平成17年4月6日から平成23年9月6日までのブログ

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 しかし日向の人々がわがふるさとを神々の土地として愛し護ってきた在り方というものは今日の日向が聖域として俗をたち伊勢の聖域のようにまもられようとしているのに比べて、彼らのウブスナ、むしろ彼ら人間と表裏をなす神格として親しまれるような愛され方であり、それは鵜戸神宮などの俗に徹した信仰の在り方なぞによく表されている。参道の茶店の婆さんたちはよその土地のパンパンのタックルと同じぐらいの勢いでつかみかからんばかり、あるいは哀願して泣訴のおもかげあるものもあり、だいたい日向もはずれのこの鵜戸の地にこれだけの茶店が参道に並ぶというのが意外なことだ。大都会を近隣にひかえた江の島や日光などとちがって鵜戸は主として他県にまして人口のすくない郷土の信仰にまもられなければならないはずだが、それがともかく天下に名高い観光地青島と同じぐらい茶店が並んでいるのである。青島ならば宮崎から三十分の時間だが、鵜戸となるとそう簡単には参らない。元来土地の信仰だけでまもられてきたところなのである。
 茶店の婆さんの哀願泣訴のいたいたしさに私は一ツの日向を見た思いがした。パンパンなみのタックルもやりかねまじいすさまじさ。どの土地のどのような人間でも、生きるためには同じことをしなければならないのである。鵜戸の豪快な神話と風光の中においてもそうなのだ。日向のノンキな熊襲族でも生きるためには婆さんがパンパンなみに客引きせざるを得なくなるのである。
 要するに生活の条件は全国おしなべて同じことなのだが、日向の古墳だけが盗掘されなかったということは、生活の条件をこえた神話の支えがあったということ、私は結局その力を感ぜざるを得なかったのである。
 
(『高千穂に冬雨ふれり』 坂口安吾 より )

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