平成17年4月6日から平成23年9月6日までのブログ

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習書要訣 自分を語る

 しかし、私自身がこういっておりますと、字が書けそうに思われるかも分りませんが、私はいっておるだけであって、字は一向に書けないのであります。一体、世の中のことが分ったら、分ったように出来るかと申しますと、それはなかなか出来ぬのであります。分るということと、出来るということは全然別でありまして、分った如くに、すべてのことが出来れば、世の中というものは簡単でありますが、そうは問屋が卸しませぬ。従って書も分ったら、すぐにも書が書けるだろうと思っても、左様にはまいりませんのであります。
 しかし、とにかく分るということが一番必要であります。何のことか分らないで、盲目的に筆先ばかりで書いておったのでは仕様がない。それではどうにもならないというようなことを考えつくしました結果、なんとかして段々に書というものを解体し、分らして行きたいと僭越ながら考えました次第でございます。
 まず書道というものは、大体そういうようなものだと思っていただきたいと思います。
(昭和十年)
 
(『魯山人書論』 北大路魯山人 平野雅章編 より )

習書要訣 能書の時代

 かようなことを申してまいりますと、結局、書は少なくとも日本人の書でも現代から三百年位前の人の書がよろしい。それからもっと遡って五百年位前になればなおよろしい。もっと遡って、弘法大師(空海)時代になれば、殊によろしいということになって、古いほどいいということになると思います。
 それで自分がこんな字を習うのは自分の柄ではないということであれば、致し方ありませんが、調子の高い良書について習うに如かずと知る上は、初めからその方に近寄って行った方がよいと思います。
 しかし、各々分際がありまして、まるきり柄にもない字を初めからやったところで、とても追いつかないこともありますから、自分に本当に出来るものからやり始めようという考え方でやられるとよいと思います。棒ほど願って針ほど叶う、という譬えもありますから、なるべく古く逆行して、調子の高きに就くが賢明だと思います。
 
(『魯山人書論』 北大路魯山人 平野雅章編 より )

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