすことは出来ない。それゆえに誰にも聞こえない怒号が覚悟の強さを表していた。

「チェギョン」
「ん?どうしたの?」
「何か急に抱きしめたくなった」
「きゃーっ。シン君ちょっと待って!」
「待たない!」
 
 
お前になら越えられる。たとえ険しい道程だとしても必ず出来ると信じている。
二人の未来の為に。
 
 
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「シ・・ン  ・・・ シン君 」
 
僕を呼ぶ暖かな声。その声にゆっくりと現実世界に戻る。
 
 
 
「チェギョン」
「おはよう シン君」
 
 
朝目覚めて最初に瞳に映る愛しい妻シン・チェギョン。
ゆっくりと抱きしめると甘える様に僕の胸に顔をうずめる。そんな仕草が可愛くて愛しくて、触れあえる距離に居る幸せに目頭が熱くなる。
 
 
 
 
「ねぇシン君」
「ん?」
「明け方うなされてたよ。大丈夫?」
「うなされてた?」
 
「うん。何か悩み事でもあるの?もし何かあったらちゃんと話してね。
 私に黙って一人で苦しまないでね」
 
 
 
眉を下げ少し唇をつがらせながら、それでもしっかりと僕の瞳を見詰めながら話すチェギョンを僕はしっかりと抱きしめた。
 
 
 
大丈夫だ。苦しんでるのは今の僕じゃないから」
「へ?今の僕じゃない?」
 
「そう。昔の…お前に会う前の僕が夢の中で苦しんでいた。ひとりぼっちの寂しさにずっと耐えて強がって虚勢を張って生きていた。お前に会うまで僕はそんな生き方しか知らなかったから。」
「シン君」
 
 
 
ゆっくりと僕の首に腕を回すとギュッと抱きしめてくれる。華奢なのに暖かく逞しい僕の愛しい人。あの頃の僕はこんなに暖かな場所があることを知らずに生きていた。
 
 
「ひとりぼっちって…すごく悲しい言葉よね」
「あぁ。そうだな」
 
「シン君は私が出会った人の中で一番孤独な人だった」
「シン・チェギョンは僕が出会った人の中で一番輝いていた人だ。だから眩しくて見詰める事が出来なかった。それが僕の愚かさだった。」
 
 
「でもね、シン君は孤独じゃないよ。友達やコン内官。お父様やお母様、お婆様にお姉様。みんながシン君の傍にいる。一人で生きている人なんて居ない。」
 
「あぁ。それもみんなチェギョンお前が教えてくれた」
「私じゃないよ。シン君自分で気づいたのよ。一人じゃない、求めるのではなく与えるものだって。」
 
「そうだな…。そうかもしれないな。」
 
 
 
ずっと求めていた温もり。誰かに与えて欲しいという思いと諦めが混在する心。だがシン・チェギョンと出会って、彼女の心に触れ僕の心は変化していった。人は変われる。人との出会いは偶然のようで必然であり、思いの強さは何物にも勝る。
シン・チェギョンと出会った事で急激に変化した僕の心。時に変化は恐怖を生む。だがそれは明るい未来を手に入れるために乗り越える山であり、その恐怖に打ち勝つことで心を解き放つことが出来るのだから。
 
 
 
「ね。今日はすっごくいいお天気よ」
「本当だな。今日は公務もないし庭でランチでもしないか?」
「いいね!じゃそろそろ起きようか」
 
 
 
窓から差し込む眩しい光にチェギョンの姿が重なる。こいつと一緒に居たら出来ない事なんて無いって思えてしまうから不思議だ。
 
「なぁ。今日は休日だろ?みんな大学休みなんじゃないか?」
「えっ?」
 
「暫く忙しかったから随分あってないだろ?ガンヒョンやヒスン・スニョンも呼ばないか?もちろんイン・ギョン・ファンにも声を掛けて久しぶりにみんなで楽しみたいな」
 
「いいの!?シン君」
「もちろんアイツらが暇ならな」
 
「わ―い!すぐに連絡するね。あ!何か作ろう。そうだ料理長さんに頼んで色々作ってもらって・・・・えっとそれから・・・。」
 
 
表情をクルクルと変えながらアジャ!とポーズを作るチェギョンが可愛いが僕は自然にそれを止めていた。
 
 
「チェギョン何もしなくていい。海苔巻とお茶があれば十分だ。後は皆が笑顔で話せる場所だけでいい。特別な事なんて何もいらない」
 
僕のその言葉に初めは驚いたような表情を浮かべたチェギョンが微笑みながら僕の背中に抱き着いた。
 
 
「そうだね。大切なのはみんなの笑顔だもんね。ありがとうシン君」
 
 
 
今の僕たちに必要なのは『沢山』を求めるのではなくたった一つを大切にすること。以前の僕とは違うんだ。自分の存在を知らしめるために使うアイテムではなく、心の温かさと笑顔、それがあればどんな苦悩も乗り越えられる。友達がどれだけ大切な存在か分かる事が出来たのもこいつのお蔭だ。
「ありがとう」と伝えたいのはいつも僕の方なのに、チェギョンはそれを自然と口にする。この言葉で心が温かくなるって事を教えてくれたのもシン・チェギョンお前なんだ。
 
 
 
「シン君。ありがとう愛してる。もう離れないからね。」
「僕も離さない。」
 
 
チェギョンを抱きしめキスをする。じゃれ合いながら笑い合い眩しい光の中に居る。
僕たちはひとつだけど同じじゃない。互いに支え合ってひとつになる。
どんな寒さも温めあえるように、どんな涙も笑顔に変えられるように、ひとつひとつ乗り越えていける強さと誇りを忘れずに生きて行く。
            〜輝く光の世界へ〜
 
 
 
 
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