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(前回の続き)
その翌日、仕事は休みをもらっていたので真っ先に香織のいる病院へと向かった。
病院に着いた僕は病室に入ると、そこには眠っている香織の姿があった。
起こさないようにゆっくりと香織のベッドまで近づき、その横にある椅子に僕は腰をおろした。
するとベッドの隣にある机に、ある写真が飾られていることに気が付いた。
それは昔、二人で花火をしたときに海で撮った初めての写真だった。
それからそっと香織の顔を覗くと、少しやつれていたが、何か微笑んでいるようなかわいい寝顔を浮かべていた。
きっといい夢でも見ているのだろう。
その笑顔を見ているだけで愛しくなった。
今考えると、香織と出会えたことには本当に神様に感謝している。
香織がいなければ今の僕はなかったに違いない。
出会って恋をして愛したのがたまたま香織だったんじゃない。
香織だからこそ、こんなにも人を愛することができたんだ。
もし香織と出会わなかった人生があるのなら、僕はどうなっていたのだろう。
そんなことは考えたくもない。
香織と出会う運命は初めから決まっていたんだ。
だけどその運命を神様に感謝する反面、香織の体にハンデを背負わした神様には怒りさえもおぼえる。
この寝顔が永遠に見ることができなくなるのなら僕は香織の後を追うかもしれない。
香織の存在は僕のすべてなのだから・・・
すると、香織の閉じていたまぶたがゆっくりと開いた。
僕に気付いた香織は右手を出し、僕の手を握ると笑顔を見せた。
何か香織は言いたそうにしていたので、僕はポケットの中の携帯を香織に渡した。
すると香織は空いている左手でメールを書き始めた。
香織:[いつからいたの?起こしてくれればよかったのに(^-^)
それより私今、夢を見てたんだけど、夢に拓人が出てきたよ!しかもね、拓人と私が結婚する夢(*^_^*)
拓人がね、私の薬指に指輪をはめてくれて、その後みんなの前でキスするの。すっごく幸せな夢だったよ☆]
僕はそのメールを見て香織に返事をした。
拓人:[へぇ!夢の中の俺はかっこよく決まってた?
っていうか香織の寝顔をずっと見てたんだけど、うっすら微笑んでたよ(^_-)]
香織:[もう!恥ずかしいから見るな!!
あっ。そういえば昨日の試合はどうだったの?]
拓人:[俺が負けると思う?(笑)
1ラウンドKO勝ちだったんだ!香織にも見せたかったなぁ。今度その時のビデオもらってくるから一緒に観ようよ!]
香織は瞳をぎらつかせてメールを返した。
香織:[拓人すごーい(o^o^o)ぜったい観る観る!おめでとう☆]
拓人:[ありがとう。
それと二ヵ月後のタイトルマッチに勝てば、俺は晴れて日本スーパーフライ級のチャンピオンになれるんだ!]
香織:[すごーい!やっとここまで来たんだね。拓人ならきっとチャンピオンになれるよ♪私、試合までに退院できるかな?☆]
そのメールに僕は明るくこう返した。
拓人:[ああ(^-^)絶対それまでに退院して観に来いよ!!
俺は必ずベルトを取るからな!
それとその時、ベルトと一緒に香織に渡したいものがあるんだ。]
香織:[渡したいもの?]
拓人:[うん。前から決めてたんだ。
香織・・・
この試合が終わったら・・・]
僕はメールの続きを手話で言った。
「俺と結婚しよう」
香織はきょとんとした顔をしたまま動かなくなった。
僕は続けて香織に手話で言った。
「俺じゃダメか?」
すると香織の目からみるみる涙があふれるのがわかった。
香織は涙を拭いながらメールをした。
香織:[ダメだよ。だって私の体は普通の子とは違うんだよ?]
僕はメールを返した。
拓人:[香織が何を言っても俺は香織と結婚したいんだ!それは変わらない!それとも、香織が俺と結婚したくないのか?]
香織:[違うよ!私は拓人のお嫁さんになるのが夢だったんだよ・・でも、]
拓人:[じゃあ、次の試合に勝ってチャンピオンになったらベルトと一緒に渡すよ!
指輪。
本当はチャンピオンになる日まで黙っておこうと思ったんだけど、香織の気持ちも聞いておきたかったから。]
そのメールを見た香織は、泣き顔を見られたくなかったのか、布団で顔を隠しその中で香織は一言、僕にメールをした。
香織:[拓人ありがと]
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