【ROKBOX】三日月みっつ♪

9/9◆かなり忙しいので、ちょっとお休みさせてもらっています。年末まで忙しいのですが、時間が出来たら遊びに行きますね!

☆★手作り小説★☆

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ROKの手作り小説です

ありきたりな題材で書くショート小説なので

読みやすいと思います^^

是非、感想コメントお願いします☆⌒(*^∇゜)v

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【第一話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15223142.html?p=1&pm=l
【前回】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/16126024.html?p=1&pm=l


・・・だれでも・・どこでも・・いつでも・・叫んでいる・・・


安井は赤坂の手紙を受け取ると・・

「面白そうじゃ・・・のう青木」

・・と安井が青木に同意を求めると・・

(しかし、これで私が負けてしまっては私の面目が保たれませぬ)
(その前に19人もの相手と試合をしているのじゃろう・・?)
(・・なるほど・・)

「よかろう!今こそ真の実力を見せ付けるときがきたようだのぅ!?」

・・と、青木は勇んだ。

「では早速はじめる!全員こっちへ集まれぃ!!」

と、試合をするために庭から道場へと場所を変えた。



まだ新しい道場だ。白木の香りがとてもいい。大きさにして150畳程度だが十分だろう。そこに安井をはじめとする家来たち22名が集まった。

「では、年若き者から順々に赤坂と試合をするがいい」

安井がそういうと、赤坂と一番若い家来・・つまり赤坂の友である若田部との試合が始まった。

(・・・安井様の手前・・手加減はできぬ・・・許せ・・・)

若田部はそうボソリと赤坂につぶやくと静かに木刀を構えた。赤坂も静かに構えた。

「わしが審判をしてやろう!」

青木だ。若田部に嫌な予感が走る。

「一本勝負!はじめぃ!」

若田部はまっすぐ向かった。刀を振り下ろす力に手加減はない。誰の目にも見事な一の太刀・・・

ビュ!

・・と空気を裂くように赤坂へと向かった・・が、そこに優しさがあった。
すかさず赤坂は右へと飛びのき・・

ヒュン!

・・と飛びのき様に若田部の胴へ一撃を入れた。

「一本!」

青木の旗が上がった。赤坂が若田部の顔を見ると口元を[ニヤッ]とした。

「見事じゃ! 若田部の一の太刀・・あれを喰らっていたらひとたまりもないわい! それを赤坂は素早くよけて隙のできた胴への一発・・これもまた見事じゃ!」

安井も満足の試合だったようだ。

こうして試合はスムースに進んでいった。赤坂へ飛んでくる剣はどれも恐ろしい早さではあったが、よけさえすれば必ず隙ができる。そんな太刀筋をみんな作ってくれていた。どうも青木は嫌われているらしい。

そんな中、10人倒したところで青木の4人の手下の一人・小川との一戦が始まった。

「俺は他とは勝手が違うぞ小僧・・」

・・というと・・

「うらぁああああ!!」

と雄たけびを上げた。青木一派が威圧するためによくやる方法だ。



現代、よく剣道の試合を見ていると気合を入れている。有段者はほぼ全員やっている。しかし、あれは意味があるのか。科学的に検証すると、声を出すと一時的に体の緊張はほぐれる。確かにそういう意味では有効だが、実はそれほど効果はない。それよりもスプリンターやアスリートが試合前に行うウォームアップ、それは圧倒的に効果が上がることが証明されている。

ウォームアップすることでどういう効果が得られるかというと、筋肉への酸素供給率がUPすることと、体が温まることで柔軟性があがる。一見疲れるくらいウォームアップしている選手が多いが、逆に持久力がUPし、間接や筋肉の柔軟性をあげることで怪我もしにくくなるのである。

自分が剣道をしていたとき試合前静座させられて試合を見せられた・・ウォームアップしてもあの時間ですっかり冷めてしまう。あの大声だして気合を入れる剣道の精神は嫌いじゃないし、意味はなくもないが、ウォームアップさせないなど時代の波に乗り遅れている部分が多すぎる。

そもそも、つばぜり合いになったときなどに足を使ってもいいだろ。それに二刀流でもいいじゃないか。スポーツチャンバラはそれがありだからあれだけ世界に普及しているわけで・・。・・あれほど実践的じゃない格闘スポーツも世界に類を見ないだろう。
(以前、剣道日本一の人が複数人相手に試合をして勝ったことがあったが、あれはやらせだということがわかっている。残念だ。)



おっと・・話が大きくカーブした。話を戻そう。

気合を入れた、小川と赤坂の戦いである。

小川は小柄で丸顔・・顔にはそばかすがあり目が細く釣りあがっている。団子鼻で笑顔がちょっと可愛い。(しかしそれがあだとなり青の袴は似合わない)しかし腕と足(と体)は太く・足が短いため馬力はある。そして威張るだけあって基礎ができており、もちろん強さもある。

そんな小川が構えを崩さぬままのすり足で赤坂に素早く突っ込んでいった。赤坂は小川が木刀を振り上げるのを待ったのだが振り上げる気配がない。突進力に加え構えが変わらず隙がないため、赤坂は受けざるを得なかった。

「他の奴ほどあまくねぇぞ」

ぼそっと小川が赤坂へつぶやくと、思い切り赤坂を腕っ節だけで吹き飛ばした。

赤坂は、ばく転し体制を整えると素早く小川へと切りかかった。しかし、小川も構えを崩さぬまますかさず向かっていく。

「おらぁああ!!」

今度は赤坂にも突進力がある。こういうときのねらい目は先を読んでの小手打ち(手首を打つこと)だ。赤坂は突こうとするフェイク入れた。相手も突進しているので避けられないため、払わせる動作を入れさせることに成功した。そこで手首に隙が生まれたところを一撃入れた。一撃入れたところで、両者の体がぶつかり合い、身軽な赤坂は吹き飛ばされた。

・・・

青木の旗は上がらない。

(???)

小川は素早く青くなった手首を隠した。どうやら青木の嫌がらせがはじまったようだ。

【次回】
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【第一話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15223142.html?p=1&pm=l
【前回】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15812277.html?p=1&pm=l



・・・だれでも・・どこでも・・いつでも・・叫んでいる・・・


ナナシは住職に言われたとおりに人相書きの男がいる土地へと走る・・まえに、豆腐屋へと走った。すずの元へと走った。そこでできたての豆腐を買い、めずらしくその場で食べた。その分、すずとは長く話せた。

「出来立ての豆腐はおいしいやろ??ナナシはんも好きやなぁ♪うちも負けへんくらい好きやけどなぁ♪」


にこやかに彼女は話しているが、彼女自身何かを感じ取っていたようだ。もちろんナナシは隠しているつもりだったろうが・・。食べ終わってナナシが帰ろうとすると、

「ナナシはん・・ちょっと待っといてな・・」

そういうとすずは奥へと入っていった。しばらくして手に短刀をもってきた。そして何も言わずにナナシの手に握らせてニコっと笑った。ナナシもつられてニコッと笑って短刀を左の腕へくくりつけた。そして一礼をしそのまま去っていった。

その後姿をすずはしばらく見送った。


ナナシはそのまま目的の土地へと走っていった。途中、5人の山賊が現れたが、2・3回ナナシが回転する間に山賊は5人とも血を吹き出して倒れていた。

目的の男がいる城下町へと到着すると、城をしばらくながめた。やはり大きい。本丸まで行くのは至難の業だ。ターゲットが一国一城の主となると、見張りも多く外から眺めるだけでも怪しまれる。かといって、てぶらで人相書きの男を探せるほど狭くもない。おそらくうまく進入したと仮定しても、城の中で迷っている間に見つかり・・必ず殺される。見つかったら終わりだ。

そこでナナシは宿をとり計画を練り始めた。



数日後、その城へ一人の男が戦に参加すべく奉公を志願した。刀を二本腰にすえ、赤紫の立派な着物・・・その割にまだ若い。一度はあえなく追い返されたのだが、そこへ偶然(というわけではなさそうだが)安井信光(やすい・のぶみつ)という男が通りかかり、

「なんじゃ・・奉公か?・・では、青木に勝てたら家来にしてやろうじゃないか!」

と言われたので、大きな城門の目の前で勝負することとなった。木刀を使った一本勝負。相手は大柄で30歳くらいだろうか・・安井の家来の中でも屈強の男のようだ。安井は赤紫の男がいかにして打ちのめされるかを見たいようだ。ただ・・赤紫の男は青木に対してなんの美技を見せるまでもなく圧勝した。真っ赤になって怒りはじめたのは青木だ。

「もう一本勝負しろ小童ぁああ!!!」

そしてあえなくまた負けた。

「・・・気に入った!よきにはからえ!!」

などと、安井は公家のようなことを言ってその男を召抱えた。名前を聞かれたが赤紫の男は舌を京都に忘れてきてしまったらしく、しゃべることができなかったため安井が・・

「青をやっつけたので・・赤がいいのぉ・・では赤坂と名乗ることを許す

・・とほざいた為、赤坂と名乗ることとなった。




赤坂は気が利くし、剣の腕もよかったので、先輩からよく可愛がられた。しゃべれないことをいいことに、よく愚痴や秘密も漏らされた。しゃべれないことが逆に長所へと変わることもあるらしい。・・しゃべれないといっても「うん」「あ〜」などの相槌くらいはうてるので、ていのいい聞き役としての評判もよかったようだ。赤坂は何か質問があると紙に書いて質問した。そして情報は集まっていった。

赤坂は同い年で同じ部屋で共に生活している青年とも仲良くなった。若田部健介というどこか爽やで好感の持てる男だ。若田部とは剣の稽古をよくしたし、馬の稽古や弓・鉄砲の稽古も一緒にこなすほど仲がよかった。そんな若田部と赤坂は毎日の様に少量ではあるが酒を飲みあかした。・・赤坂が生きてきてはじめての友だった。
もちろん酔った所で若田部に床に字を書いて、色々な質問をして、一番重要な寝室の場所の情報も手に入れた・・しかしその任務を忘れるほど楽しい日々が続いた。


「明日は稽古だ・・気が重い・・」

若田部は稽古の時によく青木とその仲間にいじめられていた。
青木は練習の最後に必ずめぼしい後輩たちをみつくろい・・

「腕をあげたようだな?俺が稽古をつけてやろう!」

・・と呼び出し安井の目の前で試合する。一応、青木は赤坂の次に強いので指名されたものはあえなく負ける。しかも綺麗な一本で終わるのではなく、青木の気が済むまで殴りつけられる。つまり指名されたものは安井へのアピールの引き立てやくと同時にストレス解消の道具にされている。


赤坂は何とかしたかった。はじめての友達である若田部がたんこぶだらけになるのを見ているのが辛かった。しかし、赤坂には一向に声がかからない。それどころか赤坂が青木に試合を申し込んでも・・

「ろくにしゃべれもしない奴とは試合ができんわ!たわけが!!」

・・と絶対に逃げられる。そこで赤坂は考え・・

「お金にとても困っております。もしも20人の家来全員を倒したならば金一封をいただけないでしょうか。」

と書いた手紙を安井へと手渡した。


【次回】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/16326353.html?p=1&pm=l

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【第一話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15223142.html

【第二話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15309282.html

【第三話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15408181.html

【第四話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15501966.html

【第五話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15708376.html





・・・だれでも・・どこでも・・いつでも・・叫んでいる・・・
・・いったい彼らの心は何を叫んでいるのだろうか・・・



ナナシは京都にいたときからこれまで出一番充実した日々を過ごしていた。豆腐屋の娘・すずを思う淡い気持ちがそうさせているのだろう。別にすずにいいなづけがいようが、結婚していようが、それらの要因は彼の気持ちを変えることはないだろう。彼にとっての愛とはそういうもので、優しいというか・・ほがらかというか・・淡い桃色の彼女の笑顔を・・・いとしき人の幸せを守れれば全てよかった。


昔一度だけ事件が起こった。ナナシがいつもの様に見張りをしている際、強盗らしき者が豆腐屋の中へ踏み込むのが見えた。豆腐屋は呉服屋や万屋のように儲かっていなかった分、用心棒を雇うようなことはしていなかった。(だからこそナナシが見張っていたのだが)

強盗は二人。金を盗み、女を食べ、暴力を働く・・この時代にはよくあったことだ。下手したら皆殺しにされる。

その事件の前にすずの豆腐屋が強盗に入られたことがあったかどうかはナナシが知る良しもないが、強盗に酷いことをされることですずが悲しむことは知っていた。ナナシは布で顔を覆い、豆腐屋へと走った。

ザ・ザ・ザ・ザ・ザ・・・ザザー!


ナナシは素早く黒頭巾をかぶり黒装束を身につけ影となった。影は豆腐屋の中に素早く踏み込み、玄関口の近くにいた強盗の一人の片腕を右の小太刀でなぎ払い、左の小太刀を首元へ突き刺した。素早く刀を引き抜くと、もう一人を探した。
家の中はすでに暗い。豆腐屋の中は商売をする玄関口から廊下・台所・寝室につながっているらしい。しかし、どうも暗くて何も見えない・・音もしない・・どうやらそれなりに用心しているようだ。ふと見ると親父が震えてへたりこんでいた。ナナシは親父を見ながら足で死体を・・

チョンチョン

と蹴った。「もう一人はどこだ?」と聞きたかったのだが、影に声は出ない。キョロキョロ探す振りしてもう一度やると親父も勘付いたのかただ怖かっただけなのか、無言のまま奥の部屋をちらりと見た。
それを見た影はさっと奥の部屋のほうへ向かった。すると薄ぼんやりした明かりの中ですずが男に言われるがまま・・・金を詰めているところだった。

男はナナシを見ると仲間ではないことに気付き、刀を素早く引き抜き突進してきた。影はすかさず目潰しで敵の視力を奪い動揺を誘い、相手の懐へ飛び込むと逆手に持った左の小太刀を男の首筋に押し当て、上半身をそのまま右回りに半回転させた。男の首からは大量の血が吹き出し、男は失血死した。


影は男二人を抱えてそのまま闇の中へと消えていった。



それからしばらく、豆腐屋は営業をしない・・と思っていたのに、次の日からすぐに営業を始めていた。たいしたものだと思いナナシはいつもどおり豆腐を買いに行くと、待っていたかのようにすずが走って出てきた。おそらくナナシは今でもばれていないと思っているのだろう。しかし、すずにはわかったらしい。女の勘という奴かもわからない。すずはとびきりの笑顔でナナシを出迎え、いつものように話し始めた。



そんな普通の人の普通の暮らし――ナナシにとって楽しい毎日――が続いていた。関ヶ原も終わり、天下泰平の世になった。税金に苦しめられる人々はいまだ多いが、それでも命がある限りそこに笑顔はある。

「今日も日本晴れだ〜!」

農民は朝から晩まで畑を耕し、商人は工夫を凝らして物を売り、大工は技術を磨いて物を作る。武士は禄(給料)をもらい主のために働く。もちろん仕事の忙しさの差はあるが、それでもみんな生きていれば笑うことができる・・・愛し合うことができる・・・幸せを感じることができる。


ナナシは仕事がない日、そんなことをずっと考えていた。


そんな彼に大きな仕事が舞い込んだ。住職は、

・・次はこの男や・・

とだけ言って和尚はナナシにいつもの人相書きと袋を渡した。

「・・?」

袋の中身は前金だった。いつももらえる後日報酬よりすでに数十倍多い。

・・今度がおそらく最後や・・

ただでさえ普通の寺の住職とは言えない威圧感とごつい体を持つ和尚は、いつも以上にどぎつい目でナナシの顔を覗き込み・・去っていった。


ナナシの心はなにかにわしづかみにされるような感覚に襲われた。


【次回】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/16126024.html?p=1&pm=l

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【第一話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15223142.html

【第二話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15309282.html

【第三話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15408181.html

【第四話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15501966.html



・・・だれでも・・どこでも・・いつでも・・叫んでいる・・・

・・いったい彼らの心は何を叫んでいるのだろうか・・・



真夜中に、一つの同じ命令が大坂を駆け巡った。

日本の歴史上最も巨大な城・大坂城の影の主――淀君――がある将に命令し、その将が腹心の侍に命令し、その腹心の侍が手持ちの忍びに命令し、その手持ちの忍びが大きな寺の住職に命令した。その住職はある男を呼び出した。その男はきょとんとしたまっすぐな眼で和尚を見つめている。

「・・次はこの男や・・」

大坂城からその男に命令が到達するころには朝になっていた。彼は何も言わず隠れ蓑にしているそのこげ茶に古びた寺を出た。


大坂の朝は早く、すでに多くの人が道を往来している。彼の様に、紺の薄い着衣に蓑の傘を身につけたえたいの知れない輩も少なくない。

すでに早くから大坂城では策略戦略が練られていた。大坂城を取り仕切る将たちは戦経験なき烏合の衆ながら、まず人数を集めなければならないということには頭が回ったようで、その手はずを整えた。そして噂が噂を呼び全国の浪人が様々な理由――太閤への恩を返すため・家康へ仕返しするため・成り上がるため――大坂へと向かってきていた。

・・・例えば・・・
土佐(高知)からきた屈強の男たち・長宗我部一派。黒田家との衝突で肥後(熊本)から離脱した孤高の天才・後藤又兵衛。父・真田昌幸をなくしたため名声こそないが、後に英雄となる真田幸村・・・。

よって現在、彼のようななりをした大坂の町には仕官するための浪人が大勢集まっている。怪しいものばかりで殺しの仕事はいたってやりやすい。

彼はそんな浪人たちにまぎれて、住職から渡された人相書きの男を殺しに男の屋敷へと向かった。彼は屋敷にたどり着くと守りの堅さに多少驚いた。古い家ながら数百坪もあり守衛も門や窓など出入り口には必ず数人いる。しかし慌てずに夜を待つことにした。


夜になりその男の屋敷の前にたどり着くと、屋敷の風上へと移動した。途中で見回りをしていた二人組の役人の提灯を――殺して――奪い取り、屋敷へと忍び込むと提灯の火を屋敷へと放った。風上・・・そして古い家だったので火のまわりは速かった。ターゲットの男が屋敷から歩くのもおぼつかない足で周りの女に抱えられるようにして出てくる。そしてすでに集まり始めている野次馬たちのなかへと入っていった・・・屋敷の男たちは火がまわらぬように建物を壊してまわっている。

・・ズンズンズン・・

紺色の影がどんどん男へと近づいている。影は男のすぐ近くに来るとしばらく待った。すると屋敷のほうから大きな音がした。屋敷の中の小屋が崩れた音だ。

・・ガリガリガリ・・!!


・・バリバリバリバリ・・・

・・ダーン!!!

影は小屋が音を立て終わる前に男の胸に短刀を突き刺しその場から[フッ]と消えた。



男は痙攣を起こした後死んだ。痙攣を起こしてのた打ち回っている間女たちはおろおろすること・叫ぶことしかできず、むしろ騒ぎは大きくなり逃げやすくなった。野次馬たちや浪人たちの影として隠れることで仕事を成功させた。



彼に名前はない。彼は生まれてすぐ京都に捨てられた。ぼろいが大きな寺だった。そこで彼は素晴らしい英才教育をうけ・・立派な暗殺者になった。時代が京都から大坂に移ると、依頼者の多くとともに大坂の姉妹寺へと移動した。



捨てられてから15年・・彼は大人になり日課というものができた。

毎日一丁の豆腐を買いにいつもの豆腐屋へ行く。そしてその豆腐の親父が豆腐を切り分ける間、豆腐屋の娘と話をする。そして豆腐をもらい、後ろ髪を惹かれる思いでその場を去る。その後寺へ戻ったら、用意されている飯と共に豆腐を丁寧に食べ、寝る。夕方になると(仕事がないときは)豆腐屋が見える彼が借りた長屋へ行き、次の日に豆腐屋が無事開くのを確認すると、また豆腐屋へと向かう。

「毎度おおきに♪」

照れくさそうに彼はうなずく。彼と彼女の会話は彼女が彼に話しかけて、彼が首を縦か横に振るだけの会話であった。それでも彼はその瞬間が人生で最も楽しい。

彼女がしゃべることのできない彼の分まで話をしてくれる。彼の舌は大分前からない。京都での英才教育の一環だった。そんな彼相手でも彼女はとびきりの笑顔で出迎えて・・毎日談笑した。


彼女の名は「すず」という。すずはしゃべることのない彼を「ナナシはん」と呼んでいた。

【次回】
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【第一話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15223142.html

【第二話】
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【第三話】
http://blogs.yahoo.co.jp/rok_dorafa/15408181.html



・・・だれでも・・どこでも・・いつでも・・叫んでいる・・・



十郎は殿様の作る列の後を追うようにして、城へと入った。

「すずは我が城で寝ておるぞ」

今はその言葉を信じるしかない。十郎はいつになく緊張していた。十郎の左手は常にすぐ右手で刀を抜けるように構えている状態になっており、十郎の耳の意識は常に後ろと横に働いている。そして足は歩く速度を常に変えて、銃で狙いにくくしていた。ふと前を歩く侍が振り向くと背筋が凍った。・・十郎の目は、まるで怒りがとびでるのを抑えているように血走っていた。

「目が血走っておるぞ・・」

などと十郎に向かいほざいている馬鹿殿は十郎の中ですでに何べんも殺されている。

・・殿様の前後には籠を持つ二人の男がいる。その二人が気づくまもなく黒い影が籠の中に刀を突き刺し・・・そして引き抜く。その後黒い影の刀が10度満月を描く・・。

そう考えることで十郎は怒りを目の裏でおさえていた。



十郎は殿様と別れ、城主居館のすぐ裏にある小さな小屋へ連れてこられた。

「父ちゃん!」

すず!!

二人は手を取り合った。

大丈夫だったか?

「うん・・・ちょっと苦しいけど大丈夫」

すでに十郎の目には涙があふれていた。そこに殿様の使いの女性があらわれた。

「またあとで迎えに来ます。それまでここでお待ちください」

それだけ言うと去っていった。

「おうちに帰りたい・・」

ああ・・すぐに帰れるからな・・心配しなくていい・・

・・とは言うものの十郎にその自信はない。十郎はすずが持ってきた糸で綾取りをしていた。十郎は綾取りがうまくない。それを見てすずは笑う。それを見て十郎も笑う。

「へったくそだね〜!」

十郎の顔は先ほど鬼の様になっていたとはとても思えないほど笑っていた。・・・泣いていた。

そこへ殿様の使いがまた来た。

「十郎殿・・殿がお呼びじゃ・・」

十郎はすずにすぐ戻ると伝え、

娘に何かあったらただじゃおかないぞ・・

と、近くにいた侍を鬼のような形相で脅して殿様の元へと向かった。



十郎は殿様の前で[あぐら]をかいた。部屋を見渡すと殿様が中心に座っており、横にはなにやら偉そうな男たちが座っている。・・その中に見た顔が数人いた。

「殿の御前であるぞ!!」

見たことない男が十郎のあぐらに注意した。見た顔の奴らがそれをみて口元を緩めた。

「よい・・さっそく話にはいろうではないか」

殿様がそれを制し、本題へと入っていった。

「はっきりいうぞ・・戦までの間、わしたちを外敵から守れ。さもなければ娘ともどもそなたを殺さねばならん」

十郎の顔はピクリとも動かない。それを観察していた殿様は畳み掛けた。

「娘と離れられぬというならば、娘も共にここで住めばよい・・・そうじゃ、娘にも反物をやろうではないか・・・もちろん薬もつける・・・そしてお主に給与も授ける。どうじゃ?あの長屋で娘を一人にするよりはるかに身の危険はない思うが・・・十郎よ・・仕えてくれるな?」

御意にございます

十郎は素早く座り方を改め、即答した。その速さにその場にいた誰もが驚いた。

「それを聞いて安心した。下がってよいぞ」

殿様もまた、――にやりと笑いながら――素早く返答を返した。そのことにまた十郎以外のものが驚いているなか、十郎はひるみもせずその場から消えてすずのもとへと戻った。


十郎は小屋へ戻る途中、先ほど殿様が言ったことで一つだけ引っかかっていた。

・・・なぜあのようなことを・・??

しかし十郎に選択肢はないことを悟っていた。青びょうたん軍団が怖いわけではない。基準は全てすずになっている。彼女がここにいる以上ここから離れるわけには行かなかったのだ。



こうして十郎の城暮らしが始まった。十郎もすずも立派に着飾られ、すずの病は快方へと向かう。




・・・だれでも・・どこでも・・いつでも・・叫んでいる・・・
・・いったい彼らの心は何を叫んでいるのだろうか・・・

                         【つづく】

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