平成17年4月6日から平成23年9月6日までのブログ

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たまゆら

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田園の構想

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 別に小説なんか書きたくもないのだが、見ること為すこと、小説の中の筋書きに通じてくる。そうなっ

てくると、周りの出来事が小説を書かせるために動いているのではないかと錯覚し始める。不思議な出来

事に戸惑いながらも、それの途切れることも恐れている。その着実ではあるのだが、何だか、申し訳ない

ような感じをえながらも、是非とも役立つものに仕上がるような気がする。それは、書くという意識より

も、紡がれていくという意識の方が近いだろう。今の状態が宙ぶらりんであるのだが、それが許される限

り、恩恵に報いるつもりである。

                                   中村 為彦

田園交響楽

 手塚治虫の未完『ネオ・ファウスト』の世界から抜け出す。生命体の研究をしていた教授は、女悪魔メ

フィストフィレスに若返らされて、実業の世界に入り、富と名誉を得る。しかし、真実の愛は失ってしま

う。もう一つ、絶筆で未完『ルートヴィヒ・B』がある。今、吾輩の耳に流れ込んでくる名曲の数々、そ

の中に、交響曲第六番『田園』がある。吾輩は、手持ちのCDにはその第4楽章しか入っていない。嵐の

ような雰囲気なんである。たしかに、高齢化による市町村の合併などで、田園地帯は危機に瀕している。

まあ、『田園』の全楽章をそのうちそろえよう。そして、佐藤春夫の『田園の憂鬱』なんである。だが、

もう一つ、アンドレ・ジッドの『田園交響楽』というものもあって、ここで現れる盲目の少女・ジェルト

リュートは禁断の恋に落ちて、『田園』の曲を聴く。この少女が眼の手術をして、眼が治ったら、自殺し

なければならなかった。ジェルトリュートは歌姫、『ネオ・ファウスト』のマリコも歌姫。歌姫は、眼を

覚まさないほうがよいのだろう。だが、葛藤は続いている。『田園の憂鬱』のようになるかもしれない。

吾輩は、一時は仕事に没頭しておいた方がいいのであろう。

                                霧山人

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 「やっと、家らしくなった」

 昨日、門前で洗い浄めた障子を、彼の妻は不慣れな手つきで張ったのである。最後の一枚を張り了った

時、それを茶の間のあいだの敷居へ納めようとして立っている夫の後姿を見やりながら、妻は満足に輝い

てそう言った。

「やっと家らしくなった」かの女は同じ事を重ねて言った。「畳は直ぐかえに来るというし……。でも、

私はほんとうに厭だったわ、おとつい初めてこの家を見た時にはねえ。こんな家に人間が住めるかと思っ

て」

「でも、まさか狐狸の住家ではあるまい」

「でもまるで浅茅が宿よ。でなけりゃ、こおろぎの家よ。あの時、畳の上一面にぴょんぴょん逃げまわっ

たこおろぎはまあどうでしょう。恐ろしいほどでしたわ」

「浅茅が宿か、浅茅が宿はよかったね。……おい、以後この家を雨月草舎と呼ぼうじゃないか」

(彼等二人は――妻は夫の感化を受けて、上田秋成を讃美していた)

 夫の愉快げな笑い顔を、久しぶりに見た妻はうれしかった。

「そこで、今度は井戸換えですよ、これが大変ね。一年もまるで汲まないというのですもの、水だって大

がい腐りますわねえ」

「腐るとも、毎日汲み上げていなければ、俺の頭のように腐る」

 この言葉に、「又か」と思った妻は、今までのはしゃいだ調子を忘れておずおずと夫の顔を見上げた。

しかし夫の今日の言葉はただ口のさきだけであったと見えて、その骨ばった顔にはもとのままの笑があっ

た。それほど彼は機嫌がよかったのである。それを見て安心した妻は甘えるように言い足した。

「それに、庭を何とかして下さらなけりゃあ。こんな陰気なのはいや!」

 疲れて壁にもたれかかった妻の膝には、彼とかの女との愛猫が、しなやかにしのび寄ってのっそりと上

っているところであった。

「青(猫の名)や、お前は暑苦しいねえ」

と言いながらも、妻はその猫を抱き上げているのである。彼の家庭には犬が居る。猫が居る。一たん愛す

るとなると、程度を忘れて溺愛せずにはいられない彼の性質が、やがて彼等の家庭の習慣になって、彼も

彼の妻も人に物言うように、犬と猫とに言いかけるのが常であった……。

    ( 『田園の憂鬱』 佐藤 春夫 より )

 なんで、結婚したり、家庭をつくったり、そんなことをしたいのかと考える。やはり、孤独に耐え切れ

ない。特に、吾輩のように深い溺愛関係を引き裂かれた者にとっては、この痛みを救うことが出来るの

は、家庭という砦を築く以外にはないのではないかと思えるのだ。再び、恋愛をして、幸運な結婚を迎え

るということは、非常に難しい。それが恐くなっているのである。だから、ロキとは仕事上のつきあいと

いうふうに留まっている。それでいいのかもしれない。そして、吾輩の心に浮かんでいる家庭という幻想

こそが、吾輩の心の深い傷を癒しきってくれるのではないかと期待している。

                              霧山人

『田園の憂鬱』読中観

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「単純なかの女の頭には、自分の夫の天分を疑うて見ることなどは知らずに、自分の夫のことをその小説

のなかの一人が、自分の目の前へ――生活の隣りへ、その本のなかから抜け出して来たかのようにも思っ

てみた。……あれほど深い自信のあるらしい芸術上の仕事など忘れて、放擲して、ほんとうにこの田舎で

一生を朽ちさせるつもりであろうか。この人は、まあ何という不思議な夢を見たがるのであろう。……そ

れにしても、この人は、他人に対しては、それは親切に、優しく調子よくしながら、何故こうまで私には

気難しいのであろう。若しや、あの人のあの女に対する前の恋がまだ褪せきらない間に、私はあの人の胸

のなかへ這入って行って、そのためにあの人はしばらくはあの女を忘れていたけれども、根強く残ってい

たあの恋が何時の間にか再び自分をのけものにしてまた芽を出したのではなかろうか。そうして私には辛

くあたる……。今のままでは、さぞかし当人も苦しいであろうが、第一そばにいるものがたまらない。返

事が気に入らないといっては転ぶほど突きとばされたり、打たれたり、何が気に入らないのか二日も三日

も一言も口を利こうとはしなかったり……。あの人はきっと自分との結婚を悔いているのだ。少なくとも

若し自分とではなく、あの女と一緒に住んでいたならばどんなに幸福だったろうかと、時時、考えるに違

いない。考えるばかりではない、現に、自分にむかってそう言ったことさえある――「あの時、おれがあ

の女、あの純潔な素直な娘と一緒になれさえしたならば、あの人が私をよく統一して、おれは今ごろ、い

ろいろな意味でもっと美しいもっと善い生活が出来ていただろうに」と……。実際あの女は、自分も知っ

ているけれども、自分なんかよりはもっと美しく、もっと優しい。私はあの人があの女をどんなに深く思

っているかはよく知っている……いや、いや、そうではない。あの人はやっぱりあの人自身で何か別のこ

とを考え込んでいるのである……そうだ、夫は、「ただ、私をそっとして置いてくれ」と言った……

 ふと、

「俺には優しい感情がないのではない。俺はただそれを言い現すのが恥しいのだ。俺はそういう性分に生

まれついたのだ」

 かの女は、昨夜、いつになく打解けて彼が語った時、かの女に向かっていったかの女の夫の言葉を思い

出すと、その言葉を反芻しながら歩いた。そうして未だ見たことのない家の間取りなどを考えた。たとい

新婚の夢からはとっくに覚めたころであっても、こんな暑さの下ででも、ただ単に転居するというだけの

動機で心持がふだんよりもずっと活き活きとして来て、こんなことを考えて悲しんだり、喜んだり、慰ん

だりすることの出来るのは、まだ世の中を少しも知らない幼妻(おさなづま)の特権であったからだ。」

    (『田園の憂鬱』 佐藤 春夫 )

 もう、過去のことには触れないが、きっと、このようなことになっていくに違いないのだ…。

                                     霧山人

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