純国産“人造石油” 十二月から颯爽市場へ中外商業新報 1938.10.25聖戦一年有三ケ月、戦線の拡大に正比例して飛行機、タンク、軍用自動車など「動く兵器の血液」たるガソリンの消費量は尨大な数字を示し、銃後ではガソリン切符発行やアルコール混入等極力燃料消費節約を実行する一方ガソリンの増産緊要が叫ばれている時東京帝大名誉教授大島義満博士の研究の成果たる「フィッシャー法による石炭の液化」の工業化が海軍燃料廠の援助の下に朝鮮某地の朝鮮石炭工場に於て着々と進捗し愈々本年十二月その措置、技術等すべて純国産の手になる“人造石油”が颯爽と市場に登場することとなり燃料国策問題の行手に輝かしい曙光を与えている
石炭の液化は石油の天然資源に欠乏しているドイツ、フランス、イギリス(本国)等の諸国にあっては燃料問題解決の鍵として夙に本格的研究が進められ、既にドイツのI・G会社、イギリスのI・C・I会社等の国策会社の手によって優秀な人造石油が相当量製造されているが、これに比較すると我国の斯界の現状は極めて貧弱であり、この不振の最大原因は国産の石炭が化学的に液化に不向であったことと大規模な措置準備が不完全であったためで石炭液化の工業化は学界、事業界の疑問符とされていたところ、この間にあって大島博士は多年ドイツに留学石炭液化を専心研究して帰朝し石炭液化の二方法即ち直接液化法、間接液化法(先ず石炭を気体にし更に液化する方法)の何れに国産石炭が適しているかにつき国産石炭百数十種の鉱質を調査研究した結果各種とも温度と圧力の工合、水素の純度等から直接液化法が適していることを実証し之を学界に発表更に海軍燃料廠の援助協力を得て大規模な実験に移り一般工業化に確信を得た、この結果昭和十一年朝鮮石炭工業同十二年撫順石炭工場等が設立するに至ったもので共に海軍の援助の下に着々試運転を続けていたがいよいよ本年十二月朝鮮石炭の製品が時局の脚光を浴びて市場に提供される運びとなったものである、この製品は原料(石炭)措置、技術すべて外国の手を経ぬ純国産でドイツのI・G社の人造石油ロイナーを遙に凌駕する良質なものというから頼もしい限りである、なお前記撫順製品も明春早々市場に現れる筈でこの純国産人造石油の登場は今や各方面から注目されている【写真は大島博士】
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