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「仕方がない」!「やむをえない」!だけでは、政治は動かない、一人でも発言していくことだ!真実 を本音の言葉でずばりと言うブログ!

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               「植草一秀の『知られざる真実』」

                           2015/03/30

  変わらずに生き残るためには自分が変わらねばならない

              第1113号

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2月26日付ブログ記事

「大塚家具内紛報じ、政治とカネ報じないNHK」「大塚家具の社内紛争」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-e896.html

メルマガ記事

「敗戦70年安倍談話が政権崩壊の端緒になる」

http://foomii.com/00050

に次のように記述した。


大塚家具の問題は、経営路線をめぐる社内対立で、国民にとってはどうでもよ
い話だ。

家具においても価格競争は激化しているから、入り口で氏名、住所を記載して
会員になることを強制され、スタッフ同伴でなければ展示商品を見ることがで
きないような手法は、もはや時代遅れであると言えるだろう。

とはいえ、これは大塚家具の内部の問題だ。


その大塚家具の株主総会が開催されて、創業者である大塚勝久氏の長女である
大塚久美子氏の社長続投が決まった。

メディアの多くが創業者の大塚勝久氏の側に立つ論評を展開してきたから、報
道各社は肩透かしを食らった格好になった。

体面を保つために、大塚久美子社長の行動を批判的に記述する論評が目につ
く。

基本は大塚家具社内の権力闘争であるが、企業が企業価値を高めることを重視
するなら、この手の内紛は表に出すべきでない。

内紛が表に出たことは企業にとってはイメージダウンの原因になり、損失にな
る。



私は、創業者の大塚勝久氏の主張と現社長の大塚久美子氏の主張を比較して、
現社長の主張に合理性があると判断していた。

したがって、大塚家具の株主が示した結論は順当であると判断する。

また、各種の情報が創作するなかで、株主が適正な判断を示したことに、ある
種の驚きを感じた。

大株主の一部には、創業者との歴史的な関係からなのか、創業者側に立つ企業
が散見されたが、こうした企業株主よりも、一般の個人株主の方が、はるかに
冷静で合理的な判断を示したものと感じる。

大塚家具が脚光を浴びたのは、いまから20年近くも前のことである。

当時の日本では、大きな「内外価格差」が残存していた。

外国製品の国内販売価格が極めて高い状態が続いていた。

日本の貿易黒字の大きさが問題になっているころで、円高にもかかわらず、日
本の輸入が拡大しない理由として、輸入製品の国内販売価格に円高の影響が迅
速に反映されないことが問題とされていた。

こうした状況のなかで、大塚家具は海外の高級家具の輸入販売を積極的に展開
することで業容を拡大した。

その販売方法として、大規模な販売店舗を設置して、いわゆる会員制の販売方
式を導入したのである。

来店客に受付で会員登録を要請し、販売員が来店客を引率して店内を案内する
方式が採られたのである。



輸入家具の仕入れと最終販売を直結させるビジネスモデルに特徴があった。

また、大規模なフロア面積を有する店舗を活用しての展示販売も斬新な試みで
あった。

また、会員制の販売方式により、接客する販売員当たりの売り上げを伸ばすこ
とも実現したのである。

また、大塚家具の販売においては、販売価格が一本化されていた。

従来の日本の家具販売店においては、定価を高めに設定しておいて、顧客と販
売員とのやりとりのなかで「値引き販売」する方式が一般的に採用されてい
た。

顧客と販売員との「駆け引き」によって販売価格が大幅に変動するという状況
が広範に見られたのである。

大塚家具では、このような方式が、価格に対する不信、不透明感を招くとの判
断から、販売価格の一本化ならびに明確化を打ち出した。

つまり、一切の値引きをしない。

公示されている価格が、企業が提示できる最安値であるとの方式を採用した。

この「価格の透明化」も新規顧客を獲得する大きな武器になったと考えられ
る。

私は、テレビの報道番組のコメンテーターとして、大塚家具の新しいビジネス
モデルに見られる斬新さを解説したことがある。

その解説に対して創業者の大塚勝久氏から謝辞をいただいたこともあった。



この時期のビジネスモデルとしては優れたものであったと言えるだろう。

大塚家具は「内外価格差の解消」を目標に掲げていたが、実際には、かなり大
きな内外価格差は残されていた。

外国製の家具を輸入して販売するのであるから、そのための経費が価格に上乗
せされることは避けられない。

ただし、内外価格差の原因はそれだけにあるのではなかった。

会員制の販売方式がもたらす、「高人件費体質」という問題が、実は当初から
存在していたのである。

したがって、国内の他の販売業者の提示する価格よりは安いが、生産国におけ
る国内販売価格と比較すると、1.5倍から2倍程度の小売価格が設定されて
いるものが少なくなかった。

20年前のビジネスモデルとして、大塚家具のビジネスモデルには長所も多
く、斬新なものであったが、その後の日本の消費市場が劇的に変化したことを
見落とせない。

その変化によって、創業者の大塚勝久氏が指向するビジネスモデルが、言わば
「時代遅れ」になってしまったのである。

そのために、大塚勝久氏は経営陣から排除された。

そのことに対する「私憤」が問題を大きくさせてしまったのである。

しかし、問題が拡大するなかで、一般投資家の判断が冷静かつ合理的であった
ことは、ひとつの驚きである。

株主は適正な判断を下したと言えるだろう。



この20年間で、日本の消費市場は劇的な変化を遂げた。

多くの分野で内外価格差は解消し、分野によっては、輸入品の販売価格が国産
品の販売価格を大きく下回るという事態すら発生している。

衣料品におけるファーストリテイリング=ユニクロ、家具・雑貨におけるニト
リ、日用雑貨におけるダイソーなどの業容拡大が、この変化を如実に物語って
いる。

円高の進行を背景に、海外製品の取り込みを積極的に行った。

そして、国内での販売価格を最大限低下させるために、最も費用がかさむ人件
費コストの削減に徹底的にこだわったのである。

こだわり過ぎた結果が「ブラック」などの新しい問題を引き起こすことにつな
がってきたのではあるが、こうした企業の、新しいビジネスモデル構築の行動
によって、海外製品の日本国内での販売価格がほぼ変わらないという、「内外
価格差の解消」が一気に進展したのである。



このビジネスモデルと比較すると、大塚家具の販売価格の価格競争力の低下は
避け難いものであった。

来店客に販売員がマンツーマンで対応するビジネスモデルにおいては、膨大な
人件費コストが必要になる。

今回の内紛劇で、大塚勝久氏の側は「従業員の利害」を強調した傾向が強い
が、「従業員の利害」と「人件費コスト」とは裏腹の関係にある。

ニトリやイケアなどの企業が業容を拡大するなかで、これらの強者に対抗して
ゆくには、この問題の解消が必要不可欠である。

消費者の情報力は急激に発達しており、汎用的な製品については、インター
ネット上の価格比較サイトによって、瞬時に、国内最安値が検索され、その最
安値での購入がインターネットを通じて瞬時に可能になる環境が整備されてい
る。

このなかで、価格競争力を維持するには、販売コストの徹底的な削減が不可避
となるのである。



また、顧客が入試できる入手できる情報が急拡大しており、家具を買う際に、
販売員が引率する方式は、若年層の顧客を中心に忌避される傾向も強まってい
る。

こうした状況変化を踏まえれば、大塚家具がビジネスモデルを劇的に転換しな
ければならないことは自明であった。

大塚久美子社長はその方向に企業革新を進展させようとしてきたのではないか
と推察する。

ここに、「私憤」を持ち込んだのが、創業者の大塚勝久氏であったと思われ
る。

メディアが面白おかしく問題を取り上げたために大騒動になった。

ただ、この過程で、かなり多くのメディアが大塚勝久氏側に立つ報道を展開し
たことが注目される。

つまり、メディアの体質そのものが古い、時代遅れということなのだ。



ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「山猫」のなかの主人公の

「変らずに生きてゆくためには、自分が変らねばならない」

という言葉を小沢一郎氏が民主党代表選の演説で引用したことが話題を呼んだ
が、企業も生き残るためには変わることが必要なのである。

株主総会での大塚勝久氏や夫人の発言を見ると、変わることの重要性、変わる
ことがなければ滅んでゆくしかない現実が、強く実感された次第である。

企業は企業として生き残りをかけて変化する。

人件費が最大の費用項目となるなら、企業は人件費を削減することに血眼にな
るだろう。

だからこそ、このような環境下での政府の役割が重要になるのである。

企業が人件費の削減に突き進むときに、労働者の身分と処遇を守るのが政府の
役割なのだ。



ところが、2001年以降、日本の政権の多くが、労働者の身分と処遇を守る
側ではなく、労働者の身分と処遇を切り下げる方向に舵を切った。

派遣労働を拡大し、さらにいま、これを生涯化させる法改定が推進されてい
る。

最低賃金を引き上げるのではなく、引き下げる、あるいは撤廃する提案が示さ
れ始めている。

労働者の身分は不安定になり、処遇はさらに引き下げられている。

企業に改善を求めても限界がある。

企業は広告宣伝費として、メディアにアピールすることを発表はするが、しょ
せん、本音ではコスト削減しか考えていない。

企業行動を制約できるのは「ルール」だけなのだ。

法律、規制などで、企業行動を縛るより他にないのである。

最低賃金の引上げ、

すべての労働者の正規労働化、

労働時間の厳格な管理

など国が果たすべき責務は大きい。



企業とは基本的に営利を追求する存在である。

性善説でルールを定めても実効性を確保することはできない。

企業は営利に走ることを前提に、そのなかで、市民、労働者、主権者、国民、
生活者を守る、厳しいルールの設定が重要になるのである




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