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最明寺入道、鶴岡の社参の次に、足利左馬入道の許へ、先づ使を遣して、立ち入られたりけるに、ある
じまうけられたりける様、一献に打ち鮑、二献に海老、三献にかいもちひにて止みぬ。その座には、亭主
夫婦、隆辨僧正、主方の人にて座せられけり。さて、「年毎に給はる足利の染物、心もとなく候ふ」と申
されければ、「用意し候ふ」とて、色々の染物三十、前にて、女房どもに小袖に調ぜさせて、後に遣され
ける。
その時見たる人の、近くまで侍りしが、語り侍りしなり。
(『徒然草』 兼好・作 )
打ち鮑…アワビの肉を細長く切り、打って薄くし、延ばして干したもの。ひき裂いて食べる。のしあわびともいう。
海老…干した海老であろう。
かいもちひ…あんころ餅とも、そばがきとも考えられる。
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