|
(前回の続き)
だけど香織が襲われそうになってから、俺は菜美のあのトラウマが甦った。
菜美を守れなかったように香織も俺は守ることができなかった。
俺は恐かったんだ。
また同じことが繰り返し起こるのではないかと。
だけど、さっきの香織のメールを見て俺は決意したよ!
俺は香織と一緒に生きていく。
何があっても香織と前を向いて歩いていくよ!
香織は俺が守るから。
ごめんね。香織。]
香織はそのメールを見ると僕の胸に飛び込んだ。
雨で湿った髪と冷えた身体を受けとめると、香織は僕の胸で大粒の涙を流し泣き続けた。
さっきまで土砂降りだった雨はいつのまにかあがっていた・・・
次の日・・・
僕は昨日香織を送った後、一人で決意したことがあった。
それを実行するため、四日ぶりに会社へと向かった。
会社に着くと、熊さんが僕の姿を見つけ、駆け寄ってきた。
「おい拓人!なにをしてたんだ!?メールも返さずに!心配したんだぞ!」
「・・・うん。いろいろあったんで。
あの・・・熊さん?」
「どうした?」
「俺ね、今日辞表持ってきたんだ。」
「はっ?どうしてだよ!何かあったんなら相談しろ!辞める必要ねえだろ?」
「ん〜・・・会社に迷惑かけたし、やりたいこともあるから・・・
もう辞める決意はしてきたんです。
あっ!そうだ!今晩飲みにいきません?」
「飲みに行くぐらいいつでも付き合ってやるけど、本気で辞める気なのか?」
「辞める意志は変わりませんよ。熊さんにはいろいろ世話になりました。」
それを聞いた熊さんは大きなため息を一度つくとこう言った。
「・・・そっか、それなら仕方ねぇな。今晩ゆっくり話を聞くからな!
ところで顔の傷は大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。たいしたことないから。」
僕は熊さんに軽く頭を下げると、課長の所へと向かった。
用意しておいた辞表を懐から出し、課長の机の上に置いた僕は一言、“お世話になりました”と礼を言った。
課長にも考えなおせと言われたがやりたいことがあると言うと課長は何も言わなかった。
それから僕は、その日最後の仕事を終えると、課長が送別会の日を決めようと言ったが僕は断った。
嬉しかったが無断欠勤した上に辞表まで出した僕に送別会だなんて、そんなことをされたら僕の胸の方が苦しくなるだけだ。だから断ったんだ。
会社の荷物を整理していると、熊さんが先に近くの居酒屋で待ってると言って会社を出ていった。
僕は荷物をまとめ終えると、急いで熊さんの待つ居酒屋へと向かった。
店に入ると、熊さんの姿はどこにもなかった。
すると店主がこう言った。
「熊ちゃんとこの人?」
「あっ、はい。」
「二階の座敷で待ってるよ。」
僕はそう言われ、階段をあがり二階の座敷の前まで行くと、ふすまをゆっくり開けた。
すると、
「おつかれさま!」
「おつかれ!」
「拓ちゃんおつかれ!」
そこには僕と同じ課で働いていたみんなが揃っていた。
そこには課長の姿もあった。
僕はみんなの笑顔を見ると涙が出そうになった。
たった数か月一緒だっただけなのに、僕のためにみんな集まってくれたんだ。
僕は声を震わせながらみんなにこう言った。
「こんなことされたら、会社辞める気無くすじゃないっすか・・・」
僕は聞かなかったがわかっている。
みんなを集めてくれたのは熊さんだってこと。
今まで孤独に生きてきた僕にとって、みんなが集まってくれたことは本当に嬉しかったんだ。
その日の僕は浴びるほどの酒を飲んだ。
みんなは次の日も仕事だというのに、朝方までドンチャン騒ぎは続いた。
こんなにいい人達が僕の周りにいたなんて、
気付かなかった僕はなんて馬鹿なんだとその時思ったんだ・・・
|