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年代豊凶録
天明3年 1783
夏の7月半ばから8月はじめにかけて東風が吹き、綿入れを着て焚き火にあたった。秋になったが、稲が一向に実らない。皆無同然で、大飢饉で、10月になって新穀8〆文だった。そんな凶作なので、隣りの国津軽はとりわけ皆無で、秋から乞食非人がおびただしく引っ越して村々に数多く入り込んだ。まことに身の毛もよだって、恐ろしいことである。
 
今年、関東では砂が降った。大飢饉。
 
天明4年 1784
去年の秋中は非常な大飢饉になり、老若男女の区別なく乞食非人になり、村々町々に流浪して、食いものを奪い取り、強引にむしり取り合い、幼子を淵や川に投げ捨て、道路に伏し転び、あるいは飢えて盗みを働き、捕らえられるものもいた。まことに親子、兄弟、夫婦、朋友の区別もなく、そのうえ夏に疫病が大流行して村ごと家ごと病死人がおびただしく、他の乞食非人や餓死病死の死骸は道路にあふれた。[]
去年は凶作で大勢の餓死人が道路に出たとはいえ、その多くは他の国のもので、当国のものは格別餓死人がなかったという。ただ夏の疫病で病死人が多くあった。今年は当国の米がたくさんあるので、よろしい。他の国にも米を送って、駅筋はそれでかなり助かった。[]
 
天明四辰の秋、幾年にもない上々作。
天明四年百性処辰の年(テンメイシネンヒャクショウトコロタツのトシ)
 
[現代風に書きあらためた。]
☆佐藤貞顕が長谷川家の婿養子になる前の年、17才のとき大飢饉が起きた。夏でも寒く、稲が実らない。これは3月津軽の岩木山の噴火で火山灰が空を蔽い、農作物に被害をあたえたからだと言われている。津軽地方では藩の人口の半分近くが死んだり逃亡したという。南隣りの秋田に越えて来た人たちはどうなったか 
 
それは天明4年の記事に長谷川貞顕が想い出して書いている。信じがたいことだが、飢えと疫病で地獄絵巻のようだ。なぜ幼子を川などに投げ捨てるのか、不思議だ。〈乞食非人や餓死病死の死骸は道路にあふれた〉というのが事実なら、秋田の人たちは何の援助もしなかったのか ?特に死骸を放置したことは伝染病流行の原因になったと思われる。これは予想できた事態だが、住民に自主的な難民援助活動が許されなかったのではないか?住民のおそろしい迷惑は、飢饉の政治的な悪用の目的だったかもしれない。地獄絵巻は仏教に由来する。
 
とはいえ、2度目の〈去年〉の話まで津軽と秋田が混ざり合っている。国境がない。北秋田地方の住民の餓死人は多くなかったというのを読んで、そうだったか、と真実が分かる。なぜ津軽と秋田を錯覚させるような書き方をしたのか 、ミステリーだ。
 
4年、秋田は上々作だったので、他国おそらく津軽に救援の米を送る余裕があった。北秋田地方の被害は夏の疫病で病死人が多く出ただけだ。しかし、太田新田()村の長谷川家では家族の5人が次々と死んだが、それについては一言も語られていない。〈親子、兄弟、夫婦、朋友の区別もなく〉〈村ごと家ごと病死人がおびただしく〉とあるので、なおさら奇妙だ。検閲を恐れたとしたら、普通の病死ではないかもしれない。
 
三宅教授が公表した論文で死んだ日付が明らかなのは、三人だけである。[1]
4代目屋武(いえたけ) 天明四年甲辰(1784)七月十二日 死去 行年六十六歳
   妻 今泉村武田利兵衛女() 六月二十三日 死去
5代目屋治(いえはる)  七月二十一日 死去 行年四十一歳
〈十二〉と〈二十一〉はミラー・イメージである。
 
〈天明四年百性処辰の年(テンメイシネンヒャクショウトコロタツのトシ) 〉が何か暗示しているように思える。天明は天命に、四年は死年に通じる。〈トコロタツ〉は〈所を立つ〉という不吉な意味に取れる。そうだじゃれ的に読ませる必然性があったのだろう。これは天明3年の地獄絵巻を1年後の記事にずらして津軽と秋田を混ぜ合わせて書いた理由を明らかにする。疑惑を浮かび上がらせて事実の異常さを伝えるためである。
 
長谷川貞顕は、麦原尺長の名で多義的な狂歌を詠む文人でもある。この記事では小説的なテクニックを見せている。奥が深いな、とあらためて思う。
 
去年という話し言葉は、若いころから会話でも文章でもぼくが気に入っている言葉だが、思いがけない出来事で祖先との記憶のリンクを見た。無意識のリンクと言ってもいい。これは長谷川一族の遺伝子の証明だろう。何か特別な意味を感じさせる〈去年〉である。
 
 
 
 
 
1 安藤昌益の地域と時代 別編9 比内文化の伝統 ;
   愛知教育大学教授 日本思想史 三宅正彦
北鹿新聞 連載 1993
 
 
Filming; 2016.8.25 平川 碇ヶ関 
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