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(前回の続き)
明くる日からの香織は、僕の願いが届いたのか、体の調子の良い日が続くようになった。
それには病院の先生も驚いていた。
"信じるものは救われる"と言うが、本当に奇跡が起こるかもしれない。
僕はそう思うと嬉しくてたまらなかった。
そして香織の顔にも笑顔が戻ってきたんだ。
そのおかげでボクシングの練習にも、より一層気合いを入れることができた。
そして夢にまで見たチャンピオン戦がとうとう明日に迫った試合前日。
僕はその日、仕事は休みをとり、朝から香織のいる病院に向かったんだ。
病室に入ると、そこにはいつものように香織がベッドにいる。
その頃の香織は、体を起こすことも自分では満足にできない状態だったが、それでも優しい笑顔と明るいメールだけは以前の香織を取り戻していた。
拓人:[香織おはよう!体の調子はどう?]
香織:[おはよ♪今日も調子はいいみたい(^-^)っていうかとうとう明日は試合だね。拓人も調子はいいの?]
拓人:[絶好調だよ!これなら明日は絶対勝てる!と思うんだけど、明日戦うチャンピオンは三回防衛してて結構強いらしいんだよね・・。だから簡単には勝たせてもらえそうにないかも?]
香織:[なに弱気なこと言っってるの?拓人なら大丈夫だよ!!もっと自信持ちなさいよ(^O^)/]
拓人:[バカ!誰が自信がないって言った?勝つ自信は120%ぐらいはあるよ!]
香織:[それでこそ拓人だよo(^-^)o
そういえば私ね、この病室に5ヵ月居て思ったことがあるの。]
拓人:[思ったこと?]
香織:[うん。私がこんなに長く入院したのは二回目なの。
ほら、前に裕也くんの話をしたの覚えてる?]
拓人:[あぁ!覚えてるよ。電車が大好きだった子だよね?]
香織:[うん。あの時もそうだったんだけど、病院の夜って一人でいるとすごく不安で恐いの。
暗くて何も聞こえなくて、気が狂いそうになることが何度もあった。
だけどあの時は、裕也くんと出会って私は変わった。
それからは夜になると、こう考えることにしたの。
"この夜を乗り切れば、明日また裕也くんと楽しいお話ができる"
そう思うと夜を乗り越えられるようになった。
そして今回、また入院することになって、不安になる夜が私に何度も降り掛かった。
でも私はその不安を乗り越えることができた。
拓人。あなたがいたから。
"明日になったら拓人が会いにきてくれて、そして拓人の笑顔が見られる"そう思うだけで元気が出たの。
3週間ぐらい前、拓人が私の前で笑顔をあまり見せなくなったことがあったでしょ?]
僕はすぐにメールを返した。
拓人:[本当に?たぶん、ボクシングが不調だったときかな?]
それは嘘だった。
本当は香織が痩せ細っていく姿を見て落ち込んでいた時のことだった。
香織:[あの時、辛かったんだよ。拓人の表情を見てると、もうこんな私のことなんか嫌いになっちゃったのかな?って思ってたの。]
拓人:[プロポーズまでしたのに、そんなことありえるわけないだろ!!]
香織:[それはわかってるけど、いつまでたっても退院できなくて、こんな痩せちゃった私に嫌気がさしちゃったのかなって思ったの。結局、明日の試合も行くことができないし・・・]
拓人:[香織。これだけは言っておく。
俺は一度だって香織を嫌いだなんて思ったことはない!
ボクシングだって香織がいたからここまでこれたんだ。
ボクシングだけじゃない。
香織と出会わなければ、俺は生きてる価値さえもわからない腐った人間のままだった。
香織を愛する気持ちが俺をここまで変えたんだ。
その気持ちは今も変わってないよ!]
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