|
「東さーん!?」
拓人へ
「先生!東さんの心搏数が上がっています!」
私は今、天国へと向かっています
「何!?信じられん!!なぜ急にこんなことが!」
窓を開けるとお花畑が広がっていて、風がすごく気持ちいいの
でも本当は拓人と離れるのはちょっぴり寂しい
「先生!準備ができました!」
今思い返すと、拓人との思い出がいっぱい浮かんでくるの
あーなんでだろ?
涙が止まらない
「東さー・・頑張ってくださ・・・」
でも違うよ
悲しいから泣いてるんじゃないの
拓人に出会えて、
恋をして、
一緒に過ごせたことが嬉しくて涙がでるの
拓人は私がいなくても迷ったりはしちゃダメだよ
私の分まで前を見て生きて
そして最後にいい人生だったと思えるような新たな幸せを見つけてください
拓人、あなたならきっと見つかるから
初めて公園で出逢ったときのこと覚えてる?あの時はほとんど何も話してくれなかったから、あなたの声の記憶はなかったの
でもさっきあなたの声を聞いたとき、私が想像してた通りの優しい声だった
私は最後に拓人の声が聴けただけで満足です
神様が願いを叶えてくれたのかな?
本当に嬉しかったんだよ
拓人?
拓人なら私がいなくても大丈夫だよね?
ボクシングだってあんなに強いんだから平気だよね?
私は拓人と一緒に居られて幸せでした
拓人の声はまだ耳に焼き付いています
そのやさしい声が耳から消えないうちに
別れが寂しくならないうちに
私は先にいきます
あなたの声と共に・・・
そして最後に
あなたを心から愛しています
ありがとう
香織の声ははっきりと僕の心に届いた。
最後の“ありがとう”と言う言葉をそのまま香織に返したいと思った。
今思い返せば僕たちには言葉はなかったが、言葉よりも大事なもので繋がっていたんだ。
言葉じゃないものに嘘なんてなくて、素直に愛し合うことができた。
香織と過ごした時間は決して長くはなかったが僕にとっては一秒一秒が大切だと思えたこと、
それは香織だからこそその大切さに気づかされたんだ。
正直にいうとこれから香織のいない人生なんて考えられない。考えたくもない。
けれど香織と交わした約束を裏切ることはしたくない。
いずれ僕にも死ぬときが訪れるだろう。
そこでもし香織に再び会えることができたならその時は胸を張って香織に渡したい。
あの指輪を・・・
そして意識が戻った僕の体は死のふちからよみがえり、見る見る回復していったんだ。
これは後から聞いた話だが香織が付けていた僕とお揃いのブレスレットは香織が息をひきとったすぐ後に切れてバラバラに外れたらしい。
香織は想いが通じ合ったときに切れると言っていたが、本当に切れるとは思わなかった。
あのブレスレットが僕らを引き合わせてくれたのか、それは未だにわからない。
だけど香織の言葉を聞けただけで僕は立ち上がることができた。
香織との約束を果たす為に・・・
3年後・・・
ある朝、部屋のカーテンを開け、太陽の日差しを浴びると
僕は冷蔵庫の牛乳を一気に飲み干した。
ぽつんと部屋の真ん中に置かれたボロボロのソファーに座ると
僕は机の上に飾ってある写真に目をやった。
その写真には
リングに立つ笑顔の僕がいて、
その腰には
チャンピオンベルトが巻かれている。
そして・・・
その写真の隣にはもう一つ写真が飾られていて
その写真は初めて香織と二人で撮った海での写真。
そこには
恥ずかしそうに写る僕と、
その隣で
やさしい笑顔で写る
香織がずっとそこにいる・・・
香織?
渡したいものがあるんだ
(END)
|
たまたま見つけて最後まで読んでしまいました。 こんな純愛羨ましい。。。
2006/5/25(木) 午後 3:14 [ - ]