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めいめいの先祖たるものは多くは東照宮へ仕えた奉り数度の戦場に身を砕き骨を粉にして相働きその勲功により知行あてがわれ候間、今に至ってその身その身安楽に妻子を扶助し、諸人に御旗本と敬われ候これみな先祖の勲功によるところなり。しかるところその先祖の恩を忘れてあてがわれたる知行を自身の物と心得、百姓を虐げいささか撫恵の心なくややもすれば課役を申しつけなど致し候輩これみな心正しからず。不行跡というは若年より不学にして何事をも弁えず育ち候よりのことに候。……たとえば楽しみと致す古来よりのものとして和歌を詠じ、蹴鞠・茶道・あるいは連歌・俳諧・碁・将棋等の遊び業これあるところ、今にては御旗本に似合わざる三味線・浄瑠璃をかたりこうじては川原ものの真似を致す族も間々これある由、これみな本妻というもののなく召仕の女にて家内を治むるゆえ軽々しく相成り、不相応なる者を奥深く出入りを免し不取締りにて候。その身恥を思わずわがままなる行跡に成り行き候ままにおいておのずから勝手不如意に相成りて嗜むべき武具をも嗜まず、益もなき金銀を費やし、これを償わんため多くは筋目なきものの子を金銀の持参にめでて貰い、軽き者の子も縁金によって養女とし、娘と致すより事起こり自然と家内を取り乱し候。天和の制法にありて養子は同姓より致すとあるも筋目を糺すべき制法につき某殿寄には以後養子を致すとも娘取り致すとも縁金と申すことを停止せしめ、姓を糺し婚姻すべき時節を延ばさず取り結ぶべきことに候。不勝手なる族片づき候に金銀の用意これなく自然と時節を送り候ときは男女の道おのずから正しからざることに至り候。ここを深く相考うべきこと頭たる者よくよく心をつけもはや縁辺願い出で候節吟味を遂ぐべきことに候。婚礼の時節はずれ候につき年若き面々遊所に入り込み不相応の遊び事を致し風俗乱れ、衣服等につき候紋を略し夜行のとき提灯の印を替え云々。 |
将来の日本
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