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(前回の続き)





ジムのみんなは驚いていたが僕はそう思わなかった。
今まで何に対しても、興味がなく冷めていた僕だったが、その分ボクシングを始めるようになって、死にものぐるいで練習をし、ボクシングビデオを何回も繰り返し見ては研究をした。
ジムの練習以外にも、僕は自分でメニューを作り、影で練習を繰り返してきたんだ。
香織にもジョギングに付き合ってもらうこともあった。(香織は後ろから自転車でついてくるだけだったが。)
生半端な気持ちでやっきたわけじゃない。
吉原くんをあそこまで追い込むことができたのは予想外だったが、決して僕にセンスがあったから追い込めたわけではなく、この4ヵ月の努力の結果だと思っている。
僕はこの時思ったんだ。
実戦経験のない僕が短い期間でここまで成長できた。これからいったいどこまでやれるのかという自分の可能性を試したくなったんだ。

勢いづいた僕はそれからの数か月、数々の実戦を積んでいった。


そして年が明けて2ヵ月が経った今、プロテストにも一発で合格し、試合を見にきていた香織も涙を流して喜んでくれた。





プロテストから何日か経ったある夜。
その日は僕の誕生日だった。

特別に今日は練習を休み、僕のマンションで香織と久しぶりにゆっくりと過ごすことにしたんだ。

食料とケーキを買って、マンションに着いた僕達はパーティーの準備をした。


キッチンからいい匂いがしてくると、僕のお腹からグーっという音が鳴り響いた。
香織の料理は何度か食べたが本当にいつもおいしくて、減量を考えている僕には地獄だった。
だが今日ばかりはボクシングの事は考えず、香織と一緒にいる時間を楽しもうと思ったんだ。

料理をしている香織に僕は手話でこう伝えた。

拓人:「なんかすることない?]

すると香織も手話で返した。

香織:「いいよ。座ってて。」

僕はいつも仕事の移動時間に手話の勉強をしていたんだ。
仕事場では新米で普通なら車の運転は僕がしなければいけなかったのだが、事情を知った先輩が気を利かせてくれて、代わりばんこで運転をしてくれるようになった。それで車内で勉強をし、簡単な会話ぐらいなら手話で話せるようになったんだ。

そうして料理を作り終えた香織は、チキンの照り焼きやスパゲティ、グラタン、チキンライスなど、どれから食べていいのかわからないぐらいの料理をテーブルいっぱいに並べた。

拓人:「いただきます。」

僕は口でわかりやすくそういうと、香織は「どうぞ。」と笑顔で返した。

その料理の味は、言うまでもなくすごくおいしかったが食べ過ぎて体重が重くなるんじゃないと心配になった。しかし今日はそんなことは気にせず食べることにした。

香織はメールで言った。

香織:[今日ははりきって作り過ぎちゃったから、あんまり無理して食べなくていいからね。それとプロテスト合格とお誕生日おめでとう!良い23才が迎えられてよかったね。]

僕はメールを返した。

拓人:[ありがとう!今の俺があるのも香織のおかげだよ。それに最近、少しだけ自分に自信を持てるようになってきた気がするんだ。ポジティブ拓人参上(笑)かな?それにしてもうまいよこの照り焼き!]

香織:[ほんと?よかった!他のもちゃんと食べてよー!笑。そういえば、今日は拓人に誕生日プレゼントがありまーす(^-^)]


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