平成17年4月6日から平成23年9月6日までのブログ

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幸田露伴の努力論

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説気 山下語7

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 さておよそこれらの気というものは、烟の如く雲の如く陽燄の如く、遠く望むべくして近づき視るべからざるものをいうので、そこで望気の望の字が下されて居るのであろうが、また全く見えざるものをいうのでないことは、形や色や方処が記されて居るに徴して分明で、覇気や秀気や才気などというところの気とは異なって居るのである。老子が関を出でんとするに先だって関イン喜が望んでこれを知った気は紫気である。范増が望気の術を善くするものに問うて劉季の大成せんことを知ったその気は、龍虎五釆を為して居たとある。呂后の微なる時、高祖の芒碭山に隠れたのを見出したのは、高祖の居る所の上に霊気あるを認めてだとある。呂后は人を相することを能くした者の女(むすめ)である。光武皇帝のいまだ龍騰せざるに、南陽からその居処春陵を望んで、佳なるかな気や、鬱々葱々然たりと評したとあるから、その気の象たる秀茂せる森林の如くであったのだろう。そこに蘇伯阿という望気の術を能くするものの名が見えて居るが、これは漢末であり、水に没した周鼎のある処を望気の術によって考えた新垣平は漢初の人である。紫気を望んで宝剣を識った張華は晋の人である。而して同じ晋の世に仙人葛稚川は、その自叙伝に望気の術を学んだことを記して居る。これらによって考うれば、支那には古より前漢後漢晋に及び、唐宋より近時に至るまで望気の術の伝わって居て、そしてそれが歴史の荘飾と天命の符瑞となり、幽秘の学を為すものの一科たるが如き観をなして居たことが徴知される。で、天命の革まる時などに気の談のない事は殆どない位である。事は荒唐無稽に近いけれども、けだし一理なきにあらずである。大阪の戦の起る前に当って気の騰ったのはよほど著しかったと見えて、望気の術を知って居た人が指摘したのではないが大に驚異して、そして卜するに焦氏の易林を以てしたという記事は我が史上に見えて居る。平安朝前後の史には稀に異気の記事を見る。俗間に火柱などというも気の事である。酉の祭の夜、吉原の天などを見れば、望気の術も何も知らぬ者でも盛んなる哉気や、勃々騰々たり、その下必らずや火坑あらんと笑っても間違はないのである。吾人の眼に親しい龍宮城の図なども、史記の天官書にある蜃気の釈に本づいて出て来て居るので、気の事もかなり普通的になっている。およそこの条に説ける気というものは、皆彼の蜃気の如くに描画すべく望見すべきものである。

(『努力論』 幸田露伴 説気 山下語 より )

説気 山下語6

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 天象と人事と密着せる関係ありとする思想は、支那においては古より存して居た。大旱に際して聖王湯が自ら責めた事実は史実に著明であり、竇娥が冤に死して暑月に霜を飛ばした事は戯曲の好題となって居る。是の如き思想の余流に出でたりと考えらるる時序と人事との関係は、載籍においては『礼』や『呂覧』について窺い知るべく、実に印度や欧羅巴の如き宗教らしき宗教を有せざりし常識一点張りの国民の中にも、宇宙を人格化して、宇宙の根本は神威霊力を有するものにして、しかも情理を解知し、これに反応するの作用を具するものとするの思想の存在したるを知る。およそこれらの思想と関聯してか、あるいはまた関聯せずして、あるいはまた正当に関聯せずして斜歪に関聯してかは明らかならぬが、星気を候したり雲気を望んだりするの道は、早く支那において行われた。星及び星座近傍の気、日、及び天の気を観るの術は、那の邦にも古より存して、アストロロジーがアストロノミーの先駆となったことは、煉金術が化学の先駆となった如くである。支那の占星の術はけだし星の位置と、他星との交渉と、光威と、その附近に氤氳する霞気の類との状態に照らして、人事世運の吉凶を考判するのであって、星気を候するという語は占星という語と共に数々支那の書において遭遇するところである。戦陣のことに関してのみならず、単に気を望んで、よって以て禍福旺衰百端千般のことを考うるの術、即ち広義の望気の術もまた早く支那に行われて居た。従って古史の天官書には種々の気についてのテクニックが見えて居る。冠気、履気、少室気、営頭気、車気、騎気、烏気なんどというのは、その形象によって名があるので、白気はその色、善気喜気などはその結果によって存する名であろう。軍兵は国の大事であるから、望気の道もこれらの語も十の九は軍陣の事に関して居るが、気を以て事の応とするの思想は、単に軍陣の事のみに局限せられているのでもない。聖人偉人帝王豪傑は、星辰これに符し、雲気これに応ずるものとして信ぜられて居たことは、歴史や雑書が吾人に語るところであるから、望気の術が軍陣以外の事を包含して居たことも自から明らかである。譬えばなお支那の占卜の道の書たる易が軍旅の事を説くこと甚だ多しといえども、恋愛婚媾の事をも説かざるに非ざるが如しであろう。

(『努力論』 幸田露伴 説気 山下語 より )

説気 山下語5

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 鉱山の如きは特殊の鉱物を包有せるもので、おのずから平々凡々の尋常一様の山とは異なるのであるから、気もまたおのずからにして各々相異なるべき理である。そこで紅気あれば瓊あり、赩気あれば銅ありなどということを記して居るという望気経もあれば、採鉱取璞の事をも記した『天工開物』の如き書にも些少ながら望気の事が載って居たと記憶して居る。日本にも佐藤氏の『山相秘録』の如き書あって、鉱山を鑑定するに望気の法を以てすることを説きたるもあり、また実験を重んじて学説を軽んずる実際家者流の鉱山師などは、今なお望気の秘に憑って山を相して居るのである。単に望気の法のみによって鉱山の有望無望を考定するのは迂陋なること勿論であるが、既に何らかの物あればまたおのずからにして何らかの気あるべき道理であるから、気を望んで山を相するのも一理なきにあらずである。

(『努力論』 幸田露伴 説気 山下語 より )

説気 山下語4

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 支那には古より望気の術ということがある。戦闘の道は両陣相対し相争うのであるが、酒には酒の気、茶には茶の気のあるが如くに、軍陣には軍陣の気があるべき理であるとすれば、軍陣の上にはその軍陣の内質に相応した外気の発露騰上すべき訳である。そこで軍気を考え、察し、その甲兵を見ずして既にその意気、即ち軍陣の内質本体の如何なるものかを知り、而して我と彼とを比較して勝敗利鈍の数を籌ろうとするところからその術を生じたのである。たとえば決死の覚悟の軍隊の上には如何なる気が立つ、驕り慢って居る軍隊の上には如何なる気が立つというようなことを、一々観察し得て誤らざるようにするのが望気の術で、古く別成子の望軍気の書六篇、図三巻の存したことは古史がこれを記して居る。その書の説くところ如何をば詳らかにせずといえども、けだし望気の術を伝えて而して気の形象を図し、是の如く是の如きの気を現ずるの軍は是の如く是の如しと指示したのであろう。後に至って有名の雄将李光弼の九天察気訣などというものも、疑偽か仮託かは明らかならぬがまたその書名を伝えて居る。歴史及び稗史に、軍気を望んでその勝敗を予想した例も絶無ではない。日本における望軍気の術は、支那よりの伝来であるか邦人の発明であるか知らぬが、いわゆる兵法家者流の秘奥として珍重されたもので、いずれも板本ではないが、その稀有奇怪なる気の象を描いた着色図、及びその講説を録したものを目にした人は少くはあるまい。そしてまた各種の戦記野乗にも、軍気に関する記事の散見するのを認める。勇奮猛烈の軍隊の気は黒み、薄弱にして敗退せんとする軍隊の気は白けるというが如きことは、今遽に某の書の某の章に出ずということを挙ぐる能わずといえども、けだし何人も記憶して居ることであろう。

(『努力論』 幸田露伴 説気 山下語 より )

説気 山下語3

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 水の熱を得て蒸発さるるに当っては、いわゆる「ゆげ」の騰るを見る。ゆげは湯の気である。甑上の気というものは即ちこれ「ゆげ」である。およそ是の如くその物より立騰り、もしくは横迸り、もしくは遊離するものにして、有るが如く無きが如く、見るべきが如く見るべからざるが如きものをも、名づけて気という。海潮の気を潮気といい、山岳の気を山気というように、河気といい、沢気といい、野気といい、泉気といい、虹気といい、暈気といい、塵気といい、雲気といい、日輪の両傍に現わるるものを珥気という類は、実に数限りもないことであるが、これらもまた皆その物の体より発するその微分子の如きものを称すると解して差支ない。山沢河海の微分子といえば甚だ不明なことであるが、畢竟山沢河海の影の如く香の如くにして、譬えば人のエアーの如き山沢河海の気象、即ち様子の如きをも気というのである。

(『努力論』 幸田露伴 説気 山下語 より )


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