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アメリカに睨まれるということ
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傷だらけの勝利(6) 決選投票は、二〇〇〇年五月二十八日、午後四時に終了した。 トレドは、その時、フラウデと違法なアルベルト・フジモリの立候補を拒否する集会を招集していた。 学生や労働者たちが午後四時ごろからサン・マルティン広場に集まっていた。 夜八時、CPI社のクイック・カウント全国レベルの結果が放送された。 フジモリ五〇・八%、ドレド一六・七%、無効票三一・二%、白票一・二%、未決票〇・一%、棄権率一八・二%。 テレビのカナルNは、サン・マルティン広場で、「フラウデ」と絶叫し、選挙のやりなおしを叫ぶトレドやカスタニェーダなど、第一回目の選挙のときの野党候補者たちが抗議する様子を長々と放映していた。 トレド両脇には、夫人のエリアン・カープ、令嬢のシャンタル、副大統領候補のカルロス・フェレーロとダビド・バイスマン、元大統領フランシスコ・モラレス・ベラウンデが立っていた。 夜十一時、ONPEの五〇・八六%の開票結果が発表された。 フジモリ五〇・三三%、トレド一六・二二%、無効票三二・四七%、白票〇・八六%という結果が発表された。 トレドは、その夜、サン・マルティン広場に集まった十万と報道された群衆を前にして、「第三回目の投票の実現にむけて平和的抵抗を開始する」と宣言した。 「フジモリさん、この選挙は無効だ。なぜかというと国民の意志を反映していない。選挙は国内的にも国際的にも違法だ。今日からペルーで起こることの責任はすべてあんたにある」 とトレドは宣言する。 サン・マルティン広場での集会でトレドは、すべての政治勢力、すべてのペルー人とともに平和的抵抗のリーダー・シップと取ると宣言。大統領官邸の独裁者を引き降ろし、ペルーにデモクラシアを取り戻すために、全国に動員をかけると絶叫した。 トレドはフジモリ大統領に向けて、ペルーにデモクラシアを回復するために、今日から第三回目の選挙の実現に向けて、国内、国際社会で集中的な闘争を開始すると宣言した。 集会参加者と警官隊との間で衝突がおきた。 投石と催涙ガスがとびかった。 学生、労働組合員、政治運動家などが大統領官邸前のマヨール広場に向けて行進を開始したが、警官隊にはばまれた。 翌日の新聞には、二十八日には、国内の各地で警官隊とデモ隊との間で衝突が発生。イキトスでは三十名の怪我人と二十名の逮捕者が出たと報じられていた。 ウアンカヨではスペイン資本の電話会社ペルー・テレフォニカの建物が放火された。 トルヒージョ、チクライヨ、チンボテ、ピウラ、アレキパ、ワラスなどでも群集動員がおこなわれ緊張が高まった。 催涙弾が投げられ、装甲車とヘリコプターが投入された。 勝負はついた。しかし、傷だらけの勝利だった。
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傷だらけの勝利(5) (前ページからの続き) (フラウデ) 圧倒的な圧力を前にして、フジモリにとっては、勝利を得るのに必要な過半数は得られなかったと発表する以外の選択肢はなかった。 しかし、フラウデの証拠は何んだったのか。 ワシントン・ポストによれば、投票結果の発表が三日遅れたことは、国際選挙監視団と米国の疑惑を生んだ。 この疑惑は、コンピューター・システムに欠陥があったことと、公式に発表された集計結果が、OASが実施したものも含め、独立した世論調査会社五社がおこなったアンケート結果よりも多い得票数でフジモリを勝者としていたことによって、深められた。 OASのエドワルド・ステインは、選挙の日に票の集計が偽造されたという証拠はつかんではいないと述べたが、しかし、フラウデの可能性を排除すべきではないと述べた。 四月のOAS選挙監視団員のひとりデビット・スコット・パーマーによれば、投票は自由で有効なものだったという。 投票場にも大きな問題はなかった。 あるといえば例えば二時間ぐらい遅れて開かれた投票所がいくつかあったこと、投票所の近辺で政治宣伝がおこなわれていたところがあったことなどがあげられると述べた。 また、投票用紙が破かれていたケースが四件、欠陥があったケースが全部で二十二件あった。 しかし、全体として市民はこぞって投票し、政党からの介入や影響力の行使もなく、投票はちゃんと記録され、透明な封筒に入れられて封をされ、全国選挙手続事務所(ONPE)、国軍、全国選挙管理委員会(JNE)に送られた。 各政党の代表もおなじく各投票所の集計用紙の写を受け取った。投票所には、各政党から一名ないし五名のところもあったが十名ほどが立ち合っていた。 したがって、自分の判断ではフラウデがあったというのは無責任だと思う。 問題はごらんのように、ペルーの政局がここ数週間すっかり二極化したことで、メディアが反政府と親政府の二つに分かれたことである。 また、トレドを含め、政治家自身が投票について一連の異議を申し立てているが、自分としては訴訟は実際に起こったことを反映していないと思う。 (介入) 米国政府は、フラウデがあったと主張し、したがってより直接的、かつ、大胆な方法でペルーの民主的なプロセスに介入した。 議会がそれに従い、議員が決議を提出し、上院がそれを採択した。 決議は、選挙が国際監視団によって不正であると認められた場合には、米国はペルーとの政治的、経済的、軍事的関係を再検討して修正するという警告をおこなっている。 その後、クリントンはこの決議に署名したので法律になった。 どんな選挙でも「フラウデ」というレッテルをはられる可能性があるということになる。 米国の有権者の半分しか投票しない米国大統領選挙はフラウデだということができるし、第三党の立候補者が大統領選挙の公開討論に参加を拒否された場合にはフラウデと呼ぶことができる。 また、メディアへのアクセスが、使える資金量に多くを依存していることもフラウデだと呼ぶことができる。 (選挙プロセスが問題なのではない) フジモリ政権が反対者たちをおさえるのは日に日に難しくなる。 かれらには選挙プロセスはどうでもよい。要するにフジモリが退陣することを望んでいる。 米州機構(OAS)の選挙監視団はフジモリに、五月二十八日に実施を予定された大統領選挙の決戦投票の日取りを再検討するように要請した。 エドワルド・ステインによれば改善措置をとるために残された時間はわずかだからだという。 数日前、ニューヨーク・タイムズは社説の中で、次のように述べている。 「ペルーの大統領選挙決戦投票の二週間前、各種国際監視団はあらためて、大統領アルベルト・フジモリが第三期政権を確実にするために票の”泥棒”を企んでいることに重大な懸念を抱いていると繰り返した。一月前、ペルーでは野党候補者たちとその代弁者たちの手で、ほとんど内戦が引き起こされそうになった。かれらは政府が、策略と汚いトリックに満ちたキャンペーンの後で票を操作したと非難した。フジモリが第一回目の投票で勝利をおさめるのに必要な最低限の票に達しなかったと発表されたらやっと平穏になった」 このような断定はタイムズ特有のもので、当然のこととして問題を提起する。 (中立性) われわれは「各種国際選挙監視団」は中立であると考えてしまうが、かれらは、通常、ほかの政府から資金を受け取り、その政府のために働くものである。 三期目の選挙に勝利するために票の「泥棒」が企てられているなどということをどうして断定することができようか。もちろん米国は「策略と汚いトリック」が何んだかわかってはいない。 話しはまだ続く。 各種国際選挙監視団は、政府はうわべだけの改善をおこなってごまかそうとしているにちがいないと裏で言いふらす。 アトランタに本拠を置くカーターセンターと非政府機関全国民主主義研究所(NID)が先週提出した報告書は、決戦投票の前に技術的、行政的手続きに即刻、かつ、有効な改善が加えられない限り、ペルーの選挙プロセスは民主的選挙の最低限の国際基準を満たすことはできないと結論した。 まず、付言しなければならないことは、全国民主主義研究所(NID)は、米国政府によって設立された機関なので、利害関係のない監視団というわけにはゆかないということだ。 第二に、ペルー政府がやっていることは決して十分ではないという断定がおこなわれることにより、ペルーの選挙民は、反政府候補者に投票しなければ選挙は「フラウデ」と宣言されるであろうことを警告されるということだ。 米国国務省は、欠陥を是正するための決定をペルー政府の手にゆだねながら、このような条件を効果的に是正するには時間がないことを「強く憂慮」する。 ニューヨーク・タイムズによれば、「もしフジモリが勝てば信頼性の危機が生じる」と、トランスパレンシアの会長ラファエル・ロンカリオロが述べたというが、この団体にはクリントン政権が多額の資金を出している。 米国政府の資金でまかなわれてペルーの選挙を監視しているグループが、選挙におけるフジモリの勝利はなんら「信頼性」を持たらさないと公然と言っている。 だれの信頼性なのだ。米国政府に頼っている人たちのなかにはペルーにいて米国を支援している人がいてもおかしくはない。 ペルー市民は決定をしなければならない。 アレハンドロ・トレドは、ロリ・ベレンソンの事件を再審すると約束した。 トレドは、どの聴衆を自分の側につけておく必要があるかを知っている。 ペルー国民が、ひたすらワシントン対しておもねる候補者に投票するように仕向けられることのないように願う。 Espreso, Domongo, 28 de mayo del 2000.
“La canonización de Toledo” por George Szamuely |

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傷だらけの勝利(4) さらに、同じ五月月二十八日のエスプレソ紙は、「アンティウォー・コム(Antiwar.com)」に掲載されたジョージ・サムエリの「米国の新しい聖人、トレドの列聖」という五月十八日付けの次のような記事を掲載した。 026 また同じ過ちをおかしている。米国政府は、ほかの国の選挙をふたたび左右しようとしている。 クリントン政権は、アルベルト・フジモリ大統領はもはやペルーの指導者として受け入れることはできないという結論に達した。 ワシントンは、数ヵ月まえ、フジモリが選挙で勝利することは正当と見られるべきではないというキャンペーンを開始した。 われわれは、おなじようなプロセスをすでに何度も見ている。 「独立の」代表たち、NGO、外国の外交官たちは、絶えずプレスに対して発言してきた。 勿論、いつも「裏付けなし」に国の選挙のあらゆる側面について批判した。 それとともにアメリカ政府、欧州連合(EU)、そして米州機構(OAS)は、欠陥が直ちに是正されなかった場合の直接の結果について、軍事協力の停止、制裁の適用、借款の停止といった脅迫もおこなった。 (驚くべきこと) 有権者はみなこれらのことを驚きをもって見、欠陥自体が真の問題ではないことを理解した。 有権者たちは「正しい」候補者に投票しなければならないことが求められていると感じた。 ペルーにいるそのような男とは、クリントン政権によれば、それはアレハンドロ・トレドだ。 トレドは平和部隊に参加し、スタンフォードを卒業し、ベルギー人の夫人をもち、行政学院で教鞭をとり、世銀で働いた。 他方、フジモリは、もはやワシントンの忠実な聖人ではない。命令を実行しない。 一九九五年の選挙での圧倒的な勝利にもかかわらず、そのときの約束の多くを実行しないでいる。 たとえば、一九九九年の民営化による収入は三億ドルだったが、この額は一九九四年の二六億ドルに比べて少ない。 さらに大統領は、国営企業の残りの民営化実施計画を取り消した。 有権者たちの懸念にこたえて国営上下水道公社セダパルの売却をおこなわないと発表した。 おなじく国の最大の電力発電プラントであるマンターロの売却計画も放棄した。 フジモリは、あきらかにワシントンの「市場民主主義」と呼ばれるイデオロギーの忠実な信奉者ではなくなっていた。 国際社会には、過った候補者を支持した歴史上の先例がある。 一九九〇年にワシントンはペルーの有名な小説家マリオ・バルガス・リョサの立候補を支持した。 一九九五年には元国連事務総長ハビエル・ペレス・デ・クレアルを支持した。 いずれの場合にもフジモリは容易に二人を敗退させた。 今回、四月にフジモリは、トレドに勝った。 しかし、メディアがヒステリックに反発したので決定的な勝利にはならなかった。 北米ではそれを「票の移転」と呼んでいる。 フジモリは第一回目の投票で明らかな勝利を獲得するかに見えた。しかし、トレドが「フラウデ」と絶叫し、支持者たちとともに社会的騒乱を引き起こすと脅迫したので米国政府はそれを支持した。 (圧力) ワシントン・ポストによれば、「すべてが在リマのジョン・ハミルトン大使のコメントから始まり、その後、国務省、ホワイトハウスの声明が続き、ついに脅迫的な制裁を盛り込んだ議会の決議にいたった」という。 タイムズのラ米編集長ティム・マッギークは、「残りの七%の票の集計に二十四時間かかったという事実は、フジモリが第一回目の投票で勝利した場合には、厳しい批判と致命的な結果に直面する危険があったことを示唆している」と述べた。 ホワイトハウスの報道官ジョー・ロックハートは、脅すような口調で、「われわれは、票の集計結果が勝者を決めるなら、重大な混乱と疑念を生じさせると信じている。 従って、選挙の正当性についていうならば、国際社会とペルー国民が選挙プロセスに信頼を持つことが非常に、非常に重要なことだ」と述べた。 別の言葉で言うならば、「第一回目の結果がどうであれ、決戦投票があるだろう」ということだ。 いまや、選挙が正当であろうなかろうと、ペルー国民が「選挙プロセスに信頼を持とう」と持たなかろうと、米国が決めようとしていることは明らかである。 (次ページに続く) 026 Espreso, Domingo, 28 de mayo del 2000.
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傷だらけの勝利(3) (前ページからの続き) (今後の展望として選挙には勝つと思うか) そのためには日曜日の投票に期待しなければならない。 (選挙がはじまってからもトレドが町中で人々を反フジモリにかりたてる熱弁をふるい続けたらどうするか) トレドは政治的指導者としては活発だが混乱を招くことに固執するならば長続きはしないだろう。 (今起こっている問題は一過性のものと考えているのか) トレド現象は時の流れによるものと思う。 ペルーには政党はなく、独立した人々がいて、誤りと勝利を繰り返す。 (日曜日の選挙に勝つことは明らかだが、これからの五年間、平穏に政治をおこなえると考えるか) 勿論だ。経験則からいえば選挙の興奮のあとにはいつも正常な状態が戻ってきている。 (十年間おこなってきたような権威をもって統治することができるのか伺いたい。あなたの与党はもはや議会で絶対多数を占めていないではないか) 問題への対応の仕方に若干の違いはあるだろう。 すべての大きな問題は解決したので、今後は経済問題により集中しなければならないと思う。 (社会的対立の爆発は懸念されないか) 心理学的に言って選挙のあとは闘争的でない市民は通常の生活に戻る。 (トレドや多くのメディア、はては宗教関係者までが、あなたのことを繰り返し独裁者と呼ぶことに苛立ちを感じないか) おおやけにわたしのことをそう呼んだり、新聞がそう書いたりすることは、まさに表現の自由があるということの証拠である。 これらの攻撃は十年間選挙でわたしに勝つことのできなかった人々の絶望の苦い果実だと思う。 (大統領としての第三期の新機軸は何か) もはやテロやインフレ、国境紛争に精力を消耗する必要がなくなったので、目的と戦略ははっきりするだろう。 (いままでとおなじくモンテシーノスは重要な存在でありつづけるのか) われわれが行おうとすることの一つは、国家情報局(SIN)の改革である。 (縮小するのか) テロとの闘いに勝利したので今後は犯罪や麻薬のような他の側面に焦点をあわせることになる。 (SINが多くの権利侵害をおこなったと非難されている。テレビや新聞は、ファビアン・サラサールが被った暴行や略奪の責任者はSINであると非難している) それは調査しなければならない問題だ。 結論を出し、告発が真実ならば措置を執ろう。しかし、SINによる権利侵害の告発はあまたあるが、ほとんどいつも根拠がなかったということを明らかにしておきたい。 おそらくあなたも、SINがラ・レプブリカ紙の社主を誘拐、襲撃したのではないかと言われたことがあったことをご記憶と思う。 しかし、それは嘘だったことはご自身が認め、彼から自動車を奪ったのは通常の犯罪者だったことが明らかになった。 (一九九〇年にあなたが政界にはいったときには、職業政治家の悪やトリック、駆け引き、寝業などには無知であったという印象を与えていたが、いまはどうか) わたしが政治の駆け引きを見ていなかったなら、いまこの椅子には座っていないだろう。 (十年のあいだにいろいろなことを学んだか) 勿論、学んだ。 (マリオ・バルガス・リョサは、あなたが大統領だった十年間はペルーの歴史の中で最も暗い時代のひとつで、国が後退したと言っているがどう思うか) わたしはいつもわたしの良心に従い、国家の利益のために行動してきた。自分個人やグループの利益のために行動したことはない。 テロの撲滅、インフレ抑止、その他の多くの機会にそれを示してきた。 テロリストが日本大使公邸を占拠したとき、そして攻撃命令を下したとき、わたしの弟が人質の中にいることを知ったときなどもそうだ。 (このように大きな大統領官邸のなかで孤独に感じないか) 官邸で時間を過ごすことは少ない。 夜、あなたのような新聞記者を受け入れるときや公式行事を行うときを除けば、国のあちこちに出かけていって、仕事をし、人に会っている。 (あなたの前の夫人はいまや議員で野党の闘士だが、人生において他に女性はいるのか) いまはだれもいない。 (再婚の可能性は考えているか) 勿論。 (何年も権力の頂点におられるがいつか大統領でなくなる日のことを考えることはあるか) 考える。二〇〇五年には政治活動から完全に去る。 (大統領候補として第四回目の立候補をする意図はあるか) ない。 (四期を目指す誘惑に陥ることはないか) 絶対にない。 Espreso, Domingo, 28 de mayo del 2000.
“Se trata de cumplir la ley” por Alfonso Rojo de El Mundo de Espana.
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