|
会長が叫んだ。
「拓人ー!!なにをしてるんだ!もっと足を使えー!!」
するとセコンドにいる会長の元に試合を見にきていた香織の妹の由里ちゃんが駆け寄り、
何かをこらえるかのように由里は言った。
「会長さん!!」
「ん?由里ちゃんどうしたんだ!?」
「亡くなりました・・・」
「えっ?」
「お姉ちゃん・・・死んじゃった・・・」
試合をしていた僕は知らなかった。
香織が逝ってしまったんだ。
そんなことも知らずに僕は戦い続けた。
しかし僕の体は限界を超えていた。
ほとんど意識がない中、相手の拳が僕の顎をつらぬいた。
バタン・・・
「カン!カン!カン!」
「東選手立ち上がれません!!試合終了ー!!」
会長が駆け寄った。
「拓人ー!!大丈夫かー!?」
僕に意識はなかった。
「ダメだ!!意識がない!!救急車を呼んでくれ!!早くっ!!!」
「拓人ーー!!!!」
そして僕の鼓動は弱まっていった・・・
俺・・・死んだのか・・・?
気がつけばそこには青い空、大地には一面のひまわり畑が僕の前にある。
その先の方をよく見ると、見覚えのある一人の女の後ろ姿が見えた。
「香織・・・?」
香織の後ろ姿を見た僕は、彼女の所までゆっくりと歩み寄った。
「香織?」
僕はやさしく彼女を呼ぶと耳の聞こえないはずの香織がゆっくりと後ろを振り返った。
「拓人?」
「俺の声が聞こえるの?」
香織は寂しげな顔で言った。
「うん。」
「ここはどこなんだ?」
香織は言った。
「拓人。ごめんね。」
「えっ?」
「私、頑張ったんだけどダメだった・・」
僕はなんとなく理解したが信じようとはしなかった。
「何言ってんだよ?」
「でも私は満足してるよ。拓人にたくさんの思い出をもらったから。」
「なんだよ!これからだって思い出作れるだろ!」
「ダメだよ。」
「どうしてだよ!!」
「私はもうそっちには帰れない。」
「意味わかんないよ!じゃあ俺もそっちにいくよ!」
香織は真剣な表情で言った。
「ダメっ!!拓人はまだこっちへ来る時じゃないよ。」
僕は言い返した。
「関係ないよ!俺は香織と一緒にいたいんだよ!」
香織はやさしい声で言った。
「拓人にはまだまだやることがあるでしょ?」
「え?」
「チャンピオンになるって約束は嘘だったの?」
「・・・」
「私だって本当は拓人の傍にいたいよ!それにまだまだ生きたい。だけど拓人にはまだ生きる力が残ってるの!だから私の分まで生きてほしい!」
「・・・」
「そうすれば私はずっと拓人の中で生き続けることができる。今の拓人なら私がいなくても大丈夫だよ。天国で拓人がチャンピオンになってくれることを祈ってるから。」
「・・・香織。」
僕はそう言われると何もいい返すことはできなかった。
「そんな悲しい顔しないの!!私は約束を必ず守ってくれるって信じてる・・・わかった?」
僕はうつむくとこう言った。
「・・・・わかんないよ。わかんないけど・・・俺たちの夢だったもんな・・・」
「そうだよ!私たちの夢だよ・・・・・・
・・・・・絶対叶えてね。」
香織が笑った。
その時の香織は本当に天使にようだった。
香織を想うと
どうしようもなく苦しくて
どうしようもなく切なくて
そしてどうしようもなく・・・愛しすぎて・・・涙がこぼれた・・・
‘ 本当は離れたくない ’
香織の心の声が聞こえたような気がした・・・
すると遠くから何か近づいてくる音が聞こえた。
ガタン!ガタン!ガタン!ガタン!
香織が言った。
「お迎えがきたみたい。」
すると僕らの前に大きな玩具のような汽車が停まった。
運転席の窓から笑顔の少年が顔を出していた。
僕はその子が裕也くんだということがすぐにわかった。
香織はその汽車に乗り込み僕にこう言った。
「拓人頑張ってね!」
僕は涙をこらえて一言こう言った。
「ああ。」
僕は涙を堪えながらも胸を二回叩き、香織に拳を向けた。
香織は笑顔をこぼした。
「ファーーン!!」
汽笛の音が鳴り響くとゆっくりと汽車が動き始めた。
手を振る香織の姿が少しづつ小さくなるにつれて、僕の目には涙があふれてきた。
僕は叫んだ。
「香織ーっ!!!!ずっと愛してるからなっーーー!!!!」
小さくなっていく香織の姿はほとんどぼやけて見えにくくなっていたが、香織は笑顔で一度うなずき目から涙がこぼれていたように見えた・・・
僕の涙はとまらなかった・・・。
すると突然、僕の目の前が真っ白になった。
「東さーん!?」
|