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(前回の続き)





結婚式の次の日から僕の猛特訓は始まった。

仕事が終わるとジムに行き、毎日吐いてしまうぐらいの練習をこなした。
それにはジムの仲間も驚いていた。

なぜここまで人一倍の練習をこなすのかというと、まだあの時の記憶がたまに甦ることがあるからだ。
前を向いて生きていくことはできたが、悪い記憶を消すことなんてそう簡単にできない。
僕は早く強くなって、自分に自信を持ちたいんだ。
そしてあの苦しみから解放される日が来ることを待ち望んでいる。
そうすればきっと、今よりも人間として成長しているだろうし、男として大きくなっているだろう。
もう迷うことはなにもない。
僕は僕自身と戦っていく。
そいつに勝つためなら、どんな練習も耐えることができた。




「おい!拓人!!」

すると会長が僕を呼んだ。

「そろそろスパーリングでもするか?」

「え?いいんすか?」

「とりあえず吉原あたりとやってみろ!」

吉原くんというのは、僕の二つ下の20才の子で、僕が入る一年前からこのジムに通っている。
ボクシング経験は僕より先輩なので敬語を使っているが、吉原くんも僕が年上だということで、僕に気を使って敬語を使ってくる。
何かぎくしゃくした関係だった。

そんな吉原くんに、シャドーボクシングやサンドバッグを叩いていただけの僕がどこまでついていけるのか不安だったんだ。


僕達はリングへ上がると、ヘッドギアとグローブをはめ、3分3ラウンドの試合が始まった。

「お願いします!」

僕は見よう見まねで覚えた足のステップを踏み、吉原くんに近づくと、ものすごい早さのパンチが僕に飛んできた。
幼い頃から反射神経だけはよかった僕は、そのパンチをかわすことができたが、吉原くんは腕を休めることなく、次から次へとパンチが繰り出してきた。
僕はコーナーに追い詰められ、自分を防御することで精一杯だった。

すると会長が言った。

「拓人!!コーナーから出ろ!おまえも手を出せ!!」

僕はその言葉を聞くと、コーナーから脱出し、僕もパンチを出し始めた。
すると吉原くんも僕のパンチに警戒したのか、さっきよりもパンチの数が減ってきた。
僕は思った。
見よう見まねで踏んだステップだったが、これはすばやく動けるためだけじゃなく、リズムを作るためのステップでもあったんだ。
僕は1ラウンド目でなにかを掴む手応えを感じた。
ゴングがなり1ラウンドが終わると思ったより体力を消耗することにも気が付いた。
すると会長が言った。

「拓人!本気でやってるのか!?リングの上は戦場だぞ!やるかやられるか二つしかない!思いっきりやってみろ!」

その言葉を聞いた僕は、会長にうなずくと2ラウンド目のゴングがなった。

僕はなにも考えず、全力で吉原くんに立ち向かった。
すると僕のパンチは初めて吉原くんの顔面にヒットした。
目の色を変えた吉原くんもパンチを打ってきたが僕はなぜか避けることができた。
それから僕の打つパンチは、吉原くんにヒットするようになっていった。
ペースとリズムを掴んだ僕は自分でも驚くぐらい冷静で、吉原くんに手を出させなかった。

そして2ラウンド目が終わり、最終ラウンドに入った。
2ラウンド目のペースを保ったまま僕は吉原くんの顔とボディーを交互に狙い始めた。
気がつくと吉原くんは僕の目の前でうずくまっていた。
ボディーが 効いたみたいだ。
それからも僕の攻撃は手を休めることなく続いた。
すると知らぬ間に終わりのゴングがなり、我に返った僕は周りを見ると、ジムのみんなが僕の方を見ていた。
すると会長が一言こう言った。

「おまえ、本当にボクシングの試合初めてだよな?センスはあると思っていたが・・・予想以上だ!天才かもしれん・・・」


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