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そこで最終に自分の意見を申しますと、山人すなわち日本の先住民は、もはや絶滅したという通説には、私もたいていは同意してよいと思っておりますが、彼らを我々のいう絶滅に導いた道筋についてのみ、若干の異なる見解を抱くのであります。私の想像する道筋は六筋、その一は帰順朝貢に伴なう編貫であります。最も堂々たる同化であります。その二は討死、その三は自然の子孫断絶であります。その四は信仰界を通って、かえって新来の百姓を征服し、好条件をもってゆくゆく彼らと併合したもの、第五は永い歳月の間に、人知れず土着しかつ混淆したもの、数においてはこれが一番に多いかと思います。
こういう風に列記してみると、以上の五つのいずれにも入らない差引残、すなわち第六種の旧状保持者、というよりも次第に退化して、今なお山中に漂泊しつつあった者が、少なくとも或る時代までは、必ずいたわけだということが、推定せられるのであります。ところがこの第六種の状態にある山人の消息は、きわめて不確実であるとは申せ、つい最近になるまで各地独立して、ずいぶん数多く伝えられておりました。それは隠者か仙人かであろう。いや妖怪か狒々(ひひ)かまたは駄法螺かであろうと、勝手な批評をしても済むかも知れぬが、事例は今少しく実着でかつ数多く、またそのようにまでして否認をする必要もなかったのであります。
(『山人考』 柳田國男 著 より )
大和民族も山人と同じ運命を辿っている・・・。
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柳田國男の山人考
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