三十路おんなのカルテ

長らくのご愛顧、ありがとうございました。

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さようなら、30代。

もうすぐ私の30代が終わります。
 
このブログは、もともと『三十路おんなのカルテ』として、35歳の時に
正確に言えば、35歳と4か月あたりでスタートしました。
 
なので、いつかブログのタイトルと実年齢が合わなくなる日が来ることは分かっていましたし
その時には、何らかの形で“ひとつの終わり”を迎えるつもりでいたわけです。
 
そして、いよいよその日が近づいてきました。
 
私の中のひとつの時代の終わりです。
 
私にとって
10代は家族とつないできた手を、どのように切り離すかについて考えた10年でした。
20代はその空いた手で、誰か(ほかでもない誰か)を求め、さまよう10年でした。
30代は夫というパートナーとしっかり手をつなぎながらも、こころに自由を得て外へと関心が向いた10年でした。
 
30代後半、自分と他者という二者関係をこえて
“単位”でものごとを考えるということがテーマになっていたように思えます。
 
父が倒れたり、不妊治療に通ったりする中で“家族”という単位について向き合う機会が多くなったし
職場では人の入れ替わりがあって、後輩指導を含め、“チーム”という単位で考えさせられることも増えました。
もう少し大きなところに目が向いて、自分の専門領域全体のことを考えたりするような、
そんな視点を得ることもありました。
 
そんな中、30代後半に始めたこの場所は、私にとって
もう一度、自分自身について考えるための大切なスペースでした。
こんなにも自分のことや日々のことについて、文章を書いたことはないと思います。
 
お付き合いいただいた皆様には感謝しています。
 
これからは『三十路おんなのカルテ倉庫』になります。ゴロが悪いので改名はしませんが。
四十路になった私が、こちらで新しい記事を更新することはありません。
この記事をもって、このカルテを閉じたいと思います。
 
昨年の今頃から、ほとんど更新を停止した状態で、ずるずるとやって来ましたが
ここがひとつの終点であり、お別れの時です。
 
今まで本当にありがとうございました。
 
皆さん、どうかお元気で。
 
リリカ
「家に帰ったら、その子をほめてあげてください。
 ぎゅっと抱きしめて、頑張ったねって言ってあげてください。その親にはそう言ったんだよ」
と彼は言った。

精神科の治療には認知行動療法というのがあって、その中にSSTという手法がある。
SST(ソーシャル・スキル・トレーニング):社会技能訓練。
おもにコミュニケーション能力の向上をはかるものなのだけれど
それを実施する時に重要な柱として「ほめること」が挙げられている。
その場では「ほめられること」が基本。その安心感の中で、さまざまな課題に挑戦するのだ。
「だから、先生が言った『ほめるのが大事』っていうのは、ちゃんとエビデンスがあるの。
 エビデンスがある手法として、治療に取り入れられてるんだもの」
「そうなのか」と彼は嬉しそうに笑った。

「でもさ、面白いことに、SSTを導入することで変わるのはスタッフのほうなんだよ」
私が言うと、彼は興味深そうに続きを待った。
「特にね、看護婦さんたちは患者さんに対して『ほめる』という視点で関わりを持つことが少なくて
 どちらかというと問題追求型思考だから。一般に治療っていうのはそうでしょ。
 悪いところにアプローチして治す。良いところを見るなんて視点は教わらない。
 急性期ならそれでいいんだけどね
 長い療養生活となってくると、問題追求型思考じゃどうにもならないことのほうが多くなるの。
 でも、私たち専門家は頭をうまく切り替えられない。
 それがさ、ここ(SST)では『ほめること』が基本です、なんて言われると、面食らうわけ。
 スタッフが先ず自分たちのレスポンスのあり方を自らふり返ることになって気付く。
 『あら、どうしよう。私、ほめ方がわかんない』って。
 なんだか笑い話みたいだけどさ(笑)」
  「私?私はSSTに参加しなくてもいいの。とても上手なんだから、ほめるの。
 『ええ!そういうほめ方があったのか』って学生にほめられるくらいに(笑)」
「だろうね」と彼も笑った。

「ねえ、先生。
 ほめるのも大事だけれど、叱られるべき時に叱られるっていうのも大事だと、私は思う」
私は別の視点で切り出した。

幼いこどももだんだんと分かってくる。
どういうことをすればほめられて、どういうことをすれば叱られるのか。
ほめられたくてすることもあるし
叱られると分かっていてしてしまうこともある。

そういう悪いと分かっていながら何かした時に、きちんと叱ってもらえないということも
ほめられないというのと同じように、その子を傷つけるんじゃないかなと思う。
要するに
ひとが育つにはその振る舞いに見合ったレスポンスが必要
そんな風に感じるのだ。
もちろん、大人になった今でも適切なレスポンスは必要なのだけれど
成長過程におけるそれの方がより重要で
その時受け取らなかったものを後から補うのにとても時間がかかる。

その点において、たくさんのこどもの成長を見てきた彼と私の意見は一致していた。

(続く)
たくさんのこどもを見てきた教育者であり、私の恩師でもある人と話をしていた時のこと。
「問題のある子を見ていると、褒めるって大事だなぁと思うんだ」と、彼が言った。
「問題のある子らは褒められるべき時に、ちゃんとフィードバックを受けていない」

彼の話を聞きながら、思い出したことがあった。

それは迷子になった時の思い出。

前にも書いたことがあるエピソードだけれど、私は迷子になることの多いこどもだった。
ひとはどんな体験からも学ぶことができるし、また慣れることもできる。

5才くらいのある日のこと。
いつものように迷子になり、母親の姿を求めて、さ迷い歩いていた私に、あるひらめきが起きた。

「そうだ。一緒に乗ってきた自転車まで戻れば、いずれそこにお母さんは戻ってくる」
幼心に我ながら名案だと思った。
これでもう大丈夫。
一緒に乗ってきた自転車も無事見つかって、ホッとした私は、少し浮かれていたのかもしれない。
道行く人に「お母さん、知らない?」と尋ねていたらしい。
その私を発見した母親が寄ってきた。
母親が寄ってくる姿に、正解をみた気がした。
私は自分の判断が正しかったのだと嬉しい気持ちで私は言った。
「あ、お母さん!」

そんな私の声に弾かれたかのように、直ぐさま母の手が私の頬を打ち、鈍い音がした。
何が起きたのか分からず、私は泣くのも忘れてフリーズした。
褒められこそすれ、叩かれるなどまったく予想外なことだった。

あの時のことは、今でも忘れられないし、私と母の関係を象徴するような記憶だと思っている。
母と私はその後も何かとそのようなすれ違いを繰り返し
母の怒りの正体がつかめぬまま私は大人になっていった。

彼が例に出したのは
親の言うとおりに頑張って、友達の前でワガママに振る舞うのを我慢したのに
そのことを褒められなかった女の子のことだった。

その女の子はその日を境に活発さを失い、ぼんやりと過ごすようになってしまった。
その子の親は
友達の前でワガママに振る舞うのを我慢するのは当然のことだから
褒めるべきことだとは思っていなかった
彼に指摘されるまで、よもやそれが原因でわが子の様子が変わったのだとは思ってもみなかったらしい。
                                         (続く)
 ※参照カルテ 迷子

君の中の図書館

いいかい。君の中に大きな図書館があるとしよう。
それは君だけの図書館だ。

若いというのはね、これはけっしてバカにした言い方でなく
純粋な意味で“若い”というのは、まだまだ整理されていない書庫のようなものなんだ。

まだ分類できていない本がたくさん積まれていて、中にはまだページを開いていない本もあって
君はこれからそれを君のやり方で収納していくんだ。君のルールで。
君の話を聞いていると、
君の中にはどこにおさめるべきか分からない本が山積みで、それぞれが宙ぶらりんで
何から手をつけていいのか見当がつかずに途方に暮れている感じがする。

友情とか、恋とか、愛とか。
親とか、友だちとか、恋人とか。
勉学とか、仕事とか、セックスとか。
プライドとか、アイデンティティとか、コンプレックスとか。

そういうのが、君の中で宙ぶらりんのまま浮かんでいる。
そういうのがたくさんありすぎて、何がなんだかこんがらがっている。

僕がね、今、このトシになって思うのは
それぞれにはそれに見合ったポジションがあって、それに適した居所を得ると
それについて、思い悩んだり、迷ったりすることがずいぶん減って楽になる、ということだ。

つまりはこうだ。
君がある女の子と知り合いになる。彼女のことが次第に気になり始める。
いつの間にか彼女のことを考えている時間が増えている。
これは何だろう…と思う。そして、気付く。
僕は恋をしているのだ、と。
すると、その気持ちは恋という居場所を得て、少しばかり安定する。たとえ、それが仮の居場所であったとしても。

彼女のほうも君のことがまんざらでもなさそうだ。
でも、はっきりと気持ちを確かめ合ったわけではない。
そう。宙ぶらりんだ。
こういう時が一番苦しい。
もしも想いを告げて、彼女が恋人になったとしたら、彼女の存在は君の中で“恋人”という居場所を得て
やっぱり少しばかり楽になる。

この“居場所”を得ていない宙ぶらりんなもの。
それが君の苦しみの正体なのだ。
そして、若いというのはたくさんの宙ぶらりんを抱えている状態のことをいう。

え?もちろん、僕もそうだったし、今だってそれについて答えを持っているわけでもない。
君の話を聞いているうちに、思春期の苦しみの正体のしっぽをつかんだ気がした。それだけのことだ。

君がサイを投げる。僕が駒を進める。
そう。それが僕らのルールだからね。
今のところ、それが逆転することはない。あくまでも今のところは。

さて。
君の中の図書館の話に戻そう。

図書館をカスタマイズするには、どうしたらいいのか。
僕の場合は、たくさん本を読んだ。ハウツーものから古典小説まで。
いや、図書館の喩えに照らし合わせているわけではなくて、実際に本を読んだんだ。
そして、分かったことは、自分が悩んでいるようなことは先人も通ってきた道であるということ。
それから、愛や友情、その他について、他の人はどんな風にカテゴライズしているかについて知ることができた。

それは自分と似ていることもあったし、全然ちがうこともあった。
そうして、是非を問いながら、自分の中でカテゴライズしていく。そんな感じ。

もちろん、本を読まないという人もいるだろう。
それは地図を持たずに知らない土地を歩くのに似ていて
いろいろな体験に出会うチャンスもあるけれど、少々リスキーなのと、やっぱり時間はかかるだろうね。
そうかといって、本ばかり読んで、頭の中だけでカテゴライズするのも、あまりおススメできない。
そういうわけで、今日はこの言葉を君に贈ろう。
若者よ、書を持って町に出よう。

まあ、もじりである点は、大目に見てくれたまえ。
さて、そろそろ出かけなくちゃ。
今日のところは、ここまでとしよう。

続きはいずれまた。

 ※参照カルテ ひとのセックスを笑うな(限定記事)
私をどこにも連れて行かないでほしい。
ただそこに、そうしていてくれるだけでいいのです。
担当患者さんだけでなく、しばしば担当外患者さんも私のところにやってくるのは
私が彼らをどこにも連れて行かないからじゃないか…と感じることがある。

昔は、相談を受けたら答えを出すか、出させるか…みたいなことをやってたように思う。

でも、基本的にひとは誰かにどこかに連れて行かれることを望んでいるわけではない。
もちろん、行き先を誰かに委ねたい人もいるだろう。
けれど、それはあくまでも表面上のもので
自分が行きたいところに好きなように行きたいというのが本音だと思う。
それがどこにあるのか分からなかったり、行き方が分からなかったりするから相談するんであって
基本的には、どこかに連れて行かれるのはイヤなのだ。

相談を受ける側はそんなことに気付かず、良かれと思う方向に連れて行こうとする。

今日、本屋に寄った時のこと。
村上春樹の新作『1Q84』の隣りに『1Q84を読み解く』という解説本らしきものが平積みされていた。
こういうのは、正直、興味がそそらられる。
手に取り、書いた人と目次をざっとチェックし、パラパラとめくってみる。

う〜ん。
読みたい気持ちと読みたくない気持ちが交錯して、私は本を元の位置に戻した。
その時の気持ちがこうだった。
私をどこにも連れて行かないでほしい。
読み終わってもスッキリしない読後感の小説ではあるけれど
誰かのナビゲートでスッキリしたい衝動にも駆られるけれど
でも、明確な意図を持った誰かにどこかに連れて行かれるのは、なんだか違う気がした。

ああ。こういうことなんだな。
たとえよく分からないことであっても
それを誰かに読み解かれるというのはなんだか違う気がするもんなんだな。
それは難しいからといって、誰かにジグソーパズルを組み立ててもらうようなものなのだ。

もしも、私の中に確固とした解釈があれば
それと比較するという意味でその本を買うのもいいのかもしれない。
そう考えると、私はまだまだその域には達していなくて
私の中の“モヤモヤ”とも、まだもう少しうだうだと付き合いたいと思っているんだろう
…というようなことに気付いた。

うん。
分からないことをそのまま置いておくというのも悪くない。
私が自分で選んで行ける余地がまだあるってことだもんね。

どこかに連れて行かれることを選ばなかった自分に、とりあえず拍手。
 ※参照カルテ 『べき』のテーブル ・その後(限定記事)

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