三十路おんなのカルテ

長らくのご愛顧、ありがとうございました。

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「家に帰ったら、その子をほめてあげてください。
 ぎゅっと抱きしめて、頑張ったねって言ってあげてください。その親にはそう言ったんだよ」
と彼は言った。

精神科の治療には認知行動療法というのがあって、その中にSSTという手法がある。
SST(ソーシャル・スキル・トレーニング):社会技能訓練。
おもにコミュニケーション能力の向上をはかるものなのだけれど
それを実施する時に重要な柱として「ほめること」が挙げられている。
その場では「ほめられること」が基本。その安心感の中で、さまざまな課題に挑戦するのだ。
「だから、先生が言った『ほめるのが大事』っていうのは、ちゃんとエビデンスがあるの。
 エビデンスがある手法として、治療に取り入れられてるんだもの」
「そうなのか」と彼は嬉しそうに笑った。

「でもさ、面白いことに、SSTを導入することで変わるのはスタッフのほうなんだよ」
私が言うと、彼は興味深そうに続きを待った。
「特にね、看護婦さんたちは患者さんに対して『ほめる』という視点で関わりを持つことが少なくて
 どちらかというと問題追求型思考だから。一般に治療っていうのはそうでしょ。
 悪いところにアプローチして治す。良いところを見るなんて視点は教わらない。
 急性期ならそれでいいんだけどね
 長い療養生活となってくると、問題追求型思考じゃどうにもならないことのほうが多くなるの。
 でも、私たち専門家は頭をうまく切り替えられない。
 それがさ、ここ(SST)では『ほめること』が基本です、なんて言われると、面食らうわけ。
 スタッフが先ず自分たちのレスポンスのあり方を自らふり返ることになって気付く。
 『あら、どうしよう。私、ほめ方がわかんない』って。
 なんだか笑い話みたいだけどさ(笑)」
  「私?私はSSTに参加しなくてもいいの。とても上手なんだから、ほめるの。
 『ええ!そういうほめ方があったのか』って学生にほめられるくらいに(笑)」
「だろうね」と彼も笑った。

「ねえ、先生。
 ほめるのも大事だけれど、叱られるべき時に叱られるっていうのも大事だと、私は思う」
私は別の視点で切り出した。

幼いこどももだんだんと分かってくる。
どういうことをすればほめられて、どういうことをすれば叱られるのか。
ほめられたくてすることもあるし
叱られると分かっていてしてしまうこともある。

そういう悪いと分かっていながら何かした時に、きちんと叱ってもらえないということも
ほめられないというのと同じように、その子を傷つけるんじゃないかなと思う。
要するに
ひとが育つにはその振る舞いに見合ったレスポンスが必要
そんな風に感じるのだ。
もちろん、大人になった今でも適切なレスポンスは必要なのだけれど
成長過程におけるそれの方がより重要で
その時受け取らなかったものを後から補うのにとても時間がかかる。

その点において、たくさんのこどもの成長を見てきた彼と私の意見は一致していた。

(続く)

閉じる コメント(10)

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叱るのは難しいよね。

褒めるのも難しいのかも知れないけれど、
傷つける可能性は、叱るよりも低い感じがするから。

僕は褒めてばかりだなぁ…。

ところで、この前の記事のお母さんとのエピソードは、
とても印象深いね。
お母さんの気持ちはわかんないけれど、
リリカさんの気持ちはなんとなくわかる、
ってまあ記事に書いてあるから分かるんだけど^^;

僕も子供が迷子になって、
あんなふうになったら、
瞬間、反射的に怒るかも知れないな。
やっぱり怒んないかなぁ…

でも、これからははぐれないようにずっと手をつないでいよう、とか言うね、多分。で、もし『自転車のところに戻れば会えるかもって思った』とか聞いたら、

『えらい!すごい!よく思いついたね!!よく自転車の置いてある場所に戻って来れたね!自分で考えたんだ??すごーい!!』

とかなんとか、本気で感心して褒めると思う。

2009/7/30(木) 午後 0:03 [ pozymegot ]

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褒めるのも叱るのも、相手を良く観ていないと出来ないことですものね。
コインの裏表、車の車輪。どちらが欠けても多すぎても成り立たない。
今になって反省しても“遅かりし由良の介〜”なんですけど。

2009/7/30(木) 午後 1:11 こごと

どこの地域かというのを失念して思い出せないのですが。。。
7歳ぐらいの子供の通過儀礼で、生涯の中でも一番の晴れ着を着せ、どんな祭りでも食べられないようなご馳走を食べさせ、最高に幸せな気分にさせた後、その子の家の畑の境界線に連れてゆき置いてある境界石の上に乗せて、いきなりビンタする・・・っていうのがあります。強烈な傷を子供に与えるわけですが、そのせいでその子は土地の境界というものを、しっかりと心に刻むことができるのです。

なぜだか、そんな通過儀礼の話を思い出してしまいました。

2009/7/30(木) 午後 7:18 [ まりん ]

「叱られる理由がわからない」ような叱られ方も、子どもを傷つけますね。そういうときの気分は、「ある種、殺されているような感じ」。

SSTの基本は、「褒める」ことなんですか?あらゆる人間関係につかえるわけですよね。

2009/8/1(土) 午前 2:32 [ カール(カヲル32) ]

pozyさん
>僕も子供が迷子になって、あんなふうになったら、瞬間、反射的に怒るかも知れないな。
そうですね。私も怒っちゃうかもしれないです。

だけど、たとえば晩ご飯の後くらいになって、お風呂の中で叩いちゃったことはやっぱり反省すると思うんです。
で、親のエゴだと言われようが、安ドラマの観すぎだと言われようが
風呂上りに子どもを抱きしめて「痛かったね。でも、心配したんだよ」とか何とか言ってしまいそうです。
私がほしかったのは、たぶんソレなんですよね。

数十年後に、やっとその時の母の気持ちを知ることになったわけですが。

2009/8/1(土) 午前 11:11 リリカ

こごとさん、おっしゃるとおりです。
どちらもちゃんと見ていないと
ちゃんと向き合っていないとできないですよね。
親も初子育てでは試行錯誤ですから、由良の介になるのも致しかたなしです^^;。

2009/8/1(土) 午前 11:13 リリカ

こでまりさん、それはすごくショッキングな通過儀礼ですね。
そういえば、通過儀礼の中には少々乱暴で、こどもにとってはショッキングなものってありますよね。ひもを付けられて、断崖絶壁にある洞穴の中を上から覗かせる、みたいな。
それはあくまでも通過儀礼だからこそ許されるし、一種の歯止めの役割を果たしているのかもしれないと思います。
一番悲惨なのは、無意識下で繰り返される愛情という仮面をつけた暴力です。

2009/8/1(土) 午前 11:19 リリカ

KAORUさん、そうですね。
SSTでは『正のフィードバック』を原則としています。つまり、これが良かったところを具体的にほめるということです。
コミュニケーションに関する具体的なポイントがあらかじめポスターに書かれていて、参加者の見えるところに貼られています(相手の目を見て話す、とか)。
そのポイントに沿ってほめたり、それ以外のところをほめるのももちろんありです。
そして、プラス「こうすればもっと良くなるかも」という点を足すのです。周囲からもらったアドバイスの中で、何を取り入れるかは本人に任されています。
KAORUさんのおっしゃるように、いろいろな人間関係に汎用&応用できるのが理想的です。

「けなし」文化の大阪人にはなじまないような印象もあるのですが、くすぐったくてもほめられると悪い気はしませんよね^^。

2009/8/1(土) 午前 11:25 リリカ

現時点で、世の中に一人だけ、恐怖を感じる相手がいて、その人に対しては、正常な態度が取れないんです。

その人は私の親ではなくて、友人の中の一人、私をワナにはめようとした人です。

その人の前に行くと激しい恐怖を感じます。

認知行動療法で治るでしょうか?私にも認知行動療法が必要かしらと思ってしまいました。

2009/8/1(土) 午後 0:19 [ カール(カヲル32) ]

KAORUさん、詳しいことが分からないのであれですけど
コミュニケーション全般でなくて、その人の前だけならば“治療”が必要かどうか。。。
パニック、恐怖症なども認知行動療法の対象の範疇ではありますが
日常生活に大きな差しさわりがなければ、あえて対峙したり、克服したりというのを勧めないかなぁ。。。私だったら。

2009/8/1(土) 午後 3:51 リリカ


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