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http://www.youtube.com/watch?v=BRBASyxNcnI
人間というものは、受け入れたくない現実に直面したさい、身動きが取れなくなるものだ。
「いてもたってもいられない、とはこのことか・・・」と哲は思っていた。
しかし常に冷静なマルちゃんは、サイレント映画なみのスピードで、自分のだけコーラの氷を捨て、吸殻を捨て、トレイをきちんと返却し、階段を飛び降りた!それを目にした哲は我に返り、あとを追うようにゴミ箱へ走った!
しかしゴミ箱前には、携帯を器用に肩と頬に挟みながら話しつつ自分の残飯を投棄している女がいる。
襟を立てたジージャンに、黒いスカート姿。この服装、ここに来るまでに5万人ほど見かけた気がする。
「こいつらは一族なのか?」という疑問が哲の脳をかすめる。
疑問を振り払うがごとくろくに分別もせず、ゴミ箱にトレイごと過剰包装紙の類を叩きこみ、階段を駆け降りた。その目線の先にはうずくまるマルちゃんの姿が、
「マルちゃん!どうしたの!?」
「あ、足が!!!」と応え、いつもは裂けんばかりに大きく見開かれている目が、潰れんばかりに固く閉じられ、脂汗をかいている。着地をしくじって、足をくじいたようだ。
「おれのことはいいからさ・・・哲ちゃん先に行ってくれ!」
マルちゃんは、人生は映画、と考えていて、自分は自分の人生の主人公だという持論のもとに行動し、
すべての行動に意味を持たせようとする厄介なタイプである。
それを察してか、哲は経験上、彼が喜びそうな言葉を選んだ。
「何言ってんだよ!マルちゃんが歌わねえでライヴなんかできっかよ!」
マルちゃんは満面の笑みになり、
「わっりい、肩、貸してくれっか?」という非行少年風の口調で答える。
しかし、夕暮れの店内は大勢の客で騒々しく、哲は「え!?なに?」と、聞き返す。
するとマルちゃんは、近くの他人にしがみつき、一度壁によろけバウンドするような動きで哲の肩に
もたれかかった。
「うー、今日は疲れたよ、早く帰って紅茶でも飲みてえな」
おそらく彼はダイハードのラストシーンでも思い浮かべているのであろう。
だがしかし、今日彼はまだライブも何も、成し遂げていないのだ!
しかもたった今、コーラを飲んで一服したばかりなのである!
しかしマルちゃんに一目おいてる哲は(一応年上だから、と、変に律義に)何も言わずに肩を抱き、大勢の視線を浴びながらファストフード店を後にした。お互いの皮ジャン同士がこすれあう音が、なぜか喧噪よりも大きく聞こえた。
店から数メートルいったところで、肩を支えて歩くのは非常に遅いということがわかった哲は、
「マルちゃん!これじゃ本当に間に合わないぜ!ちょっとごめん!」と、マルちゃんをオンブの態勢に抱えた。
すっかり事件解決後の刑事気分だったマルちゃんは「おい!ちょっとこれはカッコ悪いよ!」
哲は有無を言わさず走り出し、視界に入る景色が流れ始めた。
「生ビール¥250」の看板、¥100ジュースの自販機、まだ10本は入ってそうな道に落ちているセヴンスター、雰囲気がいいといいつつ、一度も入ったことがない中華料理や、ジージャン襟立て黒スカートの女、米軍人、ポン引き・・・
そんな通行人の間をすり抜けたり、失敗してマルちゃんを通行人にぶつけたりしているうちに、気分が高揚してきた哲はガードレールの上に飛び乗り走る!切れ目に到着したところで大ジャンプ!
目線の先の人だまりにミサイルキックをかまして、さらに走り出した。マルちゃんをおぶっていることによって、普段の400万パワーにマルちゃんの1千万パワーが追加されて、2千万パワーのキックができた!
しかし皮ジャンのせいか、汗が視界を奪う。汗をぬぐおうにも、両手はマルちゃんをホールドしているため、使用不可能である。そこで哲は、河から上がった犬よろしく(死語)、首を左右に振り始めた。
その姿たるや、交尾しようとするオス蝉が、メスに拒否されイヤイヤンされてるようである。
いつしか、彼らは走っている理由がわからなくなってきた。人はなぜ走るのか?目的地にたどり着くため?それなら歩いたっていいじゃない!なぜ走るか?それは追われるから走るのである!
哲が振り向くと、事実、彼らは追われていた。どうやら2千万パワーのミサイルキックから不屈の闘志で立ち上がってきた漢たちのようである。仮に追いつかれても、革ジャンにつけたアイルランドのバッジだけは死守しようと思う哲であった。
つづく
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危機一髪ですね
無事にライヴができますように、、、
2009/6/12(金) 午前 1:00