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世代も性別も国籍も超えた魂の交流

あなたは若いのです。
戦いは必ずやって来るでしょう。
人生は高貴な魂をもって前進する者には
戦いを免除しません
(ロラン宛のマルヴィーダの手紙から P56)


『ロラン=マルヴィーダ往復書簡』は、フランスの作家ロマン・ロランとドイツの女流作家マルヴィーダ・フォン・マイゼンブークの往復書簡集である。1890年3月から1891年8月の間に交わされた約140通を収録している。

1890年当時、ロランは24歳。エコール・ノルマル(フランス国立高等師範学校)を卒業し、歴史研究者としてイタリアに官費留学する。そこで出会ったのがマルヴィーダだ。

ロランが当時使っていたと思われる名刺。封筒にロランの自筆で
「マルヴィーダ・V・マイゼンブーク」と書き入れがある(筆者所有)

マルヴィーダは女性の地位向上のために運動し、そのために亡命を余儀なくされた。自殺を思う日々もあったが、彼女の周囲には哲学者ニーチェや音楽家ワーグナー、革命家マッツィーニなどが集い、新しい時代を告げる先駆者たちのサロンが形成されていった。

ロランが出会ったとき、マルヴィーダは74歳。ローマのコロッセオにほど近い、ポルヴェリエーラ通り(Via della Polveriera)に暮らしていた。

マルヴィーダが暮らしたポルヴェリエーラ通り(2010年・筆者撮影)

ロランはローマに滞在した約2年間、毎日のようにマルヴィーダを訪ねた。彼女が語る19世紀の偉人たちの追憶は、彼に生きる意味を教えた。それは、人生の真実に迫る「勇気をまなぶ偉大な学校」だったとロランは述懐している。

一方、マルヴィーダはロランの本質をよく理解し、「第二の母」(ロラン)として進むべき道へ彼を促し、励まし、導いた。ロラン宛の手紙には、老婦人の慈愛があふれている。

「あなたは偉大な詩人です。
このことを言う最初の者である仕合わせを
どうか私に与えて下さい(中略)
深い苦しみからいつでも
偉大な詩作品は生まれたのです」(P210)

「私はこの世界のすべてのことよりも、
あなたのことを考えます。そして、
あなたに成長の全き自由を与えるために
最善、最上と思われることを
あなたのためにして上げたいのです」(P251)

「あなたの道には、他の人びとの道より
多くの苦難と失望が待ち受けていることを、
私は少しも隠そうとは思いません。
もしあなたが別の人間なら、
私はあなたに言うことでしょう、
『大勢の人がゆく広い路を選びなさい』と。
しかしあなたはあなたなのですから、
私は言うのです――
『少数の人がゆく、石だらけで骨の折れる、
しかしそれだけが高みへと導く
狭い道を取りなさい。』」(P271)

「あなたの芸術については、
私の信念はゆるぎません。
私はあなた以上にあなたの芸術を信じます」(P277)

1903年にマルヴィーダの死によって交流が断たれるまで、2人は1200通を超える手紙をやり取りしたという。ロランは1916年、ノーベル文学賞を受けた。人生を導く「師」と呼べる人物に恵まれた人は幸福だ。

マルヴィーダの墓。ローマ市内の
非カトリック教徒墓地にある(2010年・筆者撮影)


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