曷不委心任去留 胡爲遑遑欲何之

ここで遊んでくれたみなさん、いままでありがとう

全体表示

[ リスト ]

「光州5・18」

「衛星劇場」で放映されているのを見ました。

韓国の光州市で、民主化を要求する活動家、およびそれに賛同した学生を含む市民で構成されたデモ隊と韓国軍との、1980年5月18日に始まる衝突と、その衝突が軍事的抗争に発展して同月27日にデモ隊が韓国軍に制圧される形で終結するまでの10日間が描かれています。

ドラマ「第5共和国」ではあの時代に軍部内で何が起こっていたかが克明に描写されていましたが、この映画はあくまでも市民の目線で光州事件が語られます。

主人公カン・ミヌを演じるキム・サンギョンさんの(後半の)鬼気迫る演技に圧倒されました。「大王世宗」では、演出のせいか、脚本のせいか、分からないけど、実力が発揮できなかったんですね、きっと。

ミヌは光州市のタクシー運転手で、両親は既になく、高校生の弟(イ・ジュンギさんが演じてます)と自分の生活をわずかばかりの収入で支えています。

ミヌは弟思いのいいやつなんですけど、ちょっとお調子乗りで、恋心を抱いている看護婦のシネ(イ・ヨウォンさんです)に告白する勇気もない、政治に関心の薄い(ノン・ポリってやつ?)、あまり教養が無さげで、臆病で平凡な男なんですね。でも、デモ隊と軍との衝突の中で、民主化要求運動に身を投じた弟が命を落としたのを契機に、変わっていくんです。たぶん「民主化」という概念すらよく分かっていなかっただろう彼は、弟の死後、自ら先頭にたって、光州と光州市民を守るために戒厳軍と対峙しようとするんです。

その変化していく過程をキム・サンギョンさんは説得力のある演技で表現しています。目の配り方ひとつ、身のこなし、しゃべりかたまで、前半のミヌと後半のミヌと違うんです(この間、たった10日なんですけれどね)。ただ、シネに対しては、最後までずっと不器用。

ミヌの弟、ジヌは、お兄さんのことが大好きで、お兄さんがシネに恋心を抱いているのを知ってるんですね。で、不器用で臆病なお兄さんのためにこっそり、シルバーのクロスのペンダントを用意して、それにメッセージを添えるんです。「シネさんはクロスが好きだからこれをシネさんにプレゼントして、そしてシネさんに何かカッコイイ言葉をかけて」って。「ちゃんと出来たかどうか、あとで僕が確認するからね」って。

そのペンダントとメッセージをミヌはジヌの死後に受け取ります。呆然として遺影の前に座っていたミヌは当然、大泣きです。

このペンダントをミヌは、軍の装甲車がぞくぞくと光州入りし、いよいよ軍事的衝突が避けられなくなった前夜、シネにプレゼントします。市庁舎に立てこもって背水の陣で戦うつもりのミヌたちにはもう死しか待っていないことを、そのときミヌもシネも理解してるんですね。

で、ミヌ、弟に言われたとおりに「カッコイイ」言葉と共にシネにペンダントを差し出します。そのせりふが泣ける…。

「50年後に取り返しに戻ってくる。」って。

シネはおそらく20台前半。50年後っていうのはシネの寿命が尽きるころです。そのころに迎えに来るからって。つまり、これって、よくある言い回しだと、「来世でいっしょになろうね」ってやつです。でも「50年後にこれを取り返しにキミのところに戻ってくるから」のほうが切なくて泣ける…。

あと印象に残ったシーンは、市民デモ隊と戒厳軍がにらみあいをしているときに、デモ隊の先頭にいたミヌの同僚が最前列にいる兵士をからかうところと、建物に掲揚される国旗を見て、デモ隊のひとたちが誰に号令をかけられたわけでもなく、みな一様に胸に片手をあて、国旗を仰ぎ見ながら国歌を歌うところ。

前者では、デモ隊に「女の子紹介してやろうか」「ボインな子もいるよ」「あ、ズボンの前が大きくなってる」とかからかわれた若い兵士たちが、ついニヤついたり、「やばっ」って視線を下げて自分のズボンの前を見たりするんですね。立場の違いでデモ隊に対峙し、彼らを傷つけるはめになってるけど、この兵士たちも普通の韓国国民のひとりであって、もともと、デモ隊に参加しているような人たちの、息子であったり、兄弟であったりするような存在なんだよな、と思わせる巧い場面でした。このシーン自体は映画のトーンからかなりはずれるほどコミカルなんですけれど、でもこのシーンがあるからこそストーリーの悲劇性がより高まります。

後者は…これが国民というものだ、と思いました。自分が生まれ育った国に対して熱い気持ちを抱くのは全然悪いことじゃない。日本人も見習うべき。

そして、ラストシーン。さらんへよさんがこの映画のレビューに詳しく書いてくださって、写真もアップしてくださってますけど、不思議な映像で終わります。

シネとミヌの結婚式のシーンなんですが、そこにいるひとたちは、シネ以外、ミヌも含めみな、亡くなってしまったひとばかりなんです。彼ら、結婚式らしくうれしそうに晴れ晴れとした様子なんですが、シネだけが無表情なんです。しかもですね、トモコの目が確かなら、シネとそれ以外のひとたちとライトの当たり方が違うんです。そして、シネだけ色がワントーンくすんでる感じ(白いウェディングドレスを着ているからかもしれないけれど)。

シネとそれ以外のひとたちは同じ場にいるはずなのに、シネだけその場にいないような感じ。とってつけたような、シネだけ切り張りされたかのような…。

これ、何事もなければ実現したかもしれない結婚式と現実の彼らの葬式とが二重写しになっているのかなって、トモコは思いました。無表情の(本当に悲しいときは声も涙も出ないものです)イ・ヨウォンさん(=シネ)は父親とミヌの遺影を前に呆然としているシネなのかもしれない、と。もしかしたらシネは、葬儀の場で、まるで魂が抜けたようになりながら、まだ彼らが生きていたころにとった記念写真(市庁舎に立てこもった仲間で記念写真を撮るシーンがあります)を眺めているのかもしれない。そしてその写真の中に実現しなかった自分の結婚式を見ているのかも知れません。

そうそう、映画の前半で、シネがミヌとジヌとで映画を見に行く約束をして、毛先にカーラー巻いて、鏡の前でピンクのワンピースを当ててるシーンがあります。父親が「デートか?」ってからかうんですけど、シネは慌てて否定。この親子のシーンはどれも、まるで古き良き時代の日本映画に出てくる父娘みたいで、とてもよかったです。

ちなみにシネ、結局ワンピースは着ず、白いブラウスとデニム、という姿でした(笑)デートに何を着ていくかって悩ましいですもんね。お洒落な姿を見せたいけど、「あんまり気張り過ぎると物欲しそうに見えるかな?」なんてさ。シネもそんなだったんだろうな。

オススメ度、☆5つ。

閉じる コメント(8)

今日がその5月18日で、光州事件から30年経ったわけですが、
衛星劇場はタイムリーな放送でしたね。実は、この映画を見た後(昨年6月頃見ました)でKBSの「伝説の故郷」(1999年版)を見たのですが(最近、2009年版も見ました。これがシリーズ最後になってしまいました)…。

何と〜「光州5・18」の中で、この「伝説の故郷」を市民がわいわい言いながらテレビを見ているシーンが映っていたのですが(ちなみに、この「伝説の故郷」は日本風に言うなら納涼ドラマです)、これから光州でさらに恐〜い、身も凍るような事件が起こるという前触れって意味だったのかなぁ〜と…。幽霊よりも何よりも一番恐いのは人間だという、今さらながら監督の意図を感じた次第です〜(「伝説の故郷」の感想文から)

2010/5/18(火) 午後 10:55 Saranheyo

顔アイコン

TBさせていただきます〜(^。^)ノ

2010/5/18(火) 午後 11:00 Saranheyo

顔アイコン

さらんへよさん、こんばんは。

TBありがとうございます。

「伝説の故郷」(日本のドラマだと、「世にも奇妙な物語」みたいな感じですか?)って、タイトルは聞いたことがあったのですが、毎年放映されるシリーズものだったんですね?1980年当時からこの番組はあったってことですか。長寿番組だったんですね。

そのシーン、トモコ、記憶にないのですが(ぼーっとしてたから?)、さらんへよさんがおっしゃるように、そういうテレビ番組に夢中になっている人々自身が、後にドラマになるような出来事の当事者になってしまうっていうような意味があるんでしょうか。

他にもドラマの具体的な筋を離れて、いろいろ思いを致すことがあったんですが、そのうちちょこっと書くかもしれません。

2010/5/19(水) 午前 1:08 [ トモコ ]

トモコさん、おはようございます。

「伝説の故郷」(1999年版)の感想記事にもTBさせていただきます。ところで、お尋ねの光州事件が起きた時にも、このドラマが放送していたかですが、1977年〜1988年までの12年間シリーズ化され、その後2006年に復活して昨年まで続けて終了したそうですが、2009年版もなかなか興味深ったです。ちなみに、チェ・スジョンさんやイ・ドクファさんも出てます。

>そのシーン、トモコ、記憶にないのですが(ぼーっとしてたか ら?)

確か、映画では光州事件が起きる前夜かに〜わいわい言いながら見ていたように記憶してます。私の場合は、映画を見た後にたまたま「伝説の故郷」を見たので分かりましたが…。そうじゃないと分からないかもです。韓国人の方は、きっとすぐピンとくるでしょうね、知らない人がいないくらいの番組だそうですから…。たぶん、私が覚えていたのは、このドラマのタイトルが漢字で「伝説の故郷」と出たからだと思います。この時代は、漢字もかなり使っていたようなので…。

また、続けて書くことがあるようで〜楽しみにしています^^

2010/5/19(水) 午前 8:02 Saranheyo

顔アイコン

↑「伝説の故郷」を見てるシーンを調べてみました。
光州事件が起こる前に、いつも番組を見ているのでしょう。
町民が集まってテレビを見ていると、「これからKBSの人気
絶頂ドラマ伝説の故郷が始まります。その前に〜」とテレビ
の前で男の人が話している場面がありました。

2010/5/19(水) 午後 0:21 Saranheyo

顔アイコン

さらんへよさん、こんばんは。

「伝説の故郷」のトラバ、ありがとうございます。
さらんへよさんのブログ、ものすごく記事が多いから、全部見てなくて…すみません。

チェ・スジョンさんやイ・ドクファさんも出るような番組、ということは、いわゆる「キワモノ」ではないんですね、きっと。でも、間に20年くらいの空白があったんですね〜。

映画のほうは、よく考えたら、トモコ、お茶を淹れなおしに1,2回と、お手洗いに1回(超早業、のつもりだったけど)、中座しました。たぶん、その間に見損なったシーンだったのかな…レビュー用にパソでメモ取りながら観てたけど、それで見逃しはないと思うので…。23日とあともう一回、再放送があるようなので、今度は見逃さずに観てみます。

2010/5/19(水) 午後 11:59 [ トモコ ]

顔アイコン

トモコさ〜ん

しょっぱなから…ミアネヨ〜 ご・め・ん・な・さ・い〜m(__)m
おっちょこちょいのサランヘヨです。。。

TBしました「伝説の故郷」を読んでいただければ、分かりますが…。

>でも、間に20年くらいの空白があったんですね〜。

いえいえ〜空白は私がボケしたからです・・・アッチャ〜
1996年に復活したと書かなくちゃいけないところ、2006年と
書いてしまいました。本当にミアネヨ〜

>いわゆる「キワモノ」ではないんですね

いや〜かなりキワモノだと思います。納涼ドラマ、今風に言えばホラー系ですからね。チェ・スジョンさんとイ・ドクファさんが出てるのは、2009年版バージョンだけです。でも、このシリーズには今をときめく俳優さんが出てますよ。

私が2009年版で一番記憶に残ったのは、チェ・スジョン&イ・ドクファさんが出た作品ではなく、「死神の書」というタイトルはオドロオドロしてるけど、死神の情けと笑いにあふれたコメディで、他の作品とは違い大笑いしました〜 ちょっとブラックユーモア風で面白かったです^^

2010/5/20(木) 午前 9:45 Saranheyo

顔アイコン

さらんへよさん、こんばんは。

人間の思い込みってすごい(笑)トモコ、先にさらんへよさんのコメントを読んで、そのあとトラックバックしていただいた記事読んだのですが…理解してませんでした…最初にインプットされると年号とかちゃんと読んでいないものですね(反省)

空白期間を間に置きつつ、去年まで続いてきた番組なんですね。

見たい気もするけど(まだレンタルしているかしら)、怖いの苦手なトモコ…。どうやら7月31日までツ○ヤでは旧作が100円らしいので、週末、歩いて10分くらいのところにあるツ○ヤ(実は一度も行ったことがないんです)に行ってみようかしら…。

2010/5/20(木) 午後 5:52 [ トモコ ]

開く トラックバック(2)


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事