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(前回の続き)
そして僕達は付き合い始めた。
それから何日かたった頃、僕達には声で会話することはないが、お互いの心は会話をするよりも通じていたような気がする。
僕は手話を覚えるために勉強をやり始めたんだ。
携帯で話すよりも手話の方が思ったことをすぐに伝えられるからだ。
僕は一つのことにのめり込むことなんて今までなかったが必死で手話の勉強をした。
だけど僕には気になることがあった。
一つは香織の病気のこと。
もう一つは香織のお父さんに、香織には近づくなと言われたこと。
どうしても香織のお父さんには交際を認めてもらいたかった。
香織はお父さんなんて関係ないからって言うのだが、僕にはそれがずっと気がかりだったので香織の実家に挨拶をしに行くことに決めたんだ。
その挨拶に行く当日。
その日は休日だったので香織のお父さんは家にいるらしく、僕は香織と一緒に実家へと向かった。
こんなに緊張したことはあっただろうか。
その時香織はメールで僕に言った。
香織:[緊張しないでね。]
拓人:[ああ。大丈夫!]
香織にはメールでそう答えたが、僕にはずっと落ち着きがなく香織もそれに気づいていた。
そして香織の家まで着いた僕達は玄関先までいくと、先に香織がドアを開けて中へ入っていった。
香織の家は三階建てで思っていたよりもでかく、玄関先の横には庭が広がっていた。
香織から聞いた話ではお父さんはなかなかのやり手の事業家でなんらかの分野で成功を収めているらしい。
それを聞いていたのでさらに緊張が高まっていた。
すると香織が玄関のドアからひょこっと顔を出すと僕にメールを見せた。
香織:[今はお父さんとお母さん出掛けてるみたいだから、帰ってくるまで上がって待ってて!]
僕は緊張を保ったまま香織の家に入った。
拓人:「お邪魔します。」
僕の声に気づいたのか、奥から
「はーい。」
と言う声が響いた。
香織はメールを僕に見せた。
香織:[私の妹を紹介するね。]
すると香織は奥に行き、妹を連れてくると僕に紹介した。
妹:「初めまして。妹の由里です。」
僕は少し動揺しながらこう言った。
拓人:「あっ、初めまして!あ・・東拓人です・・・。」
由里:「そんな緊張しなくていいですよ。お姉ちゃんから拓人さんのことはいつも聞いてます。いつもお姉ちゃんがお世話になってます。」
拓人:「いえ・・・。急に押し掛けちゃってすいません・・・。」
由里:「ふふっ。そんな敬語で喋らなくてもいいですよ。」
由里ちゃんの笑顔は香織の笑顔とそっくりだった。
その笑顔のおかげで僕の緊張は少し解れた。
由里ちゃんは香織の二つ下で今年20才になる大学生。
性格は明くて今時いない黒髪で清楚な感じの女の子だった。
由里:「さぁ。中へどうぞ。」
由里ちゃんはそう言うと、香織にも手話でなにかを伝えていた。
それを見た僕は、
拓人:「由里ちゃん手話ができるんだ。俺も今勉強してるんだけど、なかなか覚えられなくて・・・」
由里:「んー。私も最初は苦戦したけど、以外とコツをつかめば簡単ですよ。」
と由里ちゃんは言ったが、勉強が苦手な僕にとっては難関だった・・・
僕は苦笑いしながら一言、
拓人:「簡単・・・へぇ・・・」
としか言葉がでてこなかった。
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