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ユダヤ教の主な儀礼 その1
 ここではユダヤ教徒が人生の節目に行う主な儀礼について書いていきます。
 まず取り上げるのは、安息日シャバトです。これは創世記で、神が6日かけて世界を作った後7日目に休んだことに由来しますが、ここから現在世界中で使われるカレンダーが週で区切られ、特定の日を休みとする習慣が広まったのですが、元々の起源はバビロニアの暦にあり、かの地で7の倍数の日に祭祀が行われた名残です。現在もイスラエルでは一日の区切りは日没から次の日没までなので、正確には金曜の日没から安息日が始まります。
 さて、よく誤解されるのは安息日とは「休んでいい日」というものですが、ユダヤ教においては「休まなくてはいけない日」であり、労働はもちろんのこと長距離の移動、火をおこすことなども禁じられており、金曜日の日没直前に蝋燭を点けたらそのまま点けっぱなしにしておかなくてはなりません。料理などの家事も労働と見なされるので、その前に丸一日分の食事を用意しなければならず、準備のための掃除や入浴などで金曜日の主婦はなかなか忙しいようです。現在のイスラエルでも、学校や職場は金曜は午前中までで、日没後は商店なども店を閉め、公共の交通機関も止まってしまいます。
 この夜は夕食の前に2つの歌を歌います。一つはこの日に現れる天使の訪れを歓迎する歌で、もう一つは一日働き通しだった主婦を讃える歌です。それが済むとハラーと呼ぶヒモ状にした生地を6つ編みにして焼いたパンを祝福し、肉か魚、もしくは両方を食べます。3回の食事を終える度にシナゴーグに盛装して出かけ、祈りを捧げます。土曜の日没後、夜空に3つの星が見えると安息日は終わります。区切りを意味するハヴダラーという儀式で安息日の終わりと、新しい週の初めを祝います。一杯のワインと香りの良いスパイス、ねじったり編んだりした専用の蝋燭の灯りとともに祈祷を唱えます。
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専用のカバーに入れられたハラーは必ず2斤用意するのが決まりとされる
 
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ハヴダラーで使う蝋燭とスパイス入れ(左)、ワインのためのカップ 


 生後8日目の男子に施されるのが割礼ブリット・ミラーですが、これはヘブライ名の命名式も兼ねていて、家族、親戚、友人などを沢山招いた中で盛大に祝い、儀式が終わるとパーティーになります。女の子はゼヴェド・ハバットあるいはシムハット・バットという命名式をしますが、これはごく内輪で祝います。元々女の子の命名式についてはミシュナーにもタルムードにも明確な記述がなく、20世紀になって伝統の復活と男女同権への意識の高まりから行われるようになったものです。アシュケナージの間では、中世までは男の子も女の子も同じようにホレクレイシュという儀式で命名されましたが、ドイツ語圏では後述するようにユダヤ人の立場は非常に不安定でしたので、女の子の儀式はいつの間にか廃れて行ったと思われます。
 割礼は、そもそもアブラハムと妻サラとの間に息子イサクが生まれようとする際、神との契約の証しとして施すよう命じられた行為です。そのときアブラハムには、侍女ハガルとの間に13歳になるイシマエルという息子がいて、父アブラハムともども割礼をし、神との契約を守ります。
 具体的には、包茎の治療と同じで男性器の包皮を環状に切り取るというもので、トーラーでは父親の役目とされていますが、進んでやりたがる人がほとんどいないため、一般にモヘルというラビか医師もしくは両方の資格を持ち割礼の訓練を受けた人が行います。モヘルは元々男性しかなれませんでしたが、現在では正統派以外の宗派には女性のモヘルもいます。
 儀式はシナゴーグか自宅で行い、クヴァター(女性ならクヴァテリン)と呼ばれる人が、両親から赤ちゃんを受け取り、モヘルのところへ連れてきます。これは名誉ある役目で、元は古いドイツ語でキリスト教の洗礼式の名付け親を意味するゲヴァッターがなまったともいわれています。招待された人々の見守る中、決まった道具で決まった手順により、麻酔も鎮静剤も使わず、儀式は簡単な説明の後にほんの数分で終わります。
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モヘルが使う割礼の7つ道具(18世紀)
 
 現在割礼を受けたユダヤ人男性は信者全体の9割ほどだそうですが、日頃それほど信心深くない人も息子の割礼だけは行う傾向がある一方、異教徒との結婚で生まれた子にはしないことも多いようです。
 割礼自体の起源ははっきりしませんが、ヘロドトスによればエジプトやエチオピアにも見られた習慣で、オリエントではそれほど珍しくなかったようです。理由としては、清潔に保つためともいわれますがそれほど説得力はありません。性病感染の予防には効果が認められるようですが、神への犠牲あるいは通過儀礼としての意味合いが強いようです。いずれにしても、この習慣はイスラム教徒にも受け継がれ、全世界の男性の3分のⅠが割礼を受けているといわれています。
 男の子が13歳、女の子が12歳(改革派は13歳)になると、それぞれバル・ミツヴァーバト・ミツヴァー(ヘブライ語でバルは息子、バトは娘の意)という成人式を行います。この儀式を経るとユダヤ社会では大人として認められ、それまで免除されていた断食を初めとする613の戒律(ミツヴァー)すべての順守、倫理観に基づいた生活習慣の実践、責任ある行動などが要求される一方、コミュニティの一員として儀式や礼拝への参加も正式に認められ、昔、つまり近代国家の一員としてそれぞれの国法に縛られる以前は、ユダヤ法(ハラハー)に基づいてユダヤ法廷で証人として証言すること、個人的な資産を持つこと、結婚の権利なども認められていました。
 男の子達はこの年齢になるまでに、ヘデルという寺子屋のような学校でヘブライ語やトーラーに関する初等教育を受け、各儀式での祈祷の朗誦が出来るようになっていなければなりません。女の子への教育は近代までは重視されず、ヘデルに通うのはもっぱら男の子だけでしたし、シナゴーグでの儀式や礼拝に出席することもありませんが、結婚すると男性と隔てられた席での出席が出来るようになります。近代になると男女同権の意識により、保守派や正統派以外の宗派では女性が礼拝で祈祷文を朗誦することも出来るようになりました。
 男の子は儀式のⅠ〜3ヶ月前からテフィリンという律法の一節を書いた羊皮紙が入った小さな箱をひもで腕と頭に巻き付け、多くは13歳の誕生日から最初の安息日の日に、たまに月曜から木曜の朝の礼拝の際、タリットという儀式用の白いショールを羽織り、その週に読む分のトーラーの一節を読み上げ、儀式を進行し、トーラーの問題点についての議論を行ったりします。
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バル・ミツヴァーでの様子 右の男性の額にあるのがテフィリン、トーラーを読み上げている男の子の腕と頭にもテフリンのひもが見え、後頭部に被ってるのがキッパという帽子

 儀式の後は家族、友人、隣人などを招いてのパーティーとなりますが、近年はホテルの大広間などを借りて大々的に行われることもよくあり、百人単位の招待客があることも珍しくないようです。ユダヤ教に関する本や文房具、ギフト券や学資保険、現金などのプレゼントが用意され、その数や金額の合計は縁起の良いとされる18の倍数になるようにします。またタリットも、この日から初めて身に付けるようになるので、頻繁に贈られます。女の子にはアクセサリーもプレゼントされますが、女性にとって特に名誉とされる蝋燭に灯をともす役目に就くようになることから、蝋燭のプレゼントもしばしば見られます。
 バル(バト)・ミツヴァーについてはトーラーには記述がなく、14世紀まではこの用語が使われた形跡はないようです。ただタルムードでは男の子は13歳になるとその誓いは拘束力を持つとされ、中世も末期になって行われるようになったと考えられています。

参考文献 「ユダヤ人ゲットー」 大澤武男 著 講談社現代新書
     「ユダヤ古代誌 1」 フラウィウス・ヨセフス 著 ちくま学芸文庫
参考資料 Wikipedia 「ユダヤ教」「ユダヤ暦」「バビロニア暦」「安息日」「割礼」「バル・ミツ
     ワー」「安息日(英語)」「割礼(英語)」「モヘル(英語)」「バル・ミツワー(英語)」
     「バト・ミツワー(英語)」
図版   Wikipedia 「ハラー(英語)」「ハヴダラー(英語)」「割礼(英語)」「バル・ミツワ     ー(英語)」

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